口内炎とは何か:原因、治療、治らない・繰り返す場合に考えられる病気
口内の粘膜にできる
しかし、別の病気が関係している口内炎では、治りづらかったり治らなかったりします。口内炎以外にも症状がある場合、2週間以上治らない場合は、他の病気が隠れている可能性があるので、医療機関で相談してください。
目次
1. 口内炎の種類と原因について
最も多いのはアフタ性口内炎と呼ばれる口内炎です。白くて丸い凹みが口内にできて、食事の時などに強く痛みます。その他、刺激や傷が原因でできるカタル性口内炎もよく見られます。 口内炎には他にも種類があります。種類と原因、その特徴は次の通りです。
【口内炎の原因と特徴】
- 一般的な口内炎
- アフタ性口内炎
- 最も多い、2週間ほどで自然に治る
- ストレスを受けたときや身体が弱ったときにできやすい考えられている
- カタル性口内炎
- 歯のかぶせ物や入れ歯、やけどなどの刺激が原因
- 原因が取り除かれれば治る
- アフタ性口内炎
感染症 を原因とする口内炎がん ・がんの手前の状態- 口腔(こうくう)がん/舌(ぜつ)がん
- 口の中にできるがん
- 小さいときは口内炎と区別しにくい
- 白板症(はくばんしょう)
- がんの一歩手前の状態
- 口腔(こうくう)がん/舌(ぜつ)がん
- 全身の病気による口内炎
一般的な口内炎であれば2週間ほどで治ります。そうでない場合には、他の病気が原因で口内炎ができている可能性、あるいは口内炎ではない可能性が考えられます。そのため、口内炎ができてから2週間が医療機関を受診するかどうかを判断する目安になります。
それぞれの特徴について以下で説明していきます。
2. 白くて丸いアフタ性口内炎
「口内炎」と聞いてほとんどの人が思い浮かべるものは「アフタ性口内炎」というものにあたります。通常は数日から14日程度で自然に治ります。
アフタ性口内炎の症状について
唇の裏や歯茎(歯ぐき)、舌、頬の内側に白くて丸い境界がはっきりした出来物ができます。痛みが強いのが特徴的です。大きさはたいてい5mm以下ですが、もっと大きくなることもあります。
表面がただれる「
アフタ性口内炎の原因について
アフタ性口内炎のはっきりとした原因は分かっていませんが、免疫が関係して起こるという説が有力です。
アフタ性口内炎ができる直接のきっかけとしては、自分で噛むなどの外傷や異物(歯の詰め物や装具)が考えられ、また
そこで予防法を考えるとすれば以下のようになります。
【アフタ性口内炎の予防に有効と考えられるもの】
- 歯磨きなどで口の中を清潔に保つ
- 口の中を傷つけない
- ストレスをためない
- バランスのいい食事をする
ただ、「ストレスをためない」と言っても無理な状況はあるでしょうし、予防効果もはっきりしているとは言えません。口内炎になったとしても生活の深刻な邪魔になることはめったにないので、予防にはあまりこだわらないほうがストレスにもならずよいとも考えられます。
アフタ性口内炎の治療について
アフタ性口内炎は数日から14日程度で治ります。とはいえ、治るまでは痛みが強くて、食べ物や水分がしみるため悩まされます。塩やハチミツを使って治そうとする人がいますが、効くと言える根拠はほとんどなく、お勧めできません。ですので、民間療法よりも治療薬を使うことをお勧めします。
治療には
また、薬には副作用もありますので、安全に使えるよう用法・用量を守ってください。なお、ステロイド
また公的医療保険は適用されませんが、レーザー治療にも痛みを改善する効果があります。半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)・茵ちん蒿湯(インチンコウトウ)・黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)などの漢方薬にも効果が期待できます。
3. 赤く腫れるカタル性口内炎
カタル性口内炎もよくできるタイプの口内炎です。1週間程度で治ることが多いと考えられています。
カタル性口内炎の原因について
カタル性口内炎の原因は主に物理的刺激です。
【カタル性口内炎の原因】
自分がカタル性口内炎かもしれないと思ったら、これらの原因にあてはまるかどうかチェックしてみてください。
カタル性口内炎の症状について
カタル性口内炎では、上あごの部分の口蓋(こうがい)や頬の内側、唇の裏や舌が赤く腫れます。赤い斑点ができたり、白くただれたりすることもあります。
カタル性口内炎の治療法について
カタル性口内炎は自然と治ります。しかし、カタル性口内炎の原因(物理的刺激)がなくならない限り再発しやすい状況には変わりがありません。したがって、原因を取り除くことが根本的な治療になります。心当たりがない場合は歯科医院で歯の矯正器具や虫歯、入れ歯、歯周病をチェックしてもらってください。もし、それらが原因になっていれば、矯正器具が口の中にあたらないようにする、入れ歯を作りかえるなどの治療をしてくれます。
また、歯磨きやデンタルフロスを使って口の内をきれいにすることも有効です。今すぐ自分でできることはしっかりとやってください。
カタル性口内炎は、多くの場合は1週間程度で治ります。なかなか治らない場合は他の病気が原因の可能性も考えられます。心配になったら、歯科医院などでもう一度相談してみてください。
4. ヘルペス性口内炎(口唇ヘルペス)
ヘルペス性口内炎の原因は単純ヘルペスウイルス1型による感染です。単純ヘルペスウイルス1型は珍しいウイルスというわけではなく、日本人の半数以上がこのウイルスに感染していると考えられています。
多くの人は子どものときに初めて感染するのですが、初めての感染のときに「ヘルペス性口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎)」を起こすことがあります。
ヘルペス性口内炎の症状について
口の中の粘膜、歯茎(歯ぐき)、舌に小さな水ぶくれを伴う口内炎ができます。高い熱が出るのも特徴的です。
ヘルペス性口内炎の原因について
単純ヘルペスウイルス1型は、1回感染すると、近くの神経に一生潜み続けます(
口唇ヘルペスは粘膜ではなく、唇やその周辺の皮膚に数mm程度の赤い水ぶくれをつくります。水ぶくれはいくつか同じ場所にできて、痛みがあります。通常であれば1週間から2週間ほどで自然に治ります。
ヘルペス性口内炎の治療について
抗
5. 口の中と手足に発疹、水ぶくれができる手足口病
手足口病は5歳以下の子どもがよくかかる病気です。夏に流行します。よく似た病気にヘルパンギーナがあります。
手足口病の症状について
口の中と手足に発疹、水ぶくれができます。37℃台の微熱が出ることもあります。
手足口病の原因について
エンテロウイルスまたはコクサッキーウイルスの感染が原因です。周りの子どもにうつります。非常にありふれたウイルスなので予防は困難です。
手足口病の治療について
手足口病の症状は軽く、自然に治ります。安静にすることが大切です。特別な治療は必要ありません。
6. 口の中に口内炎、水ぶくれができるヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、手足口病と同様に5歳以下の子どもがよくかかる病気です。夏に流行します。
ヘルパンギーナの原因について
ヘルパンギーナはコクサッキーウイルスA型の感染が主な原因です。子どもから子どもへうつります。原因のウイルスは非常にありふれているので予防は困難です。
ヘルパンギーナの症状について
急に38℃を超える高い熱が出て、のどが痛くなり、口の中、特に上あごの奥の軟口蓋(なんこうがい)という部分に水ぶくれが数個できます。発熱は1日から3日でおさまり、その後数日で水ぶくれも治ります。
ヘルパンギーナの治療について
ヘルパンギーナは自然に治ります。そのため、特別な治療は必要ありません。
体温が高く、食べ物や水分をとれないことで脱水になることがあるので、水分補給は大切です。口から飲めないときは点滴で水分を補う方法もあります。
7. 免疫機能が低下している人がかかるカンジダ性口内炎
普段から口の中に存在するカンジダというカビ(
カンジダ性口内炎の症状について
白いコケのようなものが舌や頬の内側など、口の中全体に広がります。
カンジダ性口内炎の原因について
健康な人は免疫機能が十分にあるため、カンジダ性口内炎にかかることはまずありません。しかし、次のような人は免疫が弱いためカンジダ性口内炎にかかる恐れがあります。
【カンジダ性口内炎にかかりやすい人】
上記に当てはまる人に口内炎ができた場合、カンジダ性口内炎の可能性があります。自然には治りにくいので、かかりつけのお医者さんに相談してください。
カンジダ性口内炎の治療について
治療では抗真菌薬というカビに効く薬を使います。使用方法として、抗真菌薬の軟膏(なんこう)を塗る方法、うがいをする方法があります。
カンジダ性口内炎ができるということは、免疫機能が低下していることを示唆します。そのため、カンジダ性口内炎の治療を始めるときは、同時に免疫が低下する原因が潜んでないかも調べます。カンジダ性口内炎をきっかけに、例えばエイズや糖尿病といった病気が見つかることもあります。
8. 進行するまでは口内炎と区別しにくい口腔がん/舌がん
口腔(口の中)にできるがんは、50歳以上になるとできやすくなります。特に、次の人ではさらにできやすいというデータがあります
【口腔内のがんができやすい人】
- 喫煙者
- 入れ歯が合っていない人
- 歯磨きをしない人
- 歯周病がある人
50歳未満の人で口腔がんはほとんどありません。
参考文献 ・Velly AM, et al. Relationship between dental factors and risk of upper aerodigestive tract cancer. Oral Oncol. 1998 Jul;34(4):284-91. ・Tezal M, et al. Chronic periodontitis and the risk of tongue cancer. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2007 May;133(5):450-4.
口腔がんの症状について
初期段階の口腔がんでは、見た目の特徴として、粘膜の一部が白くなったり、赤くなったりすることがあります。この状態は口内炎と似ているので、見分けるには専門的な診察が必要です。できやすい場所は頬の内側や歯茎(歯ぐき)、舌などです。
舌に発生したがんを舌がんと言います。口腔がんのうち半数以上は舌がんです。舌の中でも舌の横側の、歯に当たる部分にできやすいです。がんの表面がえぐれた潰瘍になることがあります。口腔がんは潰瘍になっても必ず痛みをともなうわけではないのが特徴だと考えられています。
口腔がんの治療について
治療は手術が基本です。進行度によって
がんが小さいうちに治療を始めることが大切なのですが、口腔がんを初期症状から口内炎と区別するのは難しいので、50歳以上の人で、口内炎が2週間以上治らない場合は耳鼻咽喉科や歯科口腔外科で診察を受けてください。
がんの一歩手前の状態、白板症
白板症は、舌の横側や頬の粘膜が固くなって、白くなっている状態です。口腔がんの一歩手前と考えられています。 多くの場合、見た目ではがんやほかの病気の症状と区別できません。組織を切り取って顕微鏡で調べる病理検査(びょうりけんさ)という方法で見分けます。 がんの可能性が高ければ、手術で取り除きます。
9. 口、皮膚、眼、外陰部に炎症が起きるベーチェット病
ベーチェット病は全身に炎症が起きる病気です。20代から40代の人に多いです。
ベーチェット病の症状について
症状があらわれやすいのは次の4か所です。
【ベーチェット病の症状が出やすい部位】
- 口
- 皮膚
- 眼
- 外陰部
ほかにも人によって腸や関節などに炎症による異常が発生します。原因は免疫の異常と考えられています。
ベーチェット病でできる口内炎の見た目はアフタ性口内炎と似ています。唇の裏や歯茎(歯ぐき)、舌、頬の内側に繰り返し口内炎ができます。
ベーチェット病の治療について
ベーチェット病の治療は簡単ではありません。ステロイド薬の内服や点滴、免疫抑制薬、コルヒチン、分子標的薬などを組み合わせて治療を行います。
ベーチェット病の口内炎に対する治療として、ステロイド薬の塗り薬などが使えます。
ベーチェット病は治るのか
ベーチェット病は免疫の異常によって起こる病気です。原因ははっきりわかっておらず、現代の医療では完治させることは困難です。そのため、症状が落ち着いたあと再び症状が悪化する、ということが何度も繰り返し起きます。とはいえ近年、新しい薬も登場しており、治療を続けながら後遺症なく普通の生活ができることも多くなってきています。
10. 免疫の異常で皮膚や口に水ぶくれができる天疱瘡
天疱瘡(てんぽうそう)は、口の中、唇、全身の皮膚に水ぶくれができる病気です。主に40代から60代の人に起こります。
免疫の異常が原因で、自分自身の皮膚が攻撃されてしまいます。
天疱瘡の症状について
皮膚がその下の組織から剥がれて浮き上がり、隙間に水がたまって水ぶくれになります。
天疱瘡の治療について
治療では異常な活動をしている免疫を抑える目的で、ステロイド薬の内服や点滴、免疫抑制薬などが使われます。
免疫の異常とはどんな状態なのか
ベーチェット病や天疱瘡は免疫の異常が原因の病気です。免疫は正常に働いていれば感染症から身体を守ってくれます。しかし、免疫の働きが異常になると、自分自身の身体まで攻撃されてしまったり、さまざまな臓器に炎症が起きてしまいます。
免疫の異常が起こる原因は不明です。一部は遺伝的な要因も関係していると考えられています。食事や生活習慣は、ベーチェット病や天疱瘡の原因にはなりません。また、食事や生活の改善によってこうした病気を予防したり治したりすることもできません。
11. 口内炎が治らない・治りづらい場合は病院に行くべきなのか
口内炎で病院に行く目安をまとめます。
【口内炎で医療機関を受診する目安】
- 2週間以上口内炎が治らない
- 同じ場所に何回も繰り返す
- 体温が38℃以上ある
- 皮膚にも発疹や水ぶくれがある
- 口の中に白いコケのようなものが広がっている
- 口内炎の形や色がいつもと違う
- 大きさが1cm以上
アフタ性口内炎かそれ以外の病気かを見分けるうえでは、口の中以外の症状の有無が大切になってきます。例えば手足口病、ヘルパンギーナ、ベーチェット、天疱瘡では、発熱や皮膚の水ぶくれなど、口の中以外の症状が目立ちます。 一方で口腔がん、白板症は、口の中以外に症状がなく、また一般的な口内炎と区別が難しいことが多いです。口内炎が2週間経っても治らないことが目安になります。
12. 口内炎の病院は何科を受診すればいいのか
口内炎の診察は、歯科や口腔外科の病院・クリニックをお勧めします。
子供に口内炎があって熱や皮膚の症状もある場合は小児科がよいです。
大人で皮膚に症状があるとき、皮膚の診察が得意なのは皮膚科です。
大人で発熱、腹痛、下痢など皮膚以外の症状もあれば、一般内科が全身の病気を調べてもらうのに適しています。
迷ったときはまず歯科か口腔外科に行けば、必要ならほかの診療科に紹介してもらえます。