[医師監修・作成]クローン病の治療:薬物療法・手術など | MEDLEY(メドレー)
くろーんびょう
クローン病
腸管の壁に炎症が起こることで大腸や小腸に深い潰瘍を作る慢性の病気。潰瘍性大腸炎と合わせて炎症性腸疾患(IBD)に分類される
12人の医師がチェック 129回の改訂 最終更新: 2021.12.17

クローン病の治療:薬物療法・手術など

クローン病では5-ASA製剤、ステロイド免疫抑制薬、生物学的製剤、抗菌薬などの薬が治療に用いられます。栄養療法も有効です。重症なケースや薬の治療の効果が乏しい場合には、白血球除去療法や手術を行います。

1. クローン病はどんな病気か

クローン病の治療を考える上で、どんな病気であるか理解することは非常に重要です。クローン病は免疫の異常により起こる病気であることがわかっています。免疫とはウイルス細菌などの外敵が体の中に入ると駆除する体の中のシステムのことです。免疫は通常、外敵だけを攻撃し、自分の体は攻撃しないように制御されています。しかしながら、クローン病ではこの免疫の制御が上手く働かなくなり、自分の体を攻撃するようになってしまいます。そのため、クローン病の治療では免疫を制御(抑制)する薬を使い、おかしくなった免疫を正常化することを目指します。

2. 寛解導入療法、寛解維持療法とは?

クローン病の治療は薬を継続することで症状がない状態を維持することが目標です。薬を使うことで症状が抑えられている状態を医学用語で「寛解(かんかい)」と呼びます。寛解に至れば、病気を患っていない方々と同じように生活を送ることができます。

クローン病の治療は、症状がある状態から寛解を目指す寛解導入療法と、寛解になった人が寛解の状態を維持することを目的とした寛解維持療法に大きく分けられます。寛解導入療法は強い治療を必要とする分、副作用が出やすい側面があります。それに対し寛解維持療法では副作用がなるべく出ないよう最低限の治療を行うことを目標とします。

3. クローン病の治療指針(ガイドライン)とは?

近年、どこの病院でも一定水準の医療を受けられるようにするため、さまざまな病気に対して治療指針が作成されています。治療指針はガイドラインと呼ばれることもあります。日常診療では治療指針を参考にしながら治療内容が決定されます。クローン病も例外ではなく、潰瘍性大腸炎とともに厚労省の調査研究班から2017年に「潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針」が発表されています。

4. クローン病の治療はどんな薬を使うのか?

クローン病の薬物治療では主に免疫を抑えたり、調節する薬を用います。これはクローン病が免疫の異常により起こる病気であると考えると理解しやすいかと思います。クローン病で用いられる治療薬には以下のものがあります。

  • 5-ASA製剤
    • サラゾスルファピリジン
    • メサラジン
  • ステロイド薬
  • 免疫抑制薬
    • アザチオプリン
    • メルカプトプリン
  • 生物学的製剤
    • インフリキシマブ
    • アダリムマブ
    • ウステキヌマブ
  • 抗菌薬
    • メトロニダゾール
    • シプロフロキサシン

詳しくは以下で説明していきます。

5-ASA製剤

5-ASA製剤(5-アミノサリチル酸)は、クローン病の中でも軽症から中等症の方に使われることが多い薬です。5-ASA製剤は内服薬(飲み薬)以外に注腸薬・坐薬があります。これらは個々の症状などに合わせて選択されています。5-ASA製剤は以下のものがあります。

  • サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン®)
  • メサラジン(商品名:ペンタサ®)

それぞれの特徴などを説明します。

■サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン®)

サラゾスルファピリジンは腸内細菌によって5-ASAとスルファピリジンに分解され、主に5-ASAによって抗炎症作用などをあらわします。腸内細菌によって分解される場所は大腸なので、小腸に病変がある場合には、サラゾスルファピリジンは向いていません。サラゾスルファピリジンには5-ASA以外の成分も含まれており、メサラジンで効果が不十分な場合にサラゾスルファピリジンに変更することで症状の改善がはかれることもあります。

■メサラジン(商品名:ペンタサ®)

クローン病において、炎症を抑える中心となる5-ASAを主成分として作られた製剤です。

サラゾスルファピリジンは大腸で分解されて5-ASAとスルファピリジンがつくられますが、メサラジンは5-ASAのみを主な成分とした薬です。そのため、メサラジンは大腸での分解を受ける必要はなく、小腸の病変に対しても有効であるのが特徴です。

■5-ASA製剤の注意すべき副作用とは

注意すべき副作用としては発疹などの皮膚症状、頭痛、下痢や腹痛などの消化器症状、肝機能障害などがあります。また頻度は稀とされていますが、骨髄抑制があらわれる可能性もあり赤血球や白血球、血小板などの減少、間質性肺炎などにも注意が必要です。

ステロイド薬

ステロイド薬は炎症を抑える作用のある薬です。ステロイド薬には様々なタイプの薬がありますが、クローン病には飲み薬、点滴薬、注腸薬がよく使われます。ステロイド薬の代表的な製剤としてはプレドニゾロン(商品名:プレドニン®など)があります。他にもブデソニド(商品名:ゼンタコート®)、メチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®など)、ベタメタゾン(商品名:リンデロン®など)などのステロイド薬も使われます。ここではクローン病でのステロイド薬の使用方法と副作用につき見ていきます。

■飲み薬(内服薬)

クローン病でステロイド薬を使って治療する場合、病気の重症度に応じて、使用するステロイド薬の種類や投与量が決められます。例えば、軽症から中等症のクローン病の方では、ブデソニドというステロイド薬が用いられます。ブデソニドは小腸や大腸への移行部で効果を発揮するように作られているため、クローン病の病気ができやすい場所で強い抗炎症作用を発揮します。一方で、副作用を含め、全身への作用は弱いとされています。

中等症から重症のクローン病の場合には、プレドニゾロンというステロイド薬で1日40mgから60mg程度を投与されることが多いです。そのあと、病気の勢いが抑えられた後には徐々にステロイド薬の減量を進めていきます。ただし、減量の過程で症状がぶり返してくる場合には再度増量することもあります。

■点滴薬

クローン病ではしばしば点滴のタイプを使います。点滴を使うケースとしては大きく2つの場合が考えられます。

1つ目は重症のクローン病の時です。この場合、食事を中止とし、腸を休ませながら薬物治療が行われます。薬の内服もできなくなってしまうため、ステロイド薬も点滴から投与されます。更に病気の進行が早く一刻を争う場合、ステロイドパルス療法といって大量のステロイドを点滴で投与します。ステロイドパルス療法には、内服療法で用いられるプレドニゾロンではなくメチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®)を使うことが多く、たとえばメチルプレドニゾロンを1日500-1000mg点滴静注、3日間といった形で使用されます。

2つ目はすでにステロイド薬での治療中に体調が悪く薬が飲めなくなってしまった場合で、ステロイド薬の内服ができない時の補充です。ステロイド薬はもともと体内の副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンを元にして作られたものです。コルチゾールは糖の代謝、タンパク質の代謝、脂質代謝など生命維持にとって非常に重要な役割を果たしています。ステロイド薬をある程度の期間継続していると、投与されるステロイド薬に体が頼ることで体内で作られるはずのコルチゾールの産生が抑えられます。その状態でステロイド薬を中止してしまうと、体内で必要とされるホルモンが不足し、ホルモン欠乏により命に関わる場合もあります。そのため、ステロイド薬の内服ができなくなってしまった場合には、点滴によりステロイド薬を継続しなければなりません。

■注腸薬

ステロイド薬には内服薬や注射剤以外にも色々な剤形(剤型)がありますが、クローン病の治療では注腸といって肛門から挿入(注入)する薬剤が使われる場合もあります。

これらは主に大腸に限定した作用を目的とた薬です。内服薬や点滴薬のように全身性の副作用の懸念が少ないというメリットがあります。

注腸製剤としては主にプレドネマ®注腸やステロネマ®注腸などの製剤があります。

ステロイド薬の注腸製剤は主に局所への作用を目的としていますが、全身性の副作用がゼロではありません。薬の成分がわずかながら全身へ運ばれる可能性もあり、内服薬や注射剤ほどではありませんが、感染症、発疹やざ瘡にきび)などの皮膚症状、高血圧などの循環器症状、消化器症状、浮腫むくみ)、月経異常などに対して注意が必要とされています。

■ステロイド薬の副作用は?

ステロイド薬を使用する場合、その副作用に注意が必要となります。ここでは飲み薬と点滴薬のステロイド薬の副作用に関して説明します。

ステロイド薬の副作用には、免疫が抑えられたことによる易感染性(感染症にかかりやすくなること)、血糖上昇、血圧上昇、肥満コレステロール上昇、眠れない、気分の落ち込み・高ぶり、骨がもろくなる、などが挙げられます。またステロイド薬を大量に点滴静注するステロイドパルス療法では、副作用が強く出ることがあります。例えば、ステロイドパルス療法では骨がもろくなる副作用が強く出る結果、大腿骨頭壊死という股関節の骨が壊れてしまう副作用が報告されています。

ステロイド薬を使用する場合には、副作用の予防薬を処方されることがあります。例えば、感染症にかかりやすくなることへの対策としてはST合剤(エスティーごうざい)などの抗生物質を、骨がもろくなる対策としてビタミンD製剤ビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症(こつそしょうしょう)治療薬を予防的に使います。

ステロイド薬には様々な副作用があるので、ステロイド薬使用中になんらかの体調変化があった場合には、医師や薬剤師などに連絡・相談するようにしてください。ステロイド薬(内服薬)の副作用に関してはコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています。

免疫抑制薬

■アザチオプリン(商品名:イムラン®など)・メルカプトプリン(商品名:ロイケリン®など)

アザチオプリンやメルカプトプリンはプリン拮抗薬に分類される薬です。アザチオプリンやメルカプトプリンはステロイド薬を減量する過程で症状が悪くなる方に用いられます。

アザチオプリンやメルカプトプリンも副作用としては易感染性、骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板の数が減ること)、肝障害、皮疹などが問題になることがあります。そのため、アザチオプリンやメルカプトプリン使用中は血液検査で白血球、赤血球、血小板や肝機能などに問題がないか定期的にチェックを行います。

生物学的製剤

近年、症状の原因となっている物質の解析や原因物質を阻害する薬の開発が進んでいます。このような薬の開発には最先端のバイオテクノロジー技術が用いられ、生物学的製剤と呼ばれています。クローン病で有効性が認められている生物学的製剤としては炎症物質であるTNF(TNFα)を阻害するTNF阻害薬とIL-12とIL-23の作用を抑える抗IL-12/23抗体があります。生物学的製剤は中等症から重症のクローン病の人に使われます。生物学的製剤には以下のものがあります。

  • インフリキシマブ(商品名:レミケード®など)
  • アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®)
  • ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ®)

それぞれの特徴などを説明します。

■インフリキシマブ(商品名:レミケード®など)

インフリキシマブは国内では最初に発売されたTNF阻害薬です。

インフリキシマブは病院などの医療機関で点滴投与する薬です。1-3時間程度をかけて点滴投与されることが多いです。投与時期は通常、初回・2週後・その4週後(初回投与から6週後)に投与し、その後は8週ごとの投与を行っていきます。ただし、症状が重症で8週間隔の投与で十分に良くならない場合には、投与間隔を8週より縮めて投与されることがあります。

■アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®)

アダリムマブも、インフリキシマブと同様にTNF阻害薬になります。ただし、インフリキシマブが点滴であったのに対しアダリムマブは皮下注射の製剤です。投与の間隔は2週間に1回です。ただし、血中濃度を高めるため、初回は160mg(40mg製剤の場合4本)、2回目は80mg(40mg製剤の場合2本)打ちます。3回目以降は40mg(40mg製剤の場合1本)になります。ただし、症状が重症で2週間隔に40mgの投与で十分に良くならない場合には、2週間隔に80mg投与されることがあります。また医師によって妥当であると判断された場合には、ご自身による自宅での投与(自己注射)も可能です。そのため、病院にたびたび行けない方や、病院で点滴投与を受ける時間がない人には向いている薬剤と言えます。

■ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ®)

ウステキヌマブはクローン病と関連する物質であるIL-12とIL-23の作用を抑える薬です。2017年にクローン病に対して保険適応となりました。インフリキシマブやアダリマブとは薬が作用する物質が異なることから、これまでインフリキシマブやアダリマブが効かなかったようなクローン病の方への効果が期待されています。

ウステキヌマブは点滴と皮下注射の製剤を組み合わせて治療を行います。初回投与は点滴で行い、2回目以降は90mg(45mg製剤を2本)を12週間隔で皮下注射します。ただし、症状が重症で12週間隔の投与で十分に良くならない場合には、投与間隔を12週より縮めて投与されることがあります。

■生物学的製剤の注意すべき副作用とは?

生物学的製剤で注意したい副作用は免疫抑制作用による感染症です。中でも肺炎ニューモシスチス肺炎細菌性肺炎など)や結核といった肺の病気にはより注意が必要です。重症化することはまれとされていますが、最初は軽度な症状に感じても急に悪化するケースもあります。咳、息苦しさ、発熱などの症状がみられた場合は医師や薬剤師などに連絡し、受診や検査の必要の有無などを相談することが重要です。

その他、アレルギー反応などにも注意が必要です。そのため、抗アレルギー作用のある薬を事前に使用したうえで生物学的製剤の投与を行うこともあります。稀ではありますが、アナフィラキシーと呼ばれる重症のアレルギー反応が起こることもあるため、投与後に何らかの体調の変化があらわれた場合には医師や薬剤師などに連絡し相談するようにしてください。

抗菌薬

クローン病の治療に抗菌薬が用いられることがあります。主に肛門周囲膿瘍などの肛門の病変がある場合に使われることが多いです。これは、肛門周囲膿瘍には細菌感染の要素が加わっている場合があるからです。具体的にクローン病で用いられる抗菌薬は以下の通りです。

  • メトロニダゾール(商品名:フラジール®など)
  • シプロフロキサシン(商品名:シプロキサン®など)

詳しくは以下で説明していきます。

■メトロニダゾール(商品名:フラジール®)

メトロニダゾールは一般的に膿瘍(のうよう)によく用いられる抗菌薬の一つです。膿瘍とは体のどこかに細菌がたまり、うみ)を作った状態を言います。クローン病でも肛門周囲膿瘍がある場合を中心に使われることが多いです。

メトロニダゾールには内服薬、点滴薬、坐薬がありますが、クローン病では内服薬を使います。代表的な副作用には手足のしびれ(末梢神経障害)、味覚がおかしい(味覚障害)、ふらつき・めまい(中枢神経障害)があります。メトロニダゾールを内服中にこれらの副作用が出た場合には、担当の医師に相談をしてみてください。

■シプロフロキサシン(商品名:シプロキサン®)

シプロフロキサシンはニューキノロン系の抗菌薬です。シプロフロキサシンには内服薬や点滴薬がありますが、クローン病では内服薬のものが使われることが多いです。代表的な副作用に頭痛、めまい、不眠、いらつき、アキレス腱の痛みなどがあります。シプロフロキサシンを内服中にこれらの副作用が出た場合には、担当の医師に相談をしてみてください。

5. クローン病の栄養療法:栄養剤や点滴の使用

クローン病は炎症により腸が正常に働かなくなり、栄養の吸収ができなくなります。そのため、栄養剤を用いて栄養の補給を行うことがあります。栄養剤を用いた治療は栄養療法と呼ばれ、薬物治療と並び、クローン病の重要な治療の1つです。栄養療法には口から栄養剤を摂取する治療(経口・経腸栄養療法)と点滴で栄養剤を投与する治療(完全静脈栄養療法)があります。

口から栄養剤を摂取する治療(経口・経腸栄養療法)

クローン病で用いられる経口・経腸栄養剤には「エレンタール配合内用剤」や「ツインラインNF配合経腸用液」があります。通常、口から摂取した食べ物が体内に吸収されるためには胃や腸で消化・分解され、細かな状態になる必要があります。「エレンタール配合内容剤」や「ツインラインNF配合経腸用液」はすでに栄養素として細かく分解された状態になっているので、腸が正常に機能していないようなクローン病の人でも効率よく吸収できるのが特徴です。加えて、これらの栄養剤は脂質をあまり含んでいません。脂質が多いとお腹を刺激し、クローン病の症状を悪くするきっかけになるので、脂質が少ないことでクローン病の症状の緩和につながると考えられています。また、必須な栄養素であるビタミンミネラルなども含まれています。

点滴で栄養剤を投与する治療(完全静脈栄養療法)

完全静脈栄養療法はクローン病の中でも重症な方が対象となる栄養療法です。完全静脈栄養療法は生きる上で必要なカロリーや栄養素をすべて点滴から投与します。そのため、食事を口から摂取せずとも必要な栄養を補うことができるようになり、食事により腸が刺激を受けることを避けることができます。これにより腸の安静を図ることができます。

完全静脈栄養療法は通常は入院で行われます。点滴の管は首や足の付け根など太い血管があるところに挿入します。これは、完全静脈栄養剤を細い血管から投与すると血管が傷ついてしまい静脈炎を誘発するためです。完全静脈栄養療法は腸の状態が良くなるまで、一時的に行われることがほとんどで、腸の状態が改善すれば食事を再開することができます。

6. 白血球除去療法とは?

クローン病は免疫の異常が関係した病気です。中でも白血球という血液細胞との関連が知られています。そのため、クローン病では白血球除去療法が行われることがあります。白血球除去療法とは、献血などで用いられる針を使って血液を取り出し、白血球の一部(顆粒球と単球)を取りのぞいた後に、血液を体内に戻す治療法です。中等症や重症のクローン病の方で行われます。1回につき1-2時間程度で週に1-2回程度行います。ただし、この治療は一生涯続けることはできないため、薬物療法でなかなか良くならない時に症状を良くするために一時的に行います。

7. 内視鏡バルーン拡張術とは?

内視鏡的バルーン拡張術とは内視鏡下で医療用のバルーン(風船)を用いて腸の狭くなった場所を広げる治療です。クローン病は腸の炎症が続くと壁が分厚くなり、食べ物や便の通り道が狭くなることがあります。腸が狭くなると食べ物や便がスムーズに通れなくなるため、お腹の張りやお腹の痛みの原因になります。ひどい場合には「腸閉塞(ちょうへいそく)」といって、食べ物や便が通らなくなることもあります。そのため、腸が狭くなることによる症状を良くしたり、未然に防ぐために内視鏡的バルーン拡張術が行われることがあります。

8. クローン病で手術が必要になることがある?

クローン病の治療は薬物治療を中心にして行われます。ではクローン病で手術が必要なのはどのようなときなのでしょうか。

手術は緊急で行わないと命に関わる場合と、一刻を争うほどではなくとも症状の改善を目的とする場合(待機的な場合)の二つのケースで行われます。具体的な例を挙げてみます。

  • 緊急で手術をする場合
    • 腸に穴があく:腸穿孔(ちょうせんこう)
    • 腸から血がたくさん出る:大量出血
    • 大腸が異常に膨らみ中に大量のガスがたまる:中毒性巨大結腸症
  • 待機的な手術をする場合
    • 腸の中が狭くなっている:狭窄(きょうさく)
    • 腸同士や皮膚に穴ができている:孔(ろうこう)の形成
    • 肛門の周りから膿がでる:痔瘻(じろう)

以下では緊急手術と待機的な手術の目的や内容などを説明します。

緊急で行う手術の目的と内容

生命に危機が迫っている状況では緊急で手術を行い原因に対処します。クローン病で生命が脅かされるのはどんな状況でしょうか。主に3つの状況が考えられます。

  • 腸に穴があく:腸穿孔(ちょうせんこう)
  • 腸から血がたくさん出る:大量出血
  • 大腸に大量のガスがたまる:中毒性巨大結腸症(ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう)

腸に穴が開くと腸の内容物が腸の外に漏れ出してしまい、腹膜炎という深刻な状況に陥りますし、腸から大量に出血して身体の中の血液が減ってしまうと大切な臓器に酸素などを届けることができなくなり生命に危険をおよぼします。腸に穴が開いたり出血したりしている場合にはその部分の腸を切除して正常な腸と腸をつなぎ合わせます。もうひとつ、クローン病では、大腸が異常に拡張して中に大量のガスが溜まる中毒性巨大結腸症という状態になることがあります。中毒性巨大結腸症は、大腸が破裂してしまう可能性がある危険な状態です。このために破裂する前に大腸を切除して破裂を防ぎます。

緊急時には様々なケースが考えられ、そのため手術の方法も様々です。手術の方法は、原因に対して最も効果があり、手術後の経過がよいと考えられるものが選ばれます。緊急で手術が必要な場合には、なぜ緊急で手術をしなければならないかやどのような効果が期待できるかなどの説明が医師から行われます。緊急時には慌ただしく精神的にも落ち着かないと思いますが、わからないことなどは医師に質問し、十分な理解の上で治療にのぞむことが大切です。

待機的な手術の目的と内容

待機的な手術の目的は、腹痛などの症状を改善し栄養状態を良くすることなどです。

クローン病で腸の中が狭くなると食べ物の流れが悪くなり腹痛などの原因になります。腹痛などの症状のために食事を満足にとれなくなり栄養不足に陥ることもあります。手術により腹痛が改善すれば、食事がとれるようになり、栄養状態の改善につながります。

クローン病は再発も多く、手術が何回も必要になることがあります。1回の手術を乗り越えるのですら大変なことなのに、手術を何回も受けなければならないとなると悲観的な気持ちになるかもしれません。しかし、手術は症状や栄養状態をよくしてよりよい治療を受けるため行われます。大変なことではありますが、手術の意味やその後の治療に与える効果を考えてのぞんでみてください。

以下では手術の具体的な内容について解説します。

■腸の中が狭くなっている場合の手術

クローン病が起きて強い炎症が起こるとその部分の腸が厚くなることがあります。これを瘢痕化(はんこんか)といい、程度が強いと狭窄(狭くなって液体や固体の通過に支障が出る)の原因になります。腸に狭窄が起こると腸の中の流れが悪くなって腹痛や嘔吐の原因になり、その影響で食事量がへり体力が落ちていきます。

腸に狭窄が起きている場合には、治療の選択肢の一つが手術です。手術では狭くなった腸の部分を切り取り病気が起きていない腸同士をつなげます。

■腸同士がつながったり腸と皮膚がつながっている場合

クローン病は病気の影響で腸に穴が開き、腸同士または腸と皮膚などがつながってしまうことがありあます。これを瘻孔(ろうこう)といいます。瘻にはトンネルという意味があります。瘻孔を作ると腸の中の流れが悪くなったり皮膚から腸の中身が出たりするといった症状があらわれます。瘻孔を形成している場合には、その部分の腸を切除して瘻孔を閉鎖します。

■肛門の周りから膿がでる場合

クローン病は肛門にも異常を起こします。クローン病は直腸という便の出口の所に潰瘍という深くえぐれる病気の部分をつくります。潰瘍に感染が起きるとトンネルがつくられてしまい肛門以外の経路で直腸と身体の外とがつながってしまいます。この状態を痔瘻(じろう)といいます。

痔瘻ができると痛みの原因にもなるので治療が必要です。手術は痔瘻の部分をくり抜くタイプの方法や痔瘻の中にゴム糸を通して膿を出しやすくする方法などで行います。痔瘻のできた場所や重症度などをみて最も適した方法を選びます。

手術による合併症

合併症は、手術などにともなって起こる好ましくない結果のことです。合併症は治療が上手くいっても一定の確率で起こることがあります。ここでは開腹手術などで腸の一部を切除した後に起こる主な合併症について解説します。

■腸と腸の縫合不全(ほうごうふぜん)

クローン病で病気を起こしている部分の腸を切り取った後には残った腸と腸を手術用の糸などでつなぎ合わせます。この腸と腸をつないだ部分のくっつきが悪いと腸の中のものが流れ出てしまいます。これを縫合不全といいます。腸の中身がもれ出ると腹膜炎という危険な状態になります。縫合不全が起きた場合には再手術をして腸と腸をあらためてつなぎ直します。

腸閉塞(ちょうへいそく)

腸閉塞は、腸の中にものが詰まったり腸が外から圧迫されて中の流れが悪くなる状態です。手術後の腸閉塞癒着や腸の捻れなどが原因で起こり、嘔吐や腹痛などの症状から見つかります。腸閉塞の程度や原因によって胃や腸に管を入れて中の液体を身体の外にだす治療または手術で治療します。

腸閉塞は退院後しばらくしてから起こることもあるので嘔吐や腹痛などの症状があらわれた場合には治療を受けている医療機関に連絡をして対応について確認してください。

■傷の感染:創部感染

腸の中には多くの細菌が存在しています。腸を切ってつなぎ合わせる手術では腸の中の細菌が傷に付いてしまい感染を起こすことがあります。傷に感染が起こると傷の痛みがでたり赤くなったりといった症状があらわれます。医師は手術後、注意深く傷を観察しているのは感染の兆候がないかを確認しているのです。傷の感染に対する治療は、膿がたまっている場合には糸を外し膿を外に出します。傷の感染は自分の目でみることができるため、不安な気持ちになりやすい合併症の1つです。膿が排出された後には、栄養状態がよくなるとともに傷は閉じていくので安心してください。

■下痢

腸の中でも小腸は水分や電解質の吸収を行う場所です。小腸を切り取る範囲が広いと水分の吸収が不十分になり便は液体に近い状態で身体の外に出ます。つまり下痢の状態が続きます。下痢が長く続くと身体から水分が失われてしまい脱水の状態になります。手術の後、下痢の状態が続く場合には点滴などで水分を補う必要があるかもしれません。手術が終わり退院した後にも下痢が長引く場合には医療機関を受診して相談してみてください。食事の内容の見直しや薬を使うことで下痢を改善するきっかけが得られる可能性があります。

■栄養不良

クローン病が起きている部分がいくつもある場合には腸を切り取る範囲が広くなることがあります。栄養の吸収の役割を果たしている腸が短くなってしまうと栄養の吸収が不十分になります。栄養不良が続くと、身体に影響して生活を送ることもままならないような状況にもなりかねません。そのため医師や栄養士を交えてきちんとした食事などの栄養のとり方を聞いて身に付けることが大切です。栄養のとり方は個人差もあるので、適切だと考えられる方法でも不十分なこともあります。体重減少やひどい下痢などが続くときにはこまめに受診をして栄養摂取の方法について相談してみてください。