2017.02.09 | ニュース

クローン病に免疫を抑える薬が効かない?アザチオプリンの意義を探る

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

クローン病に免疫を抑える薬が効かない?アザチオプリンの意義を探るの写真

下痢や血便を繰り返すクローン病は原因不明の難病です。治療にはステロイド薬などのほか、アザチオプリンも使われます。しかし、これまでの研究データを調査した結果、アザチオプリンの効果は限られていたことが報告されました。

クローン病腸に炎症体の免疫が防御反応を起こしている状態。原因は、感染、けが、免疫の異常(アレルギーなど)と様々。免疫が強く反応することで、熱、腫れ、痛みなどが出るを起こす病気です。主な症状は下痢や血便主に大腸からの出血が原因で、赤い血液が付着した便が出ること。血液量が少ないと、検査をしない限り肉眼では分からないこともあるなどです。クローン病による炎症は口から肛門までのどこにでも現れます。肛門近くの皮膚に穴が開いて痔瘻(じろう)となることもあります。原因は不明です。治療には食事療法のうえ、薬で炎症を抑えます。主に以下の薬が使われます。

  • アミノサリチル酸製剤
    • メサラジン(商品名ペンタサなど)
  • ステロイド薬副腎で作られるホルモンの1つ。ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症や免疫反応を抑えることができるため、様々な病気の治療で用いられている
    • プレドニゾロン(商品名プレドニンなど)など
  • 免疫病原体に対する体の防御システム。何かのきっかけで、免疫が過剰反応している状態がアレルギーで、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患抑制薬
    • アザチオプリン(商品名アザニン、イムラン)
    • 6-メルカプトプリン(商品名ロイケリン、クローン病に対しては国内未承認)
  • TNF-α阻害薬
    • インフリキシマブ(商品名レミケードなど)など

治療がうまくいくと、症状が治まった状態(寛解)になります。しかし、一度寛解に至っても再発したり、さらに悪化することもあり、しばしば長年の治療が必要になります。

なお病名の由来は、この病気を報告したバリル・バーナード・クローン(Crohn)という医師の名前です。生物工学で話題になるクローン(clone)とは関係ありません。

 

ここで紹介する研究は、過去の研究報告を集める方法で、クローン病に対するアザチオプリンまたは6-メルカプトプリンによる治療効果を調べています。

文献の検索により関係する13件の研究報告が見つかりました。報告されているデータがまとめられました。

 

集まったデータから次の結果が得られました。

臨床的改善率について、アザチオプリンまたは6-メルカプトプリンと偽薬のあいだに統計的に有意データを分析して導かれた結果が、偶然ではなく「意味が有る」必然的な値であると推測できることな差はなかった。

アザチオプリンを使用した患者の64%(163人中47人)がプレドニゾンの用量を1日当たり10mg未満に減らすことができ、対して偽薬を使用した患者では46%(70人中32人)だった(リスク比1.34、95%信頼区間1.02-1.77)。

深刻な有害事象はアザチオプリンを使用した患者の14%に報告され、対して偽薬を使用した患者では4%だった(2件の研究、216人の患者、リスク比2.57、95%信頼区間0.92-7.13)。偽薬対照研究でよく報告された有害事象の中に、アレルギー免疫反応によって、体が過剰な防御反応を起こして悪影響が生じてしまう状態反応、白血球血液の中にある血球の一種。免疫を担当しており、病原体が体内に入って来た時に、それと戦う役割を担う減少症、膵炎、吐き気があった。

アザチオプリンを使用した患者の30%(170人中51人)がステロイド副腎で作られるホルモンの1つ。ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症や免疫反応を抑えることができるため、様々な病気の治療で用いられている不使用の寛解状態を達成したが、インフリキシマブ使用患者では44%(169人中75人)だった(1件の研究、339人の患者、リスク比0.68、95%信頼区間0.51-0.90)。

アザチオプリンとインフリキシマブを併用した患者の60%(194人中116人)がステロイド不使用の寛解状態を達成し、対してインフリキシマブ単剤では48%(189人中91人)だった(2件の研究、383人の患者、リスク比1.23、95%信頼区間1.02-1.47)。

実治療を対照とした試験においてよく見られた有害事象は吐き気、腹痛、発熱、頭痛だった。

  • 報告されている内容は次のようなものでした。
  • アザチオプリンまたは6-メルカプトプリンによって症状が改善する効果が見られない
  • アザチオプリンを使ったときにステロイド薬の使用量を減らせる効果が見られた。
  • インフリキシマブのほうがアザチオプリンよりもステロイド薬を減らす効果で勝っていた。
  • インフリキシマブとアザチオプリンを両方使うとステロイド薬を減らす効果がより強く見られた。
  • 副作用の可能性があることとして以下が見られた。
    • アレルギー反応
    • 白血球減少症
    • 膵炎
    • 吐き気
    • 腹痛
    • 発熱
    • 頭痛

 

アザチオプリンの効果についてのデータがまとめられました。治療効果を増す目的ではアザチオプリンを支持するデータが見つかりませんでした。

一方で、クローン病によく使われる薬にステロイド薬があります。ステロイド薬は効果もよく知られていますが、副作用も多い薬です。アザチオプリンなどの薬と組み合わせることでステロイド薬を減らせるなら、副作用を減らしてより安全に治療できる可能性が考えられます。

ただし、実際にアザチオプリンを使うことでステロイド薬による副作用が減ったというデータは、今回紹介した報告には含まれていません。また、ステロイド薬を減らすことを目的とするなら、インフリキシマブのほうが勝るデータが見つかりました。

この報告はひとつの材料であり、実際の治療では個々の患者の状態などさまざまな要素から治療法が選択されます。とはいえ、クローン病に対してアザチオプリンをどう使うかは、慎重に検討されるべきかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Azathioprine or 6-mercaptopurine for induction of remission in Crohn's disease.

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Oct 26.

[PMID: 27783843]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]