2015.08.10 | ニュース

潰瘍性大腸炎、クローン病の治療に使う抗TNF薬、副作用の頻度は?

フランス583人の解析

from The American journal of gastroenterology

潰瘍性大腸炎、クローン病の治療に使う抗TNF薬、副作用の頻度は?の写真

抗TNF薬は炎症を抑える作用があり、潰瘍性大腸炎やクローン病の治療に有効とされています。副作用として皮膚の感染症や乾癬があると言われ、フランスの研究班が治療を受けた人のデータを解析したところ、20%ほどに皮膚の異常が見られました。

◆炎症性腸疾患の患者を調査

研究班は、抗TNF薬で治療された炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の患者の情報を集計し、皮膚の異常が起こる頻度を調べました。

 

◆10年あたりで乾癬は3割

次の結果が得られました。

583人の炎症性腸疾患の患者のうち、患者の20.5%に176件の皮膚合併症が起こった。フォローアップ期間の中央値は38.2か月(範囲は1か月から179か月)だった。 乾癬性病変(583人中59人、10.1%)と皮膚感染症(583人中68人、11.6%)が最も多く観察され、10年での累積発症率は乾癬性病変が28.9%、皮膚感染症が17.6%だった。乾癬性病変があった患者のうち18.6%、皮膚感染症があった患者のうち2.9%は抗TNF治療の中止に至った。

中央値(順位で中央にあたる値)3年あまりのフォロー期間のうちに、583人の対象者の20.5%で皮膚の異常が起こっていました。そのうち乾癬と皮膚の感染症がそれぞれ対象者全体の10%あまりに起こっていました。乾癬が現れた人のうち18.6%、皮膚の感染症が現れた人のうち2.9%は、皮膚の症状が理由で抗TNF薬を中止していました。

 

ここで示された皮膚の異常には、副作用ではない例も含まれている可能性があります。炎症性腸疾患が原因で、または抗TNF薬以外の治療が原因で起こる頻度との違いは、抗TNF薬を使わずに治療した場合と比較することで情報が得られるかもしれません。

原因は確定できないにせよ、抗TNF薬で治療中の炎症性腸疾患がある人に皮膚の異常が頻繁に見られたというこの結果は、治療中に注意するべき点の参考になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Cumulative Incidence of, Risk Factors for, and Outcome of Dermatological Complications of Anti-TNF Therapy in Inflammatory Bowel Disease: A 14-Year Experience.

Am J Gastroenterol. 2015 Jul 21 [Epub ahead of print]

[PMID: 26195181]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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