[医師監修・作成]クローン病の症状:腹痛・下痢・痔ろうなど | MEDLEY(メドレー)
くろーんびょう
クローン病
腸管の壁に炎症が起こることで大腸や小腸に深い潰瘍を作る慢性の病気。潰瘍性大腸炎と合わせて炎症性腸疾患(IBD)に分類される
12人の医師がチェック 129回の改訂 最終更新: 2021.12.17

クローン病の症状:腹痛・下痢・痔ろうなど

クローン病のお腹の症状には腹痛、下痢、血便などがあります。また肛門痛、発疹、関節痛などお腹以外の症状がでることもあります。強い腹痛や強いお腹の張りがある場合は危険なサインなので、すぐに病院を受診するようにしてください。

1. クローン病の症状はどの場所に出る?

クローン病は胃、小腸、大腸などが免疫細胞によって攻撃される病気です。そのため、腹痛、下痢、血便などのお腹の症状があらわれることが多いです。

この章ではクローン病であらわれる症状について説明していきます。ここで述べる症状はクローン病の診断をしたり、治療方針を決める上で非常に重要なものですので、気になる症状があれば、担当の医師とも相談してみてください。

クローン病の症状に関して、以下のように分けて説明します。

  • 腹部の症状
  • 肛門の症状
  • 全身の症状
  • 皮膚の症状
  • 関節の症状
  • 目の症状

2. 腹部の症状

クローン病は以下のような腹部症状があらわれることがあります。これらの症状は数週間から数ヶ月単位で持続することが一般的です。

  • 腹痛
  • 下痢
  • お腹の張り(腹部膨満
  • 吐き気・嘔吐
  • 血便
  • しぶり腹

以下でそれぞれの症状について、くわしく説明していきます。

腹痛

腹痛はクローン病でよくあらわれる症状の1つです。特に右下腹部の痛みが特徴的とされています。これは右下腹部に小腸から大腸への移行部(専門的には回盲部と呼びます)があり、この部位にクローン病の潰瘍ができやすいためです。

時に強い腹痛を起こすこともあり、このような場合には、腸穿孔(ちょうせんこう)や腸閉塞(ちょうへいそく)を起こしている可能性があるため、すぐに病院を受診するようにしてください。詳しくは「重症のサインとは?」で説明します。

下痢

下痢もクローン病の人で頻度が多い症状です。クローン病で起こる下痢は、水のようにシャーシャーと出るもののこともあれば、血が混じった下痢になることもあります。症状が強い人では1日10回以上することもあり、生活の質を下げる原因にもなります。

下痢は腸の機能が障害されることで、食べたものの水分や栄養が吸収できなくなることで起こります。そのため、下痢が続くと、脱水や体重減少の原因にもなります。すでに治療を受けている方の場合、下痢の程度で治療を強めるか判断することもありますので、下痢の症状が悪化する場合は担当の医師に伝えるようにしてください。

お腹の張り(腹部膨満)

クローン病は腸の炎症が続くと、腸の壁が分厚くなり、食べ物や便の通り道が狭くなることがあります。腸の中に狭い場所があると食べ物や便がスムーズに進まなくなり、お腹の張りを引き起こします。

お腹の張りが強い場合には、腸閉塞を起こしている場合があります。腸閉塞とは狭い部分に食べ物や便がつまったりすることで、腸の内容物が先に進まなくなる状態です。腸閉塞は急いで治療が必要な状態なので、強いお腹の張りがある場合には、医療機関を受診してください。

吐き気・嘔吐

クローン病により腸の中に狭い場所があると食べ物や便の進みが悪くなり、吐き気や嘔吐を起こします。吐き気や嘔吐の症状が強く、食事がとれない場合には、脱水の原因にもなるので注意が必要です。吐き気や嘔吐の症状がひどく、食事が全くとれない場合や、食べてもすぐに吐いてしまう場合には、点滴による栄養補充が必要になります。

血便

クローン病で潰瘍のできた場所からは出血が起こるため、便に血液が付着したり、混入することがあります。クローン病で起こる血便の程度は人により異なりますが、まれに大量の血便を起こすこともあります。

また、血便は腸の中で出血が起きているサインであり、持続することで貧血の原因になります。めまい、ふらつき、動悸、息切れがある場合は貧血が疑われますので、担当の医師に相談するようにしてください。

しぶり腹

しぶり腹とは便意を感じるにも関わらず、トイレに行って排便しようとしても便が出ない状態です。しぶり腹は小腸や大腸に潰瘍ができたことにより感じる痛みの刺激を便意と勘違いすることで起こります。そのため、便意を感じながらも実際にはお腹に便が溜まっているわけではないため、排便できないということが起こります。症状としては便秘の時のものと似ていますが、しぶり腹はお腹に便が溜まっていなくても起こる点で便秘とは異なります。

3. 肛門の症状

クローン病はお腹だけでなく、肛門にも症状があらわれます。具体的には以下のような症状があります。肛門の症状は相談しにくいと思いますが、治療方針を決める上で重要なものです。これらの症状がある場合は、担当の医師と相談するようにしてください。

  • 肛門が痛い
  • 肛門が腫れる
  • (女性の場合)膣から便やガスが出る
  • 肛門からが出る

ではクローン病でこれらの肛門の症状があらわれるのはなぜでしょうか。これはクローン病により裂肛痔瘻肛門周囲膿瘍ができるためです。以下では裂肛痔瘻肛門周囲膿瘍についてくわしく説明します。

裂肛(れっこう)

クローン病で肛門に潰瘍ができると、いわゆる切れ痔と似たような症状があらわれます。この状態を専門用語で裂肛と呼びます。裂肛の主な症状は肛門の痛みで、この痛みにより排便ができなくなる人もいます。

また、裂肛は繰り返すことで肛門狭窄の原因にもなります。肛門狭窄は肛門の傷が引きつれて固まってしまうことで起こり、肛門の広がりが悪くなることで便が出しにくくなります。

痔瘻(じろう)

肛門の潰瘍は進行すると、肛門の壁に痔瘻(じろう)と呼ばれるトンネルを形成します。このトンネルは直腸や膣と繋がることがあり、それぞれ肛門直腸(こうもんちょくちょうろう)、肛門膣瘻(こうもんちつろう)と呼ばれます。膣から便やガスが出る場合には、肛門膣瘻の存在を疑います。また、痔瘻は次に述べる肛門周囲膿瘍の原因にもなります。

肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)

クローン病により痔瘻を形成すると、そこに膿がたまることがあります。膿がたまった状態は医学用語で膿瘍と言い、痔瘻に膿瘍ができている状態を肛門周囲膿瘍と呼びます。肛門周囲膿瘍は肛門部の激しい痛みや腫れの原因となり、ひどい場合には38度を超える熱が出る、激しい倦怠感がある、などの全身症状を伴います。肛門周囲膿瘍になった場合には、切開して膿を外に出す必要があります。

4. 全身の症状

クローン病ではお腹の症状に加えて、全身症状を伴うことがあります。クローン病に見られる全身症状には以下のものがあります。

  • 発熱
  • だるさ(倦怠感)
  • めまい・ふらつき・動悸
  • 食欲不振・体重減少

以下でこれらの症状について、くわしく説明していきます。

発熱

クローン病では熱が出ることがあります。また、肛門周囲膿瘍がある場合には、38度を超えることも珍しくありません。ただし、クローン病の人で熱が出た場合に、熱の原因が感染症など他の原因の可能性も考える必要があります。熱が続く場合には担当の医師と相談してみてください。

倦怠感(だるさ)

クローン病の人ではだるい、疲れやすいといった症状があらわれることがあります。クローン病によるだるさや疲れやすさは治療により改善する可能性があります。

貧血症状(めまい・ふらつき・動悸・息切れなど)

クローン病では炎症による消耗や腸から出血が起こることで貧血が起こることがあります。貧血は一般的には「めまい・ふらつき」などの症状自体をさす言葉として使われることもありますが、医学用語では「赤血球が減った状態」のことをいいます。赤血球は全身に酸素を送り届ける役割の血液の細胞です。

貧血が起こると、体中に酸素がうまく送り届けられなくなり、いろいろな不調を自覚します。具体的にはめまい、ふらつき、動悸(心臓がばくばくする)、息切れなどがあり、これらの症状がある場合には貧血がないか考える必要があります。

体重減少

体重減少もクローン病の大事な症状の1つです。クローン病で体重減少が起こる原因は以下のとおりです。

(1)腸の機能が落ち、栄養吸収が悪くなったため
(2)炎症により体力を消耗するため
(3)がんができたため

(1)、(2)による体重減少は、特にクローン病の状態が悪い時(活動期)に起こることが多いです。(3)は胃や腸が免疫細胞に攻撃され傷ついた結果起こると考えられており、クローン病に長くかかっている人に起こりやすいです。がんと聞くと不安になる方もいるかと思います。クローン病と診断されていて最近体重が減ることが気になる方は、担当の医師とも相談してみてください。

5. 皮膚の症状

クローン病の皮膚の症状として以下のものがあります。皮膚症状は痛みを伴うことや見た目の問題もあり、クローン病で生活の質を下げる要因となります。皮膚科の医師と連携をとりながら治療にあたることが多いです。

  • 結節性紅斑(赤く腫れ上がった発疹)
  • 壊疽性膿皮症(皮膚の潰瘍)

以下でこれらの症状について、くわしく説明していきます。

結節性紅斑(赤く腫れ上がった発疹)

結節性紅斑は免疫細胞に皮膚が攻撃されることでできる赤く腫れあがった発疹です。見た目は虫刺されのような発疹ですが、数cm大のやや大きな発疹で、かゆみはないことが多いです。すねの部分にできることが多く、触ると熱を持っています。

壊疽性膿皮症(皮膚の潰瘍)

クローン病では壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)と呼ばれる皮膚の潰瘍ができることがあります。潰瘍は皮膚の黒ずみを伴うことが多く、痛みがあります。場所は手足にできることが多いです。潰瘍は一つだけでなく何個もできることもあります。

6. 関節の症状

クローン病では以下のような関節の症状があらわれることがあります。

  • 関節の腫れ、痛み
  • 手のこわばり
  • 腰の痛み

以下でこれらの症状について、くわしく説明していきます。

関節の腫れ・痛み

クローン病では手足の関節の腫れや痛みが出ることがあります。関節の腫れはなかなかイメージが難しい症状ですが、具体的には突き指捻挫(ねんざ)した時の腫れに似ています。関節に水が溜まっていると感じる方もいます。

手のこわばり

手のこわばりとは指をにぎりにくい症状のことです。クローン病では関節の腫れの結果、関節がスムーズに動かせなくなることで起こります。手のこわばりは朝に症状が強いことが多いです。

腰の痛み

クローン病の関節の症状の一つに腰の痛みがあります。腰の痛みが関節の症状と聞くと、不思議に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は腰周りにも背骨を構成する関節(脊椎関節)や骨盤を構成する関節(仙腸関節)があります。クローン病では大腸だけでなく、腰周りの関節にも炎症が起きることがあります。その結果、腰の痛みが誘発されます。

腰の痛みは健康な人でもよく遭遇する症状です。では、クローン病と関連した腰の痛みと一般的な腰の痛みにはどのような違いがあるのでしょうか。クローン病で以下のような腰の痛みがある場合には、クローン病と関連した腰の痛みの可能性があります。

  • 3ヶ月以上続いている
  • 体を動かすと腰痛がよくなる
  • 安静にすると腰痛が悪くなる
  • 腰の痛みで夜に目がさめる
  • 日によって腰痛の場所が左右に変わる

クローン病の人で上記の症状があり、クローン病に関連した腰の痛みが疑われる場合は腰椎MRI検査を勧められることがあります。クローン病の関節痛の場合、クローン病の治療で症状が軽くなることが多いです。

7. 目の症状

クローン病の目の症状には以下のようなものがあります。

  • 視力が落ちてきた
  • ものが見えにくい
  • 目が痛い
  • 目の充血がひどい

これらの目の症状は、「ぶどう膜」と呼ばれる眼球を構成する膜が免疫細胞により攻撃されることで起こります。この状態を医学用語で「ぶどう膜炎」と呼び、重症な場合失明の原因にもなります。クローン病の腸の症状が落ち着いている場合でも、目の症状に対して治療が必要になる場合があります。クローン病の方で目の症状が気になる方は担当の医師とも相談してみてください。

8. 重症のサインとは?

クローン病はまれに重症化する時があります。重症のサインには、以下のような症状があります。

  • 38度を超えるような熱が続く
  • ひどい動悸がある
  • 肛門から大量の血液が出た
  • 強いお腹の痛みがある
  • お腹の張りが強い

また、これらの症状がある場合、腸穿孔や腸閉塞、中毒性巨大結腸症に陥っている可能性があります。腸穿孔や腸閉塞、中毒性巨大結腸症は緊急を要する状態であり、できるだけ早く病院を受診する必要があります。

腸穿孔(ちょうせんこう)

クローン病は腸に潰瘍を起こす病気です。クローン病の状態が非常に悪く、潰瘍が深くなると腸に穴が開くことがあります。この腸に穴が開いてしまった状態を専門的には腸穿孔(ちょうせんこう)と呼びます。腸穿孔を起こすと、腸の内容物がお腹の中にまき散らされることとなり、危険な状態になります。また、非常に強い腹痛も伴います。

腸穿孔を起こした場合、緊急手術が行われます。

腸閉塞(ちょうへいそく)

クローン病は腸の炎症により壁が分厚くなり、食べ物や便の通り道が狭くなることがあります。この狭い部分に食べ物や便がつまることで、腸の内容物が先に進まなくなることがあります。この状態を腸閉塞(ちょうへいそく)と呼びます。

腸閉塞は腸の内容物やガスが先に進んでいかないため、腸の中の圧力が極めて高くなります。最悪の場合、腸に穴があくこともあり、非常に危険な状態です。強いお腹の張りがあり、嘔吐を繰り返す、排ガス・排便がない場合は特に腸閉塞を疑う状況です。

腸閉塞の治療は、鼻から胃へ管を挿入して腸の中の圧力をできるだけ早く下げることを行います。状況によっては手術の検討が必要な病気です。

中毒性巨大結腸症(ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう)

クローン病の状態が悪くなると、大腸(医学用語では結腸と呼ぶ部分)が全く動かなくなり、大腸内のガスを肛門から出すことができなくなることがあります。その結果、大腸に大量のガスがたまり、ふくらんだ状態が中毒性巨大結腸症です。非常に強いお腹の張りや強い腹痛がある場合に疑います。中毒性巨大結腸症は、大量のガス貯留の結果、大腸が破裂することがあり非常に危険な状態です。中毒性巨大結腸症では緊急手術が勧められることが多いです。