ぜんしんせいえりてまとーです(えすえるいー)
全身性エリテマトーデス(SLE)
本来なら身体を守ってくれる免疫のシステムが自分自身を攻撃してしまい、全身に様々な症状を起こす病気
13人の医師がチェック 142回の改訂 最終更新: 2024.10.23

全身性エリテマトーデスの治療は何がある?

全身性エリテマトーデスは免疫の異常により起こる病気です。そのため、全身性エリテマトーデスの治療においては免疫をコントロールする治療を行います。

全身性エリテマトーデス(SLE)は現在の医療でも完治することが難しい病気です。しかしながら、近年新しい薬もいくつか開発されており、薬を継続すればかなり多くの方で症状がない状態を維持することができるようになりました。この状態を寛解(かんかい)と呼びます。寛解に至れば、全身性エリテマトーデスを患っていない方々と同じように生活を送ることができます。

ステロイド炎症を抑える作用のある薬です。さまざまな病気に対して効果があり、目的に応じて外用薬(塗り薬など)としても使われますが、全身性エリテマトーデスの治療としては飲み薬や点滴薬をよく使います。ステロイド剤の代表的な製剤としてはプレドニゾロンがあります。ほかにもメチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®)、ベタメタゾン(商品名:リンデロン®)などのステロイド剤も使われます。ここでは全身性エリテマトーデスでのステロイドの使用方法と副作用につき見ていきたいと思います。

全身性エリテマトーデスでは病気の重症度に応じてステロイドの投与量が調整されます。プレドニゾロンを使用する場合、重い病態である場合にはプレドニゾロンとして1日30-60mgを投与されます。そのあと、病気の勢いが抑えられた後には徐々にステロイドの減量を進めていき、1日5mg程度を目標に減らしていくのが一般的です。ただし、5mgで病気の勢いが抑えられない場合にはより多い量を飲むこともありますし、逆に5mgで安定している場合には更に減量していきます。あとで詳しく述べますが、全身性エリテマトーデスはしばしば再燃といって、安定している状態から再び悪化することがあります。その際には、ステロイドを再度増量することで対応されます。

全身性エリテマトーデスではしばしば点滴のタイプのステロイド薬を使います。点滴を使うケースとしては大きく2つの場合が考えられます。

1つ目は、全身性エリテマトーデスの治療中にステロイドの内服ができなくなってしまった時の補充です。ステロイドはもともと体内の副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンを元にして作られたものです。コルチゾールは糖の代謝、タンパク質の代謝、脂質代謝など生命維持にとって非常に重要な役割を果たしています。ステロイドをある程度の期間継続している状態では投与されるステロイドの薬剤に体が頼ることで、通常であれば副腎で作られるはずのコルチゾールの産生が抑えられます。その状態で突然、自己判断でステロイドの薬剤を中止してしまうと体内で必要とされるホルモンまで不足し、最悪の場合ホルモン欠乏により命に関わる場合もあります。そのため、体調が悪く薬が飲めなくなってしまった場合には、点滴によりステロイドを継続しなければなりません。

2つ目は、飲み薬によるステロイド治療でも全身性エリテマトーデスが良くならない重い病態である時や病気の進行が早く一刻を争う時です。この場合、ステロイドパルス療法といって大量のステロイドを点滴で投与します。ステロイドパルス療法には、内服療法で用いられるプレドニゾロンではなくメチルプレドニゾロン(商品名:メドロール®)を使うことが多く、たとえばメチルプレドニゾロンを1日500-1000mg点滴静注、3日間といった形で使用されます。ステロイドには血圧上昇の副作用がありますが、メチルプレドニゾロンは血圧上昇が出にくい製剤であるため、ステロイドパルス療法など大量のステロイドが投与される場合にはメチルプレドニゾロンが選択されます。

全身性エリテマトーデスにおいてステロイドは高い有効性をあらわす一方で、その副作用には注意が必要です。ステロイドの副作用としては、次のものがあります。

  • 感染症にかかりやすくなる
  • 血糖が上昇する
  • 血圧が上昇する
  • 体重が増加する
  • コレステロールが上昇する
  • 眠れなくなる
  • 気分の落ち込むまたは高ぶる
  • 骨がもろくなる

また、ステロイドを大量に点滴静注するステロイドパルス療法では、副作用が強く出ることがあります。例えば、ステロイドパルス療法では骨がもろくなる副作用が強く出る結果、大腿骨頭壊死という股関節の骨が壊れてしまう副作用がまれに報告されています。

ステロイドを使用する場合には、種々の副作用を防ぐために、予防的に薬を飲むことがあります。例えば、感染症にかかりやすくなることへの対策としては ST合剤 (エスティーごうざい)などの抗生物質を、骨がもろくなる対策として ビタミンD製剤 ビスホスホネート製剤 などの骨粗鬆症(こつそしょうしょう)治療薬を予防的に使うことがあります。その他、顔などのむくみや体重増加があらわれたり、血圧や血糖値が上がったりした場合など体の状態になんらかの変化が生じた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡するなど適切に対処することが必要です。

副作用が心配だと思うあまり、自己判断でステロイドを中止したり減量(あるいは増量)したりするのは避けたいことです。ステロイドはもともと体内の副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンを元にして作られたものです。コルチゾールは生命維持にとって非常に重要な役割を果たしています。ステロイドをある程度の期間継続している状態では投与されるステロイドの薬剤に体が頼ることで、通常であれば副腎で作られるはずのコルチゾールの産生が抑えられます。その状態で突然、自己判断でステロイドの薬剤を中止してしまうと、体内で必要とするホルモンまで不足し、最悪の場合ホルモン欠乏により命に関わる場合もあります。

事前に医師や薬剤師などからステロイド使用時の注意事項や服用量・服用期間などをしっかりと聞いておき、仮になんらかの体調変化があった場合でも自己判断せずにまずは医師や薬剤師などに連絡・相談することが大切です。ステロイド(内服薬)の副作用に関してはコラム「ステロイド内服薬の副作用とは」でも紹介しています。

免疫抑制薬は全身性エリテマトーデスで異常になっている免疫をコントロールする薬です。免疫抑制薬は飲み始めて効果が出るまで少し時間がかかるため、最初はステロイドとともに使用し、免疫抑制薬の効果が出てきたところでステロイドの減量を進めていくことが多いです。ここでは全身性エリテマトーデスで用いられる免疫抑制薬に関して説明します。

シクロホスファミドはアルキル化剤という薬剤に分類されます。全身性エリテマトーデスの治療では免疫抑制薬として使われます。シクロホスファミドは生体内で代謝・活性化された後、細胞増殖に必要なDNAの合成を阻害する作用をあらわします。

全身性エリテマトーデスを引き起こすのは主に抗核抗体をはじめとした多彩な自己抗体とされていますが、その抗体産生にはT細胞やB細胞といったリンパ球の異常などが深く関わります。シクロホスファミドはDNA合成を阻害することでリンパ球の活性を抑え、全身性エリテマトーデスで治療効果を発揮します。

内服薬と注射剤があり病態や用途などに応じて選択が可能です。内服薬の場合は50-100mgを連日内服、注射剤の場合には500-1000mg(病状に応じてより多い量を使用することもあります)を2-4週間に1回点滴投与で行います。シクロホスファミドの副作用の一つとして発がん性がありますが、これは使用すればするほど多くなることが知られています。そのため、この薬剤は全身性エリテマトーデスの病気の勢いがある時に一時的に使用されます。具体的には、腎臓に障害がある場合や神経精神症状を呈する場合などで用います。

免疫を抑える薬であるため、易感染性(いかんせんせい:細菌ウイルスなどに感染しやすくなること)には注意が必要です。使用している用量や体質などによっても感染の危険性は異なりますが、日頃から手洗い・うがいを行うなど日常生活における注意も大切です。その他、副作用としてアナフィラキシー骨髄抑制、間質性肺炎、心筋障害、イレウス、吐き気や口内炎などの消化器症状、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群肝機能障害などがあります。

腎臓から排泄されたシクロホスファミドが膀胱を傷つけ血尿の原因となることがあります。これを出血性膀胱炎と呼びますが、出血性膀胱炎は血の塊が尿道や尿管などの尿の通り道を閉塞されるリスクがあり、腎臓や膀胱の機能に悪影響を及ぼします。そのため、シクロホスファミドを点滴で使用する時は水を多めに飲む、ウロミテキサンと呼ばれる予防薬を使用するといった対応が取られます。

またシクロホスファミドを大量に使用すると卵子や精子に影響を与えることが分かっており、不妊の原因となることがあります。治療中に妊娠した場合、胎児に影響があらわれる可能性があります。過去に催奇形性を疑う症例の報告があり、動物実験では催奇形性作用などが報告されています。そのため、妊娠中または妊娠している可能性のある女性への投与は避けることが望ましいとされ、適切な避妊の実施などを含めて事前にお医者さんからしっかりと説明を聞いておくことが大切です。

ミコフェノール酸モフェチルはプリン代謝拮抗薬に分類されます。全身性エリテマトーデスを引き起こすのは主に抗核抗体をはじめとした多様な自己抗体とされていますが、その抗体産生にはT細胞やB細胞といった免疫に関わる細胞の異常などが深く関わります。ミコフェノール酸モフェチルはDNA合成を阻害することでリンパ球の活性を抑え、全身性エリテマトーデスで治療効果を発揮します。

ミコフェノール酸モフェチルは連日内服する薬剤です。用量としては1日500-3000mg内服します。最初は1日500mg内服から開始し、副作用の出現に注意しながら週単位で増量します。この薬剤はシクロホスファミドと並び、重度の腎障害を有する全身性エリテマトーデスにも有効性が認められています。また、シクロホスファミドと異なり、不妊の副作用がないため、妊娠可能年齢の患者にも使用しやすい薬剤といえます。一方で、日本では2015年に発売された薬剤であり、シクロホスファミドと異なり長期的な有効性に関しては分かっていません。

免疫を抑える薬であるため、易感染性(いかんせんせい:細菌やウイルスなどに感染しやすくなること)には注意が必要です。使用している用量や体質などによっても感染の危険性は異なりますが、日頃から手洗い・うがいを行うなど日常生活における注意も大切です。その他、吐き気や下痢などの消化器症状、骨髄抑制、肝機能障害、腎障害などがあります。中でも消化器症状は頻度の多い副作用であり、消化器症状により継続が困難になることも多いです。ミコフェノール酸モフェチルは催奇形性があるため、妊娠の3ヶ月前から服薬を中止する必要があります。

アザチオプリンはプリン代謝拮抗薬に分類されます。全身性エリテマトーデスを引き起こすのは、主に抗核抗体をはじめとした多様な自己抗体とされていますが、その抗体産生にはT細胞やB細胞といったリンパ球が深く関わります。アザチオプリンはDNA合成を阻害することでリンパ球の活性を抑え、全身性エリテマトーデスで治療効果を発揮します。

アザチオプリンは連日内服する薬剤です。用量としては1日50-100mg内服します。最初は1日50mg内服(高齢者では25mg内服から開始することもあります)から開始し、副作用の出現に注意しながら週単位で増量します。この薬剤は蓄積毒性が少ないため、寛解維持療法として用いられることが多く、シクロホスファミドなどで寛解導入療法を施行された患者で用いられることが多いです。

免疫を抑える薬であるため、易感染性(いかんせんせい:細菌やウイルスなどに感染しやすくなること)には注意が必要です。使用している薬の用量や体質などによっても感染の危険性は異なりますが、日頃から手洗い・うがいを行うなど日常生活における注意が大切です。その他、骨髄抑制、肝機能障害、腎障害などがあります。

タクロリムスはカルシニューリン阻害薬に分類される免疫抑制薬です。元々は腎臓などの臓器や骨髄の移植による拒絶反応を抑える目的で使われてきました。タクロリムスは、体内の免疫反応の中心的な役割を果たしているT細胞と呼ばれるリンパ球の活性化を阻害することにより、免疫抑制効果を発揮します。

タクロリムスは連日内服する薬剤です。用量は通常、1日3mgもしくはさらに少ない用量といったように、一般的に移植による拒絶反応を抑える目的で使われる用量よりも少ない量で使われます。またタクロリムスは同じ量を飲んでいても患者ごとに血中濃度のばらつきが大きいため、血中濃度のモニタリングを行いながら用量調整することが推奨されています。

免疫を抑える薬であるため、易感染性(いかんせんせい:細菌やウイルスなどに感染しやすくなること)には注意が必要です。使用している薬の用量や体質などによっても感染の危険性は異なりますが、日頃から手洗い・うがいを行うなど日常生活における注意も大切です。

その他、腎障害、血圧上昇などの循環器症状、ふるえやしびれ、不眠などの精神神経系症状、高血糖(耐糖能異常)、肝機能障害などに注意が必要です。

タクロリムスによる治療中にグループフルーツを摂取した場合、体内でのタクロリムスの代謝が阻害され血液中の濃度が上昇する可能性があります。場合によっては腎障害などの副作用が現れることも考えられるため注意が必要です。

同じ柑橘類でもみかん(温州みかん)では相互作用の問題がないとされていますが、八朔(ハッサク)などの柑橘類ではグレープフルーツほどではないにせよ相互作用が現れる可能性も考えられます。日頃から柑橘類をよく食べる習慣がある場合は、事前に医師や薬剤師に食べても問題がないかなどを確認しておくことも大切です。

他にもセイヨウオトギリソウ(セントジョンズワート)というハーブを含む食品であったり、一部の抗菌薬(抗生物質)や抗ウイルス薬などの薬剤との相互作用が現れることが考えられるため注意が必要です。

メトトレキサートは葉酸代謝拮抗薬(ようさんたいしゃきっこうやく)と呼ばれる種類の薬剤です。メトトレキサートの作用の仕組みを考えるうえで重要となる物質が葉酸(ようさん)です。ビタミンの一種である葉酸は体内で代謝され活性化された後、細胞増殖などに必要なDNAの合成に関わります。メトトレキサートによって葉酸の活性化が抑えられることで、全身性エリテマトーデスの原因となる異常なリンパ球の増殖を抑えます。この薬は関節リウマチで非常に高い効果を示す薬剤ですが、全身性エリテマトーデスでも関節の症状がある場合に用いられることが多いです。

メトトレキサートを服用する場合には通常、週1回または週2回の服薬日を決め、週の他の曜日は休薬とします。一般的に服用量が週6mgを超える場合では葉酸製剤(一般的にはフォリアミン®)を服用します。葉酸製剤を服用するのは、メトトレキサートを最後に服用した翌日または翌々日です。

仮にメトトレキサートを土曜日と日曜日に服用する場合、葉酸製剤を服用するのは通常、月曜日または火曜日となります。これらの服用日や服用時点に関しては個々の状態などによっても変わってきますので、主治医などからメトトレキサートの服用方法、必要があれば葉酸製剤の服用方法などをしっかりと聞いておくことが非常に大切です。

また体調の変化があった場合、たとえば咳が続く、発熱が続くといった場合では間質性肺炎などの副作用を考慮し、メトトレキサートの一時的な休薬が指示される場合もあります。

自己判断での休薬は病態の進行など、かえって症状を悪化させる可能性もあります。体調の変化がある場合、特に咳や発熱などがなかなか治まらない場合はお医者さんに相談してみてください。

免疫を抑える薬であるため、易感染性(いかんせんせい:細菌やウイルスなどに感染しやすくなること)には注意が必要です。使用している用量や体質などによっても感染の危険性は異なりますが、日頃から手洗い・うがいを行うなど日常生活における注意も大切です。その他、副作用として口内炎、吐き気や食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制、間質性肺炎、肝機能障害、腎障害などがあります。またまれですが、悪性リンパ腫の原因になるという報告もあります。これらの多くは葉酸の働きが阻害された影響により生じるもので、葉酸を適切に補給することによって予防したり症状を軽減することができます。この薬剤には催奇形性があるため、妊娠の3ヶ月前から服薬を中止する必要があります。

メトトレキサートの作用の仕組みにおいてビタミンの葉酸がポイントとなります。葉酸は野菜などの食品にも含まれる物質です。しかし、通常の食事の範囲なら治療に影響する心配はないでしょう。主治医から特別な指示がない場合には、日常生活での食事の内容に制限は必要ないと考えられます。ただし、サプリメントなどの健康食品には比較的多くの量の葉酸を含むものがあり、メトトレキサートの効果を弱めてしまう可能性も考えられるため注意が必要です。サプリメントなどの健康食品を摂取してもいいかどうかは、お医者さんと相談してみてください。

ヒドロキシクロロキンはもともと抗マラリア薬として開発された薬剤です。ヒドロキシクロロキンが開発される前には、クロロキンという抗マラリア薬がありましたが、重い副作用として網膜症が問題となりました。そのため、網膜症の副作用を軽減するため開発されたのが、クロロキンの代謝産物であるヒドロキシクロロキンです。ヒドロキシクロロキンは日本では2015年に発売された新しい薬剤になりますが、海外では以前から全身性エリテマトーデスの再燃を予防する効果や皮疹、関節症状の有効性が示されており、広く使われている薬剤です。

ヒドロキシクロロキンは連日内服する薬剤です。用量としては1日200-400mg内服します。性別、身長に応じて次のとおり用量調整することとなっています。

  • 男性

    • 134cm以上151cm未満:1日200mg内服

    • 151cm以上169cm未満:1日200mg内服と1日400mg内服を1日おき

    • 169cm以上:1日400mg内服

  • 女性

    • 136cm以上154cm未満:1日200mg内服

    • 154cm以上173cm未満:1日200mg内服と1日400mg内服を1日おき

    • 173cm以上:1日400mg内服

となります。

副作用として網膜症、吐き気や食欲不振などの消化器症状、骨髄抑制、皮疹、肝機能障害などがあります。この中で特に注意が必要な副作用は網膜症です。米国眼科学会の報告では5-7年内服を続けた方で発症頻度が1%を超えていたとされています。そのため、「ヒドロキシクロロキンの適正使用のための手引き」では投与開始前並びに内服開始後は年に1度の眼科検査が推奨されています。

ミゾリビンは、DNAやRNAといった核酸の合成(プリン合成系)を阻害する免疫抑制薬です。元々は腎移植後の拒絶反応を抑える薬として承認されました。全身性エリテマトーデスの治療薬としても承認されています。ミゾリビンの作用の仕組みはDNAの合成を抑制しリンパ球の活性を抑えることで免疫抑制作用を発揮します。

免疫を抑える薬であるため、易感染性(いかんせんせい:細菌やウイルスなどに感染しやすくなること)には注意が必要です。使用している用量や体質などによっても感染の危険性は異なりますが、日頃から手洗い・うがいを行うなど日常生活における注意も大切です。ミゾリビンは比較的副作用が少ない薬剤ですが、骨髄抑制、肝機能障害、食欲不振などの消化器症状、発疹などの皮膚症状などには注意が必要です。

ベリムマブ(商品名:ベンリスタ®)

ベリムマブは2017年9月に日本で承認された全身性エリテマトーデスに対する点滴または皮下注射の薬です。

全身性エリテマトーデスではB細胞(Bリンパ球)の異常が病態に関与していると考えられていますが、ベリムマブはB細胞を活性化させる物質である可溶型Bリンパ球刺激因子を阻害し、B細胞の異常な活性化を抑えることで効果を発揮します。ベリムマブは可溶型Bリンパ球刺激因子に対する抗体であり、くっつくことで可溶型Bリンパ球刺激因子がうまく働かなくなるようにします。

これまで関節リウマチなどでは、原因となる物質を阻害する抗体製剤(生物学的製剤)が高い効果を発揮し、幅広く用いられてきました。全身性エリテマトーデスでは原因となる物質を阻害する抗体製剤で効果が認められた薬剤はベリムマブが初めてであり、その効果が期待されています。

ベリムマブの副作用は?

ベリムマブの副作用として気をつけるべきものの一つは感染症です。咳、息苦しさ、発熱など最初は軽度な症状に感じても急に悪化することも考えられます。これらの症状がある場合はたとえ軽度であったとしても、できるだけ早く医師や薬剤師に連絡し、受診や検査の必要の有無を相談することが重要です。

その他、アレルギー反応やそれに関連した注射部位反応などにも注意が必要です。場合によってはアナフィラキシーといった深刻な状態が引き起こされる可能性も考えられます。アレルギー症状は個々の体質や薬剤ごとの特徴などによって異なります。ベリムマブを使用中に体調の変化が現れた場合には担当の医師と相談するようにしてください。

免疫抑制薬服用中の注意点として予防接種があります。注意したいのはBCGや麻疹などの生ワクチンです。生ワクチンはウイルスや細菌の毒性や感染力を弱めて造られたものです。免疫抑制薬内服中は生ワクチンによる予防接種が原因で感染する可能性があり、原則として生ワクチンを控えます。一方で、不活化ワクチンが使われるインフルエンザなどの予防接種は積極的に勧められます(ただし、体調によっては接種を見送る場合もあるので、打つ前には担当のお医者さんに確認をとっておくことをお勧めします)。以上、免疫抑制薬服用中の予防接種についてまとめると以下のようになります。

ワクチンの種類 打って良いか

BCG

麻疹

風疹

水痘

ムンプスウイルス

ロタウイルス

(生ワクチン)

打つべきではない

インフルエンザ

肺炎球菌

(不活化ワクチン)

打った方が良い

寛解とは薬を継続することで症状がない状態を維持することを言います。

現在の医療でも全身性エリテマトーデスは完治することが難しい病気です。しかしながら、近年新しい薬がいくつか開発されており、全身性エリテマトーデスでは寛解を目指すことができます。寛解に至れば、全身性エリテマトーデスを患っていない方々とほとんど同じような生活を送ることができます。

全身性エリテマトーデスの治療は寛解の達成を目標とした寛解導入療法と、一度寛解になった人で寛解の状態を維持することを目的とした寛解維持療法に大きく分けられます。寛解導入療法は強い治療を必要とする分、副作用が多く出るリスクがある一方、寛解維持療法では副作用がなるべく出ないよう最低限の治療を行うことを目標とします。

再燃とは一度寛解に至った病気の状態が再び悪くなることを言います。全身性エリテマトーデスでも再燃を起こすことがしばしばあります。再燃した場合は、再度寛解を達成することを目標として寛解導入療法が必要になることが多いです。

近年、どこの病院でも一定水準以上の医療を受けられるようにするため、さまざまな病気に対して治療の指針が作成される時代となっています。この治療の指針をガイドラインと呼びます。最新の全身性エリテマトーデスのガイドラインとしては2019年にヨーロッパリウマチ学会(European League Against Rheumatism: EULAR)から発表されています。

2019年発表のガイドラインについてくわしくは、コラム「全身性エリテマトーデスの治療法の新たな推奨」で説明しています。

また、臓器障害が問題になる腎臓や神経、また妊娠中の管理については、個別のガイドラインも作成されています。

腎臓は全身性エリテマトーデスにおいて生存率を左右する重要臓器でもあります。そのためヨーロッパリウマチ学会、アメリカリウマチ学会、国際腎臓病予後改善委員会が治療のガイドラインを作成しています。

全身性エリテマトーデスにおいて神経の障害も重要な問題の一つです。ヨーロッパリウマチ学会が治療のガイドラインを作成しています。

全身性エリテマトーデスは若い女性に多い病気であることから、妊娠や出産に関してのガイドラインも作成されています。

患者さんの身体や病気の状態を加味して、適切な治療を選ぶために治療ガイドラインは、作成されています。ガイドラインは医師が治療を組み立てる上で役に立ちますが、ガイドライン通りに治療することが必ずしも正しいとは限りません。実際に、患者さんの身体や病気は千差万別であり、ガイドラインでは網羅されていない場合も多々あるからです。またガイドラインは数年に1回更新されますが、ガイドラインに反映される前に新しい治療が確立されることも珍しくはありません。このようにして、ガイドラインを元にしてさまざまな判断軸を加味しながら医師は治療を行っています。