全身性エリテマトーデスの治療法の新たな推奨 | MEDLEYニュース
2019.04.16 | コラム

全身性エリテマトーデスの治療法の新たな推奨

EULARから発表された新しい推奨を紹介しています(少し難しい内容になるため主に医療者向けです)
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全身性エリテマトーデスは免疫の異常により自分の身体が攻撃され、発熱などの全身症状や、皮膚、肺、心臓、腎臓、脳・神経など身体の様々な部位に障害が起きる病気です。国の指定難病にも認定されている病気で、日本の患者数は6-10万人程度であると推定されています[1]。
全身性エリテマトーデスの治療では、これまでヨーロッパリウマチ学会(EULAR)から2008年に出された推奨が広く使われてきました。(その後、神経、腎臓に絞った推奨についてはそれぞれ2010年、2012年に更新。)今回、2019年3月29日に治療の新たな推奨が専門誌『Annals of the Rheumatic Diseases』で報告されたので紹介します。

◆ 新しい治療の推奨の内容とは?

今回の推奨は「上位の原則」と「推奨文」から構成されています。上位の原則では全身性エリテマトーデスの診断・治療を行ううえで軸となる考え方が紹介されています。推奨文は具体的な「治療目標」、「治療薬ごとの推奨」、「病変ごとの推奨」、「合併症」に分けて説明されています。ここでは「治療薬ごとの推奨」、「病変ごとの推奨」について簡単に紹介します。

 

治療薬ごとの推奨

治療薬ごとの推奨ではヒドロキシクロロキン、ステロイド薬免疫抑制薬に加えて、2017年に日本でも承認された生物学的製剤であるベリムマブについても記載されています。それぞれの薬ごとの推奨は以下の通りです。(カッコ内の記号は、エビデンスレベル/推奨度を示しています。)

 

  • ヒドロキシクロロキン
    • 使用できない理由がなければ、全ての患者で推奨される(1b/A)。
    • 使用量は5mg/kg(理想体重)を越えないようにする(3b/C)。
    • 網膜毒性があるため、使用にあたっては定期的な眼科スクリーニングを行う。リスクがない場合でも使用前、使用5年後、以後1年ごとに眼科スクリーニングを行う(2b/B)。
    • 網膜症の主要リスクとしては使用期間が長い(5年ごとにオッズ比4.71)、使用量が多い(1日量が100mg増えるごとにオッズ比3.34)、慢性腎臓病(オッズ比8.56)がある。

 

  • ステロイド薬
    • 用量や投与方法は障害を受けている臓器の種類やその重症度によって決める(2b/C)。
    • メチルプレドニゾロンパルス療法(250-1000mg/日、1-3日間)は即効性があり、その後の経口ステロイド薬の開始用量を少なくすることができる(3b/C)。
    • 維持療法(安定期治療)ではプレドニゾロン換算で7.5mg/日より少ない量を目指す(1b/B)。可能であれば中止する。
    • 免疫抑制薬・調節薬の早期併用はステロイド薬の減量・中止を促進する(2b/B)。

 

 

  • 生物学的製剤
    • ヒドロキシクロロキン、ステロイド薬、免疫抑制薬などの標準的療法で効果不十分、ステロイドの減量が困難、再発を繰り返すといった場合には、ベリムマブの使用を考慮すべきである(1a/A)。
    • 難治例や標準的な免疫抑制薬に耐用能がない、禁忌があり使用できないといった場合にはリツキシマブも使用できる(2b/C)。

 

病変ごとの治療の推奨

全身性エリテマトーデスの症状は個人差も大きいため、症状にあわせて治療法を選択することが重要です。これまでの推奨で治療法が記載されていた精神神経病変、腎病変に加えて、今回の推奨では皮膚病変や血液病変に対する治療法についても説明されています。それぞれの病変ごとの推奨は以下の通りです。

 

  • 皮膚病変
    • 皮膚病変の第一選択薬は外用薬(2b/B)、抗マラリア薬(1a/A)、ステロイド薬の全身投与(4/C)である。
    • 治療に効果がない場合や高用量のステロイド薬を必要とする場合には、メトトレキサート(3a/B)、レチノイド(4/C)、ジアフェニルスルホン(4/C)、ミコフェノール酸モフェチル(4/C)を追加できる。

 

  • 精神神経病変
    • 精神神経病変は画像検査、髄液検査リスク因子発症時期との関連、年齢、他臓器の疾患活動性、抗リン脂質抗体)などを考慮することが診断の助けになる(2b/C)。
    • 精神神経病変に対する治療は炎症病態に対するステロイド薬・免疫抑制薬(1b/A)と、血栓・抗リン脂質抗体症候群に関連した病態に対する抗血小板薬抗凝固薬(2b/C)がある。

 

  • 血液病変(血液障害)
    • 急性の血小板減少症に対しては高用量のステロイド薬(メチルプレドニゾロンパルス療法を含む)(4/C)や免疫グロブリン大量静注療法(4/C)がある。
    • 維持療法(安定期治療)にはミコフェノール酸モフェチル(2b/C)、アザチオプリン(2b/C)、シクロスポリン(4/C)が使用できる。
    • 難治例ではリツキシマブ(3a/C)やシクロホスファミド(4/C)も使用できる。

 

  • 腎病変
    • 腎障害の兆候を早期に発見し、腎生検を実施することが重要である(2b/B)。
    • ミコフェノール酸モフェチル(1a/A)や低用量のシクロホスファミド(2a/B)が寛解導入療法(初期治療)として推奨される。
    • 腎不全のリスクが高い場合(GFR低下や線維性半月、フィブリノイド壊死尿細管萎縮、間質の線維化などの病理所見がある)には、高用量のシクロホスファミドも使用可能である(1b/A)。
    • 維持療法(安定期治療)にはミコフェノール酸モフェチル(1a/A)、アザチオプリン(1a/A)を使用すべきである。
    • 不完全寛解(免疫抑制療法開始から1年以上経ち、0.8-1g/日の蛋白尿が持続している)の場合では、再度の腎生検により急性病変と慢性病変を区別することができる(4/C)。
    • 重症なネフローゼ症候群(2b/C)や不完全寛解(4/C)の患者では血圧コントロール不良、慢性病変が多い、腎機能低下といったことがなければ、ミコフェノール酸モフェチルに低用量のカルシニューリン阻害薬を併用しても良いかもしれない。

 

◆ まとめ

ここまで全身性エリテマトーデスの治療の新しい推奨について簡単に紹介してきました。今回の推奨では、ここ数年で日本でも承認されたヒドロキシクロロキンやベリムマブの位置づけについても記載されています。実際にはここであげた推奨をもとに、患者さんの年齢、持病・挙児希望(出産を望むこと)の有無、社会背景なども踏まえ治療方針を決定していきます。

医療者の皆さんには、今回の推奨を実際の日常診療に役立てて頂ければと思いますし、患者さんには、日々の医療の進歩により治療法が変わることを知って頂き、お医者さんと治療方針を相談する時に役立ててもらえたら幸いです。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。