とっぱつせいほっしん(しょうにばらしん)
突発性発疹(小児バラ疹)
発熱と発疹を伴う感染症。多くの小児が一度は経験する
13人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2024.06.04

突発性発疹でよくある疑問:お風呂、登園、予防など

突発性発疹は小さい子どもがいる家庭には身近な病気です。基本的には自然に治る病気ですが、自宅でのケアをするうえでさまざまな疑問が生じるかも知れません。ここではよくある疑問に答えるとともに、万が一の悪化への備え、特に注意するべき人についても説明します。

1. 突発性発疹になったらお風呂はダメ?

お風呂に入っても構いませんが、ほかの子どもにうつさないことと、脱水に気を付けてください。

突発性発疹は1歳未満の乳児を含めて5歳以下の子どもにはうつりやすい病気です。家族に5歳以下の兄弟姉妹がいれば、うつらないよう必要以上の接触は避け、お風呂も可能であれば分けたほうが良いと言えます。

また、突発性発疹は高熱や食欲低下により脱水になりやすい状態です。お風呂に入っても大丈夫ですが、長く浸かって汗をかくのは避けてください。シャワーだけにしておくのが無難でしょう。

2. 突発性発疹が治ったらいつから保育園に行ける?

突発性発疹はほかの子どもにうつる病気なので、保育園・保育所・幼稚園は休んでください。外出もできるだけ控えてください。

いつまで自宅で安静にしているべきかの目安として、厚生労働省では「熱が下がって1日以上経ってから身体の状態が良ければ登園して良い」としています。

元気に動き回っていれば身体の状態は良いと考えられます。寝ていて機嫌が悪いときはもう1日待ってください。不機嫌は身体の調子が悪いサインです。

3. 突発性発疹がうつらないように何に気を付けるべき?

突発性発疹が大人にうつることはほとんどありません。突発性発疹にかかった子どもの兄弟や姉妹は、うつる場合があるので、必要以上の接触は避けたほうが良いです。とはいえ、通常の生活であれば、接触があってもこまめに手洗いうがいを行うことで感染を防げる場合がほとんどです。

突発性発疹が大人にうつることはほとんどないので、お母さんにうつる心配はありません。ただし、手を介してほかの子どもにうつさないように、突発性発疹になった子の唾や便などにはできる限り触れないでください。触れてしまったらせっけんでよく手を洗ってください。

大人は突発性発疹にならない?

日本では子どものうちにほぼ全員が突発性発疹にかかります。その結果、ほとんどの人の身体の中に突発性発疹に対する抗体ができるので、大人になってから突発性発疹にかかることはまずありません。

このため、大人が突発性発疹をうつされる心配は無用です。

例外は免疫の落ちている人(AIDS患者や血液幹細胞移植や臓器移植を受けた人)です。免疫が落ちている人は、大人になってから突発性発疹を発症し、しかも重症になることも考えられますので注意してください。

4. 突発性発疹にかかったときの食事は?

突発性発疹にかかったときの食べ物に特に制限はありません。食べやすいものを食べるのが基本です。

ただし、水分の補給は非常に重要です。高熱を出すと身体から多くの水分が蒸発していきますし、食欲が落ちてしまうことも多いからです。

水分は、吸収の良いもの(経口補液と呼ばれるもの)が市販されていたりしますので、そういったものも活用して脱水にならないように気をつけてください。

5. 突発性発疹が悪化するとどうなる?

病院で突発性発疹と言われたら、発疹のほかに新しい症状が出てこないかに気を付けていてください。

  • 発疹が出たあと、熱がまた38度以上に上がった
  • けいれんが15分以上続いている
  • ひどい頭痛や意識がぼんやりした状態が1日以上続いている
  • 2歳未満の子で、おでこにある大泉門(だいせんもん)が膨らんできた
  • 薬を飲んだら息苦しくなった

以上は特に気を付けたい症状です。ひとつでも当てはまったら、もう一度お医者さんに相談に行ってください。

6. 抗体って何? どうやってできるの?

突発性発疹のウイルスに一度感染すると、抗体ができて、同じウイルスに再び感染することはなくなります。

では抗体とは何でしょうか。

我々の身体に細菌やウイルスなどの病原体が侵入すると、免疫のシステムが病原体を排除しようと白血球を増やしたり、抗体という物質を作ったりします。

同じ病原体から2回目の攻撃を受けないために重要になるのが抗体です。ある病原体が体内に侵入して抗体ができると、次に同じ病原体が侵入してきた時に、抗体が的確に病原体をブロックしてくれます。抗体は、侵入者を認識し、敵の形や攻撃の仕方を覚えておくメモリーなのです。この記憶があることで2回目の侵入に対し迅速に対処することができ、感染が起こりにくくなります。

ただ、ここで注意すべきは、一度経験したのと同じ病原体の攻撃は防げるのですが、違う病原体の攻撃は防げないことです。

抗体が感染から身を守る仕組み

1種類の病原体に対して1種類の抗体が作られます。抗体ができるとしばらく身体の中に残って免疫システムに組み込まれますが、抗体がいつまで残っているかは病原体の種類によって違います。例えば、インフルエンザの抗体は1年ほどしか残らないですが、手足口病の抗体や突発性発疹の抗体は一生残ります。インフルエンザはだいたい1年で抗体がなくなるため、毎年ワクチンを打って抗体を高めておく必要があります。

ワクチンは、ある病原体の成分を少量入れたり、毒性を弱くした病原体を体内に入れたりしています。すると、身体の免疫のシステムが抗体を作り、病原体を記憶します。これにより、実際にその病原体が入ってきた時に排除する準備ができます。

言わばワクチンは擬似感染を体内で起こさせて、免疫に病原体の情報を記憶させているのです。

7. 突発性発疹にかかったらしばらくワクチン接種(予防接種)は控えたほうが良いですか?

突発性発疹が治った直後は、ワクチン接種の効果が薄れる恐れがあるため、2週間程度開けてから接種するほうが良いと考えられます。

体内の免疫がしっかりと働いていないと、せっかくワクチンを打っても病原体の情報をうまく記憶できません。感染症にかかった直後は、感染症を治すのに免疫システムの大半が割かれているので、ワクチンを打っても抗体を作る余力があまりないからです。そこでワクチンを効果的にするためには、免疫のシステムが正常化するまでお休みを設けてあげる必要があります。

感染症にかかった後にワクチンをいつ打つべきかは、明確には定められていません。ただ、決まりではないとはいえ、このくらいにしようという目安は存在します。

突発性発疹では、詳細なデータがあるとは言い難いですが、症状が治ってから2週間程度で元の状態に戻ると考えられています。つまり、突発性発疹が治ってから2週間程度間隔をあけてワクチンを打つという考えで良いと思われます。

なお、ひとつのワクチンを打った後に別のワクチンを打つまでの間隔は明確に決められています。こちらは決まりなので、ワクチンを打つときには前にどんなワクチンをいつ打ったかを医師にきちんと伝えましょう。

8. 突発性難聴になりますか?

突発性発疹にかかったからといって突発性難聴にはなりません。

病気の名前が似ていること、また医師は突発性発疹を略して「とっぱつ」と言うことがあることから、何か関連があるように感じるかも知れませんが、全く違う病気です。

突発性難聴は、その名の通りある時に突然耳鳴りや難聴(耳が聞こえにくくなる)が現れるのが特徴です。

症状にはめまいが伴うのが特徴的で、メニエール病という別の病気とも症状が似ているため、診断をつけるには耳鼻科の専門的な診察が必要です。

原因は完全には明らかになっていませんが、ストレスや耳の感染症、耳の血流が影響していると考えられています。

このように、突発性難聴と突発性発疹は名前が似ているだけで、全く違う病気です。発疹が出たからといって難聴になる心配はありません。安心してください。

9. 突発性発疹になりやすい人の特徴は?

突発性発疹は発症する年齢に偏りがあり、2歳くらいまでの小さい子どもが発症しやすいです。5歳までの子どもなら誰でもかかります。

病気で免疫不全があるとかかりやすい

免疫不全があると突発性発疹のリスクになります。ここでいう免疫不全は、特にHIVに感染している人、臓器移植を受けた人、血液幹細胞移植を受けた人が該当します。

突発性発疹の原因であるヒトヘルペスウイルス6やヒトヘルペスウイルス7は、一度感染するとその後も身体に潜んでいることがあるのですが、免疫不全の状態になった人ではもともと潜んでいたウイルスが再び活動し、突発性発疹を起こすことが多いです。

10. 突発性発疹の潜伏期間は?

ウイルスに感染しても、すぐに病気になるわけではありません。ウイルスが身体の中に入ってから、増殖し、身体にダメージを与えるようになるまでには時間がかかります。このため病気の症状が出るまでに時間差があります。感染してから症状が出るまでの期間を潜伏期間と言います。

突発性発疹の潜伏期間は不明

突発性発疹の原因のひとつであるヒトヘルペスウイルス6の潜伏期間は5日間から15日間と言われています。しかし、もう一つの原因ウイルスであるヒトヘルペスウイルス7の潜伏期間は未だにわかっていません。

このため、突発性発疹の症状が出たときに、感染したのがいつなのか正確にはわかりません。

また、潜伏期間にあって症状がない子どもからもほかの子にウイルスがうつる可能性もあります。そのため、症状がある子に接触していなくても、いつのまにか感染していたということはありえます。

11. 突発性発疹の感染経路は?

突発性発疹がどのようにして感染するのかは今のところ明らかになっていません。

突発性発疹にかかった子どもや大人を検査して、唾(つば)や痰(たん)を調べると、突発性発疹の原因であるヒトヘルペスウイルス6またはヒトヘルペスウイルス7が見つかります。このことから、口や気管といった空気の通り道の粘膜を介した感染が予想されます。

しかし、少し離れた場所にいても感染する飛沫核感染(ひまつかくかんせん、空気感染)なのか、唾を直接吸い込むことで感染する飛沫感染(ひまつかんせん)なのかといった区別は正確にはわかっていません。

そのため、感染対策は似た病気にも共通する一般的なものになります。次に説明します。

12. 突発性発疹はどうやって予防する?

突発性発疹にはワクチンがありません。また、突発性発疹に一度かかった子どもでも、二度目にかかることがあります。予防のためには、原因となるヒトヘルペスウイルス6やヒトヘルペスウイルス7をいかに身体に入れないかが重要になります。

マスク、手洗いでウイルスを防ごう

突発性発疹のウイルスを体に入れないためには、医師など医療従事者が感染予防のために行っている「標準予防策」といわれる方法があります。以下に突発性発疹の際のポイントを箇条書きします。

  • 唾液・鼻水・痰・便・血液といった、体から出てくるものに出来るだけ触れないようにする。
  • 止むを得ず触れた場合は、せっけんで手を洗うか、消毒用アルコールを手を擦るようにして揉み込む。
  • 症状がある人やその周囲の人はマスクを着用する。特に咳やくしゃみが出ているときは口と鼻を覆う「咳エチケット」を忘れない。

たとえば、突発性発疹で下痢気味になることがありますが、便の片付けをしたらよく手を洗ってください。

当たり前の内容に見えますが、案外うっかりしてしまうものです。感染が心配なときは是非思い出して気を付けてください。

13. 妊娠しているのに突発性発疹にかかってしまったら?

妊婦を含めて、大人が突発性発疹にかかることは非常にまれです。もし妊娠中に突発性発疹にかかったとしても、お腹の赤ちゃんには影響がないと思われます。

大人が突発性発疹にかかることはほとんどありません。しかし、妊娠すると免疫機能が少し下がりますし、免疫が低下すれば、突発性発疹にかかる可能性はゼロではありません。それに妊娠中は万一のことが気になるものです。

妊婦が突発性発疹にかかったとき、胎児に影響するかが気になるところです。一般にどんな病原体でも、感染したことによってお腹の中の赤ちゃんに影響することが絶対にないとは言い切れません。しかし、突発性発疹に関しては、明らかな影響として知られているものはありません。影響がないかを調べたデータは少ないのですが、ほとんど影響がないと考えて良いと思われます。

参考までに、妊婦が感染すると胎児に良くない影響を与える病気は、TORCH(トーチ)症候群と呼ばれるものが有名です。

TORCH症候群は、病気や病原体の頭文字をとった語呂です。

これらの微生物感染症の総称です。

特にこれらの感染症に関しては、妊婦がかからないように注意を払う必要があります。