とっぱつせいほっしん(しょうにばらしん)
突発性発疹(小児バラ疹)
発熱と発疹を伴う感染症。多くの小児が一度は経験する
13人の医師がチェック 93回の改訂 最終更新: 2023.07.18

突発性発疹はどうやって診断する?

突発性発疹の診断には、特徴的な症状がポイントになります。とはいえ、診断は容易でないこともあります。では、どういったことに注目して診断していくのでしょうか。突発性発疹の診断の仕方とその根拠について説明していきます。

1. 突発性発疹の診断のポイント

こんな状況を思い浮かべてみましょう。

3歳半の男の子、悠真くんが鼻水と38℃の熱を出しました。風邪だと思って寝かせていたら、4日ほどして皮膚に赤い斑点が出てきました。病院に行くとどんなことを聞かれるのでしょうか?

突発性発疹(とっぱつせいほっしん)の診断で大切なのは、症状と症状が出るまでの様子がどうだったかということです。検査はあまり有用でないことが多いので通常は使いません。

突発性発疹を診断するには、以下のことを注意していくことになります。

  • 今までに突発性発疹にかかったことがあるかどうか
  • 周囲に同じような症状の人がいるかどうか
  • 解熱薬を使っているかどうか
  • 過去にどんな予防接種を打っているか
  • 熱は、何度まで上がって、何日間続いていたのか(あるいは何日間続いているのか)
  • 皮膚の症状は、いつから出現して、どんな色で、どの範囲まで広がっているのか

これらを問診で聞き取って、総合的に突発性発疹らしいかどうかを判断します。

  • 今まで突発性発疹にかかったことがない人に、
  • 40℃近くの熱が出て、解熱薬を使わなくても熱が下がり、
  • 熱が下がったあとでお腹や背中、顔を中心とする赤い発疹が出た

この3つを満たすときは、突発性発疹が最も疑わしいと判断します。当てはまらないものがあればほかの病気の可能性が増えると考えます。

周囲に同じ症状の人がいた場合は突発性発疹が流行っている可能性が高まりますし、過去に予防接種を打っている病気にはかかりにくいので、優先的に考えられる病気から外して考えることができます。

突発性発疹で検査をしないのはなぜ?

血液検査や尿検査、痰(たん)の検査はあまり適切ではありません。突発性発疹の原因のウイルスに感染したかどうかを知りたければ、血液中の抗体の量を測ることはできます。感染したことがあれば抗体の量が増えています。

しかし、抗体を調べるために採血をして、検査に出してから結果が出るには長いと1週間から2週間かかってしまいます。突発性発疹ならば、結果が出た頃には治ってしまっているということになります。また、抗体は過去に感染したことがある人では増えていますので、抗体が増えていたとしても今突発性発疹にかかっているのか、以前にかかったことがあるのかを見分ける材料にはなりません。

このため抗体の検査は突発性発疹の診断にはあまり使わないことがほとんどです。

2. 突発性発疹に似た病気はある?

悠真くんは病院で「突発性発疹です。」と言われました。 ほかの病気と間違うことはないのでしょうか?

突発性発疹の症状は、発熱、お腹や背中や顔を中心に全身に出る発疹、不機嫌になるといったものです。時にはけいれんや意識がもうろうとするといった症状もあります。突発性発疹以外にこのような症状を引き起こす病気は、以下が考えられます。

これらの病気の特徴に当てはまるかどうかもあわせて考えることで、突発性発疹なのか、ほかの病気なのかを見分けることも診断のためには必要です。

突発性発疹は、熱が下がってから皮疹が出ることが特徴ですので、ここに注目すると見分けやすくなります。

このリストの中で、熱が下がったあとに皮疹が出るのは一般的に麻疹はしか)だけです。突発性発疹と麻疹は見分けるのが困難なことがあります。以下で説明します。

3. 突発性発疹と麻疹(はしか)の違いは?

突発性発疹と麻疹は、どちらも熱が下がったあとに発疹が出るという点で似ています。しかし突発性発疹はすぐ元気になるのに対して、麻疹だと重症になることも多く、区別は重要です。その区別は難しいことも多いてですが、一つの簡単な目安としては、指や手のひらに皮疹が出た場合は、麻疹の可能性が高いと考えます。

麻疹(ましん、はしか)は、ウイルスの感染が原因で主に2歳以下の子供に発症する、非常に感染力の強い病気です。感染してから症状が出るまでの期間、つまり潜伏期間が8日から12日と長いのが特徴です。

症状は以下の順に出てきます。

麻疹の経過1:カタル期(2日間から4日間)

38℃以上の発熱が出現し、だるさや不機嫌が目立ってきます。上気道症状(くしゃみ、咳、鼻水)や結膜症状(目の充血、目やに)が出現します。症状が出てきてから1日から2日経つと、口の中の粘膜に白い斑点(コプリック斑)が出て来るのが特徴です。

麻疹の経過2:発疹期(3日間から5日間)

カタル期の発熱が一旦下がった後に再度高熱が出てきます。カタル期の発熱よりも2度目の発熱のほうが高いことが多いです。発熱とともに首や顔に大きさ数mm程度の赤い皮疹(ひしん、皮膚の症状)が出現します。皮疹は全身に及び指先まで広がってきます。皮疹は始めはポツポツとした斑点状ですが、しだいにボコボコと盛り上がってきて、隣り合ったものどうしが癒合し(くっつき)、赤黒くなっていった後、色が薄くなっていきます。この時期の上気道症状と結膜症状はカタル期よりも強いことが多いです。

麻疹の経過3:回復期(7日間から10日間)

退色した皮疹は完全には消失しないで、しばらく痕(色素沈着)が残ります。この時期になると身体からウイルスが排泄されなくなります。

以上をまとめると、麻疹の経過は図のようになります。

麻疹の経過の図

突発性発疹では発疹が出てから熱が再度上昇することは珍しいです。上の経過表を踏まえると、熱が下がってから皮疹が出現し、熱が再度上昇してきた場合は麻疹の可能性が高いです。また、麻疹では再上昇した熱は、一回目の熱よりも高い場合が多いことも参考になります。