まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したもの。一般的には蓄膿症と呼ばれることも多い
11人の医師がチェック 88回の改訂 最終更新: 2026.04.07

好酸球性副鼻腔炎とは?

指定難病である好酸球性副鼻腔炎は、両側の鼻の中に多発性の鼻茸(はなたけ)ができやすく、手術を行っても再発しやすい、治療が長くなりやすいタイプの副鼻腔炎です。一般的な慢性副鼻腔炎とは病気の性質が異なるため、症状や治療の考え方も変わります。ここでは、どの点が違うのかを症状や治療を中心に整理します。

指定難病である好酸球性副鼻腔炎は、両側の鼻の中に多発性の鼻茸(はなたけ)ができやすく、手術を行っても再発しやすい、治療が長くなりやすいタイプの副鼻腔炎です。一般的な慢性副鼻腔炎とは病気の性質が異なるため、症状や治療の考え方も変わります。ここでは、どの点が違うのかを症状や治療を中心に整理します。

好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)では、次のような症状がみられます。

  • 粘っこい鼻水
  • 鼻づまり
  • 多発する鼻茸(はなたけ)
  • 嗅覚の低下
  • 味覚の低下:嗅覚の低下により風味を感じにくくなるため、味覚が低下したように感じる

これらの症状の中心は、鼻茸が多発することと、嗅覚が落ちやすいことです。ここから、それぞれの症状がなぜ起こるのかを整理します。

好酸球性副鼻腔炎の特徴は、鼻の中(鼻腔)の粘膜に鼻茸が多発することです。鼻腔(びくう)は、いわゆる「鼻の穴」の奥に広がる空間です。鼻茸は鼻腔の粘膜が腫れて、鼻の中にふくらみとして突出したもので、鼻ポリープとも呼ばれます。鼻茸が増えたり大きくなったりすると、鼻の空気の通りが悪くなり、鼻づまりが強くなります。かぜなどのきっかけで症状が悪化し、鼻茸が目立つこともあります。

また、好酸球性副鼻腔炎では嗅覚が低下しやすいことも特徴です。においのもとになる分子が嗅覚を感じる部位まで届きにくくなることや、嗅覚に関わる粘膜の炎症が影響して、嗅覚が落ちます。進行すると、においをほとんど感じなくなることもあります。

嗅覚が低下すると、食べ物の「味」そのものというより、香りを含めた風味が分かりにくくなります。その結果として、味覚が落ちたように感じることがあります。

好酸球性副鼻腔炎は、体の免疫反応のうち、いわゆるアレルギー型(Th2型)の炎症が関与して起こると考えられています。鼻や気管支の粘膜でこのタイプの炎症が続くと、好酸球(こうさんきゅう)という炎症細胞が集まりやすくなります。

Th2型の炎症では、リンパ球からTh2サイトカインと呼ばれる物質が出て、免疫反応の方向づけが行われます。Th2サイトカインが増えると、好酸球が増えたり活性化したりして、鼻や副鼻腔、気管支の粘膜で炎症が起こりやすくなります。その結果、鼻茸ができやすくなったり、粘っこい鼻水が増えたりします。

このように、好酸球性副鼻腔炎は「細菌感染が中心の副鼻腔炎」とは性質が異なり、免疫反応のタイプ(アレルギー型の炎症)が治療にも関係します。

なお、現時点で「好酸球性副鼻腔炎が遺伝する」とはっきり示した報告は多くありません。

好酸球性副鼻腔炎の診断基準 (JESREC study) は下記です。好酸球性副鼻腔炎の診断がついた場合は、指定難病の申請を行うことができます。

項目 スコア
病側:両側 3点
鼻茸あり 2点
CTにて篩骨洞優位の陰影あり 2点
血液検査で好酸球が2%より多く5%以下 4点
血液検査で好酸球が5%より多く10%以下 8点
血液検査で好酸球が10%より多い 10点

上記の合計点が11点以上で好酸球性副鼻腔炎の診断となります。鼻茸がなくてもスコアを評価できるようになっていますが、鼻茸がなければ好酸球性副鼻腔炎よりもほかの原因が疑われることが多いです。

確定診断するためには鼻茸を切り取って、顕微鏡で鼻茸の中の好酸球を数える必要があります。

参考文献:藤枝重治,他, 好酸球性副鼻腔炎: 診断ガイドライン (JESREC Study). 日耳鼻 2015; 118: 728-735.

好酸球性副鼻腔炎は、一般的な慢性副鼻腔炎と病気の性質が異なり、抗菌薬抗生物質)の内服だけで改善させるのは難しいことが多い副鼻腔炎です。治療は、症状の強さや鼻茸の程度に応じて、ステロイド治療と手術治療を組み合わせ、さらに術後の再発予防まで含めて長期的に管理します。

好酸球性副鼻腔炎の治療の柱は次のとおりです。

  • 点鼻ステロイド(長期の基本治療)
  • ステロイド内服(悪化時に短期間)
  • 内視鏡手術(鼻茸の除去と副鼻腔の換気・排泄の改善)
  • 生物学的製剤(再発を繰り返す場合などに検討)

手術は有効な治療ですが、術後も再発抑制を目的とした治療を続けていく必要があります。

好酸球性副鼻腔炎に特別に効果がある漢方薬はありません。慢性副鼻腔炎(蓄膿症)で保険適用のある漢方はありますが、好酸球性副鼻腔炎は難治性であるため、漢方だけで管理するのは現実的ではないことが多いです。補助的に用いる場合でも、治療の中心は点鼻ステロイドや必要時の内服治療、手術などです。

好酸球性副鼻腔炎で用いるステロイド薬には、点鼻薬内服薬があります。

  • 内服ステロイド:鼻茸の縮小や嗅覚の改善が得られることがあり、短期間で効果を実感しやすい
  • 点鼻ステロイド:症状の安定化や再発予防を目的に、長期の基本治療として用い、手術後に継続することで効果を発揮しやすくなる

内服ステロイドは効果が強い一方で、副作用の問題があるため、通常は急に悪化した時期などに短期間で用います。副作用として、血圧上昇、血糖上昇、感染にかかりやすくなる、眼圧上昇、胃障害、骨粗鬆症などが知られています。

近年の鼻噴霧用ステロイドは全身への吸収が少なく、比較的安全に継続しやすい薬ですが、点鼻薬だけで十分にコントロールできない場合もあります。その場合は、手術や他の治療を組み合わせて管理します。

好酸球性副鼻腔炎では、鼻茸が鼻の中に充満していることも多く、症状に応じて手術が検討されます。手術の方法は内視鏡を用いて鼻の穴から行う内視鏡下鼻副鼻腔手術が基本なので、顔に傷がつく心配は少ないです。

手術では主に次の2点を行います。

  • 鼻腔内に多発した鼻茸を除去して鼻づまりを改善する
  • 副鼻腔の排泄路(自然口)を広げて換気・排泄を改善する

手術によって副鼻腔の通り道が整うと、術後の点鼻ステロイドが行き渡りやすくなり、再発予防につながります。ただし好酸球性副鼻腔炎は再発しやすいため、手術後も定期通院と再発予防の治療が前提になります。再発の芽が小さい段階で外来処置を行い、悪化時には短期間の内服治療を追加するなどしてコントロールします。

ステロイドと手術でも再発を繰り返す場合

ステロイド薬と手術を組み合わせても鼻茸が再発しやすい場合には、生物学的製剤による治療が検討されます。代表的な薬として、デュピクセント(一般名:デュピルマブ)があり、病状や合併症喘息など)を踏まえて適応を判断します。

好酸球性副鼻腔炎には、診断や治療の考え方を示す文書や診断基準が整備されています。一方で、広い範囲を一冊で網羅する「包括的な診療ガイドライン」という形ではないため、実際の診療は、診断基準や既存の知見をもとに、点鼻ステロイド、内服ステロイド、手術、生物学的製剤などを組み合わせて行います。

好酸球性副鼻腔炎の診断や治療の全体をカバーする診療ガイドラインはありませんが、「好酸球性副鼻腔炎:診断ガイドライン」に記載されている診断基準が実際に使われています。

「名医」と感じる基準は人によって異なります。治療内容だけでなく、説明の分かりやすさや通院のしやすさなども重要になります。満足できる医療機関を選ぶうえでのヒントを挙げます。

  • 点鼻・内服・手術・生物学的製剤など、治療の選択肢を理解し、病状に合わせて提案できる
  • 手術が必要になった場合に、手術ができる病院へスムーズに紹介できる(あるいは院内で対応できる)
  • 喘息合併する場合、全身麻酔や周術期管理を含めて連携が取りれている(呼吸器内科との連携など)
  • 術後の長期フォローを、病院とクリニックで役割分担できる(通院しやすさを確保できる)

好酸球性副鼻腔炎の治療は長期になることが多いため、治療内容だけでなく、通院の継続性も含めて医療機関を選ぶことも大切です。

5. 好酸球性副鼻腔炎とともに起きやすい病気

好酸球性副鼻腔炎は、次のような病気を合併(併存)することがあります。合併とは、「ある病気に伴って、別の病気が同時にみられること」を指します。

好酸球性副鼻腔炎の合併症(併存症)】

これらは、同じ「アレルギー型(好酸球・Th2型)」の炎症と関係していることが多く、治療方針や注意すべき薬(鎮痛薬など)にも影響します。ここから、それぞれを簡単に説明します。

気管支喘息

気管支喘息は、アレルギーなどをきっかけに気道(空気の通り道)が狭くなる病気です。発作的な息苦しさ、咳、ゼーゼーする感じ(喘鳴)などがみられます。好酸球性副鼻腔炎に伴う喘息は、成人になってから発症する人も少なくありません。

鼻と気道の炎症は連動しやすいため、鼻の治療が喘息症状の安定につながることがあります。息苦しさや咳が続く場合は、喘息の有無も含めて評価します。

気管支喘息についてさらに詳しく知りたい人は「気管支喘息の詳細情報ページ」も参考にして下さい。

■アスピリン不耐症・NSAIDsアレルギー

アスピリンは解熱鎮痛作用(熱を下げ、痛みを和らげる作用)をもつ薬で、市販薬にも含まれることがあります。アスピリンは、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬/非ステロイド性消炎鎮痛薬)と総称される薬の一つです。NSAIDsは発熱や痛みを和らげる目的で広く使われています。

好酸球性副鼻腔炎では、アスピリン不耐症(NSAIDs過敏)やNSAIDsアレルギーを伴うことがあります。この場合、アスピリンなどのNSAIDsを使用したあとに、息苦しさが出たり、喘息発作が誘発されたりすることがあります。市販薬にも含まれることがあるため、該当する可能性がある人は、鎮痛解熱薬の選び方を主治医に確認しておくと安心です。

好酸球性中耳炎

好酸球性中耳炎では、好酸球を多く含む耳だれ(耳から出る液体)や、聞こえにくさ(難聴)がみられます。進行すると難聴が強くなることもあります。

「耳だれが続く」「聞こえが悪い感じがある」などの症状がある場合は、耳の評価もあわせて行うと病状を整理しやすくなります。