大動脈瘤とはどんな病気なのか:症状・原因・検査・治療など
目次
1. 大動脈瘤(英語:aortic aneurysm)とはどんな病気なのか
大動脈は身体の中心やや左にある太く長い血管です。大動脈を通って全身に血液が送り出されます。大動脈瘤は大動脈の一部分がコブ状に膨らんだ状態のことです。大動脈瘤の症状はほとんどないことが多いため、日常生活への影響は大きくはありませんが、破裂をすると命に危険が及ぶので、早期発見と早期治療が大切です。
大動脈瘤と大動脈解離との違いについて
大動脈の病気はいくつかありますが、その中でも大動脈瘤とよく混同されているのが、大動脈解離という病気です。先に説明したとおり大動脈瘤は大動脈の一部がコブ状に膨らんだものです。一方で、大動脈解離は大動脈に亀裂が入った状態です。症状や取るべき対応がそれぞれで異なるので、書物やインターネットで情報を集める際には注意してみてください。
2. 大動脈瘤の症状について
大動脈瘤があってもほとんどの人には目立った症状が現れません。症状は大脈瘤が大きくなると現れ始めます。また、胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤で症状が異なります。
【大動脈瘤の主な症状】
これらの症状は大動脈瘤で見られやすいものですが、大動脈瘤だけに見られる症状というわけではありません。例えば、嗄声や血痰は食道がんや肺がんでも見られますし、胸痛は肋間神経痛でも見られます。症状だけでは判断がつかない部分を診察や検査の結果で補い、診断につなげます。症状についてより詳しくは「こちらのページ」を参考にしてください。
3. 大動脈瘤の原因について
大動脈瘤の原因については未解明な部分もありますが、
【動脈硬化を引き起こす主な原因】
動脈硬化の原因を避けることがひいては動脈瘤の予防にもつながる可能性があります。当てはまるものがあれば、治療や生活習慣の改善をしてください。
その他では、次の病気に
【大動脈瘤を合併しやすい主な病気】
これらの病気に該当する人は定期受診をかかさないようにし、疑われる症状が現れた場合は、すぐに主治医の先生に相談してくてください。
4. 大動脈瘤の検査について
大動脈瘤が疑われる人には診察や検査が行われます。診察や検査の主目的は「大動脈瘤かどうかの判断」や「治療の必要性の見極め」「治療法の選択」です。
【大動脈瘤の診察や検査】
問診 - 身体診察
- 画像検査
超音波検査 CT 検査MRI 検査
診察や検査の情報が基になって治療の方向性が定まります。特に画像検査では身体の中を画像化することができるので、大動脈の状態把握に有用です。診察や検査については「こちらのページ」でより詳しく説明しているので、参考にしてください。
5. 大動脈瘤の治療について
大動脈瘤の治療は瘤の最大短径の大きさによって決まります。 最大短径が胸部大動脈瘤で5.5cm(男性)・5cm(女性)以上、腹部大動脈瘤で5.5cm以上であれば破裂の危険性が高くなります。ひとたび大動脈が破裂してしまったら命を救うのが極めて難しくなります。つまり、破裂前に手を打つ必要があり、そのために手術や
6. 大動脈瘤で知って欲しいことについて
大動脈瘤が破裂すると、瞬く間に大量出血が起こります。残念な話ですが、大動脈瘤が破裂したら命を救うのは難しく、突然死の原因となることは珍しくありません。ただ、やみくもに心配しすぎる必要はありません。大動脈瘤は大きくなるに従って破裂のリスクが高まることがわかっており、リスクに応じた対策が可能です。まず、腹部大動脈瘤の大きさと破裂の関係は次の表になります。
【腹部大動脈瘤の最大短径と破裂率の関係】
腹部大動脈瘤の最大短径(cm) | 破裂率(%/年) |
4cm未満 | 0% |
4cm以上5cm未満 | 0.5-5% |
5cm以上6cm未満 | 3-15% |
6cm以上7cm未満 | 10-20% |
7cm以上8cm未満 | 20-40% |
8cm以上 | 30-50% |
表からは大動脈瘤の大きさと破裂率の間に
大動脈瘤が見つかった人はこちらのページで、破裂予防、病院の選び方、治療後の注意点などについて確認してみてください。
参考文献
「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2020」(2020.10.31閲覧)