だいどうみゃくりゅう
大動脈瘤
大動脈が部分的に拡張する疾患。胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤がある
6人の医師がチェック 80回の改訂 最終更新: 2022.04.20

大動脈瘤について知っておきたいこと:破裂や予防、ガイドラインなど

大動脈瘤は無症状なことも多く、大きさによってはすぐには治療せずに経過観察ができる病気です。ここでは大動脈瘤について知っておくとよいことをまとめています。治療を控えた人や経過観察中の人は目を通しておくようにしてください。

1. 大動脈瘤が破裂すると救命が難しい

大動脈瘤が破裂すると、命を救うのが極めて難しくなります。そのため、破裂しないようにすることが大切です。具体的には、大動脈瘤を大きくしないようにすることと、破裂の危険性が高い人に治療(手術またはカテーテル治療)を行うことです。

大動脈瘤の破裂は大動脈瘤の大きさと強い相関があることが分かっています。このため、血圧のコントロール、肥満の解消、禁煙などの大動脈瘤を大きくしない取り組みをして、破裂する確率を下げておくことが有効です。

大動脈瘤が大きくなって、破裂する確率が上昇している人には治療が必要になります。手術やカテーテル治療を行うことで、破裂する確率を大幅に下げることができます。

治療について詳しく知りたい人は「こちらのページ」を参考にしてください。

2. 大動脈瘤が見つかった人がするべきこと

大動脈瘤が見つかった場合、その大きさによって治療をするか経過観察をするかが決まります。どちらになるにしてもすぐに始めるべきことがあります。それは大動脈瘤を大きくしないようにすることです。大動脈瘤の破裂は瘤の大きさと関係があるので、瘤を大きくしないことが重要になります。経過観察する人はもとより、手術やカテーテル治療が予定されている人も必ず行うようにしてください。

まず下のリストのうちに当てはまるものがあるかどうかを確認してみてください。

上のリストの因子に当てはまるものがあった人は直ちに改善が必要です。生活習慣病に当てはまった人は適正範囲内に病気がコントロールされているかを確認してください。また、肥満の人は減量に、喫煙者は禁煙に取り組む必要があります。

3. 大動脈瘤を治療する病院の選び方について

大動脈瘤の治療は主に心臓血管外科または血管外科で行われます。施設によってはカテーテル治療を循環器内科や放射線科が担当する場合もありますが、概ね心臓血管外科や血管外科を受診すれば問題ありません。病院選びをする際には、心臓血管外科や血管外科が存在しているかどうかをまず確認してください。

次に、医療機関の選び方ですが、なるべく多くの治療を手掛けている医療機関を選ぶとよいです。大動脈瘤の治療は手術にしろ、カテーテル治療にしろ、大がかかりなもので、リスクをともないます。患者さんの数が多い医療機関であればあるほど、過去の経験の蓄積がしており、診療の質が高い可能性があります。

4. 大動脈瘤に診療ガイドラインはあるのか

ガイドラインは治療成績や安全性の向上を目的として作成されています。大動脈瘤のガイドラインには「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」があります。ガイドラインの内容は過去の治療成績や結果を根拠にして、場面ごとの最適な検査や治療法が記されています。 ガイドラインには優れた面がありますが、ガイドラインの内容をそのまま反映させることが必ずしも正解ではありません。作成時期の問題で、最新の知見が織り込まれていないこともあります。また、一人ひとりの身体の違いを鑑みて作られているわけではないので、患者さんの特徴に合わせてアレンジが必要な場合もあります。

5. 大動脈瘤の治療後の注意点

大動脈瘤の手術後にはいくつか注意点がありますが、血圧を安定させることに特に注意してください。具体的には、収縮期血圧上の血圧)を130-135mmHg以下に保つようにします。必要に応じて降圧剤を服用したり、生活習慣を見直してください。

【血圧上昇をまねく習慣】

  • 喫煙
  • 暴飲暴食
  • 過労
  • 睡眠不足
  • 精神的ストレス
  • いきみ(排便時に力むこと)や咳込み
  • 重いものを持ち上げること

生活習慣は見直しが必要になることがありますが、外出を控えたり、寝たきりの生活を送る必要はありません。特に運動の制限はないので、無理のない範囲で身体は動かすようにしてください。手術のあと少なくとも2年間は、定期的に検査を受けて、血管の状態や合併症の有無などをみていくことになります。くれぐれも、定期受診を欠かさないようにしてください。 また、腹部大動脈瘤で手術をした人は腸の動きが悪くなることがあります。腸の動きが弱くなることを「腸閉塞」や「イレウス」と言います。腸閉塞イレウスを予防するために、手術後はなるべく便通に良い食事を取るようにしてください。具体的な予防策は「こちらのページ」を参考にしてください。

参考文献

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 2020年改訂版」(2020.10.31閲覧)