死亡率を下げるスクリーニング検査は「39種類のうち4種類」
マンモグラフィーや前立腺がんの腫瘍マーカーなど、自覚症状の乏しい病気を見つけるための検査(スクリーニング)は早期発見を目指して広く行われてきましたが、「必ずしも生存率の改善に結びつかないのではないか」という意見もあります。この論争に対して、アメリカの研究班が複数の論文をまとめて検証し、「スクリーニングによって生存率が改善する場合は限られている」という結果を出しました。
◆19種類の病気の死亡率を検討
この研究は、死因になりやすい病気を対象として、
研究班は米国予防医学専門委員会などの論文データベースから、死因になりやすい19種類の病気についての研究で、ランダム化研究という信頼度の高い種類の研究と、メタアナリシスという複数の論文を統合する研究を集め、その内容を詳しく調べました。
スクリーニングの効果は、検査対象とする病気による死亡率(疾患
◆4種類のスクリーニングで死亡率が低下
集まった研究では、19の病気について39種類のスクリーニングが検討されていました。そのうち6つの病気に対する12種類のスクリーニングは、米国予防医学専門委員会によって推奨されているものでした。
19の病気について、9件のメタアナリシスと48件のランダム化研究を検討したところ、メタアナリシスのうちで疾患特異的死亡率を下げるとされた検査は4種類あり、男性の腹部大動脈瘤を探す
全死因の死亡率を下げるとされた検査はありませんでした。個別のランダム化研究では、疾患特異的死亡率を下げる効果が見られた検査は研究対象とされた検査のうち30%、全死因の死亡率を下げると見られた検査は研究対象のうち11%でした。
研究班は、いま行われているスクリーニングが疾患特異的死亡率を下げることは「多くない」、また、全死因の死亡率を下げることは「非常にまれ、または存在しない」と述べています。
この結果からただちに「スクリーニングには意義のないものが多い」と言うことはできませんが、限定された見方にせよ、このような結果が提示されたことには驚かされます。スクリーニングの意義を今一度話し合ってみるきっかけにはなるかもしれません。
執筆者
Does screening for disease save lives in asymptomatic adults? Systematic review of meta-analyses andrandomized trials.
Int J Epidemiol. 2015 Feb
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。