しんしつさいどう
心室細動
不整脈によって心室が不規則にけいれんして血液を全身に送り出せない状態。数分以内に死に至る非常に危険な不整脈
14人の医師がチェック 119回の改訂 最終更新: 2019.03.22

心室細動に関連する検査について:心電図検査、電気生理学的検査など

心室細動が起こると心臓が全身に血液を送り出せなくなってしまうため、直ちに救命が必要です。そのため、心室細動が起こった人が検査を受けることはあまり多くないのですが、心室細動が起こりやすい人や不整脈がある人は検査を受けることになります。

1. 問診

問診では身体の状況や生活環境を医療者に尋ねられます。心室細動を疑う失神があった人や心室細動のリスクが高いと思われる人にとって、問診は極めて重要です。

具体的には次のようなことを聞かれます。

  • 症状が出るまでにどんな生活をしていたか
  • 症状が出るまでにどんな薬を飲んでいたか
  • 喫煙をどの程度するか
  • 飲酒をどの程度するか
  • 何か持病はあるか
  • 家族に似たような症状の人はいるか
  • アレルギーはあるか
  • 初めての症状か
  • どんな症状が出ているか
  • 体重に変化はあるか
  • 症状は一定か、よくなったり悪くなったりするか
  • どういったタイミングで症状は変化するか
  • 妊娠しているか

心室細動が起こるとほぼ全員が失神するため、失神が起こったときにはまず心室細動が疑われます。これらの質問は失神の状況や原因を探る上で重要な判断材料です。また、今後の心室細動の起こりやすさを判断する上でも役立ちます。

持病の有無

持病によって心室細動が起こることがあります。例えばブルガダ症候群が有名ですが、他にもいくつか気をつけるべき病気があります。代表的なものを次に示します。

これらを放置しておくと心室細動になることがあります。もちろん病気の程度にもよりますが、上の病気の診断を受けた人は一度医療機関で精査してもらうようにしてください。

常用薬の有無

常用薬の影響によって心室細動が起こることがあります。そのため常用薬がある場合には問診で答えるようにしてください。

特に抗不整脈薬(ナトリウムチャネル遮断薬カリウムチャネル遮断薬など)には心室細動を起こす可能性が指摘されています。これらのタイプの薬はいろいろな名前があり自分で把握するのは難しいので、常用薬がある場合にはすべてを伝えるようにしてください。

自覚症状の有無

どんな症状を感じているのかはとても大事な情報です。特に心室細動になる前には動悸などの自覚症状が見られることがあります。次に挙げる症状が続くような場合には、心室細動につながるような不整脈が起こっているかもしれません。

  • 動悸(どうき)
  • 胸の違和感
  • 胸痛
  • 意識消失

これらは注意するべき代表的な症状です。もし自分に該当するものがあった場合には、問診時に伝えるようにしてください。

2. 身体診察

身体診察はとても大事な検査です。身体の状況や心臓の動きなどを客観的に調べることができます。心室細動が起こった人や心室細動になりやすい人が受けることになる身体診察は「バイタルサインのチェック」と「聴診」です。

バイタルサインのチェック

「バイタルサイン」という言葉を日本語に直訳すると「生命徴候」となります。これは脈拍・血圧・呼吸・体温・意識などの生命バランスの状態を測定します。心室細動では失神と脈の停止が起こり、続いて呼吸も停止します。そのため、バイタルサインをチェックすることはとても大切です。

また、心室細動が起こる前には予兆となるような不整脈が出ることがあります。その際には、脈拍が飛んだり一時的に意識がなくなったりすることがあるのでバイタルサインで確認が必要です。

聴診

聴診器で身体の中で起こる小さな音を確認することを聴診といいます。定期的に同じ動きをする心臓は、およそ1秒に1周期で同じ音をたてています。この音はとても小さいため耳で聞き取ることは難しいですが、聴診器を利用すると心臓の定期的な鼓動が発する特徴的な音を聞くことができます。

もし脈が乱れた場合には不定期な心音が聞こえるために判断がつきます。また、心室細動が起こると心臓は細かく痙攣(けいれん)したままほとんど動かない状態になるので、聴診器を用いても心臓の音が聞こえなくなります。

3. 血液検査

心室細動が起こりやすい状態か判断するために血液検査を受けることがあります。特に電解質と呼ばれるカリウムやマグネシウムといったミネラルの血液濃度に異常があった場合には、心室細動が起こりやすくなることがあります。血液検査を行えば、血液中の電解質濃度に関して調べることができます。

4. 心電図検査

心臓は微細な電気信号によって定期的に動いているのですが、心電図はこの電気信号の大きさや向きを調べる検査です。手足や胸に電気をキャッチする装置をつけて検査を行います。電気を流すわけではないので全く痛みを伴いません。

通常の心電図検査12誘導心電図)であれば数分横になって安静にしているだけで測定が完了します。その他の心電図では、身体に装着して日常生活を送るタイプ(ホルター心電図)や、あえて運動時に測定して運動の影響を見るタイプ(運動負荷心電図)などがあります。

12誘導心電図

12誘導心電図は最も基本的なタイプの心電図検査です。胸に6か所に加えて手足に1か所ずつの合計10か所の測定器を装着します。安静に横になって測定するので全く痛くありません。

12通りの方向から心臓の電気信号が測定できるため、このタイプの心電図検査のことを12誘導心電図といいます。どのような方向を確認できるかを次の表に示します。

【12誘導心電図の誘導タイプと方向】

誘導の名前  
第Ⅰ誘導 左心室の横の壁(側壁)の方向から電気信号を確認する
第Ⅱ誘導 心臓の先端(心尖部)の方向から電気信号を確認する
第Ⅲ誘導 右心室の横の壁(側壁)や左心室の背中側の壁(後壁)の方向から電気信号を確認する
aVR誘導 右肩の方向から心臓の電気信号を確認する
aVL誘導 左肩の方向から心臓の電気信号を確認する
aVF誘導 足の方向から心臓の電気信号を確認する
V1誘導 右心室の前側やや側方から心臓の電気信号を確認する
V2誘導 左心室や右心室の前側の壁(前壁)の方向から電気信号を確認する
V3誘導 右心室と左心室の間の壁(心室中隔)の方向から電気信号を確認する
V4誘導 右心室と左心室の間の壁(心室中隔)の方向から電気信号を確認する
V5誘導 左心室の前壁や側壁の方向から電気信号を確認する
V6誘導 左心室の側壁の方向から電気信号を確認する

これらをすべて確認することで、心臓の電気信号の変化をあらゆる方向からチェックできます。

心電図ではP波・Q波・R波・S波・T波の5つが基本になります。これらの波形と間隔を中心に異常の有無を判定します。例えば、心室細動が起こるとQRS幅の広い不規則な波形が見られます。また、心室細動を起こしやすいブルガダ症候群では、症状が見られなくても特徴な波形(コーブドタイプ、サドルバックタイプと呼ばれるST変化)が見られるため、これらの波形が見られないか確認が必要です。

コーブドタイプ,サドルバックタイプ

その他、心室頻拍を繰り返す人やQT延長(Q波とT波の間隔があいている)が見られる人も注意が必要です。

また、最も緊急性が高く注意しなければならないのはR on Tと呼ばれる波形です。

RonT

この波形が見られるような場合には、直ちに精査が行われます。

ホルター心電図

ホルター心電図とは心臓の電流を感知する装置を身体に貼ったまま生活することで、24時間測定することができる心電図のことです。測定器を腰につけたり肩にぶら下げたりしながら生活しなくてはならないので邪魔だと感じる人はいるかもしれません。

一方で、24時間連続で心臓に流れる微量の電気を観察できるという大きなメリットがあります。特に不整脈を疑う症状があるものの、観察時間が短い12誘導心電図では異常が見られなかった人にこの検査は適しています。突然出現していつの間にか消失するタイプの不整脈についても調べることができます。

運動負荷心電図

運動負荷心電図は、運動(トレッドミル:ウォーキングマシン運動、エルゴメーター:自転車運動)をしながら測定する心電図検査です。運動して心臓に負担がかかると出現するタイプの不整脈虚血性心疾患が疑われる人には運動負荷心電図が行われます。

運動すると心臓に負担がかかるため、検査中に気持ち悪くなったり意識が飛びそうになったりした場合には、遠慮なく近くにいる医療者に伝えてください。

5. 心臓超音波(エコー)検査

心臓超音波検査エコー(超音波)を用いて心臓の動きや大きさ、血液の流れを確認する検査です。特に痛みを伴うこともなく、X線検査CT検査のように放射線に被曝することもありません。

いったいどんなことをしているのか

心臓超音波検査の機器には小さな装置(探触子、プローブ)があり、ここから超音波を発しています。これを胸の外からあてることで心臓を見ることができます。

心臓エコー検査で観察するのは主に次のことです。

  • 心臓の動き
  • 心臓の大きさや形
  • 心臓にある弁の形
  • 心臓内の異物
  • 血液の流れ

心室細動のような不整脈がある場合には心臓の動きや形に問題があることが多いです。そのため、心臓超音波検査で心臓をくまなく確認することで、不整脈の原因を探すことができます。また、不整脈によって心臓の機能が低下していないかも確認することができるため、心電図検査と併せて行われることが多いです。

6. 電気生理学的検査

心電図検査を受けても不整脈の原因が判然としない人や不整脈の薬物治療がなかなかうまくいかない人は、心臓電気生理学的検査(EPS:Electrophysiological study)という検査を受けることがあります。

この検査では心臓の内側から心臓の筋肉に直接触れることで、微量の電流をキャッチすることができます。そのため、通常の心電図検査では原因がわからない不整脈であっても詳しく調べることができます。

また、検査と同時に治療(カテーテルアブレーション、焼灼術といいます)に入ることができるのも特徴です。心臓の中でも不整脈の原因となっている部位を特定し、焼灼することで、次に発作が起こらないようにします。(カテーテルアブレーションの概要に関してはこちらを参照してください。)

一方で、心臓電気生理学的検査を行うのは簡単ではありません。手術室のような部屋で数時間横になって検査が行われます。足の付け根や首にある血管にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心臓まで到達させます。このカテーテルを使って心臓内の電気回路の様子をくまなく調べていきます。検査の間は台の上でじっとしていなければならないため、身体が窮屈になって大変さを感じる人も多いです。