しんしつさいどう
心室細動
不整脈によって心室が不規則にけいれんして血液を全身に送り出せない状態。数分以内に死に至る非常に危険な不整脈
14人の医師がチェック 119回の改訂 最終更新: 2019.03.22

心室細動の治療について

心室細動が起こると数秒で意識を失います。その後も不整脈が続いた場合には命を落とす怖い病気です。心室細動が起こった人を救命するためには、出来るだけ早く治療を行わなければなりません。

このページでは心室細動に関わる治療について説明していきます。

1. 電気的除細動

心臓の正常な活動では、洞結節(右心房と上大静脈のつなぎ目のあたり)という部位から発せられた電気信号が、房室結節からヒス束を介して左右の心筋に伝わります。

【心臓の電気刺激の伝わり方】

心臓の電気刺激,電気伝導系

上の図の電気刺激の伝わる回路のどこかに異常がある場合に不整脈が起こります。不整脈は治療薬を用いることでコントロールできますが、重症になるとコントロールが難しく命に関わる状態になることがあります。命に関わるような重症な不整脈に対して電気的除細動という治療が行われることがあります。

心室細動は非常に危険な病気です。数秒で意識を失い、数分で脳への血流不足が起こります。治療せずにいるとほとんどの人が亡くなる病気であるため、可及的速やかな治療が必要になります。

なぜ電気的除細動が必要なのか

心臓に電流が加わると心筋は脱分極という状態になると考えられています。この状態(不応期といいます)に他から電気刺激を受けても心筋は反応しません。いわば動きがリセットされるような状態で、一定時間を経て不応期が終わったタイミングで最初に受けた電気刺激に反応します。

電気的除細動ではこの原理を用いて治療します。心臓に大きな電流を流して心臓の電気刺激を一旦リセットします。心室細動では心臓のあちこちで不規則な電気刺激が起こっている状態ですが、これをリセットすることで正常な電気刺激(洞結節から伝わる本来あるべき電気刺激)による心臓の運動に回復することが期待できます。

電気的除細動は致死的な不整脈に対して非常に有効な治療方法です。しかし、全ての不整脈に対して有効ではありません。電気的除細動が有効なのは次の2つです。

  • 心室細動(VF)
  • 無脈性心室頻拍(pulseless VT)

これ以外にも、血行動態が不安定な状態(血圧が下がる、意識が悪くなるなど)を伴うタイプの心房細動(AF)や心房粗動(AFL)、発作性上室性頻拍PSVT)でも電気的除細動が行われることがあります。

AEDについて

不整脈によって突然死することはありますが、その一部は電気的除細動を行えば救うことができます。すばやく電気的除細動を行えば命を救うことができた致死的不整脈も、すぐ側に除細動器がないから治療できなかったという場面があります。

そこで、医療従事者以外でも使用できる自動体外式除細動器AED : Automated External Defibrillator)が近年多くの場所で設置されるようになりました。

AEDは不整脈の検査から治療まで自動で行ってくれます。2枚のシートを意識を失った人の胸に貼るだけで、心電図を解析します。また、解析の結果心室細動や無脈性心室頻拍が起こっていることがわかれば、引き続き電気的除細動を行うことができます。

とはいえ、医療者でもない人はAEDを使うことに不安を感じるかもしれません。そこで知っておいて欲しいのは、BLS(Basic Life Support)という一次救命処置を学ぶ講座の存在です。BLS講座は誰でも受けることができるため、いつか来るかもしれない救命の機会のために受講しておくことは大切です。この講座では、AEDの使い方のみならず心臓マッサージ(胸骨圧迫)の適切な行い方も習うことができます。

埋込み型除細動器

心室細動が起こったがなんとか一命をとりとめたという人は埋込み型除細動器が提案されることがあります。この装置は半永久的に身体に入れておいて、心室細動が起こったときに異常を感知して自動的に電気的除細動を行なってくれます。

心室細動を一度経験した人では、根本的な解決がなければ次にまた同じことが起こる可能性が高いです。この装置があれば心室細動が出現してもすぐに治療できるので、救命という意味ではとても大きな意味があります。一方で、身体の中に異物を入れるため、装置の必要度をしっかりと吟味する必要があります。つまり、心室細動や無脈性心室頻拍を経験した患者さんやそれらが起こる可能性が高いと考えられる人に対して行います。

この治療はペースメーカーを埋め込むのと同じ要領で、前胸部の皮膚の下に本体を埋め込んで、血管の中を伝ってリード(導線)を心臓に留置します。このリードが異常な不整脈を感知して、必要時には即座に電流を心筋に通してくれます。

強い電磁波を受ける場所(MRI検査室など)には行くことは難しいので、埋込み型除細動器が入っている人は検査前に申告が必要です。また、何らかの原因で誤作動することもあるため、埋め込んだ除細動器によって不具合を感じる人は主治医と相談するようにしてください。

2. ペースメーカー

ペースメーカーとは不整脈のある人の胸の皮膚の下などに埋め込む機械のことです。心臓がうまく動いていないときに、必要な電気信号を心臓に送ることができます。

皮下に埋め込んである本体から鎖骨下静脈を介して電気信号を伝えるリード(導線)を心臓に到達させます。このリードは2つの役割を担っています。

  • 心臓が作る電気信号を感知する(センシング)
  • 心臓が動くために必要な電気信号を送る(ペーシング)

実は心室細動に対してペースメーカーが有効になる場面はあまり多くありません。不整脈にはペースメーカーで治療できるものと治療できないものがあり、上で説明した不応期の問題があるため、心室細動が起こっているときにはペーシングすることができません。

しかし、ペースメーカーが有効な不整脈である洞不全症候群や房室伝導障害が悪化したことが原因で心室細動になった人は、心室細動の再発予防のためにペースメーカーによる治療が提案されることがあります。ただし、この場合も心室細動の予防であって発作が起こったときの治療ではありません。心室細動が起こってしまった人は、一刻も早く電気的除細動を行う必要があることには変わりがありません。

ペースメーカーの注意点

ペースメーカーには気をつけなければならない注意点があります。

  • 電池に寿命がある
  • MRI検査を受けられない

この2つはあらかじめ知っておかなければならないものです。

電池寿命に関しては、定期的な専門外来で残りの電池量を確認してくれます。電池切れが起こりそうなときには、電池交換を行うことになります。

また、MRI検査で利用する強い磁気を浴びると、ペースメーカーが停止してしまうことがあるため注意が必要です。しかし、最近のペースメーカーではMRI検査を受けても停止しないものが出てきています。自分の使用しているペースメーカーはMRI検査に対応できるものなのかどうか医療関係者に確認するようにしてください。

3. 心臓マッサージ(心肺蘇生法)

心肺蘇生とは心臓が血液を全身に送れなくなった人に対して蘇生を目指して行う医療行為のことです。心室細動が起こった心臓は上手く働かないため心肺蘇生が行われます。

心肺蘇生では主に次のようなことが行われます。

  • 心臓マッサージ(胸骨圧迫)
  • 気道確保
  • 人工呼吸
  • 電気的除細動(AEDを含む)

心臓が動かなくなると血液が全身に回らなくなってしまいます。全身に血液が届かなければ酸素や栄養が足りなくなります。心肺蘇生は全身に酸素や栄養を到達させることが狙いです。

心臓が止まった時間が長くなると蘇生が段々と難しくなります。そのため、心肺蘇生は一刻も早く行うことが大切です。とはいえ、心臓が動いている状態に比べると血液が循環する効率は高くなりませんので、心臓が再び動き出すまでの時間が長くなると蘇生は難しくなります。

心室細動を根本的に治療するには多くの場合で電気的除細動が必要になります。心臓マッサージは電気的除細動を行うまでのつなぎの治療と考えることができます。特にAEDが近くにある場合には、機材を取り寄せるまで心臓マッサージを続けて、AEDが届いたらできるだけ短時間で電極を胸に貼るようにしてください。

4. 薬物治療

心室細動は非常に重篤な不整脈といえ、発作が起きた場合には迅速な治療が必要となります。電気的除細動などを行ってもなお改善がはかれない場合にはエピネフリンやバソプレシンといった心肺蘇生に使われる薬の使用が考慮されますが、それでも改善がはかれない場合には抗不整脈薬と呼ばれる薬の使用も考慮されます。

心室細動に限らず不整脈の薬物治療では病態によって適する薬が異なり、例えば、QT(心電図上のQ波とT波の間隔)の延長が認められる場合と認められない場合では適する薬が異なることが考えられます。また心室細動には、はじめに心室頻拍がおこった後で心室細動へ移行する場合がありますが、心室頻拍の治療では、もともと基礎疾患として心臓病がある場合とない場合では一般的に適する治療薬が異なってきます。ここでは心室細動や心室細動に関わる心室頻拍の治療で使用が考慮される抗不整脈薬などを中心に解説していきます。

■抗不整脈薬について

心筋(心筋細胞)はイオン(陽イオン)の電荷の移動がシグナルとなって収縮します。主にナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)、カリウムイオン(K+)といった陽イオンがそれぞれの通り道であるイオンチャネルを通って移動(出入り)することで活動電位という一連の反応が起こり心筋が収縮し、心臓の拍動が起こります。心臓の振動が末梢血管に伝わったものを脈(脈拍)と呼びますが、不整脈ではなんらかの理由によってこの脈のリズムが乱れています。

一般的に抗不整脈薬と呼ばれる薬の多くは、心筋細胞の収縮においてシグナルとなっているイオンの通り道であるイオンチャネルに作用し、活動電位を調節することで抗不整脈作用をあらわします。(抗不整脈薬には、交感神経の働きを抑えることで心拍数調節作用などをあらわすβ遮断薬のようにイオンチャネルに主に関わらない薬もあります。)また、例えば同じNaチャネルを遮断する薬であっても、薬剤によっては他のイオンチャネルに対しても遮断作用を有するなど、個々の薬剤によって特徴が少しずつ異なる場合があります。

◎ニフェカラント(商品名:シンビット®

ニフェカラントは主に心筋の収縮に関わるカリウムイオン(K+)の通り道であるカリウムチャネルを遮断(ブロック)することで不整脈を改善する作用をあらわします。

心室頻拍や心室細動による急性期症状(主に急性心筋梗塞などの緊急時)の改善を目的として開発された経緯をもつこともあり剤形は注射剤です。

ニフェカラントには急性虚血に伴う心室頻拍や心室細動に対する予防効果なども期待できるとされています。

ニフェカラントに限ったわけではないですが、一般的に抗不整脈薬には催不整脈作用といって不整脈をかえって引き起こす可能性もあります。抗不整脈薬による治療では通常、個々の薬剤による薬理作用をしっかりとふまえた上でそれぞれの病態に合わせた薬が使われるため、催不整脈作用があらわれることは非常に稀と考えられますが注意は必要です。特にQT(心電図上のQ波とT波の間隔)の過度な延長に伴うトルサードポアンツ(Torsade de Pointes:TdP)と呼ばれる心室頻拍には注意が必要とされています。ニフェカラントを投与する際は通常、低用量から開始するなどのTdPへの対策がとられますが注意は必要です。その他、下痢や口渇などの消化器症状、ほてり、頭重感などに対しても注意が必要です。

アミオダロン(主な商品名:アンカロン®)

アミオダロン(主な商品名:アンカロン®)は主に心筋の収縮に関わるカリウムイオン(K+)の通り道であるカリウムチャネルを遮断(ブロック)することで不整脈を改善する作用をあらわします。

また、心筋の収縮に関わる他のイオンチャネル(ナトリウムチャネル、カルシウムチャネル)や交感神経のα受容体及びβ受容体への作用もあらわし、これら多様な作用をもつこともあり、他の抗不整脈で効果が不十分な場合などの選択肢としても有用です。例えば、心室頻拍や心室細動による急性期でニフェカラントを投与しても効果不十分の場合などへの有用性が考えられます。

アミオダロンには急性作用と慢性作用の両面での効果が期待でき、剤形としても注射剤と錠剤(飲み薬)があります。日本では先にアミオダロンの錠剤が1992年に承認されていましたが効果が十分に発現するまでに少なくとも数日は必要となるため、急性期に対しての剤形として注射剤が開発された経緯があります。アミオダロンの注射剤は2003年に承認され、他の抗不整脈では治療が難しかったり緊急性を要する心室性不整脈などの治療に使われています。

注意すべき副作用としては甲状腺機能障害、間質性肺炎、角膜色素沈着、肝障害、徐脈などがあります。間質性肺炎や肺線維症などの肺関連の副作用は特に注意が必要とされ、通常、胸部レントゲン胸部CT検査などを必要に応じて実施します。また肺機能の検査以外にも甲状腺機能の検査や眼科受診などを適宜行い、経過観察していくことも大切です。

アミオダロンに限ったわけではないですが、一般的に抗不整脈薬には催不整脈作用といって不整脈をかえって引き起こす可能性もあります。抗不整脈薬による治療では通常、個々の薬剤による薬理作用をしっかりとふまえた上でそれぞれの病態に合わせた薬が使われるため、催不整脈作用があらわれることは非常に稀と考えられますが注意は必要です。また、抗不整脈薬以外にも催不整脈作用をあらわす薬や抗不整脈薬との相互作用(飲み合わせ)に注意が必要な薬などがあり、これらの薬を併用する場合にはより注要です。アミオダロンは抗不整脈薬の中でも相互作用に特に注意が必要となる薬のひとつで、抗ウイルス薬や抗菌薬などの中には原則として併用できない薬もあります。なんらかの治療で他に使用している薬がある場合は事前に医師や薬剤師に伝えることがとても大切です。

◎リドカイン(主な商品名:キシロカイン®

心臓の活動電位に関わるナトリウムイオン(Na+)の通り道であるナトリウムチャネルを遮断(ブロック)する薬で、心筋細胞へのNaイオンの流入を抑えることで異常な伝導や興奮性などを抑えるNaチャネル遮断薬という種類に分類される薬です。

Naチャネル遮断薬の中でもリドカインは主に心室に作用し、活動電位の持続時間を短縮するなどの特徴をもっています。

また、Naチャネルが不活性化状態にある心筋細胞が多いと考えられる虚血状態の心筋に有用であったり、心機能抑制の度合いが同じNaチャネル遮断薬に分類される抗不整脈薬のプロカインアミド(商品名:アミサリン®)に比べると軽度であるなどの特徴から、心筋梗塞の急性期や手術に伴う不整脈予防などに対しても有用な抗不整脈になっています。

副作用として心機能抑制へのリスクは一般的に少ないとされていますが、徐脈、血圧低下、意識障害などの循環器症状があります。また頻度はまれとされますが、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあり注意は必要です。

なお、リドカイン自体は元々「局所麻酔薬」として開発された経緯をもちます。

Naイオンは体内で痛みなどの伝導にも関わっているイオンでもあり、神経膜のNaチャネルを遮断(ブロック)し知覚神経や運動神経を遮断することで局所麻酔作用をあらわします。局所麻酔薬としてのリドカインは注射剤だけでなく、塗り薬(主な商品名:キシロカイン®ゼリー)などの剤形もあり、医療現場で広く使われている薬です。そのため不整脈治療を受ける際、過去に局所麻酔薬でアレルギーなどがあらわれた経験がある場合はその局所麻酔薬がリドカインやリドカインに類似した成分であることも考えられるため、その旨を事前に医師や薬剤師に伝えることが大切です。

◎硫酸マグネシウム

心筋の収縮は主にナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)、カリウムイオン(K+)といった陽イオンの移動がシグナルとなっておこり、Kイオンなどの移動にはマグネシウムイオン(Mg2+)が深く関わっています。

不整脈に対してMgイオンがどのように改善するかに関してはいくつかの作用の仕組みが考えられていますが、Kイオンに対しては心筋細胞内のKイオン濃度を増やし、Naイオン濃度を下げることで静止膜電位を下げ安定させる作用などが考えられます。またMgイオンはCaイオンの移動へも関わり、Caイオンの心筋細胞内への流入を抑える作用やCaイオンの細胞外へのくみ出す作用なども考えられています。不整脈の中でも特に注意が必要な病態としてQT(心電図上のQ波とT波の間隔)の延長に伴うトルサードポアンツ(Torsade de Pointes:TdP)と呼ばれる心室頻拍がありますが、薬剤や電解質異常などが原因となって引き起こされる後天性QT延長症候群に伴うTdPに対しては原因(薬剤や電解質異常など)を取り除くとともに硫酸マグネシウムの静脈内投与が有用とされています。

◎その他の薬(β遮断薬など)

その他、心室頻拍などの病態によってはβ遮断薬などの薬が使われる場合も考えられます。

例えば、先天性(遺伝性)のQT延長症候群の発作時にはβ遮断薬が有用とされています。またQT延長症候群は原因となる遺伝子の違いによりいくつかのタイプに分かれますが、そのうちのLQT1というタイプの予防にβ遮断薬が使われることも考えられます。QT延長症候群のタイプでもSCN5Aという遺伝子の変異が原因となるLQT3のタイプではNaチャネルの不活性化の障害が主な病因とされていることもあり、メキシレチン(主な商品名:メキシチール®)などのNaチャネル遮断薬がQT間隔の改善に有用とされています。

冒頭で少しふれましたが、電気的除細動を行ってもなお症状は改善しない場合にはエピネフリンやバソプレシンといった薬が選択肢となることがあります。バソプレシンは一般的には抗利尿ホルモンとして知られていますが、抗利尿作用の他、血管平滑筋にある自身のV1受容体へ直接作用することで平滑筋を収縮させる働きもあります。このようにバソプレシンはエピネフリンなどとは異なる作用の仕組みをもつことで、心筋の酸素消費量を増やすことなく冠血流量と脳血流量を増やす効果などが期待できます。

ひとえに不整脈といっても心室由来と心房由来では大きな違いがありますし、遺伝的なものであったり基礎疾患や他の治療薬の有無など様々な要因が関わります。個々の病態に合わせた適切な治療を行っていくために自身の体質や持病、併用薬などを事前に医師に伝えておくことがとても大切です。