しぇーぐれんしょうこうぐん
シェーグレン症候群
涙や唾液の分泌量が減って、ドライアイやドライマウスの症状が出る病気。自己免疫性疾患の一種
12人の医師がチェック 121回の改訂 最終更新: 2019.03.05

シェーグレン症候群の検査は?

シェーグレン症候群は免疫の異常により涙や唾液を出す場所(涙腺・唾液腺)が攻撃される病気です。シェーグレン症候群の診断では血液検査、涙や唾液が出るかを確認する検査を行います。ここではシェーグレン症候群で行われる検査を説明していきます。

1. シェーグレン症候群で行う血液検査には何がある?

シェーグレン症候群は免疫の異常により自分の身体を攻撃してしまう病気です。そのため、全身に症状が出る可能性があり、全身の状態を把握するために血液検査を行います。中でもシェーグレン症候群の診断に有用な血液検査として抗体検査があります。抗体は本来、外敵を攻撃するための物質のですが、シェーグレン症候群では自分を攻撃する中で異常な抗体が産生されていきます。この異常な抗体は血液検査でも検出することができ、シェーグレン症候群の診断において重要です。

抗体検査

シェーグレン症候群の診断に有用な抗体検査としては抗SS-A抗体と抗SS-B抗体があります。シェーグレン症候群の人のうち抗SS-A抗体が陽性になるのは70%程度です。抗SS-B抗体が陽性になるのは30%程度です。なお抗SS-A抗体と抗SS-B抗体は両方陽性になることもあります。これらの検査はほとんどの病院で測定することができます。

2. シェーグレン症候群で行う血液検査以外の検査は?

シェーグレン症候群は涙や唾液が分泌される場所(涙腺や唾液腺)が攻撃・破壊され、ドライアイドライマウスが現れます。そのため、ドライアイドライマウスの有無や涙腺・唾液腺が攻撃されている程度を検査で確認します。

シルマー試験(シャーマー試験、シルメル試験)

涙の分泌を調べる検査です。検査用のろ紙(シルマー試験紙)を挟んだ状態で目を閉じます。シルマー試験紙には目盛りがふってあり、5分間で何mmの目盛りまで涙が浸み出るかを確認します。5分間で5mm以下であれば、シルマー試験陽性となり、涙の量が少ないと判断されます。

ローズベンガル試験・蛍光色素試験

ドライアイになると角膜が乾燥して傷つきやすくなります。角膜の状態は検査用の点眼液を用いることで観察しやすくなります。用いられる検査液としては、ローズベンガル色素や蛍光色素があり、これらを用いて角膜の状態を調べる検査をローズベンガル試験、蛍光色素試験と呼ばれます。

ガムテスト

味がないガムを10分間噛み、分泌される唾液の量を測定します。10分間で唾液の量が10ml以下の場合にガムテストが陽性となり、唾液の量が少ないと判断されます。

サクソンテスト

乾燥したガーゼを2分間噛み、分泌される唾液の量を測定します。2分間で2g以下の場合にサクソンテストが陽性になり、唾液の量が少ないと判断されます。

唾液腺シンチグラフィー

唾液腺に取り込まれる放射性物質を注射をして、唾液腺の機能を見る検査です。放射性物質というと怖い響きがあるかもしれませんが、人体への影響が少ない量で検査を行います。検査後の生活の制限もありません。唾液腺の機能が落ちると、唾液腺への放射性物質の取り込みが遅れたり、取り込まれなくなります。

生検

身体の組織の一部を採取して、顕微鏡で確認する検査です。シェーグレン症候群では唇(くちびる)や涙腺を対象に行います。それぞれ口唇生検、涙腺生検と呼ばれます。シェーグレン症候群の方は取ってきた組織を顕微鏡で観察するとリンパ球と呼ばれる細胞が攻撃しているのが確認出来ます。生検は診断する力が高い検査です。口唇生検の具体的な流れを説明します。

  • 消毒・麻酔を行います。
  • 唇をメスで切開し、組織を切り出します。
  • 切った部位の止血を行い、傷を縫って閉じます。
  • 術後数日間は感染症の予防のため、抗生物質の内服を行います。
  • 術後5-7日程度に傷が閉じているのを確認し、傷と閉じていた糸を切り取ります。

生検で採取した組織を専門の医師が顕微鏡で確認するので、検査結果が分かるまで7-14日程度かかることが多いです。生検は、外来で出来る検査なので入院は必要ありません。

生検の合併症・注意点とは?

生検が原因で望ましくない事態が引き起こされる場合があります。引き起こされる問題を合併症(がっぺいしょう)と言います。合併症はどんなに生検が上手な人でもゼロにはできません。生検の流れに問題がなかったとしても合併症が現れることはあります。

生検の結果起こりうる合併症としては以下のものがあります。

再出血

生検ではメスや針を用いて身体に切開を加えるため、出血のリスクを伴います。また、生検を終えるときには止血が十分に行われていることを確認しますが、少し時間が経ってから出血する(再出血)ことがあります。お医者さんが生検後に、数回傷口の様子を見に来るのは、再出血が起きていないかを調べるためです。

感染

生検ではメスや針を用いて身体に切開を加えるため、細菌が傷に入り込む身体の中に入るリスクを伴います。そういったリスクを減らすため、生検処置の前後では抗生物質の内服を行います。

アレルギー

生検の前後ではいくつかの薬を使います。具体的には、痛みを和らげるために麻酔薬や感染予防の抗生物質などが挙げられます。そのため、薬に対するアレルギーは、生検処置に起こりうる合併症として挙げられます。薬に対するアレルギーというのは人により様々です。蕁麻疹じんましん)が出るだけの軽度なものから、重症な場合にはアナフィラキシーショックといって、血圧が下がったり、呼吸ができなくなるといったものまで含まれます。使用したことがない薬剤に対するアレルギーの予測は困難ですが、これまで歯科の麻酔などでアレルギーが起こったことがある場合には、事前にアレルギーを経験したことがあることを伝えるようにして下さい。

傷跡

生検ではメスや針を用いて身体に切開を加えるため、傷が身体に残ることがあります。

生検を受けるにあたっての注意点

生検には合併症のリスクもあるため、検査を受けるにあたってはいくつかの注意点があります。ここでは注意点を述べていきます。

  • 血を固まりにくくする薬を飲んでいる人は、出血のリスクが上がってしまうため、検査前に中止する必要があります。中止する期間は薬剤により異なり、5日から14日前程度になります。
  • 生検では麻酔や感染症予防のため、薬剤の内服が必要になります。過去に薬剤内服に伴い、アレルギーの経験がある方は医師に申告するようにしてください。

生検は外来でできる程、簡単な処置ではあるのですが、いくつかの注意点があります。生検を受ける前にこのページに目を通して、注意事項の確認に役立てて下さい。

唾液腺造影検査

唾液は唾液腺で生成された後、導管と呼ばれる管を通って口の中に分泌されます。シェーグレン症候群では唾液腺の破壊の結果、導管の変形が起こります。唾液腺造影検査は導管に造影剤を注射して、唾液腺の形を確認する検査になります。造影剤とはX線で確認できる液体のことをいいます。検査の流れは以下の通りになります。

  • 口の中にある導管の出口があります。この出口に造影剤の注射を簡単にするため、チューブを挿入します。
  • このチューブから造影剤を1ml程度注射します。
  • レントゲン検査で造影剤の分布を確認します。これにより導管の形状が分かります。
  • チューブを抜去し、検査は終了です。

この検査では造影剤を注射した後、レントゲン検査を用います。レントゲン検査というと放射線の被曝が心配になるかもしれませんが、人体に安全な放射線量で行います。また、造影剤は身体の中に入れる薬剤なので、まれにアレルギー反応を起こすことがあります。造影剤で過去にアレルギーの経験がある方は検査前に医師に申告するようにしてください。

3. シェーグレン症候群の診断はどうする?

近年、診断を正確に行うためにさまざまな病気に対して診断基準が設けられるようになっています。シェーグレン症候群に関しても同様で、日本や海外から診断するための基準が作成されました。具体的には以下の4つがあります。

  • 厚労省改訂診断基準
  • アメリカ・ヨーロッパ合同研究班分類基準
  • シェーグレン国際共同臨床臨床連携分類基準
  • アメリカリウマチ学会・ヨーロッパリウマチ学会分類基準

ここであまり馴染みのない診断基準と分類基準という言葉が出てくるのでもう少し詳しく説明します。2つの基準は役割が異なります。

診断基準は病気の診断を正確に行うことを目的にしたもので、分類基準は臨床研究でシェーグレン症候群の診断を一貫させるために作成されたものになります。

これ以降では実際に用いられているそれぞれの基準を紹介します。

厚労省改訂診断基準

1999年に厚生労働省が発表した基準です。

  1. 生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    1. 口唇腺組織で4mm2 あたり導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤
    2. 涙腺組織で4mm2 あたり導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤
  2. 口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    1. 唾液腺造影でStage I(直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
    2. 唾液分泌量低下(ガムテストにて10ml/10分以下、またはサクソンテストにて2g/2分以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見
  3. 眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    1. シルマー試験で5mm/5分以下で、かつローズベンガル試験でvan Bijsterveldスコア3以上
    2. シルマー試験で5mm/5分以下で、かつ蛍光色素試験で陽性
  4. 血液検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
    1. 抗SS-A抗体陽性
    2. 抗SS-B抗体陽性

上記の4項目中2項目以上を満たせばシェーグレン症候群と診断されます。

出典:シェーグレン症候群 概要、診断基準等(厚生労働省)[.docx]

アメリカ・ヨーロッパ合同研究班(AECG)分類基準

2002年にアメリカとヨーロッパの合同研究班(AECG)が発表した基準です。

  1. 眼症状:次の質問のうち少なくとも1つに同意する
    1. 眼の乾きを感じることが3ヶ月以上ありましたか?
    2. 眼に砂や砂利が入った感じをしたことがたびたびありましたか?
    3. 1日に3回以上点眼薬を使いますか?
  2. 口腔症状:次の質問のうち少なくとも1つに同意する
    1. 口のかわきを感じることが3ヶ月ありましたか?
    2. 大人になって唾液腺がたびたび腫れたり、腫れ続けたことがありますか?
    3. 乾いた食べ物を飲み込むために頻回に飲み物を必要としますか?
  3. 病変:次の検査のうち少なくとも1つが陽性で定義される眼病変の客観的証拠
    1. 麻酔を使用してない状態のシルマー試験で5mm/5分以下
    2. ローズベンガル試験または他の眼乾燥試験でvan Bijsterveldスコア4以上
  4. 組織病理:生検で4mm2 あたり導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤を伴う唾液腺炎が確認される
  5. 唾液腺病変:次の検査のうち少なくとも1つが陽性で定義される唾液腺病変の客観的証拠
    1. 特に刺激を加えていない状態で唾液分泌量が1.5ml/15分以下
    2. 唾液腺造影検査で導管のびまん性拡張
    3. 唾液腺シンチグラフィー検査で放射性同位体の取り込み遅延、取り込み低下または排泄低下
  6. 自己抗体:抗SS-A抗体または抗SS-B抗体が血清中に存在

以下のいずれかを満たし、除外診断ができた場合に原発性シェーグレン症候群に分類する。

  • 項目4または項目6が陽性で、かつ4個以上の項目を満たす
  • 項目3-6のうち3個以上の項目を満たす

除外が必要な状況・疾患

過去の頭頸部放射線治療を受けている、C型肝炎ウイルス感染、後天性免疫不全症候群、先行するリンパ腫、サルコイドーシス移植片対宿主病、抗コリン剤の使用

出典:Ann Rheum Dis. 2002 Jun;61(6):554-8.

シェーグレン国際共同臨床臨床連携(SICCA)分類基準

2012年にシェーグレン国際共同臨床臨床連携(SICCA)が発表した基準です。

  1. 抗SS-A抗体、抗SSB抗体陽性、またはリウマチ因子陽性かつ抗核抗体320倍以上
  2. 口唇生検で4mm2 あたり導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤
  3. 眼球染色スコアが3以上の乾燥性角結膜炎(ただし、現在緑内障の点眼液を使用せず、過去5年以内に角膜手術や眼瞼の形成手術を受けたことがない)

除外が必要な状況・疾患

過去の頭頸部放射線治療を受けている、C型肝炎ウイルス感染、後天性免疫不全症候群サルコイドーシスアミロイドーシス、移植片対宿主病、IgG4関連疾患

出典:Arthritis Care Res (Hoboken). 2012 Apr;64(4):475-87.

アメリカリウマチ学会・ヨーロッパリウマチ学会(ACR-EULAR)分類基準

2016年にアメリカリウマチ学会・ヨーロッパリウマチ学会(ACR-EULAR)が発表した基準です。この基準はこれまでの基準と異なり、診断項目がスコア化されていて合計点が4点以上の時に分類するとされています。

  • 生検で4mm2 あたり導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤を伴う唾液腺炎が確認される 3点
  • 抗SS-A抗体または抗SS-B抗体が陽性 3点
  • 眼球染色スコア5以上またはvan Bijsterveldスコア4以上(少なくとも片方の眼)1点
  • シルマー試験で5mm/5分以下(少なくとも片方の眼)1点
  • 特に刺激を加えていない状態で唾液分泌量が0.1ml/1分以下 1点

除外が必要な状況・疾患

過去の頭頸部放射線治療を受けている、C型肝炎ウイルス感染、後天性免疫不全症候群サルコイドーシスアミロイドーシス、移植片対宿主病、IgG4関連疾患

出典:Ann Rheum Dis. 2017 Jan;76(1):9-16.

どの基準が診断に有用なのか?

シェーグレン症候群の診断のため、複数の基準が発表されてきましたが、どの基準を用いるのが有用なのでしょうか。日本のシェーグレン症候群と診断または疑われた人を対象に上記の4つの基準の感度特異度(※)を調べた調査が2017年3月に発表されました。この研究によると4つの研究の感度・特異度は以下の通りでした。

  感度 特異度
厚労省改訂診断基準 82.1 90.9
AECG分類基準 89.4 84.3
SICCA分類基準 79.1 84.8
ACR-EULAR分類基準 95.4 72.1

新しく発表されたACR-EULAR分類基準は4つの中で一番高い感度を示したものの、特異度は一番低い結果でした。一方、厚労省改訂診断基準は4つの中で一番高い特異度を示しました。どの基準も100%の診断精度ではないため、これらの基準を参考にシェーグレン症候群と診断するにふさわしいか検討していきます。

※ある基準が診断にどれだけ有用であるかを検証するために感度と特異度という指標があります。感度・特異度いずれも高い方が有用性が高いことを示しています。感度は病気の人の何%が基準を満たすかを示しています。今回の場合はシェーグレン症候群の人の82.1%が厚労省改訂診断基準を満たすということになります。

一方、特異度は病気でない人の何%が基準を満たさないかを示しています。言い換えると、特異度が高いということは他の病気では基準を満たしにくく、誤診が少ないということになります。今回の場合はシェーグレン症候群でない人は90.9%が厚労省改訂診断基準を満たさないということになります。

出典:Ann Rheum Dis. 2017 Mar 22.