こうけつあつしょう
高血圧症
140/90mmHgより高い血圧が持続している状態。原因には加齢、喫煙、肥満、ホルモンの異常などがある。高血圧症があると心筋梗塞や脳出血などの危険性が増加する。
17人の医師がチェック 168回の改訂 最終更新: 2025.10.27

高血圧症の原因:塩分の多い食事、喫煙など

高血圧症の原因には塩分の多い食事、喫煙、肥満ホルモンと関連した病気、薬の副作用などがあります。原因により高血圧症の対応も異なるため、高血圧症の原因を明らかにすることは非常に重要です。

1. 高血圧症の原因には何があるか

高血圧症は心臓から拍出される血液の量(心拍出量)と血管の硬さ(血管抵抗)のバランスが崩れることが原因で起こります。

私たちの身体はその時々の状況に応じて、必要な量の血液を全身に行き渡るようにしなければなりません。例えば、運動をしている時は通常より多くの血液が身体の中を循環し、酸素や栄養を全身に送り届けられる必要があります。そのため、私たちの身体はその時々の状況に応じて心拍出量と血管抵抗を調整し、必要な量の血液が送り届けられるようになっています。

血圧は心拍出量や血管抵抗と密接な関係があります。血圧は血管にかかる圧力のことですが、心拍出量が増え血管の中を巡る血液の量が増えることは血管への圧力を増大させる要因になります。また本来であれば心拍出量が増えたとしても血管抵抗を調整することで血管に過度の圧がかからないようになっていますが、血管が硬くなってしまうと圧をうまく逃せなくなり高血圧症を引き起こします。

具体的な高血圧症の原因は以下の通りになります。

  • 塩分の多い食事
  • 喫煙
  • 肥満
  • ホルモンと関連した病気
  • 妊娠
  • 加齢
  • 更年期
  • 薬の副作用

以下ではこれらの原因と高血圧症の関係について説明していきます。

2. 塩分の多い食事

塩分は化学用語で言うと塩化ナトリウムです。塩分に含まれるナトリウムには身体の中に水分をとどめる作用があります。そのため、塩分のとりすぎは血管内の水分量を増やし、高血圧症の原因になります。

高血圧症の治療を行う際には、塩分制限が非常に大事です。高血圧症の人の塩分摂取量の目標値は1日6g以下です。日本人の塩分摂取量は1日平均10g(男性11g、女性9.2g)とされており、1日6g以下という量は食事の中でかなり塩分の制限を意識しないと難しい量になっています。高血圧症と診断された人は、塩分の制限を意識して食事を行うようにしてください。

参考:平成27年国民健康・栄養調査結果の概要

3. 喫煙

タバコにはニコチンや一酸化炭素といった有害物質が多く含まれています。タバコに含まれている有害物質は動脈硬化を悪化させ、高血圧症の原因になります。そのため、高血圧症の人では禁煙をすることが大事になってきます。禁煙はまずご自身で挑戦し、難しければ最近では禁煙外来といって禁煙を専門としている外来を併設している病院やクリニックもあるので、一度相談してみると良いかもしれません。

また喫煙者のみではなく、まわりにいる非喫煙者もタバコの煙を吸う可能性があります。非喫煙者が喫煙者のタバコの煙を吸ってしまうことを受動喫煙と呼びますが、受動喫煙であっても悪影響があると言われています。もし、ご家族にタバコを吸われている人がいる場合は、受動喫煙を避けるためにご家族の協力も必要になります。

4. 肥満

食べ物から摂取するエネルギーが運動により消費されるものより多い場合、内臓や皮下に脂肪として貯蓄されます。この貯蓄された脂肪は、お腹のたるみや体重増加の原因となり、最終的に肥満を引き起こします。肥満は身体にたまった過剰な脂質が血管などにくっつくことで動脈硬化を起こし、高血圧症の原因になります。

肥満は昔に比べると増加傾向にあります。これは欧米の食事が日本で広まったことや、身の回りの利便性が増すとともにあまり身体を動かさなくても生活できるようになったことが関係しています。

食べすぎに気をつけることや、運動をして消費カロリーを増やすことは、肥満の予防だけでなく、高血圧症の観点からも重要です。

5. ホルモンと関連した病気

身体の中で作られるホルモンには血圧に作用するものがあります。本来は身体の状況に応じてホルモンの量が調節されることで、適切な血圧になるようにコントロールされています。しかし、何らかの理由により血圧の上昇に働くホルモンが過剰に作られるようになると、高血圧症の原因になります。ホルモンと関連した高血圧症の原因となる病気には以下のものがあります。

これらの病気は若い人に高血圧症が見つかった時や通常の治療でもなかなか血圧が下がらないような時に疑われます。以下でそれぞれの病気につき説明していきます。

原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症は高血圧症、浮腫むくみ)、疲れやすさ、脱力などの原因になる病気です。

アルドステロンは腎臓の上にある副腎という小さな臓器で作られるホルモンで血圧を上げる作用があります。原発性アルドステロン症は副腎でアルドステロンが大量に作られる病気で、アルドステロンの作用により高血圧症の原因になります。またアルドステロンにはカリウムという物質を体外に排出する作用もあります。疲れやすさ、脱力といった症状はカリウムが減ることによるものとされます。

原発性アルドステロン症は血液中や尿中のアルドステロンの値をもとに診断していきます。アルドステロンの産生を促すホルモンであるレニンというホルモンも同時に計測されます。

原発性アルドステロン症に対する根治療法は、アルドステロンを大量に作っている副腎を手術で取り除くことです。アルドステロンは身体のナトリウムの濃度を調整するために必要なホルモンの一つですが、副腎は左右2箇所に存在するため、片方の異常な副腎を取り除いても、残った正常な副腎が役割を果たすことができます。

しかし、原発性アルドステロン症の中には左右両方の副腎がアルドステロンを大量に作っている場合があります。このような場合には片方の副腎を取り除いても根治療法にはならず、両方の副腎を取り除くことはできないので、手術療法ではなく、アルドステロン拮抗薬を使います。

クッシング症候群

クッシング症候群は以下のような症状があらわれる病気です。

  • 顔やお腹に脂肪がつく(中心性肥満
  • 妊娠線のような線がお腹にできる(男女関わらず)
  • 皮膚が薄くなる
  • ニキビができやすくなる
  • 体毛が増える
  • 筋力が衰える
  • 生理が止まる(女性の場合)
  • 気分が落ち込む
  • 血圧が高くなる
  • 血糖値が高くなる

クッシング症候群副腎皮質ホルモンという副腎で作られるホルモンが過剰に分泌されることで起こります。副腎皮質ホルモンは血圧上昇作用があるため、クッシング症候群は高血圧症の原因になります。

クッシング症候群の原因、すなわち副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることの原因は、副腎であることもあれば、副腎以外の場所のこともあります。というのも、身体の中には副腎に副腎皮質ホルモンを作るように司令を出すホルモンがあり、この司令を出すホルモンが身体の中でたくさん作られる場合にもクッシング症候群を起こすためです。副腎皮質ホルモンを作るように司令を出すホルモンは副腎皮質刺激ホルモンACTH)と呼ばれ、通常は脳の下垂体と呼ばれる場所で作られます。また時に、がんが副腎皮質刺激ホルモンを作ることがあり、これもクッシング症候群の原因になります(異所性ACTH産生腫瘍と呼びます)。

クッシング症候群の診断は血液中のコルチゾールやACTHの値をもとにします。コルチゾールは副腎皮質ホルモンの一つです。尿中のコルチゾールを診断に用いることもあります。

クッシング症候群の根治療法はクッシング症候群を引き起こしている場所を手術で取り除くことです。例えば、副腎がおかしくなり、副腎皮質ホルモンを大量に作っている場合には、副腎自体を取り除きます。一方で、下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが大量に出ていることが原因でクッシング症候群が起きている場合は下垂体の手術をします。

ただし、クッシング症候群の中には手術ができないような場合もあり、このような時には副腎皮質ホルモン合成阻害薬を使います。

褐色細胞腫

褐色細胞腫は以下のような症状があらわれる病気です。

  • 頭が痛くなる
  • 汗が多くなる
  • 体重が減少する
  • 動悸がする
  • 血圧が高くなる
  • 血糖値が高くなる

褐色細胞腫アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのホルモンを過剰に分泌する腫瘍です。悪性腫瘍(がん)であることも良性腫瘍であることもあります。アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンは通常、副腎の髄質という場所で作られます。アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンには血圧上昇作用があるため、褐色細胞腫は高血圧症の原因になります。

褐色細胞腫の診断は血液中や尿中のアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの値をもとにします。

褐色細胞腫の根治療法はアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンを作っている腫瘍を手術で取り除くことです。ただし、褐色細胞腫があると手術の刺激で血圧上昇を招くので、手術前に必ず血圧をコントロールしてから手術を行います。

腎血管性高血圧症

腎血管性高血圧症は腎臓へ血流を送る血管(腎動脈)が狭くなることが原因で高血圧症が起きる病気です。腎臓は腎臓の血流の量を感知しレニンというホルモンの量を調整しています。レニンには血圧を上げる作用があります。これにより腎臓への血流が落ちそうになったとしてもレニンにより血圧を上昇させ腎臓への血流が保たれる仕組みになっています。

腎血管性高血圧症は、何らかの原因により腎動脈が狭くなったことでレニンが大量に分泌され高血圧症を起こした状態です。腎血管性高血圧症の診断は血液中のレニンの計測や、造影剤を注射して腎動脈が狭くなっていないかを確認することで行われます。造影剤はレントゲンで写る検査用の液で、注射することで血管の形を確認することができます。

腎血管性高血圧症では通常の高血圧症同様、降圧薬を使って治療をしたり、カテーテルにより血管を広げる治療をしたりします。

甲状腺機能亢進症

甲状腺は首の前に位置する臓器で、甲状腺ホルモンなどのホルモンを作る役割があります。甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰になる病気で、以下のような症状を現します。

  • 目が飛び出す(眼球突出
  • 首の前側が腫れる(甲状腺腫大)
  • 手足が震える
  • 突然手足の力が入らなくなり、しばらくすると戻る(周期性四肢麻痺
  • 脈が早くなる
  • 下痢になる
  • イライラする
  • 汗をかきやすくなる
  • 疲れやすくなる
  • 体重が減る
  • 血圧が高くなる
  • 血糖値が高くなる

甲状腺機能亢進症の診断は血液中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値をもとに診断していきます。甲状腺刺激ホルモンは甲状腺ホルモンを作るように司令を出すホルモンです。

甲状腺機能亢進症が起こる原因はいくつかあり、その原因により治療法は異なります。代表的な原因に甲状腺を刺激するTRAbやTSAbといった物質が作られることで甲状腺機能亢進症を起こすバセドウ病という病気があります。バセドウ病の場合の治療には抗甲状腺薬の内服、手術、アイソトープ治療などがあります。抗甲状腺薬は甲状腺ホルモンを作るのを抑える薬です。アイソトープ治療は放射線を使って甲状腺の機能を落とす治療法です。どの治療法を選ぶかはバセドウ病の状況や妊娠をしているかなど様々な状況を踏まえて考えます。詳しくは「バセドウ病の詳細情報」で説明しています。

6. 妊娠

もともと高血圧症でなかった人に、妊娠がきっかけで高血圧症が起こることがあります。これを妊娠高血圧症候群と呼びます。妊娠20週から産後12週の間に高血圧症を起こした場合に妊娠高血圧症候群と診断されます。妊娠高血圧症候群は全妊婦の7-10%で起こります。以下に該当する人は妊娠高血圧症候群になりやすいとされています。

  • 35歳以上の妊婦
  • 多胎(双子など)
  • 肥満
  • 腎臓の病気、糖尿病などの病気がある
  • 初回妊娠
  • 家族歴(母親が妊娠高血圧症候群を起こしたことがある)

妊娠高血圧症候群は重症化すると痙攣を起こしたり、腎障害などを起こすことがあるため、注意が必要です。また赤ちゃんの発育が悪くなったり、最悪の場合、赤ちゃんが死亡してしまうこともあります。

妊娠高血圧症候群では食事の塩分制限を行ったり、血圧を下げる薬を使って治療します。血圧を下げる薬としては、お母さん・赤ちゃんへの影響が少ないとされるメチルドパ(商品名:アルドメット®︎)が使われます。

妊娠高血圧症候群は妊娠自体が高血圧症の原因となっているので、根本的な治療はなるべく早く出産に至ることです。そのため、赤ちゃんがお母さんのお腹の中で十分に発育すれば、早めの分娩がすすめられます。

参考:日産婦誌 2006;58(5),N-61

7. 加齢

年齢を重ねると動脈硬化が進むので、若い人より血圧が上がりやすくなります。実際、高血圧症に該当するのが30代では男性20%、女性5%であるのに対し、70代では男性80%、女性70%だったという統計があり、年齢を重ねた人では高血圧症の人が多いことがわかります。

一方で、年齢を重ねた時に血圧が上がるのは、脳や腎臓に繋がる血管が細くなることで、十分量の血流を送るために血圧上昇が引き起こされるという側面もあります。そのため、年齢を重ねた人では過度に血圧を下げるとめまいや腎障害の原因になることもあります。そういった背景から、年齢を重ねた人では降圧療法を行う時の血圧の目標値が若い人よりも緩めに設定されています。

参考文献
・日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会/編, 高血圧治療ガイドライン2014, ライフサイエンス出版, 2014

8. 更年期

50歳前後の女性の方では、イライラしたり、のぼせたり、動悸がしたりといった更年期の症状に悩まされることがあるかもしれません。実は更年期を迎えた女性は高血圧症にもなりやすいことがわかっています。これは、更年期の頃から不足するエストロゲンという女性ホルモンと関連があります。エストロゲンには一酸化窒素などの血管を広げる作用(血管拡張作用)を持つ物質の産生を促す作用があります。そのため、更年期になりエストロゲンが欠乏すると血管が細くなり血圧上昇が起こります。

更年期の高血圧はエストロゲンの産生低下が原因であるので、食事療法や運動療法だけでの改善が難しい場合もあります。食事療法や運動療法だけでの改善が難しい場合には、薬物療法の併用も検討されます。

9. 薬の副作用

高血圧症は薬の副作用で起こることがあります。ここでは以下の薬について説明します。

  • NSAIDs
  • ステロイド薬
  • ピル(経口避妊薬
  • 甘草を含む漢方薬

これらの薬剤が原因で高血圧症が起きている場合には、薬を中止することで高血圧症の改善が見込めます。ただし、もともとの病気の関係上、薬を中止できない場合もありますので、対応については担当の医師との相談が必要となります。それぞれの薬の作用について以下で詳しく説明していきます。

NSAIDs(鎮痛薬)

鎮痛薬の中でNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる薬は高血圧症の原因になることがあります。NSAIDsはシクロオキシナーゼ(COX)という酵素を阻害しプロスタグランジンという痛みの原因となる物質を抑えることで鎮痛薬としての効果を発揮します。この作用から、NSAIDsは痛み止めとして様々な状況で用いられます。一方で、プロスタグランジンには血圧を下げる作用もあるため、NSAIDsを使うことで血圧上昇の原因になることがあります。NSAIDsは市販の鎮痛薬としても多く販売されている薬です。

代表的なNSAIDsには以下があります。

  • ロキソプロフェンナトリウム(主な商品名:ロキソニン®)
  • ジクロフェナクナトリウム(主な商品名:ボルタレン®)
  • セレコキシブ(商品名:セレコックス®)

NSAIDsを飲んでいて高血圧症が起きてしまった場合には、他の種類の鎮痛薬に切り替えることで対応することが多いです。

ステロイド薬

ステロイド薬は身体の中で血圧や血糖値を上昇させる作用のあるホルモンをもとに作られた薬です。ステロイド薬は炎症を抑える作用があり、治療薬として用いられます。この場合、副作用として高血圧が問題になることがあります。ステロイド薬には内服薬、点滴薬、外用薬点眼薬、吸入薬など様々な剤型がありますが、高血圧症になる可能性があるのは内服薬、点滴薬です。

ステロイド薬による高血圧症は薬を減量したり、中止したりすると改善することが多いです。一方、病気によっては、ステロイド薬を長期間内服しなければならないこともあり、ステロイド薬を中止できない場合には、血圧を下げる薬を使って対応することが多いです。

ピル(経口避妊薬)

ピルも高血圧症の原因になることがある薬剤です。ピルは避妊の目的や月経困難症などで使われる薬剤で卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンを配合して作られています。

ピルによる高血圧症は、ピルを中止することで改善することが多いです。また、ピルが血圧をあげてしまう作用があることから、もともと血圧が高い場合にはピルの使用を制限されることがあります。

甘草を含む漢方薬

漢方薬(漢方方剤)は自然由来の生薬成分から構成されている薬ですが、生薬のひとつである甘草(カンゾウ)が高血圧症の原因となることがあります。

マメ科のカンゾウ属植物を由来とする甘草は痛みや筋肉の痙攣を抑えるなど多様な効果が期待でき、漢方方剤の約7割に含まれる生薬成分です。漢方薬の中でも甘草の含有量が比較的多いものに甘草湯(カンゾウトウ)や芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)、甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)などがあります。

甘草を含む漢方薬による治療中に血圧上昇がみられた場合は医師や薬剤師に相談するようにしてください。