高血圧症の症状:頭痛、めまいなど
高血圧症では頭痛やめまいなどが起こることもありますが、何も症状が現れないことの方が多いです。また、急激な血圧上昇は脳出血、心筋梗塞、急性大動脈解離などの危険な病気の一症状であることがあるので注意が必要です。
1. 高血圧症には自覚症状はほとんど無い?
血圧は高くても自覚症状が何も現れないことが多いです。そのため、高血圧症は診断が遅れやすい病気であり、健診などで偶然に見つかることもあります。また、ほとんど症状がないことで見つかっても治療の必要性を感じにくくしています。
しかし、高血圧症を治療していない状態が続くと
2. 高血圧症の症状
高血圧症は何も症状がないことが多いですが、一部の人で頭痛、めまい・ふらつき、
これらの症状が高血圧症が原因で起きている場合には、高血圧症の治療により症状を改善することができます。以下ではこれらの症状とその注意事項について説明します。
頭痛
高血圧症が原因でズキズキとした頭の痛みが起きることや頭が重いと感じることがあります。高血圧症が原因の頭痛の場合はそれほど強い痛みでないことが多いです。高血圧症が原因で頭痛が起きている場合には、血圧が下がると症状もよくなります。
もし、バットで殴られたような非常に強い痛みがある場合や吐き気を伴う場合には注意が必要です。激しい頭痛や吐き気を伴う場合には、頭の中で出血(脳出血など)が起きた結果、血圧上昇が起きている可能性があるためです。突然の激しい頭痛を感じた場合は医療機関をすぐに受診するようにしてください。
めまい・ふらつき
めまいやふらつきも高血圧症が原因で起こることがある症状です。ぼーとすることも、ふわふわした感じがすることもあります。高血圧症が原因の場合にはそれほど症状が強くないことが多いです。高血圧症が原因で起きているめまい・ふらつきの場合には、血圧が下がると症状もよくなります。
めまいやふらつきの症状が強い場合には注意が必要です。血圧上昇と強いめまい、ふらつきを起こす病気に脳梗塞があるためです。脳梗塞は緊急で治療が必要な病気になります。強いめまいやふらつきの症状がある場合は医療機関で調べてもらうようにしてください。
動悸(どうき)
高血圧症が原因で動悸が起こることがあります。何か他の病気がなくても血圧が上昇しただけで動悸が起こることもありますが、心不全などのように危険な病気が原因で動悸と血圧上昇が起こることがあるので注意が必要です。特に動悸や血圧上昇に加えて息苦しさや胸の痛み、冷や汗などがある場合には心不全がより疑わしくなります。
血圧上昇とともに動悸の症状がある場合には医療機関で調べてもらうことをお勧めします。
3. 血圧上昇と関連する危険な病気とその症状
突然の血圧上昇が脳や心臓などの重大な病気のサインであることがあります。突然の血圧上昇を起こす危険な病気としては以下のものがあります。
これらの病気が起こると、脳や心臓など重要な臓器へ血液が行き渡らなくなります。その結果として、血圧を上昇させて脳や心臓に血液を送ろうとします。これらの病気は最悪の場合、命に関わることもあります。
以下ではこれらの病気の具体的な症状について説明していきます。ここで説明する症状に該当する場合には、医療機関で調べてもらうようにしてください。
脳梗塞
脳梗塞は脳の血管の一部が詰まり、脳に必要な栄養や酸素が行き届かなくなることで脳細胞が
- 突然片方の手や腕、足に力が入りにくくなった
- まっすぐ歩いているつもりなのに、片側へ寄ってしまう
- 文字がうまく書けなくなった
- 突然、手でものを落とすようになった
- よだれがこぼれるようになった
- 顔の半分が歪んで、左右差が出てきた
脳細胞は一度壊死するともとには戻らないため、脳梗塞を起こすと運動や感覚の
脳梗塞を起こした直後に血圧が上昇するのは、詰まってしまった脳に血液を送ろうとするためと考えられています。そのため、脳梗塞が原因で起きた血圧上昇の場合には、基本的に血圧を下げる治療は行いません。
上記の症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしてください。脳梗塞について詳しくは「脳梗塞の詳細情報」で説明しています。
脳出血
脳出血は脳の血管が破れることで起こります。脳の血管が破れることで必要な栄養や酸素が行き届かなくなったり、血のかたまり(
脳出血も脳梗塞と同様、脳細胞の壊死範囲が発症後、時間経過と共に広がっていくため、早急に治療を行う必要があります。脳出血の治療は出血の起きている場所にもよりますが、薬物療法や手術療法などが行われます。脳出血を起こした直後に血圧が上昇している場合には、血圧上昇の持続が出血を拡大させてしまう可能性があるので、血圧を下げる治療を行います。
狭心症
狭心症は心臓に血液を送る血管(
狭心症の症状には以下のようなものがあります。
- 胸の痛みや胸が締め付けられる感じ(通常は10分程度でおさまる)
- 息切れ
- 冷や汗
- 肩の違和感や痛み
- 吐き気
冠動脈は右に1本(右冠動脈)と左に2本(左冠動脈前下行枝、左冠動脈回旋枝)存在します。狭心症は冠動脈が狭くなることで心臓に必要な量の栄養や酸素が行き届かなくなることで起こります。そのため、初期の狭心症では運動をした時など、必要な栄養や酸素の量が増えた時に狭心症の症状があらわれることが多く、その症状は10分程度と一時的です。
似た病気に心筋梗塞がありますが、心筋梗塞は狭心症がさらに悪くなり、冠動脈の一部で完全に血流が途絶えた状態です。心筋梗塞では心臓への栄養や酸素の供給が完全に途絶えるため、心筋は壊死を起こします。心筋梗塞による壊死の範囲が広いと、心臓がポンプ機能を果たせなくなり、全身へ血液を送れなくなるため、最悪の場合、命に関わります。
狭心症が見つかった場合には、心筋梗塞になる前に治療を行う必要があります。治療法には、薬物療法や、カテーテルという細い管を使って狭くなった冠動脈を拡げる治療(カテーテル治療)があります。
上記の症状がある場合には、医療機関で調べてもらうことをお勧めします。狭心症について詳しくは「狭心症の詳細情報」でも説明しています。
心筋梗塞
心筋梗塞は心臓に栄養や酸素を送る血管(冠動脈)の血流が完全に途絶えることで胸の痛みや冷や汗、吐き気などの症状が現れる病気です。狭心症と症状は似ていますが、違いとして胸の痛みやしめつけの持続時間があります。狭心症の胸の痛みやしめつけの症状は30分以内(通常10分程度)でおさまるのに対し、心筋梗塞は30分たってもおさまらないことが多いです。
心筋梗塞は冠動脈の血流が完全に途絶えることで心筋の壊死が起こります。一度、壊死した心筋はもとに戻らず、また発症後、時間経過と共に壊死の範囲が広がっていくため、心筋梗塞は見つかり次第早急に治療を行う必要があります。心筋梗塞の治療としては薬物療法やカテーテル治療、手術(冠動脈バイパス術)を行います。
心筋梗塞は冠動脈の一部で完全に血流が途絶えることで起こります。狭心症が進行して心筋梗塞になることが多いです。狭心症の中でも胸の痛みやしめつけなどの症状が安静時にもある場合や、その症状の頻度が増えてきている場合は不安定性狭心症と呼ばれ、心筋梗塞になりかけている状態であると考えられています。そのため、このような不安定性狭心症の症状がある場合や、胸の痛みやしめつけの症状が30分経ってもおさまらない場合には、すぐに医療機関で調べてもらうことをお勧めします。心筋梗塞について詳しくは「心筋梗塞の詳細情報」で説明しています。
心不全
心臓は収縮したり拡張したりすることで全身に血液を送るポンプとしての働きをしています。心不全はこの心臓のポンプとしての機能が十分に果たせず、十分量の血液を送り出せないことで息苦しさや
心不全の症状には、以下のようなものがあります。
- 息苦しさ(横になると症状が強くなる)
- むくみ
- 痰の絡む咳
- 動悸
- 冷や汗
- 胸の痛み
心臓から送り出された血液は酸素や栄養を届ける役割があります。心不全になり血液が十分に送り出せなくなると、全身に酸素や栄養が届けられなくなり、最悪の場合、命に関わることがあります。心不全の治療としては、酸素療法や薬物療法などを行います。心不全で血圧上昇が起きている場合には、血圧を下げる治療も平行して行います。血圧が高いことで、心臓が全身に血液を送ることが難しくなっているためです。
上記の症状がある場合には、医療機関で調べてもらうことをお勧めします。心不全について詳しくは「心不全の詳細情報」で説明しています。
急性大動脈解離
急性大動脈解離は
急性大動脈解離は動脈が裂けた場所で、非常に強い痛みが起こります。例えば、心臓近くで裂けると、激しい胸の痛みとして自覚されますし、背中の高さで裂けると背中の激痛、腰の高さで裂けると激しい腰痛を起こします。痛みの程度としては悶えるほどのもので、冷や汗や血圧上昇を伴います。
急性大動脈解離は非常に危険な病気で、緊急で治療をしないと命に関わることがあります。血圧が高い状態は急性大動脈解離の状態をさらに悪化させるため、血圧を下げる治療が必要になります。大動脈解離を起こした部位によっては緊急手術が必要な場合もあります。
突然の胸・背中・腰の痛みに加えて血圧上昇がある場合には、医療機関で調べてもらうことをお勧めします。