大腸がんによる腸閉塞・イレウスとは?治療方法や原因など
大腸はホースのような形をしています。腸の中を消化された食べ物や飲み物が通過します。しかし、何らかの影響で腸管の中を物がうまく流れていかなくなってしまうことがあります。これを腸閉塞やイレウスと言います。大腸がんになると腸閉塞やイレウスが起こりやすいです。
1. 腸閉塞・イレウスとは?
ホースのような構造をしている腸管の中を流れている食べ物や飲み物が、何らかの影響を受けてうまく流れなくなることがあります。これを腸閉塞またはイレウスと言います。腸閉塞・イレウスはいろいろな原因で起こり、原因によって分類できます。
※腸閉塞とイレウスは同じものと説明される場合もありますが、区別する立場もあります。このページでは腸閉塞とイレウスを厳密に区別せず説明します。
大腸がんから腸閉塞に至る多くの場合は、機械性腸閉塞の中の単純性腸閉塞になります。単純性腸閉塞は、大腸がんが大きくなって腸の中を塞いでしまったり、隣り合った腸を押し潰してしまったりすることで起こります。
しかし、
機能性腸閉塞というのは腸の動きが悪くなった状態です。腸はただの管ではなく、締まったり緩んだりを繰り返すことで中身を肛門側に送り出しています。腸の動きが悪くなると腸閉塞になることがあります。大腸がんによる機能性腸閉塞は多くはないですが、
実際に腸閉塞になった場合はどういった症状が出るのでしょうか。
腸閉塞になるとどんな症状が出る?
腸閉塞になると、口から入ったものが肛門に流れていかなくなるため、腸管の中が飽和状態になり腸管内の圧力が高まります。すると、腹部は膨れ上がり(膨満し)以下のような症状が現れてきます。
- お腹の張り
- 腹痛
- 悪心
- 嘔吐
- 下痢
下血 - 意識朦朧
これらの腸閉塞の症状は、治療して再び食べ物が通過するようになるとウソのように消えてしまうことも多いです。
大腸がん患者は腸閉塞になりやすい?
大腸がん患者は腸閉塞になることがあります。大腸がんのない人が腸閉塞になる確率よりも、大腸がんのある人が腸閉塞になる確率のほうが高いです。
大腸がんによる腸閉塞は、単純性腸閉塞・複雑性腸閉塞・麻痺性腸閉塞のいずれもありえます。原因が複数あることに注意が必要です。
大腸がんの中では肛門側の大腸がん(直腸がんや左側結腸がんなど)で腸閉塞が起こりやすいとも言われています。
今まで手術を受けたこともなければ腸閉塞になったこともない人が突如として腸閉塞になった場合は、大腸がんの存在がないかを調べなくてはなりません。もちろん腸閉塞の原因は大腸がんのほかにもいろいろありますが、大腸がんがある可能性も忘れてはいけません。
もし大腸がんを見逃すと進行してしまうリスクがあるので、腸閉塞の原因が不明の場合は大腸がんの検査を行うほうが良いでしょう。
2. 腸閉塞の治療法は?
腸閉塞は食べたものを腸がうまく運べていない状態です。動かない部分よりも口側の腸は詰まったものによって圧力が高まってパンパンにふくれてきます。パンパンにふくれることで腹痛や腹部の違和感が現れます。
腸閉塞の原因を取り除くための治療を行う必要がありますが、その程度や原因によって治療法は異なってきます。主に行われる治療法は以下になります。
- 絶飲食
- 食事を取らないことで腸にかかる負担や圧力を軽減する
- イレウス管挿入
- 鼻から小腸にまで到達できる細いチューブを挿入して腸の中身を逃がし、腸に掛かる負担や圧力を軽減する
- 補液
- 絶飲食中に必要な水分と栄養を補給する
- 手術(外科的治療)
- 腸に詰まっているものを取り除いたり、機能の低下した腸を切除したりする
腸閉塞が起こった場合は、絶飲食と補液を行って様子を見ることが多いです。腹痛や嘔吐などの症状が強い場合は、その原因に応じてイレウス管が検討されます。手術をせずに
腸閉塞の治療に手術は必要?
腸閉塞に対して手術を行わなければならない場面はどういった時でしょうか。ケースバイケースではありますが、以下の場合には手術が検討されます。
ここに挙げた状態でない場合は手術しなくても改善することが多いので、
複雑性腸閉塞に至っているかどうかの判断は簡単ではありません。しかし、以下のポイントを押さえておくと判断がしやすくなります。
- 腹痛や吐き気などの症状が非常に強い
- 症状が休まることなく持続している
- 症状の進行が早い
- 全身が衰弱している
- 意識がはっきりしなくなる
これらの症状が出ている場合は、必ず医療機関を受診しなくてはなりませんし、治療のために手術を受けることになる可能性があると思っておいたほうが良いかもしれません。
また、どうしても手術が必要であるが手術を受ける体力がない場合や手術まで時間があいてしまう場合に
3. 大腸がんの手術が腸閉塞の原因になる?
大腸がんに限らずお腹の手術を受けるとその後腸閉塞になることがあります。腸閉塞の中でも麻痺性腸閉塞や
術後の腸閉塞は予防できる?
手術後の腸閉塞を完璧に予防する方法はありません。しかし、排便のリズムをきちんと整えておくことは腸閉塞になる確率を下げてくれます。つまり、便秘にならないように日頃から生活習慣に気をつけておくことが大切です。実際には以下のことに気をつけておくと効果的かもしれません。
- 食物繊維を適度に摂って便秘にならないように心がける
- 水分をきちんと摂る
- 運動を行う
- 排便リズムを大切にする
- 緩下薬(便を柔らかくする薬)や腸管蠕動運動促進薬(お腹の動きを良くする薬)を用いる
しかし、海藻で食物繊維を摂りすぎると腸管が詰まりやすくなることも分かっていますので、海藻類の摂取は少量に留めることを心がけると良いかもしれません。
なお、緩下薬や腸管運動促進薬は皆が皆使えば良い薬ではありません。食事や運動に気を付けたけれどもどうしても便秘になってしまう人が使う薬と思ってください。腸閉塞の予防に使う薬について考えていきます。
腸閉塞にならないようにする薬はあるのか?
腸閉塞に絶対ならないようにする薬はありませんが、腸閉塞を起こしにくくする薬はあります。以下のものが腸閉塞の予防効果が期待できる薬です。
- 緩下薬(主なもの)
- マグネシウム製剤(マグラックス®、マグミット®など)
- 腸管蠕動運動促進薬(主なもの)
- 大建中湯(ダイケンチュウトウ)
- パントテン酸(パントール®など)
- モサプリド(ガスモチン®など)
- アコチアミド(アコファイド®など)
緩下薬(かんげやく)は便を柔らかくして排便しやすくする薬です。緩下剤(かんげざい)とも言います。腸管蠕動運動促進薬は、腸の動きを良くして排便しやすくする薬です。蠕動(ぜんどう)というのは腸が消化物を送り出す動きのことです。
このように腸閉塞を予防するであろう薬は存在します。とはいえ、あらゆる薬には必ず副作用のリスクが伴うことを忘れてはいけません。安易に薬に頼ろうとしたばかりに、副作用に苦しむことになる場合も少なくないのです。そのため、便秘が起こらないように食事と運動を改善したのに、どうしても便秘がちになってしまう時に薬を使うことが最も良いと思われます。
食事と腸閉塞の関係は?
暴飲暴食は腸閉塞を起こしやすくします。また、大食いや早食いも消化するのが大変になりますので、腸閉塞が起こりやすくなります。
また、食べる品目によっても気をつけなければならないものがあります。以下のものは便秘を起こすことがあるので摂り過ぎに気をつけてください。
- 海藻類
- キノコ類
- 甲殻類
- イモ類
ここでの注意点は、摂り過ぎが良くないということであって極度に避ける必要はないということです。バランスの良い食事習慣に気をつけて排便リズムを安定させることが何よりも重要になります。
4. 大腸がんによる腸閉塞とステージの関係は?
大腸がんの進行度の指標として
大腸がんが原因となって腸閉塞を起こす場合は、腫瘍が大きくなって腸管を満たしてしまった場合が多いです。腫瘍が大きくなるということはステージも進んでいるのではないか、と心配になるかもしれません。しかし、大腸がんのステージを決定するのは、腸管への深達度・
以上から、大腸がんの方の腸閉塞とステージはあまり関係ないと考えて良いでしょう。
大腸がんで腸閉塞になったら末期なのか?
まず押さえておかなければならないポイントは、ステージ4のがんだからといって決してがんの末期とは限らないということです。
がんの末期を明確に定義するものはありませんが、身体の状態とがんの進行度のどちらもが関係していると考えてください。つまり、がんが進行していても身体の状況が元気であれば決して末期がんというわけではないということです。治療も難しく以前の日常生活を送ることができないほどがんによって身体状態が悪化した時を末期がんと考えるのが通常です。
大腸がんが原因で腸閉塞になった場合は、大腸がんが非常に大きくなっていたり腹膜播種が起こっていたりします。しかし、腸閉塞が起こっていても必ずしも末期がんというわけではありません。腸閉塞になっても治療後に回復可能なことも多いですので、その場合は末期とは言い難いです。
大腸がんの腹膜播種による腸閉塞とは?
大腸がんが腹膜播種した場合に腸閉塞が起こることがあります。
腹膜播種とはがん細胞が腹膜に到達して増殖することを指します。腹膜は腹腔と呼ばれる空間を覆う膜のことです。腸管の外側にも腹膜があります。
腸管の腹膜でがん細胞が増殖すると、腸に
腹膜播種で起こる腸閉塞はがん細胞による炎症が原因ですので、大腸がんの治療を行うことが腸閉塞の治療にもなることが多いです。そのため、大腸がんと腸閉塞の状況を考えながら、治療法を選択していくことになります。