アモキシシリン(サワシリン、パセトシン)250mgは溶連菌の薬?副作用や効能は?

この記事のポイント
ペニシリン系抗生物質のアモキシシリン(商品名:サワシリン®、パセトシン®)は非常によく使われますが、どんなときに飲むと良い抗生物質なのでしょうか?感染症内科医の経験から説明していきます。
◆サワシリンってどんな抗性物質なの?
アモキシシリン(商品名:サワシリン®、パセトシン®)はペニシリンと呼ばれる
ペニシリンは第二次世界大戦の時代に青カビから発見された抗生物質です。その後改良がなされて1972年にサワシリンが世に出されました。
それ以降に数多くの抗生物質が作られてきているのですが、サワシリンは今でも現役で重宝されています。それだけ昔の薬がどうして今も必要とされているのでしょうか?
◆サワシリンが効果を発揮する病気
抗生物質には適応症というものがあります。
抗生物質ごとに決まった適応症であれば、抗生物質はよく効くことになります。
サワシリンにはどんな適応症が決められているのでしょうか?
- 表在性皮膚
感染症 、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節 炎、慢性膿 皮症 - 咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器
病変 の二次感染 - 膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、淋菌感染症、梅毒
- 子宮内感染、子宮付属器炎、子宮旁結合織炎
- 涙嚢炎、麦粒腫
- 中耳炎
- 歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
- 猩紅熱
- ヘリコバクターピロリ菌感染症
ここに挙げられた感染症は、皮膚から耳の感染まで非常に多岐にわたっています。
また、ヘリコバクターピロリ菌といった特殊な菌による感染症に対しても効果を発揮します。
◆サワシリンの優れている点
サワシリンは古くからあるペニシリン系の抗生物質で、多くの優れた点があります。
どういった点で優れているのかを以下で詳しく説明していきます。
◎肺炎球菌に対してよく効く
サワシリンは
肺炎球菌は、肺炎や髄膜炎や中耳炎、菌血症などを起こす菌です。
古くからサワシリンは使われていますが、ほとんどの肺炎球菌に対してサワシリンは有効です。(ただし、髄膜炎の場合はペニシリンの効きにくい肺炎球菌が増えるというデータが有りますので、明らかにぐったりしていたり、頭痛がひどかったりする場合は、サワシリン以外の点滴薬を使う方がよいでしょう。)
◎溶血性連鎖球菌(溶連菌)に対してよく効く
サワシリンは溶連菌の感染症によく効きます。溶連菌は、咽頭炎や扁桃炎や菌血症、椎体炎などを起こす菌です。他の抗生物質は溶連菌の
◎梅毒に対してよく効く
16世紀にはすでに性病として有名であった梅毒ですが、ペニシリンの出現によって現在は問題なく治療できる感染症になっています。
ペニシリン以外の抗生物質の中には梅毒の治療に使えるものもありますが、今でもサワシリンは梅毒の治療薬として優れています。
◎色々な菌に対して抗菌作用がない
サワシリンはあまり広範囲の
一見これは今ひとつに聞こえると思いますが、実は非常に大きな利点になります。
どういうことでしょうか?まずは常在菌の
身体の中の常在菌は、身体を守る免疫の役割を担っています。
その詳細は以下のとおりです。
- 腸の中には多くの常在菌が、腸に流れていきた食べ物の一部を食べてエネルギーを得ている
- 腸の中にはときどき感染の原因となる細菌が入ってくる
- 侵入した細菌は常在菌にとってはよそ者であるので、常在菌は自分のエサを取られまいと侵入者を攻撃してくれる
幅広い菌に対して効いてしまう抗生物質では、この常在菌もまとめて殺してしまうことで、かえって免疫力を低下させてしまうという落とし穴があります。
しかし、サワシリンはあまり多くの菌には効かないことで常在菌を殺さないという優れた点があります。
◆サワシリンを飲むとどんな副作用が出るのか?
どんな薬にも必ず副作用があります。あまりサワシリンの副作用は多くありませんが、もちろん存在します。サワシリンの主な副作用は以下のとおりです。
- 胃腸の障害:下痢や軟便
- 皮膚の障害:
発赤 、水ぶくれ、皮がむける、痛み、かゆみ、唇や口の中のただれ - 腎臓の障害:むくむ、尿が少なくなる
また、まれですが顔面が蒼白になったり息が苦しくなったりすることがありますが、この
サワシリンを飲んで体調がおかしくなった自覚がある人は、一度かかりつけのお医者さんに相談すると良いでしょう。
◆サワシリン特有の困った点
ここまでサワシリンの良い点を述べてきましたが、サワシリンには困った問題もあります。
以下に説明していきましょう。
◎有効でない菌は多い
サワシリン飲んでも効かない菌は少なくありません。
飲むことで非常に有効と考えられてる菌は次に挙げるものになります。
- 肺炎球菌
- 溶血性連鎖球菌(溶連菌)
- 梅毒トレポネーマ
上に挙げた3つの菌が関与している感染症に対しては、サワシリンは非常に大きな効果を発揮します。しかし、それ以外の菌が関与している感染症を疑った場合は使うのを避けたほうが良いです。
また、性病に対してサワシリンを処方されることがありますが、サワシリンは性病の中でも梅毒にしか効果がありません。
そのため、梅毒以外のほとんどの性病の治療においては、サワシリンで治療しても治りませんので注意して下さい。
◎薬の相互作用にも注意が必要
サワシリンは他の薬との相互作用の少ない抗生物質です。
主に注意すべきは3つの薬になります。
- ワーファリン
ワーファリンの効果を増強して血がサラサラになりすぎてしまいます
経口避妊薬
経口避妊薬の効果を弱めてしまうの注意が必要です
- プロベネシド
サワシリンの血液中の濃度が上昇します
以上の3つの薬を飲んでいる人は、サワシリンを処方されたらお医者さんや薬剤師に一度確認してみましょう。
◆サワシリンを使うならこんなことに注意しよう
サワシリンを使うにあたって、知っておくべきことが何点かあります。
それらを説明していきます。
◎サワシリンは妊娠中に飲んで良いのか?
サワシリンは妊婦でも安全に飲める薬と言われています。実際に多くのデータから胎児に影響が出ないことが示されています。
とはいえ、絶対に影響がないとはいえないのも事実ですので、もし妊娠されているのであれば、サワシリンが本当に治療に必要である時以外は飲まないようにしましょう。
ほんとうに必要なのかどうかはケースバイケースになりますので、妊娠中に抗生物質を処方される場合は、必ず処方するお医者さんにその抗生物質が必要なのか尋ねると良いでしょう。
◎サワシリンの上手な飲み方
子どもの場合、サワシリンが飲みにくくて飲めないことがあります。
サワシリンは飲みやすいように柑橘系の風味がついていますが、それでも飲めないという場合があるでしょう。
しかし、サワシリンに限らず、抗生物質は1日に決められた回数をきちんと飲まないと効果が出ません。(サワシリンは1日に3-4回飲まなくてはなりません。)
そのため、飲めないという状況は避けなくてはなりませんので、内服補助ゼリーなどを使って飲む工夫をすると良いでしょう。
サワシリンは使い方次第で非常に有効な抗生物質です。お医者さんがサワシリンの特徴を熟知することはもちろん大切ですが、患者さん自身も積極的にお医者さんに質問し、納得したうえで抗生物質を出してもらいましょう。
どうしてこの薬を私は飲むのだろうといった疑問は、外来で遠慮無くお医者さんに伝えましょう。
お医者さんは薬を処方した理由を教えてくれますし、その理由を知って納得した上で治療することで、今度の人生で同じ病気になったときに活きてくることでしょう。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。