2016.03.14 | コラム

溶連菌感染症の治療薬、抗生物質の種類によって効果が違う?子供のために必要な薬の知識について解説

溶連菌感染に対して用いられるべき抗生剤
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この記事のポイント

溶連菌感染症の治療薬、抗生物質には様々な種類があります。子供の発熱や喉の痛みに直面した時、処方される薬について正しい知識が必要です。溶連菌感染症の薬について詳しく解説します。

1. 溶連菌感染症になぜ薬が必要なの?

溶連菌感染症は子供に多い病気で発熱やイチゴ舌といった症状が見られます。溶連菌感染症の治療は主に薬が用いられます。なぜ薬によって症状が良くなるのでしょうか?まずは、溶連菌感染症の解説から始めます。

溶連菌とは正式には連鎖球菌属の中で溶血性をもつ細菌(溶血性連鎖球菌)のことをあらわし、グラム陽性球菌という種類に属します。溶血性連鎖球菌にはいくつかの種類がありますが、一般的に「溶連菌」というと多くは「A群溶血性連鎖球菌」のことをあらわします。この菌はヒトの咽頭粘膜(鼻や口の奥にある部分の粘膜)に感染しやすい特徴を持っていて咽頭炎扁桃炎の他、猩紅熱蜂巣炎丹毒などを引き起こす場合もあります。小児における溶連菌感染症では喉の痛み、発熱、(舌にイチゴのようなツブツブができて赤くなる)イチゴ舌、発疹、頭痛、首すじのリンパ節の腫れなどが代表的な症状となります。身近にいる人へ飛沫感染などで感染し子供に多い病気ですが、大人でもかかることもあり注意が必要です。溶連菌感染症を改善するには薬が用いられることが多いです。

 

2. 溶連菌感染症の薬、抗生物質とは?

溶連菌感染症の治療は抗生物質抗菌薬)による薬物治療が中心になります。通常、ペニシリン系の抗菌薬が使われ10日間ほどの継続使用によって多くの場合、高い治療効果が得られます。

溶連菌感染症ペニシリン系抗菌薬の中でよく使われる薬剤は内服薬であればアモキシシリン(主な商品名:サワシリン®、パセトシン® など)です。注射剤ではアンピシリン(製剤名:ビクシリン®注射用)などが使われています。

基本的には、ペニシリン系の抗菌薬が第一選択薬となりますが、場合によってはセフェム系という種類の抗菌薬であるセフジニル(主な商品名:セフゾン®)、セフジトレンピボキシル(主な商品名:メイアクト®MS)、セフカペンピボキシル(主な商品名:フロモックス®)などの薬剤を使用する場合もあります。(セフェム系抗菌薬を使用する場合、一般的に5日間の継続使用が推奨とされています)しかし、ここに挙げたタイプのセフェム系抗菌薬の飲み薬は吸収力が非常に悪いので、腸内の菌交代(本来存在するべき腸内細菌が抗菌薬の影響を受けて別の細菌に入れ替わること)が起こりやすいため、使用することがおすすめできません。

ところで抗菌薬というとよくセットで浮かぶ(?)のが抗菌薬が効かない(又は効きにくい)耐性菌の問題です。幸いなことに、溶連菌に対するペニシリン系抗菌薬は高い効果が得られることが多く、耐性菌の報告もまれです。ペニシリン系抗菌薬(又は類似した化学構造をもつセフェム系抗菌薬)にアレルギーなどがある場合は、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシン など)を使用する場合もありますが、こちらはペニシリン系抗菌薬に比べると耐性菌の出現頻度が高く耐性化が進んでいるという現状もあり、注意が必要とされています。

 

3.  溶連菌の抗生物質「アモキシシリン製剤」は効果が大きい?処方量をしっかりと飲むためには?

溶連菌感染症に高い効果をあらわす抗生物質(抗菌薬)であるアモキシシリンを使用する場合、小児であれば一般的には体重1kgあたりアモキシシリン水和物として「30〜50mg/kg」を1日の服用量として使用します。仮に、体重20kgの人が溶連菌感染症にかかった場合はアモキシシリン水和物として600〜1000mgを1日数回に分けて服用することになります。

アモキシシリン製剤の剤形には散剤(粉薬)の他、カプセル剤や錠剤がありますが溶連菌感染症は子供に多い病気ということで散剤が使われることが多いとも言えます。

そこで先ほどの「体重20kgの溶連菌患者に対するアモキシシリン量」を実際の散剤の製剤量で考えてみます。

アモキシシリンの散剤製剤の中でも代表的な製剤である「サワシリン®細粒10%」及び「パセトシン®細粒10%」は主成分を「10%」含む製剤です。製剤1g中に主成分であるアモキシシリン水和物を100mg含んでいます。

体重20kgであれば、一般的に「サワシリン®細粒10%」(及び「パセトシン®細粒10%」)の製剤量として「6〜10g」の量が1日量となるわけです。この量を通常、1日3回程度に分けて服用するので、仮に1日6gだとしても(1日3回に分けて服用する場合は)1回2gの細粒剤を服用する計算になります。「2g」と聞くと一瞬、大した量でないようにも感じますが、実際に「2g」の量を見てみると結構なカサがあることが実感できます。体重20kgというと大半は子供であることが多いので、「1回2g」という場合によっては大人でもやや面を食らうような量を子供が飲むわけですからなかなか難解といえます。元々、粉薬(散剤、細粒剤、ドライシロップ剤 など)が苦手な子供であれば服用はより大変かもしれません。更に溶連菌のペニシリン系抗菌薬による内服薬治療においては、服用継続期間が通常10日と比較的長めですので、しっかり治療するためには「しっかり飲めるか!?」が非常に重要な要素となってきます。

幸いにも「サワシリン®細粒10%」や「パセトシン®細粒10%」には主成分であるアモキシシリンの味をマスクし、少しでも飲みやすくするために果物のような甘みや芳香が添加されています。それでも元々の薬剤の味が完全に消えているわけではなく、薬剤独特の味を嫌がるケースもないわけではありません。

散剤の服薬補助としてはオブラートや服薬補助ゼリー(嚥下補助ゼリー)などの商品がありますが「サワシリン®細粒10%」や「パセトシン®細粒10%」においてはアイスクリーム、プリンなどの食品との相性も比較的よい製剤になっています。服薬補助ゼリーもチョコレート味であればさほど薬剤の味を気にせず飲める場合が多いのですが、イチゴ味の服薬補助ゼリーなどでは苦味などが感じやすくなることもあり注意が必要とされています。他にも相性が良い飲食物、悪い飲食物もありますし、もちろん服用する本人の「味」に対しての好みなども服薬状況に影響を与えます。「サワシリン®細粒10%」や「パセトシン®細粒10%」が処方された際、服薬に不安がある場合は事前に薬剤師から服薬補助に適するアイテムや服薬方法などをいくつか聞いておくとよいでしょう。(他の散剤において、アイスクリームやプリンなどが適さない薬や食品によっては薬の吸収に影響を与えるものもあるので、散剤を処方されたらその都度確認することも大切です)

医療機関によっては、「アモキシシリンの20%製剤(製剤1g中にアモキシシリン水和物を200mg含むもの)」を採用している場合があります。「ワイドシリン®細粒20%」などがこれに該当します(ワイドシリン®細粒には「10%製剤」も存在します)。「20%製剤」のメリットはなんといっても「10%製剤」に比べて実際に飲む製剤量が半分になることです。先ほどの体重20kgの患者ではサワシリン®やパセトシン®の「10%製剤」で「1日6g」だったところ、「ワイドシリン®20%細粒」では「1日3g」になるわけです。

 

今回は子供に多い「溶連菌感染症」とその治療薬について紹介してきました。ペニシリン系抗菌薬のアモキシシリンなどは医師の診断により決められた一定期間の服用継続によって多くの場合、高い治療効果が得られるとされています。但し、溶連菌感染症はしっかり治しておかないと場合によってはリウマチ熱急性糸球体腎炎といった続発症につながる可能性もあります。適切な治療につなげるためには抗菌薬の適切な使用が重要であることを理解し、飲み薬が出された場合は(薬剤が体質に合わない場合などを除き)処方医の指示通りしっかり飲むことが大切です。

執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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