かんぞうがん
肝臓がん
肝臓にできた悪性腫瘍のこと
1人の医師がチェック 122回の改訂 最終更新: 2025.06.25

肝臓がん(肝細胞がん)の原因:肝炎ウイルス、アルコール、食事など

肝臓がんの背景には、「肝炎ウイルスの持続感染からの肝炎」やそれが進行した「肝硬変」があります。他にも生活習慣と肝臓がんとの関係が調べられています。ここでは肝臓がんとその原因について解説します。

1. 肝臓がんの原因

肝臓がんの発生に大きく関係しているのは肝炎、肝硬変という慢性的な肝臓の病気(慢性肝疾患)です。肝炎や肝硬変の原因の多くは肝炎ウイルスです。肝炎ウイルスにはA型、E型などいくつかの種類がありますが、肝臓がんと関係するのはほとんどがB型とC型です。

【慢性肝疾患の主な原因】

「第23回 全国原発性肝癌調査報告書」によると肝臓がんが見つかった17,799人のうち、HBs抗原陽性の人が13.3%、HCV抗体陽性の人が45.6%という結果でした。HBs抗原陽性・HCV抗体陽性はそれぞれ、B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスが体内にいることを示しています。つまり、肝臓がんの約60%がB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していたということです。

一方で、肝炎ウイルスに関係なく肝臓がんが発生する人もいます。肝炎ウイルスが関係していないので「非B非C型肝臓がん」と呼ばれることもあります。肝炎ウイルスを原因としない肝臓がんの人は2割程度と推測されています。原因については未解明な部分も多いのですが、アルコール性肝硬変メタボリックシンドロームに関連する非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)のうち非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASHが関連していると考えられています。

2. 肝炎ウイルスの持続感染と肝臓がん

図:ウイルス性肝炎の一般的な経過。

肝炎ウイルスへの感染からどのようにして肝硬変となり、肝臓がんが発生するのでしょうか。

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染すると、ウイルスは肝臓の細胞(肝細胞)の中に潜り込み増殖していきます。すると、肝臓に持続的に炎症が起こります。

体はウイルスを排除しようとしますが、肝炎ウイルスは肝細胞の中に入りこんでいるので肝細胞ごと破壊します。肝臓は再生能力があるために、破壊された部分は再生します。しかし、ウイルスは簡単には完全に排除されないので、この破壊と再生が繰り返されます。

再生される際、完全に元通りの組織にはなりません。線維で置き換えられる「線維化」という変化が起きます。そして破壊と再生が繰り返されると、しだいに線維化された部分が多くなって硬くなり、肝硬変の状態になります。

また炎症が長期化すればするほど肝細胞の遺伝子に傷がつき、肝臓がんが発生する原因になります。

3. B型肝炎ウイルスと肝臓がん

B型肝炎ウイルスは肝臓がんの主要な原因のひとつです。日本ではB型肝炎ウイルスに持続感染している人は約110万人いると推定されています。

B型肝炎ウイルスはどれくらい肝臓がんと関係があるのか

日本での研究結果によると、B型肝炎ウイルスに持続感染している人に肝臓がんが発生する危険性は、B型肝炎ウイルスに感染していない人に比べて45.8倍という報告があります。これは1958年から実施された長期間におよぶ研究の結果です。

現在はB型肝炎ウイルスを抑える効果の確認された薬がいくつかあり、肝臓がんの発生を抑制できると考えられています。

B型肝炎ウイルスはどうやって感染するのか

B型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染します。

B型肝炎ウイルスは感染する時期によりその後の経過が変わってきます。3歳頃までに感染するとB型肝炎ウイルスに持続的に感染しやすいことが知られています。幼少期はウイルスを排除する免疫機能が未成熟のためです。幼少期の感染は出生時の産道感染が原因と考えられています。

B型肝炎ウイルスに持続的に感染した人の一部が慢性肝炎に移行します。慢性肝炎は血液検査などをきっかけにして指摘されることがあります。慢性肝炎が進行すると肝硬変になります。慢性肝炎や肝硬変は肝臓がんが発生する原因になります。

成人になってB型肝炎ウイルスに感染しても、持続感染に移行することは多くありません。B型肝炎ウイルスは体から排除されます。しかし、まれに劇症肝炎という重い状態になることがあります。

血液に触れる可能性がある仕事に従事する人は、ワクチン接種が重要です。

B型肝炎ウイルスに感染してからどれくらいで肝臓がんになるのか

B型肝炎ウイルスに感染してすぐに肝臓がんが発生するわけではありません。B型肝炎ウイルスが持続感染して、肝炎や肝硬変の状態を経て、肝臓がんが発生します。肝硬変の状態になると肝臓がんの発生率は1年あたり5−8%と見積もられています。

B型肝炎ウイルスの治療で肝臓がんは減るか

B型肝炎に持続感染した場合、B型肝炎ウイルスが多いほど肝臓がんの発生する危険性が上昇することが知られています。また、体にいるB型肝炎ウイルスの量を抗ウイルス薬(核酸アナログ)で減らすことで、肝臓がんのリスクを減らせることも分かっています。B型肝炎を適切に治療することで肝臓がんの発生を抑制することができます。

参考文献:厚生労働省「肝炎総合対策の推進」(2025.5.23閲覧)

4. C型肝炎ウイルスと肝臓がん

C型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスとともに肝臓がんの主要な原因のひとつです。

日本ではC型肝炎ウイルスに持続感染している人は約90万人人いると推定されています。

C型肝炎ウイルスはどれくらい肝臓がんと関係があるのか

日本での研究結果によると、C型肝炎ウイルスに感染した人が肝臓がんを発生する危険性は、感染していない人に比べて101倍という報告があります。これは1958年から実施された長期間におよぶ研究の結果です。このデータは、C型肝炎ウイルスに対する治療法の効果がほとんどない時代の結果が大部分占めているので、現代の状況に当てはまるとは限りません。しかし、C型肝炎を治療しなかった場合に予想される事態の参考とすることができます。

C型肝炎ウイルスの感染経路

C型肝炎は血液を介して感染します。以下は感染経路の例です。

  • 医療行為に伴う針刺し事故
  • 入れ墨
  • 注射の回し打ち

C型肝炎ウイルスは、感染が成立すると年齢に関わらず、約70%が持続感染に移行すると考えられています。持続感染が長期化すると慢性肝炎、肝硬変と進行します。慢性肝炎、肝硬変は肝臓がんの発生の原因になります。

現在では、C型肝炎に対する有効な抗ウイルス治療薬が開発されており、多くの場合でウイルスを排除できるようになりました。しかし、医療従事者における医療行為の針刺し事故など、感染リスクをゼロにはできない場面もあります。感染の可能性がある場合は早めに対処をすることが何より大事です。

C型肝炎ウイルスに感染してからどれくらいで肝臓がんになるのか

C型肝炎ウイルスに感染したからといってすぐに肝臓がんになるわけではありません。長い時間をかけて肝炎や肝硬変に進行して、その後肝細胞がんが発生します。C型肝炎ウイルスに感染してから20年後には16%が肝硬変に移行したという報告もあります。

現在はC型肝炎ウイルスを駆除する有力な薬が登場しています。肝臓がんも気になるところですが、まずはC型肝炎の治療をしっかりとすることが大事です。

C型肝炎ウイルスの治療で肝臓がんは減るか

C型肝炎ウイルスを適切に治療することにより肝臓がんの発生を抑えることができると考えられています。C型肝炎ウイルスに対するインターフェロンを中心とした治療の効果をまとめた報告によると、インターフェロンを中心とした治療によって肝臓がんの発生が12.01%から7.01%に減少したとする報告があります。

現在では、C型肝炎ウイルスに対して効果の高い抗ウイルス薬が登場しています。治療によりC型肝炎ウイルスを原因とした肝炎や肝硬変が減り、近年の肝臓がんの患者数減少に寄与していると考えられています。

参考文献:厚生労働省「肝炎総合対策の推進」(2025.5.23閲覧)

5. ウイルス以外の肝臓がんの原因

B型、C型肝炎ウイルスの持続感染は、肝臓がんを発生した人のうち約6割に見つかります。残りの4割の人の中にはウイルス以外の原因で肝臓がんになった人がいると考えられます。

肝臓がんの原因としては肝硬変になる病気や、その前の段階の生活習慣や併存症などが考えられます。例として次のものがあります。

アルコール性肝炎は多量飲酒と、非アルコール性脂肪肝炎肥満糖尿病と関連があります。

これらの病気は肝炎になる前に肝障害として指摘されることもあります。肝障害は健康診断などで調べる機会も多いので、肝障害が指摘された人は、内科、消化器内科などを受診して詳しく調べてもらってください。

6. 非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)

非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)はナッシュとも呼ばれ、近年増加している病気の一つです。

NASHを治療をしない場合は、5年から10年で5-20%の人が肝硬変に進行します。NASHを原因とした肝硬変では、診断後からの5年間での肝細胞がんの発がん率は11.3%、生存率は75.2%とされています。

食事量を適正化することや、糖尿病合併しているときには糖尿病の治療をしっかりと行うことで、NASHから肝硬変に進展するのを予防できると考えられています。

参考文献:Hashimoto E, Tokushige K. Prevalence, gender, ethnic variations, and prognosis of NASH. J Gastroenterol. 2011 Jan;46 Suppl 1:63-9. doi: 10.1007/s00535-010-0311-8. Epub 2010 Sep 16.

7. 肝臓がんは予防できるか

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染している人は、ウイルスに対する治療により肝臓がんになる確率を下げられると考えられます。

また、アルコール性肝炎を防ぐためには飲酒量を適度に抑えることが重要であり、非アルコール性脂肪性肝疾患を防ぐためには体重を適正に維持することにも意味があります。しかし、どの病気にも言えることですが、予防は完全ではないことを理解しておく必要があります。肝炎の治療を受け、食事に気を使って肝臓がんの予防に努めていても、肝臓がんになる可能性はゼロではありません。

肝臓がんと診断された人は、「何か間違っていたのだろうか」とあれこれ考えてしまうものです。気持ちの整理はなかなかつかないかもしれません。これから自分にできることや治療の方針などに目を向けて見ることが大切だと思います。

8. 喫煙と肝臓がん

日本人を対象に喫煙と肝臓がんの関係を調査した研究はいくつか存在し、データをまとめた研究では喫煙者に肝臓がんの発生率が高いという結果が示されています。しかし、過去の研究では喫煙の量と肝臓がんの発生に関する関連が明確ではない点もあります。これには、肝炎ウイルスへの感染など、肝臓がんの発生に強く関連している要因が十分に考慮されていないことが一因と考えられます。そのため、喫煙は肝臓がんの発生におそらく関係がある、という結論に至っています。

参考文献:Jpn J Clin Oncol.2006;36:445-56

9. 飲酒と肝臓がん

飲酒量によっては、肝臓がんの発生リスクが上昇すると考えられています。長期間にわたってたくさんアルコールを飲んで肝硬変に至った場合は、肝臓がんの発生リスクが高まる状態となります。

日本における肝臓がんの発生と飲酒量の関係を調査した研究の結果は以下の通りです。肝臓がんのリスクは、たまにしか飲酒をしない人と比較されています。

  • 男性:1日のアルコールの摂取が69−91gでリスクは1.76倍、92 g以上でリスクは1.66倍に上昇
  • 女性:1日のアルコールの摂取が23g以上でリスクは3.60倍に上昇

アルコールの量20gの目安はビールでは中瓶1本、日本酒であれば1合、ワインであれば4分の1本に相当します。飲酒は肝臓がんだけでなく他の病気の発生にも関係していますので、適度な量を守りながら楽しむのが大事です。

参考文献:Int J Cancer.2011;23:2645-2653

10. 肥満と肝臓がん

肥満は肝臓がんの発生に関係していると考えられています。

日本での調査をまとめた研究では、過体重または肥満の人のほうが、そうでない人に比べて肝臓がんになるリスクが1.74倍高かったという報告があります。

  • BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められます 
  • 過体重はBMIが25以上の人、肥満はBMIが30以上の人です

肝臓がんの原因として、ウイルス性の肝炎や肝硬変がよく知られていますが、最近では「非アルコール性脂肪性肝炎NASH)」も重要な原因の一つとして注目されています。NASHは、お酒をあまり飲まない人に起こる、脂肪肝による重い炎症です。NASHは、肥満糖尿病などが原因で起こることが多いです。 研究によると、NASHではない人でも、過体重・肥満の人は肝臓がんのリスクが高くなる可能性があるとしています。

肥満は肝臓がん以外にも、さまざまな病気のリスクを高めます。体重にとらわれすぎるのもよくありませんが、健康のためには、適正な体重を保つことは意味のあることだと思います。

参考文献:Jpn J Clin Oncol.2012;42:212-21

11. 糖尿病と肝臓がん

糖尿病の人は肝臓がんを発生する危険性が増す可能性があります。

日本のある研究で、40-69歳の人97,771人(男性46,548人、女性51,223人)を対象に、11年間のがんの発生状況を追跡調査しました。

その結果、糖尿病の人は、そうでない人に比べて肝臓がんになる割合が高いことがわかりました。具体的には、男性で2.24倍、女性で1.94倍のリスク増加が見られました。

この研究では、男性のうち6.7%、女性の3.1%が糖尿病と診断されていました。調査期間11年の間に新たにがんが発生した人は、男性で3,907人、女性で2,555人でした。このがんの内訳の中には肝臓がんも含まれています。

肝臓がんの発生には肝炎ウイルスが強く関係していますが、糖尿病があるとそのリスクを高める可能性があることが示唆されています。

参考文献:Arch Intern Med.2006;25:1871-7

12. アフラトキシンと肝臓がん

アフラトキシンは、カビが作る発がん性物質です。大量に摂取をすると肝臓に障害を与え、少ない量であっても長期間にわたって摂取すると、肝臓がんのリスクが上昇することがわかっています。特にアフラトキシンB1は発がん性が高いとされています。

日本では食品衛生法などにより、基準値を超えるアフラトキシンを含む食品は販売できないようになっています。万が一、基準値を超えるアフラトキシンが口に入ってしまったとしても、短期的に少量摂取しただけで健康被害が出るとは考えにくいでしょう。

参考資料:農林水産省「いろいろなかび毒」

13. コーヒーは肝臓がんの発生を抑制するか

コーヒーを飲むことは、肝臓がんを発生するリスクを下げる可能性があります。

日本のある研究では、40-69歳の18,815人(男性6,414人、女性12,401人)を対象に13年間の追跡調査を行い、肝臓がんの発生を調べました。

調査期間中、男性の73人、女性のうち37人に新たに肝臓がんが発生しました。データを解析すると、コーヒーを多く飲む人のほうが、飲まない人に比べて肝臓がんの発生が少ないという結果でした。肝臓がんの発生と強く関連があるC型肝炎に感染している人だけをみても、同様の傾向が見られました。

ただし、コーヒーを飲めば肝臓がんにならないというわけではありません。持病がある人など、コーヒーの摂取が勧められないケースもあります。肝臓がん予防効果を期待して飲むのではなく、コーヒーはあくまでも嗜好品として楽しむと良いと思います。

参考文献:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.2009;18:1746-53 

14. 緑茶は肝臓がんの発生を抑制するか

現在のところ、緑茶に肝臓がんの発生を抑制する効果は確認されていません。

日本において40-69歳の18,815人(男性6,414人、女性12,401人)を対象に、13年間の追跡調査を行い、肝臓がんの発生を調べた研究があります。

調査期間中、男性の73人、女性の37人に新たに肝臓がんが発生しました。

研究の結果、緑茶の摂取量と肝臓がんの発生には関連性は見られませんでした。肝臓がんと強く関連があるC型肝炎に感染している人だけを比べてみても、同様の結果でした。

現在のところ、緑茶を多く摂取すると肝臓がんの発生を抑制できるという証拠は確認できません。

参考文献:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.2009;18:1746-53 

15. 食べ物と肝臓がんの関係について

肝臓がんと食事の関係については、現在もさまざまな研究が行われています。コーヒーなどのように肝臓がんの発生を抑制する方向に働く可能性も報告されています。

食事を考えるうえで重要なのは、日々の栄養バランスを保つことです。肝臓がん以外にも、食事はさまざまな病気に関わっています。肝臓がんへの影響を気にするあまり栄養バランスを崩してしまっては本末転倒です。

また、肝臓がんは肝炎ウイルスなどとの関係が強く、食事の影響はわずかです。肝臓がんのリスクを下げる食事を長年続けることで、肝臓がんになる確率を下げられる可能性はありますがゼロにすることはできません。どんなに気を付けても、肝臓がんになるときはなります。

このページの情報を参考にして食生活に応用しようと思うときは、栄養のバランス、食事と肝臓がんとの関係の弱さ、そして好きなものを食べるという楽しい生活とのバランスを考えて、個人や家族の価値観に基づいて判断してください。

【参考文献】