あせとんけっしょうせいおうとしょう(しゅうきせいおうとしょう)
アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)
激しい嘔吐を繰り返す小児の病気で、周期性嘔吐症とも呼ばれる
11人の医師がチェック 73回の改訂 最終更新: 2020.12.23

アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)の検査について:問診、身体診察、血液検査など

アセトン血性嘔吐症の診断には嘔吐時の状況が重要です。いつどのくらいの嘔吐があったかなど、受診時にお医者さんに詳しく伝えてください。また、血液検査や画像検査は、嘔吐の原因となる他の病気がないか確認するのに有用で、病状に応じて行われることがあります。嘔吐を繰り返していてアセトン血性嘔吐症かどうか心配な人は、子どもであれば小児科、大人であれば内科や消化器内科などに相談をしてください。

1. 問診

アセトン血性嘔吐症かどうか調べるには症状についての詳しい情報が重要です。吐いた時の状況について下記のことをお医者さんに伝えてください。

  • 嘔吐はいつ、どれくらいの時間続いたか
  • 吐いたものは何色だったか
  • 嘔吐以外の症状はあったか
  • 嘔吐の引き金となりうる出来事があったか

精神的ストレスや風邪、月経などの出来事が嘔吐のきっかけとなることがあります。これらの状況は時間が経つと忘れてしまいがちなので、症状があった時に記録を残しておいて、診察の時に持参するとよいです。

2. 身体診察

アセトン血性嘔吐症の人では脱水症に注意が必要です。吐き気によって水分が摂りづらく、吐くことで水分が失われていくため、身体が水不足の状態になりやすいからです。脱水症になると血圧が下がったり血管がつまったりと危険な状態になることがあります。このため、早期にみつけて水分を補う必要があります。

脱水症か調べるには心拍数(もしくは脈拍数)の診察が有用です。心拍数(脈拍数)が正常値を上回っている人は、脱水症の可能性があります。

また、皮膚のハリ(ツルゴールといいます)を調べる診察も役立ちます。手の甲や胸などの皮膚を軽くつまんだ後、手を離してから皮膚が元の状態に戻るまでの時間が2秒を超えると、脱水症が疑われます。

3. 血液検査

血液検査でアセトン血性嘔吐症かどうかわかるわけではありませんが、他に嘔吐の原因がないか調べるために、下記の検査が役立ちます。

  • 炎症性疾患がないか調べる検査(白血球数、CRP
  • 糖尿病の検査(血糖、HbA1c)
  • 腎臓疾患の検査(BUN、クレアチニン)
  • 膵臓の検査(アミラーゼ、リパーゼ)
  • 肝臓の検査(ALT、γGT)
  • 甲状腺の検査(TSH、FT4、FT3)

血液検査は、針を刺される時の痛みはあるものの副作用の心配はほとんどなく、一度に多くの情報が得られる非常に有用な検査です。

4. 画像検査

激しい嘔吐を繰り返している時に考えられる病気はアセトン血性嘔吐症以外にもあります。たとえば、腸閉塞腸重積といった胃腸の病気、脳卒中などの脳の病気です。これらの病気を見つけるために画像検査が役立ちます。

腹部レントゲン検査(腹部X線写真)

レントゲンX線)を腹部に照射して体内を画像化し、腸管のガスや結石などを映し出すことができます。アセトン血性嘔吐症と同じように吐き気と腹痛を引き起こす腸閉塞消化管穿孔などを見つけ出すことができます。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)

超音波を発生する機械をお腹に押し当てて検査します。臓器まで到達し跳ね返ってきた超音波の量を測定することによって、お腹の中の様子が映し出されます。アセトン血性嘔吐症に似た症状が現れる腸重積、膵炎、胆嚢炎などの病気を見つけるのに役立ちます。放射線は使わないので被曝の心配がありません。

頭部CT・MRI検査

頭部CT検査では放射線を、頭部MRI検査では磁力を利用して頭の中の様子を映し出します。脳腫瘍脳卒中といった病気をみつけられます。脳腫瘍脳卒中では、吐き気に加えて、頭痛・めまいなどの症状が現れることがあるため、これらの症状がある人に特によく行われる検査です。

5. 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

カメラが付いた細長い管を、口または鼻から挿入して撮影する検査です。レントゲン検査や超音波検査では確認できない食道、胃、十二指腸の内部の色調や凹凸を映し出します。食道裂孔ヘルニアや胃十二指腸潰瘍といった病気と区別するのに有用です。

参考文献

1. 疋田敏之 他. 小児周期性症候群. 脳と発達. 2012. 44:125-128.
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