あせとんけっしょうせいおうとしょう(しゅうきせいおうとしょう)
アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)
激しい嘔吐を繰り返す小児の病気で、周期性嘔吐症とも呼ばれる
11人の医師がチェック 73回の改訂 最終更新: 2020.12.23

アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)に関して知っておくとよいこと:家庭でのケア、予防法など

アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)は嘔吐を繰り返す病気です。小さな子どもに起きやすく、激しく吐くことから心配になることが多いと思います。ここでは、受診すべき診療科や自宅でのケアの方法、予防法などについて説明します。

1. アセトン血性嘔吐が心配な人は何科を受診すべきか

嘔吐を繰り返すなどしていてアセトン血性嘔吐症かもしれないと思った人は受診してください。平日の日中に受診する場合には、15歳未満であれば小児科を、15歳以上であれば一般内科や消化器内科を受診するとよいです。休日や夜間などに急いで受診する場合は救急科も選択肢の一つとなります。

2. 救急要請が必要な嘔吐のサインとは

嘔吐を繰り返す人は医療機関への受診が必要です。とはいえ、救急車を呼ぶほどの重症なのか、公共交通機関や自家用車などでの受診でよいのか、判断が難しいことがあると思います。繰り返す嘔吐に下記の症状があったら、迅速な治療が必要なサインです。

  • 激しく頭が痛む
  • 吐いたものに血が混ざっている
  • 黒や赤い色の便がでた
  • 激しくお腹が痛む
  • お腹がパンパンに張っている
  • (乳児の場合)ミルクを飲ませようとするたびに、吹き出すように勢いよく吐く
  • 胸、または、背中に強い痛みがある
  • 高熱(38度以上)がある
  • 頭・胸・お腹を強く打った直後である
  • 尿が半日以上出ていない
  • 泣いても涙がほとんどでない

吐くとともに、このような症状が一つでも現れたら救急要請が必要です。

なお、上記の症状はないけれども、夜間や休日ですぐに受診したほうがよいのか、通常の診察時間まで待てるのか悩ましいときもあると思います。そんなときには、消防庁ホームページからアクセスできる全国版救急受診アプリ「Q助」が有用です。症状についての質問に答えることで、緊急受診の必要性がわかります。

3. アセトン血性嘔吐症の人が知っておくと良いこと

嘔吐の発作が始まったときの対応方法や、食事やお風呂はどうしたらよいのかについて説明します。

嘔吐が始まった時の家庭での対応方法

まずは、安静にして身体を休めます。小さなお子さんであれば、安心できる場所や物で落ち着かせてあげてください。吐き気が和らいできたら、糖分補給と水分補給を行います。

糖分と水分の両方が一度に補給できるものとして、経口補水液を使うと便利です。子どもでも飲みやすいように、塩分量をやや抑えて風味をつけた子ども用の製品も市販されています。手元に経口補水液がないときには、経口補水液を自作することもできます。湯ざまし1Lに砂糖を30g(小さじ6杯)と塩2-3g(小さじ0.5杯)をまぜれば出来上がりです。お好みでレモン汁を数滴入れると風味がついて飲みやすくなるかもしれません。

ただ、吐いている時に飲むのは難しいので、嘔吐がおさまった時を見計らって、少しずつで良いので摂取するようにしてください。

飲むのが難しい場合、飲んでもすぐに吐いてしまう場合には脱水症を起こす可能性がありますので、医療機関を受診してください。

食事はしなくてよいのか

吐き気がある時に固形物を食べるとひどくなることがあるので、無理に食事を摂らなくても構いません。ただし、水分・塩分・糖分は摂ったほうがよいため、これらを飲み物で補給してください。吐き気がおさまったタイミングを見計らって、経口補水液などを少しずつでも飲むようにしてください。

お風呂に入ってよいのか

症状がなくなるまではお風呂に浸からないほうが安心です。なぜならば、入浴すると体力を消耗してしまったり、汗をかくことで脱水を助長してしまったりするからです。もし入りたい場合には、無理のない範囲でシャワーを浴びるくらいにしてください。

4. アセトン血性嘔吐症は治るのか

アセトン血性嘔吐症は2-10歳の子どもに多く、基本的には思春期には治ることが多いと言われています。ただし、従来考えられているよりも大人のアセトン血性嘔吐症が少なくないという話もあり、アセトン血性嘔吐症と診断される大人が今後増える可能性もあります。また、アセトン血性嘔吐症は片頭痛の一種であるといわれるほど片頭痛と関係が深い病気であり、アセトン血性嘔吐症が治った後に片頭痛になる人がいます。

5. 嘔吐予防のためにできること

アセトン血性嘔吐症の人が、嘔吐を予防するためできることがあるので紹介していきます。

  • 糖分をこまめに摂取する
  • 十分な睡眠をとる
  • 嘔吐の引き金となる食べ物を避ける
  • 精神的ストレスに対処する

◎糖分をこまめに摂取する

糖分を摂ることで吐き気を抑えられます。この理由には、ケトン体という物質が深く関わります。ケトン体とは、体内で糖分が不足した時にそれに変わるエネルギー源として脂肪から作られるものであり、これが嘔吐を誘発してしまうからです。

具体的は、「3食欠かさずに食べる」、「ブドウ糖のタブレットなどを常備しておいて、お腹がすいた時に食べる」などの方法があります。

◎十分な睡眠をとる

アセトン血性嘔吐症の人のなかには、寝不足の時に嘔吐しやすくなる人がいます。睡眠不足の人は、十分な睡眠をとることで症状が和らぐか試してみてください。

◎嘔吐の引き金となる食べ物を避ける

特定の飲食物がアセトン血性嘔吐症の引き金になることがあります。きっかけになりやすい食品として、下記が知られています。

  • チョコレート
  • チーズ
  • 旨味調味料

嘔吐の前に何を食べたかに注目すると、引き金がみつかることがあります。とはいえ、嘔吐前に食べたものを思い出せないことがあると思います。アセトン血性嘔吐症と言われた人は、できるだけ日々の食事内容を記録しておいて、後で見返せるようにしておくとよいです。

◎精神的ストレスに対処する

精神的ストレスは嘔吐のきっかけの一つです。ピアノの発表会の前や試験前に決まって嘔吐してしまうという子どもは少なくありません。また、ストレスといっても必ずしも緊張する場面とは限らず、例えば遠足が楽しみで興奮しているような時に症状が現れる子もいます。

精神的ストレスとなりうるイベントを避けたり、適度に身体を動かすなどして気晴らしをすると、嘔吐を抑えられる可能性があります。また、精神的なストレスへの対処が難しい時には、心療内科や精神科に相談するのも一つの手です。

参考文献

1. 疋田敏之 他.小児周期性症候群.脳と発達.2012.44:125-128.
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