はいどうみゃくせいはいこうけつあつしょう
肺動脈性肺高血圧症
肺の中の動脈(肺小動脈)が狭くなることで、肺動脈圧があがった状態
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最終更新: 2024.10.08
肺動脈性肺高血圧症の基礎知識
POINT 肺動脈性肺高血圧症とは
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は肺動脈が固くなったり狭くなったりすることで肺動脈圧の上昇する病気です。原因不明のもの(特発性)も多いですが、遺伝性・薬剤性・膠原病・先天性心疾患・HIV感染症・肝臓の病気・住血吸虫症なども原因になります。主な症状は息切れ・疲労感・咳・痰・胸痛・失神などです。 症状の程度や経過、心臓超音波検査から肺高血圧症を疑い、造影CT検査や心臓カテーテル検査を用いて診断します。治療には肺の血管を拡げる薬や利尿薬を用いますが、症状が強く治療に難渋する場合は肺移植が検討される場合があります。肺動脈性肺高血圧症が心配な人や治療したい人は、循環器内科や呼吸器内科を受診して下さい。
肺動脈性肺高血圧症について
- 肺の中の動脈(肺小動脈)が狭くなったり硬くなることで、
肺動脈 圧が上がった状態- 肺高血圧症の一種
- 肺動脈は心臓から肺に血液を送り出す血管
- 肺動脈圧が上がることで、肺や心臓の機能に障害を起こす
- 肺高血圧症の中でも、肺の血管の異常で肺高血圧が起こるのは肺動脈性肺高血圧症(PAH)と慢性血栓塞栓性肺高血圧症(
CT EPH)の2種類 - 原因による肺動脈性肺高血圧症の分類
- まれではあるが遺伝性の肺動脈性肺高血圧症の報告がある
- BMPR2遺伝子などの存在が関与していると考えられている
- 厚生労働省の特定疾患医療給付対象疾患である
肺動脈性肺高血圧症の症状
肺動脈性肺高血圧症の検査・診断
- 心臓の状態を一般的な検査で調べる
心電図検査 心臓超音波 (心エコー )検査胸部レントゲン (X線 )検査
心臓カテーテル 検査を行い肺動脈 圧を測定する- 平均肺動脈圧が25mmHg以上
- 肺動脈楔入圧が正常(15mmHg以下)
- 心臓カテーテル検査は診断を確定するために必須
- 肺高血圧の原因を特定するためにさまざまな検査が行われる
- 血液検査:
膠原病 の検査や感染症 の検査 胸部造影CT検査 検査(肺塞栓症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診断に有効)- 肺血流
シンチグラフィ (肺塞栓症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診断に有効) 呼吸機能検査 (COPDなど肺自体の病気の検査)
- 血液検査:
肺動脈性肺高血圧症の治療法
肺動脈 病変 が進行する前に、早期に治療を開始する- 肺動脈圧の高さに応じて、治療薬の強さや数を決定していく
- 肺血管拡張薬
- エンドセリン受容体拮抗薬
- PDE-5阻害薬
- エンドセリン受容体拮抗薬とPDE-5阻害薬の合剤もある
- プロスタサイクリン誘導体
- 症状が重度の場合は、エポプロステノールという薬剤を点滴で使用する
- 静脈から24時間365日使用することが必要
- 長期間に渡り体内に留置可能なカテーテルを胸に埋め込むことが多い
- 症状が重度の場合は、エポプロステノールという薬剤を点滴で使用する
- 可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬
- 利尿薬
- 心臓の負担を減らすために、余った水分を尿として出やすくするため適宜使用する
- 若年患者などを中心に肺移植を検討することもある
肺動脈性肺高血圧症に関連する治療薬
プロスタグランジンI2製剤(プロスタサイクリン製剤)
- 血流の改善や血管を拡張させることで、末端の手足の冷たさやしびれ、痛み、潰瘍などを改善する薬
- 動脈硬化や血小板の凝集(血液が固まりやすくなる)などが亢進すると血行の悪化などにより冷感、痛みなどの症状があらわれる
- 体内のプロスタグランジンI2(PGI2)という物質は血小板凝集を抑えたり血管を拡張させる作用などをあらわす
- 本剤はPGI2とほぼ同様の作用をもつ薬剤で、抗血小板作用や血管拡張作用などをあらわす
- 肺動脈性肺高血圧症などの治療に使用する場合もある
エンドセリン受容体拮抗薬
- 体内で血管収縮作用などをあらわすエンドセリンの作用を抑え肺動脈の血圧を下げ、息切れや疲労感などを改善する薬
- 肺動脈性肺高血圧症は肺の中の動脈が狭くなったり硬くなるなどにより、肺動脈圧が上昇し呼吸器症状や心不全症状などがあらわれる
- 体内物質のエンドセリンは強力な血管収縮作用などをあらわす
- 本剤はエンドセリンの受容体に作用しエンドセリンの働きを拮抗的に阻害することで血管収縮抑制作用などをあらわす
- 本剤の中には、全身性強皮症における血管障害の改善などで使用する薬剤もある
PDE5阻害薬(肺高血圧症治療薬)
- 血管弛緩作用をあわらすcGMPの分解酵素を阻害することで肺動脈圧や肺血管抵抗などを改善する薬
- 肺動脈性肺高血圧症は肺の中の動脈が狭くなったり硬くなるなどにより、肺動脈圧が上昇し呼吸器症状や心不全症状などがおこる
- 血管平滑筋の弛緩にcGMPという物質が関わっていて、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)という酵素により分解される
- 本剤はPDE5を阻害し、肺組織中のcGMPを増加させることで血管拡張作用などをあらわす
- 本剤の成分を使用した「排尿障害改善薬」や「勃起不全治療薬」が存在する