尿路感染症の症状:発熱・背中の痛み・排尿時の痛みなど
尿路感染症は上部と下部に分けられます。上部尿路感染症は主に腎盂腎炎を指し、下部尿路感染症は主に膀胱炎を指します。上部尿路感染症は、発熱などの全身的な
1. 上部尿路感染症の症状:主に腎盂腎炎の症状
尿路は尿の通り道のことを指し、腎臓-
上部尿路感染症は、腎臓の一部である
参考文献
・赤座 英之/監修, 標準泌尿器科学第9版, 医学書院, 2014
発熱
腎盂腎炎が起こると発熱します。それも38℃を超えるような熱がでます。腎盂腎炎による発熱は治療を開始していても2-3日続くことが多いですが、治療が効いていれば少しずつ熱が下がっていきます。
適切な治療を開始して2-3日経過しても熱が下る気配を見せないときには腎盂腎炎が進行して腎臓やその周りに
腎膿瘍や腎周囲膿瘍に進行していると
悪寒・戦慄(おかん・せんりつ)
悪寒はぞくぞくとする寒気のことで、戦慄は震えることです。つまり悪寒・戦慄は急に寒気がして身体がガタガタ震える、温まろうとして毛布にくるまっても震えがとまらないといった症状です。悪寒や戦慄は高熱の存在を示唆する症状と考えられています。腎盂腎炎は高熱が出ることが多いので発熱の前後で悪寒や戦慄も現れることが多いです。
悪寒・戦慄は腎盂腎炎に限った症状ではありませんが、側腹部痛などの症状がある場合には、腎盂腎炎を考えて医療機関を受診することをお勧めします。
側腹部痛(叩打痛)
腎盂腎炎の症状の一つに腎臓の位置にあたる背中の部位を叩くと痛みが増すというものがあります。これは、側腹部の叩打痛(こうだつう)として医師の間ではよく知られた症状です。側腹部の叩打痛は腎盂腎炎の診察にも用いられる方法です。叩打痛があると腎盂腎炎の可能性が高くなる証拠にはなりますが、叩打痛がないからといって腎盂腎炎を否定できる訳ではありません。
つまり、側腹部痛の有無だけで腎盂腎炎かどうかの判断はできませんが、重要な兆候の1つです。発熱などの他の症状や検査などを用いて診断します。
吐き気・嘔吐
腎盂腎炎では吐き気や嘔吐が現れることがあり、以下のような身体の中での変化が関係していると考えられています。
吐き気や嘔吐は腎盂腎炎以外の病気でも現れることがある症状です。急性胃腸炎など胃や腸の病気でもよく見られる症状です。他の症状や検査結果などを用いて吐き気や嘔吐の原因を調べます。
2. 下部尿路感染症の症状:膀胱炎・尿道炎・前立腺炎の症状
下部尿路感染症は、主に膀胱炎のことですが、他には尿道炎や前立腺炎があります。感染が起きている場所は違っていても共通した症状が現われることもあります。上部尿路感染症と違って下部尿路感染症は排尿に関連した症状が多いです。
参考文献
・赤座 英之/監修, 標準泌尿器科学第9版, 医学書院, 2014
排尿時痛(かゆみ・違和感)
膀胱炎や尿道炎などが起きていると排尿時に痛みを感じることがあります。痛みを感じるのはなぜでしょうか。
わかりやすくいうと、膀胱や尿道に炎症が起きると傷がついたような状態になっています。手などに傷があると普段より刺激に対して過敏になる経験はあると思います。同じことが膀胱や尿道に起きています。排尿時には膀胱が引き伸ばされたり尿道に尿が流れたりといった刺激が加わります。普段では痛みとして感じないことも刺激に対する過敏さのために痛みと感じるのです。痛みの感じ方は人それぞれなのでかゆみや違和感として表現される人もいます。
排尿時の痛みが続く場合には膀胱炎や尿道炎、前立腺炎を
残尿感・頻尿
膀胱炎や尿道炎などで起こる炎症は膀胱や尿道に刺激をもたらします。膀胱や尿道の刺激は尿がたまっている感覚を引き起こします。そのため排尿後に実際に尿がたまっていなくても排尿したくなったり、排尿後にも膀胱に尿が残っていると感じる原因になります。
急に残尿感や頻尿が起きたときには下部尿路感染症が起きているかもしれません。症状がよくならない場合には医療機関を受診して原因を調べてもらうことをお勧めします。
下腹部痛
下腹部痛は膀胱炎でみられる症状の一つです。腹痛というと虫垂炎や腸炎を想像されるかもしれませんが、膀胱炎でも現れることがあります。膀胱炎ではなぜ腹痛が起こるのでしょうか。
膀胱は下腹部にある臓器で恥骨の下にあります。膀胱炎が起きていると膀胱の壁は炎症で刺激され、痛みを感じます。腹痛がはっきりしないときには下腹部を押すと痛みがはっきりとすることがあります。
確かに下腹部痛は、膀胱炎でも現れる症状なのですが、腸など他の臓器の病気でも現れます。その中には緊急で対処が必要な病気もあります。下腹部痛がひどくなったり長い時間続くときには医療機関を受診して調べることが大切です。
血尿
また一方で血尿がない膀胱炎もあります。血尿がなくても排尿時の痛みや違和感などの症状があれば膀胱炎が起きていることはありえるので血尿の有無だけで膀胱炎かどうかを判断することには注意が必要です。
尿道分泌物
尿道分泌物は、尿道口からでる膿や透明の液体のことです。尿道分泌物が現れるのは主に尿道炎です。尿道炎の多くは淋菌やクラミジアなど性行為で感染する病原体が原因で起こるいわゆる性病です。典型的な場合では淋菌性尿道炎では膿のような分泌物が、クラミジア性尿道炎では透明な液体がでます。
尿道から分泌物が出ることは通常はあまりないことです。分泌物が出たら淋菌もしくはクラミジアによる尿道炎を想定しなければならないです。医療機関をはやめに受診して原因を調べてもらってください。