こつそしょうしょう
骨粗しょう症
骨がもろくなって、骨折の危険が高くなってしまう病気。高齢女性で特に多い
9人の医師がチェック 187回の改訂 最終更新: 2024.01.20

骨粗しょう症とは:原因、症状、予防、治療など

骨粗しょう症は骨がもろくなって折れやすくなっている状態のことです。転んだりくしゃみをしたりといった、軽い力でも骨折してしまうことがあります。骨粗しょう症は直接命を脅かすわけではないものの、骨折することで寝たきりになるリスクがあります。若いうちから骨を強くして予防することが重要です。

1. 骨粗しょう症の人はどのくらいいるか

骨粗しょう症に当てはまる人は、国内に1280万人いると推計されています[1]。そのうち、男性が300万人、女性が980万人と、女性に多い病気です。また、高齢になるほどかかりやすく、超高齢社会の現在、多くの人に関わる病気です。

2. 骨粗しょう症はどのような病気か

骨粗しょう症の発症には骨の新陳代謝(骨代謝)が深く関わります。新陳代謝とは古いものを壊し新しいものに常に作り替えることです。骨では、破骨細胞が古くなった骨を壊し(骨吸収)、骨芽細胞が新しく骨を作って(骨形成)います。しかし、両者のバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ってしまうと、骨密度が低下して骨粗しょう症になります。

また、骨密度が十分であっても、作られた骨の構造に問題があることで、骨の強度が不十分となり骨粗しょう症になることもあります。

加齢、閉経、家族歴などが複合的に関わる

骨密度の低下の主な要因は加齢、家族歴、閉経です。

40-50歳くらいから徐々に骨密度が低下してくると言われています。加えて、歳とともに骨のコラーゲンの構造が変化していくことで、骨の強度も低下していきます。

また、女性ホルモンの減少も骨粗しょう症に深く関わります。女性ホルモンの一つエストロゲンには骨吸収の働きを抑制する作用がありますが、閉経とともにエストロゲンの分泌が減少すると、骨吸収の働きが骨形成を上回ってしまい骨密度が低下します。

さらには、遺伝も骨粗しょう症に関わっているのではないかと考えられています。大腿骨骨折をしたことがある家族がいる人が骨粗しょう症になりやすいことから、その因果関係があると考えられています[2]。

病気や薬が原因で骨粗しょう症になる人もいる

一部の骨粗しょう症の人たちは、何らかの病気や薬剤が原因となって発症します。このような骨粗しょう症を「続発性骨粗しょう症」といいます。

続発性骨粗しょう症の原因となる病気・薬剤は主に下記の通りです。

【骨粗しょう症の原因となる主な病気・薬剤】

原発性副甲状腺機能亢進症甲状腺機能亢進症では骨代謝の回転が速くなることで、骨密度が低下して骨粗しょう症になります。また、糖尿病では、骨密度が十分でも骨の質の問題で骨が脆くなりやすく、血糖のコントロールが不安定な人で特に骨粗しょう症がおきやすいです[4]。

加えて、摂食障害も骨粗しょう症の原因となる病気です。健康な骨作りには、タンパク質、カルシウム、ビタミンDなどを含むバランスのとれた食事が欠かせません。しかし、摂食障害では栄養不足に陥り骨形成が不十分になってしまうのです。摂食障害の大きな要因がボディーイメージの歪みです。過度に細い体型を理想とすることで食事を摂らなくなってしまいます。

骨粗しょう症の原因薬剤として多いのが、ステロイド(点滴・内服)です。一時的に数日使う分には、骨への影響はまずありませんが、長期にわたって常用する場合は骨粗しょう症に注意が必要です。かかりつけのお医者さんと相談して、定期的に骨密度などを測定するとよいです。

若い女性も要注意:過度なダイエットが骨を弱くする

若い時に過度なダイエットをしていた女性は、歳をとってから骨粗しょう症になりやすくなると言われています。通常、女性の骨密度は10代で急激に上昇し20-40代ではあまり変わらず、50歳くらいから閉経とともに徐々に低下していきます[3]。ところが、骨を強くする時期である若い頃に極端な食事制限をしていた女性は、栄養不足によって骨の発達が不十分となり、歳をとってからその影響が顕在化してきます。20-40代のころは症状がなくて気づかなくても、閉経後の骨密度が減っていく頃になって骨粗しょう症を発症してしまうのです。

それでは、どれくらいの体格を目標にしたらよいのでしょうか。日本人の食事摂取基準(2020年度版)によれば、18-49歳の人ではBMI値18.5-24.9が一つの目標になると言われています。BMIとは低体重や肥満を判定する指標であり、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算されます。

たとえば、日本人女性の平均的である身長155cmの人では、BMI18.5-24.9に相当する体重は、44.4-59.8kgと計算できます。

3. 骨粗しょう症の症状:進行するまで症状は乏しい

骨密度が低下しただけでは自覚できる症状は現れません。しかし、骨粗しょう症が進行すると、軽い力でも骨折しやすくなります。なかでも、大腿骨(太ももの骨)の骨折には注意が必要です。痛みや腫れといった骨折の症状に加え、歩行困難となるため寝たきりにつながってしまうからです。

一方で、骨粗しょう症の人に多い背骨の骨折(脊椎圧迫骨折)では、痛みなどのはっきりとした症状が出ないことが多く、ちょっと背が縮んだかな、背骨が曲がってきたかなといった程度の変化しか現れないこともあります。

4. 骨粗しょう症の検査とは

骨粗しょう症かどうかを調べるには、骨密度の測定と問診が重要です。骨粗しょう症の7割は骨密度の低下によって生じると言われています。これはDXA法やRA法をはじめとする医療機器で見つけることができます。

残りの3割の人は骨の構造の問題で生じますが、それを測定する医療機器は現在ありません。そこで、過去の骨折歴が骨の強度不足の参考にされます。転んだり、くしゃみしたりといった軽い力で骨折したことがあれば、骨密度検査に問題がなくても強度に異常があると考えられ、骨粗しょう症と診断されます。

なお、治療が必要になった時には、骨代謝マーカーという血液検査が有用です。その人にあった治療薬を選んだり、治療薬がしっかりと効果を発揮しているかどうか調べたりできます。

5. 骨粗しょう症の治療:生活習慣の改善

骨を丈夫にするためには、下記の生活習慣が重要です。

  • 定期的な運動
  • バランスの良い食事
  • 日光浴
  • 禁煙
  • 節酒

運動は骨粗しょう症の人に重要です。刺激をうけることで骨が丈夫になりますし、筋力やバランス力がつくことで転倒しづらくなって、骨折予防につながります。ただし激しい運動である必要はありません。ウォーキングなどの軽めのものでも十分です。無理なく続けられるものを見つけてみてください。また、転んで怪我しないように気をつけながら運動してください。

食生活においては、骨の健康を保つために、カルシウム、ビタミンD、タンパク質などをバランスよく摂取するようにしてください。さまざまな栄養素をもれなく摂取するには、1日3食欠かさず食べることや、主食(ごはん、パン、麺類など)、主菜(肉、魚、大豆、卵など)、副菜(野菜、海藻、きのこなど)の3つがそろった食事を摂ることを意識すると良いです。

カルシウムの吸収を助ける栄養素ビタミンDは日光浴でも補うことができます。炎天下で激しく日焼けするほど強い日差しを浴びる必要はなく、1日30-60分程度を目安に日中に屋外へ出る習慣をつけるとよいです。

6. 骨粗しょう症の治療:薬物療法

骨の強さを維持する目的で薬を使うことがあります。性別、年齢、血液検査、既往歴などに応じて、一人ひとりにあった治療薬が選択されます。

【内服と注射のいずれか選べる製剤】

内服薬

  • 活性型ビタミンD3(商品名:アルファロール®️、エディロール®️など)
  • 選択的エストロゲン受容体調節薬(商品名:ビビアント®️、エビスタ®️など)

【注射製剤】

活性化ビタミンD製剤は骨の材料であるカルシウムを腸から取り込む量を増やします。また、骨吸収を抑制する薬剤として、ビスホスホネート、副甲状腺ホルモン製剤、デノスマブ、選択的エストロゲン受容体調節薬があります。一方で、骨形成を促進する薬としてはロモスズマブがあります。

7. 骨粗しょう症のガイドラインについて

お医者さんによく参考にされているガイドラインとして、「骨粗鬆症の予防と診療のガイドライン 2015年版」があります。医療機関では、このガイドラインなどの情報をもとに、一人ひとりにあった予防法や治療法を選定しています。

参考文献

1. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会, 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015.

2. Kanis JA, et al. A family history of fracture and fracture risk: a meta-analysis. Bone. 2004 Nov;35(5):1029-37. doi: 10.1016/j.bone.2004.06.017.

3. Orito S, Kuroda T, Onoe Y, Sato Y, Ohta H. Age-related distribution of bone and skeletal parameters in 1,322 Japanese young women. J Bone Miner Metab. 2009;27(6):698-704. doi: 10.1007/s00774-009-0094-2. Epub 2009 May 12. PMID: 19430964.

4. Oei L, et al. High bone mineral density and fracture risk in type 2 diabetes as skeletal complications of inadequate glucose control: the Rotterdam Study. Diabetes Care. 2013 Jun;36(6):1619-28. doi: 10.2337/dc12-1188. Epub 2013 Jan 11.