閉経後の脊椎骨折防止にはリセドロン酸とテリパラチドのどちらがいい?
骨粗鬆症は閉経後の女性にはよくあります。骨折を防ぐ狙いでビスホスホネート製剤などの治療がなされます。骨を強くする2種類の薬を比較して、どちらが脊椎骨折を少なくするかが検討されました。
閉経後で重度の骨粗鬆症がある女性に対するリセドロン酸またはテリパラチド
多国籍の研究班が、閉経後で重度の骨粗鬆症がある人を対象に、リセドロン酸とテリパラチドが骨折を防ぐ効果を比較し、結果を医学誌『Lancet』に報告しました。
リセドロン酸はビスホスホネート製剤に分類されます。骨を壊す過程を抑えて骨密度を増やし骨折を減らす効果があります。
テリパラチドは
この研究は、閉経後の女性で、中等度の脊椎骨折が2か所以上または重症の脊椎骨折が1か所以上あり、骨密度が一定基準以下の人を対象としました。
対象者はランダムに、680人ずつ2グループに分けられました。
- テリパラチド20μgを毎日注射し、偽薬の飲み薬を毎週飲むグループ
- 偽薬を毎日注射し、リセドロン酸35mgを毎週飲むグループ
※日本で骨粗鬆症に対して承認されている用法・用量では、リセドロン酸を週に1回飲む場合の用量は通常17.5mgとされています。
どちらのグループでもカルシウムと
治療は24か月続けられました。効果判定のため、画像に写る脊椎骨折が新たに発生したかを調べました。
テリパラチドのほうが骨折が少ない
24か月の治療から次の結果が得られました。
24か月時点で、新たな脊椎骨折はテリパラチド群の680人中28人(5.4%)、リゼドロン酸群の680人中64人(12.0%)に発生した(リスク比0.44、95%信頼区間0.29-0.68、P<0.0001)。
テリパラチドを毎日注射したグループでは5.4%、リセドロン酸を週1回飲んだグループでは12.0%の人に、新たに脊椎骨折が発生していました。テリパラチドのほうが新たな脊椎骨折が少なくなりました。
副作用やその他の原因によって、背中の痛み・転倒・関節痛・手足の痛みなどがテリパラチドのグループでは合計72.8%の人に、リセドロン酸のグループでは合計73.5%の人に現れました。試した薬剤が関連していると見られたものは、テリパラチドのグループでは12.8%、リセドロン酸のグループでは9.7%の人に現れました。
骨粗鬆症にはテリパラチド?
2種類の骨粗鬆症治療薬を比較した研究を紹介しました。
この報告が載った『Lancet』の解説記事はいくつかの注意点を挙げています。
- 脊椎骨折以外の骨折、特に股関節骨折の差を確認するには対象者数が足りない。
- 結論をテリパラチド以外の骨形成を促進する薬剤にまで当てはめてはいけない。
- 骨を壊す過程を抑えるほかの薬剤にも当てはめてはいけない。
- ゾレドロン酸やデノスマブは骨の計測値でテリパラチドに勝るとした報告がある。
- ほかの薬剤がテリパラチドに勝る可能性もある。
脊椎骨折は骨粗鬆症の人にはよく起こり、痛みなどの症状につながります。テリパラチドのほうがリセドロン酸よりも脊椎骨折を減らしたという情報は、骨粗鬆症の治療方針を選ぶうえで役立つ場面があるかもしれません。そのうえで、さまざまな治療や考え方がある中で全体としてどれを優先するかは、今も検証と議論が続いています。
執筆者
Effects of teriparatide and risedronate on new fractures in post-menopausal women with severe osteoporosis (VERO): a multicentre, double-blind, double-dummy, randomised controlled trial.
Lancet. 2017 Nov 9. [Epub ahead of print]
[PMID: 29129436]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。