こつそしょうしょう
骨粗しょう症
骨がもろくなって、骨折の危険が高くなってしまう病気。高齢女性で特に多い
9人の医師がチェック 187回の改訂 最終更新: 2024.01.20

骨粗しょう症で知っておくと良いこと:発症予防、転倒予防など

骨粗しょう症は骨がもろくなった状態です。まずは運動や食事などの生活習慣によって予防することが大切です。すでに骨粗しょう症と診断を受けた人は、転倒しないように注意をしてください。

1. 骨粗しょう症予防のためにできることとは

骨粗しょう症の発症には加齢、閉経のほか、さまざまな生活習慣が関わります。予防のために取り入れるとよい生活習慣を紹介します。

  • 定期的な運動
  • 日光浴
  • バランスの良い食事
  • 禁煙
  • 節酒

定期的な運動

ウォーキングや筋肉トレーニングなどの運動は骨を強くすると言われています。骨に荷重がかかることが骨を強くする刺激になるのです。激しい運動である必要はありません。ケガのないように、無理のない範囲での運動で十分です。

日光浴

素肌を日光に当てることで、骨の形成に欠かせないビタミンDを合成することができます。紫外線の影響が気になるかもしれませんが、炎天下で激しく日焼けするほど強い日差しを浴びる必要はありません。日焼け止めを塗りたい場合には顔など気になる部分だけに留め、日中に屋外へ出る習慣をつけるとよいです。

バランスの良い食事

カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質など骨に必要な栄養素はたくさんあります。それらをバランスよく摂取するには、主食(ごはん、パン、麺類など)、主菜(肉、魚、大豆、卵など)、副菜(野菜、海藻、きのこなど)の3つがそろった食事を摂ると良いです。また1日3食欠かさず食べるようにすると食品の種類を増やしやすくバランスが整いやすくなります。それでもなかなか難しいという人は、自分に不足しがちな食品群を1品増やすように心がけてみてください。

禁煙

喫煙には骨がカルシウムを調達するのを難しくする作用があり、その結果、骨密度が低下します。そのため、骨粗しょう症の予防には禁煙が勧められます。とはいえ、タバコには依存性があるため、なかなか止めるのが難しいものです。そこで医療機関の禁煙外来を受診するのも一つの手です。年齢や喫煙年数などの条件はあるものの、保険適応で禁煙の手助けが受けられます。

節酒

大量にお酒を飲むと、カルシウムを排泄しやすくなって骨密度が低下します。ある報告[1]によれば、アルコールを一定の量を超えて飲む習慣のある人は、骨折リスクが高かったそうです。個人差はありますが、日本酒ならば180mL(1合)/日くらいまで、ビールであれば500mL/日程度に飲酒量をとどめておけば、骨への影響は少ないと考えられます。

2. どんな人が骨粗しょう症の検査を受けるとよいのか

骨粗しょう症のリスクの高い人は、骨密度測定などの検査が推奨されています。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」では、下記のいずれかに当てはまる人を骨密度検査の主な対象としています。

  • 脆弱(ぜいじゃく)性骨折(※注1)をしたことがある
  • 骨粗しょう症の原因となる病気(関節リウマチ糖尿病など)を患っている
  • 骨粗しょう症の原因となる薬剤(内服ステロイド薬など)を服用している
  • 65歳以上の女性、70歳以上の男性である
  • 閉経後から65歳未満の女性、50歳以上70歳未満の男性のうち、下記の3つの危険因子のうちいずれかに該当する
    • ①アルコールを1日3単位以上(※注2)飲む習慣がある
    • ②現在喫煙している
    • 大腿骨近位部骨折をした家族がいる

(※注1)脆弱性骨折とは、骨に軽い力しかかかっていないのに骨が折れてしまうことです。具体的には立った姿勢からの転倒かそれ以下の力での骨折です。交通事故やスポーツなどで激しく身体を打ちつけた場合の骨折は、脆弱性骨折には含まれません。

(※注2)アルコール3単位とは純アルコール24-30g相当のことを指します。酒別の純アルコール30gに相当する量は、およそ下記のようになります。

  • ビール (アルコール5%)・・・750mL  
  • 日本酒 (アルコール14%)・・・270mL
  • ウイスキー(アルコール43%)・・・90mL
  • ワイン (アルコール12%)・・・300mL

なお、自治体によっては骨密度検査の費用を一部負担してくれます。条件や費用は自治体によって異なるので、検査をしてみたいという人は、各自治体のホームページなどで確認してみてください。条件があえば比較的安価に検査できます。

3. 何科に相談したら良いのか

骨粗しょう症が心配な時には、整形外科や一般内科で診察が受けられます。ただし、骨粗しょう症の検査機器がないなどの理由で、対応できない医療機関もあります。あらかじめ問い合わせをして、診察可能か確かめてから受診するとよいです。

4. 骨粗しょう症の人が気をつけると良いこととは

骨粗しょう症の人に注意して欲しいのが「転倒しないこと」です。ちょっとしたつまづきでも骨折しやすく、寝たきりにつながるリスクとなります。とくに、過去にも転倒を繰り返している人、高齢者、脳卒中になったことがある人は転びやすいので、注意が必要です。

【転倒を防ぐためにできること】

  • 家屋をバリアフリーにする
  • 転倒しづらい靴を履く
  • 室内を片付ける
    • 電気コードなどを整理する
    • 床に物を置かない など
  • 部屋を明るくする

家屋をバリアフリーにするには、手すりをつけたり段差をなくしたりといった改修工事が考えられます。しかし、そうなると費用はかさむものです。そこで、費用の一部を支給してくれる制度が役立ちます。介護保険の要支援や要介護と認定されている人は、条件によって工事費用の最高20万円を限度に費用の7-9割まで支給されます。この条件や支給額は介護保険サービス利用時の自己負担割合などによって異なります。また、自治体によっては独自の制度があって、さらに追加で費用の負担をしてくれることがあります。詳しくは住んでいる自治体に問い合わせをしてみてください。

また、室内を片付ける、部屋を明るくして足元を見やすくする、とったこともつまづき防止に効果的です。こちらはさほど出費なくできる対策ですので、この機会に見直してみてください。

参考文献

1. Kanis JA ,et al. Alcohol intake as a risk factor for fracture. Osteoporos Int. 2005 Jul;16(7):737-42. doi: 10.1007/s00198-004-1734-y. Epub 2004 Sep 29.

2. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会, 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015.