大腸がんの原因:食べ物、喫煙、お酒、運動習慣、ストレスの影響など
大腸がんはたくさんの原因が重なり合って発生します。実際には大腸がんになった原因を特定できない人がほとんどです。とはいえ、大腸がんのリスクとなりうることが分かっている要素もあります。どういったものが大腸がんの要因になるのでしょうか?
目次
1. 大腸がんの原因は分かっているか
大腸がんの要因として多くのことが考えられています。以下に大腸がんのリスクを上げる可能性があると考えられているものを挙げます。
- 偏った食事
- 過度の飲酒
- 喫煙
- 運動不足
- 遺伝
- 加齢
これら以外にも大腸がんのリスクを高める要因が存在していることもありますし、複数が関与していることもあります。そのため要因を特定することは容易ではありません。大腸がんの予防という観点で言うと、大腸がんのリスクを上げるような要因を知りそれらを減らすことが予防のための努力になると考えられます。
上に挙げた中では、「加齢」を避けることはできませんが、「偏った食事」や「運動不足」を変えることはできます。また遺伝も変えられない要因ですが、自分の遺伝的なリスクについて知ることで対策できる場合もあります。
2007年に出された世界
【大腸がんのリスクに関連するもの】
- 確実に大腸がん(結腸がん)のリスクを下げるもの
- 運動
- 大腸がんのリスクを下げる可能性の高いもの
- 食物繊維
- にんにく
- 牛乳
- カルシウムのサプリメント
- 大腸がんのリスクを上げる可能性の高いもの
- アルコール(女性)
- 確実に大腸がんのリスクを上げるもの
- 肥満
- 内臓脂肪
- 高身長
- 赤肉・加工肉
- アルコール(男性)
ここで「確実に」とあるのは、「運動すれば絶対に大腸がんにならない」という意味ではありません。「運動したほうが運動しないよりも大腸がんになる確率が低いことが確実」という意味です。運動しても大腸がんになる人はいますし、肥満の人がみな大腸がんになるわけでもありません。ただ運動したほうがよいとは言えます。
赤肉というのはいわゆる赤身肉のことではなく、牛肉・豚肉・羊肉などでハムやソーセージに加工されていないものを指し、鶏肉や魚肉は除きます。
これを踏まえると以下に気をつけることが大事です。
- 運動不足にならないようにする
- 肉を食べ過ぎないようにする
- 食物繊維を摂る
- アルコールを飲みすぎないようにする
ここで大事なのは、必ずしも徹底的な節制が必要というわけではないということです。肉を食べないようにしすぎても栄養のバランスが悪くなりますし、アルコールを適度に飲むことはリラックス効果に繋がる場合もあります。運動も食事も飲酒も適度にバランスよく行うことが重要になります。
2. たばこは大腸がんの原因になるか
喫煙が大腸がんに与える影響について述べられた報告(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2003 Dec;12(12):1492-500)があります。
そのデータによると、タバコを吸う人は大腸がんになりやすいことが分かっています。また、統計的に偶然でないとは言い切れない範囲ですが、以前吸っていて禁煙中の人も大腸がんになりやすい傾向が見えています。以下にそのデータを表で示します。
【喫煙が男性の大腸がんに与える影響】
禁煙した人 |
喫煙している人 |
|
大腸がんになる割合 |
タバコを吸わない人の1.3倍 |
タバコを吸わない人の1.4倍 |
(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2003 Dec;12(12):1492-500を参考に作成)
タバコの肺がんへの影響は有名ですが、タバコは肺がん以外のがんにもなりやすくさせます。大腸がんのリスクも高めますので、タバコを吸わないことは重要です。
ただし、これらのデータは男性のデータですので、女性にもまったく同じように当てはまるかどうかはわかりません。女性ではどういった傾向が見られるのかに関しては吟味が必要です。
ここで、禁煙しても大腸がんの罹患割合が下がらないのであれば、禁煙しなくてよいではないかという疑問が浮かぶ方もいらっしゃると思います。上に挙げたデータだけを見ればそう思えるのはもっともです。しかし、喫煙との関連性が強く言われている肺がんのデータでも、禁煙してすぐに発がんリスクが下がるわけではなく、長期間禁煙してから初めてその効果が出ることが分かっています。
【禁煙期間と全肺がんのリスク】
禁煙期間 |
肺がんのリスク |
非喫煙者(元から吸っていない人) |
1.0倍(基準) |
9年以下 |
3.0倍 |
10年以上19年以下 |
1.8倍 |
20年以上 |
1.0倍 |
そのため、大腸がんにおいても禁煙を長期間行うことで、段々とその効果が現れてくる可能性も考えられます。また、たばこの身体への悪影響は肺がんや心筋梗塞などの多くの病気で言われていますので、禁煙をすることで健康になることは明らかです。
3. 大腸がんの原因になる食べ物はあるか
日本人の食事は米や野菜が中心でしたが、現代社会では食生活の欧米化により脂質の摂取量が増え、食物繊維の摂取量は減る傾向にあります。また、魚類の脂質の摂取量が減り、肉の脂質の摂取量が増えていることも加わり、大腸がんが増えていると考えられます。
食生活が欧米化するとどういった原理で大腸がんが増えるのか明確になってはいませんが、次のように考えられています。
- 脂肪の消化
酵素 である胆汁が多く分泌される(胆汁に含まれる胆汁酸は、腸内の発がんに関与していると考えられている) - さらに食物繊維の摂取量が少ないと排便が滞ってしまう
- 1・2の状態が続くことで腸内に
炎症 が持続するため、大腸がんが起こりやすくなる
こうした状態を変えることを通して、食物繊維を十分にとるなどの食事の工夫が大腸がんのリスクを下げると考えられます。
食べるときに気をつけたほうが良いもの
世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)が挙げた要素の中から、大腸がんと関連する食品を再掲します。
- 確実に大腸がんのリスクを上げるもの
- 赤肉・加工肉
- アルコール(男性)
- 大腸がんのリスクを上げる可能性の高いもの
- アルコール(女性)
つまり、赤肉や加工肉を多く食べて、アルコールを大量に飲む人は大腸がんになりやすいと考えられます。しかし、赤肉や加工肉を食べたから必ず大腸がんになるというわけではありません。個人差による部分も大きいのであくまで多数ある要因の一つと考えて良いですが、極端に摂取しすぎないようには気をつけるべきと思われます。
食べると大腸がんを予防できる可能性のあるもの
大腸がんを予防できる食べ物はあるでしょうか。
結論から言うと、これを食べておけば大腸がんにならないと言えるものはありません。ただ、大腸がんになる確率を下げるのではないかと考えられているものはあります。
- 大腸がんのリスクを下げる可能性の高いもの
- 食物繊維
- にんにく
- 牛乳
- カルシウムのサプリメント
これらのものは大腸がんのリスクを下げる可能性が考えられています。また、最近では高脂肪食も大腸がんのリスクと関連するという報告もあります。
ここで最も大事なことは、良いと思われている食物ばかりを摂り過ぎないようにすることです。身体にいいものだろうと食べ過ぎると栄養面に問題が出てきますので、やはり食生活全体のバランスが大切になってきます。
4. 大腸がんのリスクと向き合う食事とは
大腸がんのリスクを考えると食事はどういったものにするべきなのでしょうか。おそらくその答えは、栄養素の偏りをなくしバランスよく摂るということになります。
もう少し詳しく見てみましょう。
エネルギー摂取量
エネルギー摂取は適正な量に抑えることが大事です。エネルギー不足は身体のバランスを乱しますし、エネルギー過多は肥満になります。いずれも大腸がんに限らず多くの病気の原因になりますので、バランスの取れたカロリー摂取を心がけましょう。
すでに肥満がある場合は、自身の体重を把握・コントロールすることを第一歩として、自分の理想体重を目指してきましょう。
理想体重[kg]は身長[m]×身長[m]×22で計算できます。身長が160cmの人の理想体重は1.6×1.6×22=56.3kgになります。また、この理想体重を使って必要なエネルギー摂取量を計算できます。
- 軽労働(デスクワーク):25-30kcal×理想体重[kg]
- 中間程度の労働:(立ち仕事):30-35kcal×理想体重[kg]
- 重労働(力仕事):35kcal以上×理想体重[kg]
ご自身の身長から1日の必要エネルギー量をぜひ一度計算してみてください。
脂質
脂質の多い食品や料理を摂りすぎないことが大切です。よく食べるものの中でも、ポテトチップス・インスタントラーメン・魚の干物等は、脂質の中でも特に身体に良くないと考えられている過酸化脂質が多く含まれているので食べ過ぎを避けた方が良いと考えられます。
たんぱく質
たんぱく質は肉だけでなく、魚や卵、大豆・大豆製品からも摂ることができます。赤肉(牛肉、豚肉、羊肉など)や加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)は摂りすぎると大腸がんのリスクを高めてしまうことが分かっています。しかし、過度に赤肉と加工肉を避ける必要はありません。バランス良く食品を選んで食べていくことが重要です。
食物繊維
野菜と果物を合わせて1日に400g以上摂ると、十分量の食物繊維が含まれることになり理想的です。献立で考えると、副菜や汁物、付け合わせに野菜や海藻、きのこ類、豆をたくさん使うと良いです。主食には雑穀米やライ麦パン、そば、オートミールを選択すると食物繊維を摂る一工夫になります。
また、野菜には食物繊維だけでなく、
カルシウム
牛乳やカルシウムサプリメントは大腸がんを予防する可能性が指摘されています。そのため、カルシウムを摂ることは有効かもしれません。とはいえ、摂りすぎは身体のバランスを崩しますので、やはりほどほどの量を心がけるようにしてください。
発酵食品
乳酸菌が多く含まれる発酵食品(ヨーグルト、甘酒、ぬか漬け、納豆など)を摂ることで、腸内環境が整うことが期待されます。1種類の発酵食品ではなく、多種類の発酵食品を摂ることで、摂取する乳酸菌の種類も増えます。
ここで挙げたいずれの食品も多く摂るほど良いというものではなく、バランスが重要です。もっと詳しく知りたい方は、管理栄養士の指導を受ける方法もあるので、医療従事者などに相談してみてください。
食事を考えるうえで気をつけてほしいこと
大腸がんと食事は関連性が深いです。大腸がんの発がんに食事が関わっていることが予想されています。
しかしその一方で、「大腸がんを食事で治す」ということが書いてある書籍やサイトを散見します。大腸がんはその性質から、この食事を摂ればがんが消えるといったようなことは起こりえません。中には食事療法と称して高額な費用を取るような場合もありますので、宣伝文句を鵜呑みにしてすぐに飛びつくようなことは避けてください。効果と費用がいかほどなのかを、あとに残る形のメールや文書で確認すると良いかもしれません。
5. お酒は大腸がんの原因になるか
飲酒が大腸がんに与える影響について述べている報告(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2003 Dec;12(12):1492-500)は、過度の飲酒で大腸がんが発生しやすくなるとしています。
この論文では1週間に150g以上のアルコールを摂取する場合を過度の飲酒と定義しています。過度の飲酒という表現にしてはやや厳しい基準です。以下がそのデータを表にまとめたものになります。
【飲酒が男性の大腸がんに与える影響】
アルコール摂取量 |
週に150-299gを摂取 |
週に300g以上摂取 |
大腸がんのリスク |
1.4倍 |
2.1倍 |
(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2003 Dec;12(12):1492-500を参考に作成)
週に300gというのは1日2合の日本酒(アルコール度数15%)を毎日飲むぐらいの飲酒量です。1合は180ml、アルコール(エタノール)の比重はおよそ0.8g/mlなので、1週間で360ml×15%×7日×0.8g/ml=302gのアルコールを摂取しているという計算になります。
アルコール飲料をどの程度摂るとどのくらいのアルコール量になるかを次の目安表に示しますので、ふだんよく飲んでいるものの量に当てはめてみてください。
【アルコール飲料ごとの週間アルコール摂取量】
アルコール飲料(酒)の種類と量 |
週に摂取するアルコール量 |
ビール(5%)を1缶:350ml/日 |
98g/週 |
ビール(5%)を大瓶1本633ml/日 |
177g/週 |
日本酒(15%)1合:180ml/日 |
151g/週 |
日本酒(15%)2合:360ml/日 |
302g/週 |
焼酎(20%)1合:180ml/日 |
202g/週 |
焼酎(20%)2合:360ml/日 |
403g/週 |
ワイン(15%)1杯:120ml/日 |
101g/週 |
ワイン(15%)ボトル1本:700ml/日 |
588g/週 |
ウイスキー(40%)1杯:60ml/日 |
134g/週 |
ウイスキー(40%)2杯:120ml/日 |
269g/週 |
以上の表を参考に、自分が週に何gのアルコールを摂取しているのかを計算してみてください。もし週に300g以上のアルコールを飲んでいる場合は節酒をおすすめします。ただし、このデータは男性のデータですので、女性に関しては違った基準になることも考えられます。
現在のところ飲酒が大腸がんを引き起こすメカニズムについてははっきりしていません。アルコール、またはアルコールの
6. 肥満や運動不足は大腸がんの原因になるか
大腸がんは生活習慣とも関連が深いです。生活習慣と大腸がんに関連するものとして以下が考えられています。
- 確実に大腸がん(結腸がん)のリスクを下げるもの
- 運動
- 確実に大腸がんのリスクを上げるもの
- 肥満
- 内臓脂肪
内臓脂肪の貯留も肥満も運動不足や食生活の乱れが原因の場合が多いです。つまり、大腸がん予防には生活習慣を整えることが非常に有効ということになります。
また、大腸がんを予防する意味で生活習慣を正しく保つことは重要なのですが、運動のしすぎや食事の節制のしすぎもよくありません。まずはご自身の体に負担のかかりすぎない程度の運動から始めましょう。その上で、慣れてきた分の負荷をかけていくことが望ましいです。一体どの程度まで負荷をかけてよいのでしょうか。
大腸がんを予防する運動の負荷について、海外の研究班が調べた報告(BMJ. 2016 Aug 9;354:i3857.)があります。この報告は、活動量の足りない人(週あたり総活動量が600MET・分未満)よりも運動をしっかり行う人(週あたり8,000MET・分以上)の方が結腸がんになりにくいとしています。運動をしっかりと行うことで結腸がんのリスクは21%減少していました。ここで、METは運動の強さを表し、600MET・分/週の運動量は早歩きで毎週150分に相当します。毎週8,000MET・分以上の運動は単純計算でその13倍以上になりますので、非常に激しい運動量であることがわかります。
つまり、大腸がんのことだけを考えるなら、運動はかなり激しい程度まで行っても良いと思われます。とはいえ運動をやりすぎて体を壊しては本末転倒です。自分のやれる範囲内で行うようにしてください。
また、運動の内容も自分のリフレッシュになるものや楽しめるものをチョイスするのも重要です。そのほうが運動習慣もつきやすく持続性が高いことが期待できます。
7. ストレスは大腸がんの原因になるか
ストレス状況下にいると大腸がんになりやすくなるかどうかについて、医学的かつ統計学的に明確に示された証拠はありません。しかし、だからといってストレスと大腸がんは全く関係ないとは言い切りにくいです。
というのも、クローン病や潰瘍性大腸炎(UC)などではストレスによって病状が悪化すると言われています。クローン病や潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患は大腸がんのリスクとなることが考えられており、間接的にストレスが大腸がんに影響を与える可能性はあります。
また、ストレスは活性酸素を増やす、
現代社会はストレス社会ともいわれています。社会が複雑化したことによって軋轢(あつれき)の生じうる場面が増えているため、ストレスが生じやすいと考えられています。
人間が生活を送る上でストレスを完全になくすことは非常に難しいです。ですから、ストレスを無くすのではなく、ストレスと向き合ってうまく対処する方法を見つけるほうが現実的かもしれません。それは音楽鑑賞でもスポーツでもなんでも構いませんので、ご自身にあったものをぜひ実践してみてください。
8. 大腸がんの予防薬はあるのか
大腸がんの予防を効能・効果として承認されている薬はありません。他方、大腸がんを予防できる薬がないかを調べる研究はなされています。ここでは大腸がんの予防効果がないか研究されているものを紹介していきます。
アスピリンで大腸がんを予防できる?
アスピリンが大腸がんを予防するかもしれないという報告(Ann Intern Med. 2016 Jun 21;164(12):814-25)があります。この報告は、40歳以上の人が10年以上アスピリンを飲み続けた場合に大腸がんの予防効果があらわれ、調査期間のリスクが40%少なくなっていたとされています。
しかし、その一方でアスピリンの副作用に関しても考えておかなければなりません。アスピリンは出血しやすくする働きがあるので、どうしても血が止まりにくくなります。例えば頭をぶつけたときに、普段なら頭のなかに出血しない程度でも、アスピリンを飲んでいることで頭の中で出血することもありえます。得られるメリットとデメリットのバランスを考えて判断する必要があります。
サプリメントで大腸がんを予防できる?
世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)が2007年に出した報告では、カルシウムサプリメントが大腸がんを予防する可能性があるとしています。大腸がんが気になる方はカルシウムサプリメントを飲むことが良いかもしれません。
しかし、予防効果を高めたい一心で大量にカルシウムサプリメントを飲むことはおすすめしません。過度の摂取は高カルシウム血症を起こしてしまう可能性もあります。高カルシウム血症になると以下の症状が出ることがあります。
倦怠感 - 筋力低下
- 口渇
- 多飲
- 多尿
- 悪心
- 嘔吐
もしカルシウムサプリメントを飲んでいる人で、上の症状を自覚した場合は飲むのをやめ、医療機関で相談してください。
葉酸で大腸がんを予防できる?
ビタミンB群の中に葉酸というものがあります。葉酸が大腸がんを予防する効果がないかを調べた研究(Cancer Causes Control. 2008 Feb;19(1):67-74)があります。
この研究の結果では葉酸を飲むことで大腸がんを予防する効果は示されませんでした。しかし葉酸は身体に必要な物質の一つでもあり、葉酸不足では大腸がんになりやすいという意見もありますので、葉酸不足にならないようにバランスのよい食事を心がけたりサプリメントを用いたりすることは良いと考えられます。
9. そのほか:ウォシュレット®のような温水洗浄便座の影響は?
まれにウォシュレット®のような温水洗浄便座が大腸がんの原因になっているのではないかという噂も見かけます。医学的には根拠のない噂です。温水洗浄便座の水は大腸の中までは入っていかないので、大腸に影響が出ることはほとんど考えられません。
確かに、大腸がんは近年増えており、温水洗浄便座も普及率があがっています。
2つのデータを並べて見ると、温水洗浄便座が大腸がんの原因となっているように思えてくるかもしれません。しかし、これを証明するためには、食事やたばこ、飲酒などの大腸がんの原因となっている要素を全て統一した上で、温水洗浄便座を使っている人と使っていない人を比べなければなりません。グラフの形が似ているだけで「原因だ」と思ってしまうのは早計です。たとえば同じ期間に中国の人口も増え続けていますが、中国の人口が日本人の大腸がんの原因だと思う人はいないでしょう。
大腸がんが最近増えていることには、食事の欧米化や高齢化の影響といった原因があるかも知れません。原因を知るには慎重に吟味していかなければなりません。