肺がんの薬など、効能等が追加となった6剤はどんな薬?

2017年5月18日に、すでに発売されている医療用医薬品6製品が新しい効能などの承認を取得しました。ザーコリ、ゾシン、カイプロリス、テリボン、アサコール、レミケードの新しい効能などを紹介します。
ザーコリとは?
クリゾチニブ(商品名ザーコリ®)は、がん治療に使われる分子標的薬です。ALK阻害薬に分類されます。肺がんのうち非小細胞肺がんの治療に使います。進行・再発した非小細胞肺がんで、手術ができない場合の選択肢とされます。
がんに対する分子標的薬の中には、がん細胞が特定の遺伝子変異を持っている場合にだけ効果を期待できるものがあります。クリゾチニブは、従来ALK融合遺伝子陽性の場合にだけ承認されていましたが、新たにROS1融合遺伝子陽性の場合も効能・効果に追加されました。
クリゾチニブの使用開始前にROS1融合遺伝子を調べる検査を行い、結果が陽性ならば使用可能となります。
臨床試験では、127人にクリゾチニブを使った治療をしたところ、69%の人でがんが小さくなる効果が見られました。ほかの治療と生存期間などを比較した結果は添付文書に記載されていません。
副作用の可能性があることとして、好中球減少、肝障害の検査値異常、貧血、肺炎、呼吸不全などが現れました。
参照:ザーコリカプセル200mg/ ザーコリカプセル250mg 添付文書
ゾシンとは?
ゾシン®静注用2.25、ゾシン®静注用4.5は、点滴で使う抗菌薬(抗生物質、抗生剤)の製品です。成分としてピペラシリン(ペニシリン系抗菌薬)とタゾバクタム(βラクタマーゼ阻害薬)を含みます。感染症の治療に使います。
従来の効能・効果に挙げられた感染症に加えて、「深在性皮膚感染症、びらん・潰瘍の二次感染」が追加されました。すでに十分な科学的根拠があることから、新たに臨床試験を行うことなく効能・効果を承認できる公知申請の制度によって承認追加とされました。
参照:ゾシン静注用2.25/ゾシン静注用4.5 添付文書
カイプロリスとは?
カルフィルゾミブ(商品名カイプロリス®)は抗がん剤です。効能・効果は「再発又は難治性の多発性骨髄腫」です。
従来、レナリドミド・デキサメタゾン・カルフィルゾミブという3剤を使う用法が承認されていましたが、新たにデキサメタゾンとカルフィルゾミブの2剤による用法・用量が追加され、2剤だけでも治療が可能になりました。
臨床試験では、ボルテゾミブ・デキサメタゾンの2剤による治療と、カルフィルゾミブ・デキサメタゾンの2剤による治療が比較されました。929人の対象者がそれぞれどちらかに割り振られました。
多発性骨髄腫が進行することなく生存した期間は、ボルテゾミブ・デキサメタゾンを使ったグループの半数で9.4か月以上、カルフィルゾミブ・デキサメタゾンを使ったグループの半数で18.7か月以上であり、カルフィルゾミブ・デキサメタゾンのほうが長くなりました。
副作用として、血小板減少、貧血、疲労、不眠症、呼吸困難、下痢、高血圧、吐き気、無力症、末梢神経障害、リンパ球減少、発熱、高血糖などが現れました。
参照:カイプロリス点滴静注用10mg/ カイプロリス点滴静注用40mg 添付文書
テリボンとは?
テリパラチド(商品名テリボン®)は副甲状腺ホルモン製剤です。骨折の危険性の高い骨粗鬆症の治療に使います。従来、治療を続けられる期間にあたる投与期間上限が「72週間」とされていましたが、新たに「24カ月」に変更され、より長く使い続けられるようになりました。
臨床試験ではテリパラチドを24か月使って治療した人で、治療開始時と比べての骨密度は、治療開始から72週時点で8.4%増加、104週時点で9.9%増加していました。
この臨床試験で起こった骨折の数の違いは添付文書に記載されていません。
副作用として、吐き気、嘔吐、頭痛、だるさ、腹部不快感、めまい、疲労、悪寒などが現れました。
参照:テリボン皮下注用56.5μg 添付文書、審査報告書
アサコールとは?
メサラジン(商品名アサコール®)は潰瘍性大腸炎の治療薬です。寛解期の用法・用量が追加されました。「通常,成人にはメサラジンとして1日2,400mgを3回に分けて食後経口投与する」とされていますが、「寛解期には,必要に応じて1日1回2,400mg食後経口投与とすることができる」という記載が加わりました。
臨床試験では、1日1回で飲んだ人301人と1日3回で飲んだ人299人を比較した結果、再燃とならなかった人の割合に差がありませんでした。
副作用の可能性があることとして尿の検査値異常などが現れました。
参照:アサコール錠400mg 添付文書
レミケードとは?
インフリキシマブ(商品名レミケード®)は、炎症を抑える作用のある分子標的薬です。抗TNFα抗体に分類されます。関節リウマチなど多くの場面で使われます。新たにクローン病に対する用法・用量が追加されました。従来は使用開始から6週以後は8週間ごとの使用とされていましたが、効果が弱くなってきた場合には最短4週間ごとまで間隔を短くすることが可能になりました。
使用間隔を短くした臨床試験では、副作用を含む有害な出来事として、クローン病、腸閉塞、扁桃炎、肛門性器疣贅、肺炎、肺結核、伝染性紅斑、肝機能異常、ループス様症候群などが現れました。
参照:レミケード点滴静注用100 添付文書、審査報告書
まとめ
薬の使いかたが広がることにより、保険診療として新しい治療法が使えるようになります。効能・効果や副作用に対応して報告されているデータを参考に、従来の治療法と比較することで、ひとりひとりに合わせた治療選択の幅を広げることができます。
*2021年9月30日:わかりにくいとのご指摘がありタイトルを変更しました(MEDLEY編集部)
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※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。