糖尿病とは? 1型糖尿病と2型糖尿病の違い、原因について
糖尿病という名前は、テレビでも本でもいたるところで耳に入ってきます。では、実際にどんな症状があり、どんな危険性があるかと聞かれたら、きちんと答えられるでしょうか? このページでは糖尿病がどういった病気で、なぜ
1. なぜ「糖尿病」というのか
糖尿病は紀元2世紀からその存在が認識されていたと考えられています。当時は尿のよく出る病気という意味の「diabetes」と呼ばれていましたが、同じく尿のよく出る尿崩症と区別する意味で、18世紀になると「diabetes mellitus」(甘い尿がよく出る病気)と呼ばれるようになりました。現在のお医者さんは糖尿病のことをよく「DM」と呼ぶのですが、これは英語の「diabetes mellitus」を省略した言葉です。
日本では19世紀から
日本においての糖尿病となると、1857年に緒方洪庵が訳した「扶氏経験遺訓」で、口の中がどんなに乾いても甘い尿が出続ける病気を「蜜尿病」というと記載があります。その後20世紀の初めになって、「蜜尿病」から「糖尿病」に名前が変わった経緯がありますが、少なくとも江戸末期から明治時代には糖尿病は認識されています。
日本で糖尿病が認識されたのは世界と比べてかなり遅いですが、それでも本格的に西洋医学が入ってくるよりも前であったことは確かなようです。
尿に糖が出ない糖尿病もある
歴史上は、糖尿病は甘い尿が出る、つまり尿に糖が混じる病気として知られてきました。しかし、実は尿に糖が混じらない糖尿病もあります。この矛盾は、時代を経て糖尿病に対する認識が変化してきたことと関連しています。
では、糖尿病はいったいどういった病気なのか、詳しく説明していきます。
2. 血糖値とは何か

糖尿病の説明をする前に、大事なキーワードを説明する必要があります。それは、糖尿病を語るうえで欠かせない
血糖値とはその名の通り血液中の糖分の量を示す数値です。検査の前に食事をしているか否かで正常値は変動しますが、空腹時であれば110mg/dL未満が正常とされています。
ここで、「mg/dL」という単位に関して説明を加えます。1dL(デシリットル)は100mL(ミリリットル)です。血糖値の「mg/dL」というのは100mLの血液中に何mgの糖(
また、空腹時血糖値という言葉もあります。空腹時血糖値とは「前回の食事から9時間以上経っている状態」に測定した血糖値をいいます。検診では空腹時血糖値を参考にすることが多いので、検査の9時間前からは何も食べないようにしてください。
血糖値は食べた分だけ上昇するわけではない
血液中の糖の量が血糖値なのであれば、たくさん糖質を食べれば食べた分だけ血糖値が上昇するのかと言うと、そうでもありません。実は身体の中では多くの
健康な人であれば、血糖値が高くなるとインスリンの働きが強まって血糖値を下げます。しかし、糖尿病の人では大なり小なりこのインスリンの働きが鈍っています。つまり、本来は血糖値が高くなるタイミングで働かなくてはならないインスリンがうまく働いていないために、必要なときに血糖値が下がらないのです。
インスリンは血糖値を下げる効果がある唯一のホルモン
インスリンは血糖値を下げる効果のある体内唯一のホルモンです。インスリンは膵臓(すいぞう)から分泌されていて、膵臓の中でも特にβ細胞で作られることがわかっています。そのため、β細胞が破壊されてしまうとインスリンが枯渇し、糖尿病になってしまいます。これを「1型糖尿病」と呼びます。
これに対し多くの人を悩ませている糖尿病は「2型糖尿病」で、病気になる仕組みは1型とは異なります。1型糖尿病と2型糖尿病は、インスリンが十分に機能しないことで血糖値が高くなるという点は共通しています。
なぜ尿糖を測るの?
昔の糖尿病の定義は、「糖を含む尿が大量に排泄される状態」でしたが、現在の糖尿病の定義は、「血糖値が病的に高い状態」に変わっています。実際これは理にかなっていて、糖尿病の治療をするのに尿に含まれる糖分(尿糖)をなくそうとしても病気の原因を解決できていないため、尿糖の出る原因(血糖値が高いこと)を治療するほうが重要なのです。
また、尿糖が出現するのは糖尿病だけではありません。腎臓の機能が落ちている人は糖尿病でなくても尿糖が出ますし、飲んでいる薬の影響で尿糖が出てしまうこともあります。そのため、糖尿病の診断をする時は尿糖を基準にしないことになっています。詳しくは「糖尿病の診断基準」の項で解説しています。
ただ、尿糖が重要でないかというとそうではなく、尿糖の検査も必要です。
3. 糖尿病の本当の危険性
糖尿病は怖い病気です。しかし、あまりその怖さは認識されていません。確かに、血糖値の数字が高くなるだけで特に症状のない人が「病気です」と言われてもピンと来ません。ところが、糖尿病を治療せずに放置した場合は、心筋梗塞や脳梗塞に匹敵するくらい恐ろしい病気となります。
一時的に血糖値が高くなってもあまり症状が出ないことは事実です。糖尿病でない人がドーナツをたらふく食べてもなんら症状を自覚しません。せいぜい満腹感と眠気が襲ってくることくらいでしょう。しかし、これは当たり前ではないのです。ドーナツによって血糖値が一時的に上がってもすぐに元に戻るのは、きちんとインスリンが働いてくれるからなのです。糖尿病になるとインスリンの働きが悪く、血糖値が下がってくれません。そのため
高血糖状態が持続すると、場合によっては意識混濁を起こし、
また、
糖尿病は命に関わる病気
では、実際の数字として糖尿病患者の死亡数はどのくらいなのでしょうか。2021年の厚生労働省の発表では1年間で14,356人が糖尿病で亡くなったと報告されています。これだけでも大きな数字ですが、糖尿病は脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)や心疾患(心筋梗塞や狭心症、心不全など)といった致死的な病気を引き起こします。そのため、実際に糖尿病が関連して死亡した総数ははるかに多いと考えられます。例えば同年の脳血管障害の死亡総数は104,595人、心疾患では214,710人とされていますが、この約30万人のうちのかなりの部分が糖尿病によるものと考えられます。
高血糖がいかに身体に悪いかを述べていきましたが、これを予防するためには血糖をきちんとコントロールすることが重要です。糖尿病の人がしっかり治療するとこういった心配は減ってきます。コントロールの仕方に関しては、「糖尿病の治療法」の項で詳しく説明していきます。
参考文献 厚生労働省:令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況
4. 糖尿病の種類:1型、2型、妊娠糖尿病
糖尿病と言えば「太った人の病気」「成人病」というイメージがあるかもしれません。糖尿病の中には、肥満と関係なく子どもに多いタイプの糖尿病や、妊娠と関係する糖尿病もあります。糖尿病の分類について説明していきます。
1型糖尿病
インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることで、インスリンを自力で出せなくなります。β細胞が破壊される原因は多くの場合が膵臓に関する
1型糖尿病は肥満とは関係ありません。
1型糖尿病は珍しい病気で、
2型糖尿病
糖尿病患者の95%以上が2型糖尿病に該当すると考えられています。このタイプの糖尿病では、インスリンの分泌の低下やインスリン抵抗性上昇によって高血糖になります。ここで、インスリン抵抗性という聞き慣れない言葉が出てきました。この言葉は2型糖尿病のキーワードになりますので簡単に説明します。
インスリンは血糖を下げる効果がありますが、そのはたらきが鈍くなることをインスリン抵抗性が強くなったといいます。つまり、インスリン抵抗性が強くなると今まで下がっていた血糖値も同じ量のインスリンでは下がらなくなってきます。
インスリン抵抗性が上昇する原因は、生活習慣(食事、運動)に影響されるパターンが多いので、生活改善が重要になります。
また、インスリンの分泌低下が問題となっている人は、生活改善も重要ですが、薬によってインスリンを分泌するように促すことも必要となってきます。
2型糖尿病は肥満と関連が強く、発症時期は40歳以降が多いです。
その他の特定の原因による糖尿病
ほかにも、膵臓β細胞やインスリンの伝達機構に関わる遺伝子の異常があり、血糖値が下げられないパターンがあります。また、膵臓や肝臓の病気でインスリンがうまく機能しない場合や、薬剤の影響や
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖
妊娠糖尿病になると、胎児に悪影響が出やすく、出産後にお母さんが本格的に糖尿病になってしまうリスクも高まります。そのため、血糖コントロールをしっかりと行っていくことが重要になります。詳しくは、「妊娠糖尿病」の項で解説しています。
5. 糖尿病の原因は食べ過ぎだけではない
血糖値は食事にも影響されるのですが、血糖値を下げるホルモンと血糖値を上げるホルモンのバランスによって複雑にコントロールされています。血糖を下げるホルモンはインスリン、血糖値を上げるホルモンにはグルカゴン・成長ホルモン・糖質コルチコイド(
ここでは糖尿病の理解を深めるために押さえておくと良いポイントを挙げて説明していきます。
インスリンの分泌低下
食事で糖が身体に取り込まれたとき、インスリンがちゃんと働いてくれれば血糖値は正常に維持されます。しかし、β細胞が十分にインスリンを分泌しないと高血糖になってしまいます。インスリンの分泌が低下するには訳があります。以下に詳しく説明します。
- インスリンを出す工場がやられる
- インスリンを作る工場とも言える膵臓のβ細胞の機能が低下して、インスリンが出なくなります。1型糖尿病の原因がこれです。
- インスリンを出す司令室がやられる
- 血糖値が上昇すると膵臓のβ細胞はインスリンの分泌量を増やします。しかし、高血糖状態が続くと、高血糖が通常の状態だと身体が勘違いしてしまうようになります。いわば、インスリンを作れと司令する力が落ちてしまった状態です。血糖値が高い状態でも「インスリンを分泌しなくても良い」と身体が判断してしまうため、本来インスリンを出すべき状態でも簡単にインスリンが出なくなります。
インスリン抵抗性
先程も出てきた言葉ですが、非常に難しい考え方です。身体がインスリンに抵抗するとはどういうことでしょうか。
インスリン抵抗性とはインスリンが効きにくい状態、つまりインスリンが出ても血糖値が下がりにくいことを指します。どうしてインスリン抵抗性が出現するのかはいまだに完全に明らかにはなっていません。
現在わかっている範囲では、以下のものが関与していると考えられています。
- 運動不足
- 不摂生な食事
- 薬剤の副作用
- 糖毒性
中性脂肪 の高値- HDL
コレステロール (善玉コレステロール)低値 - 加齢
ここで、糖毒性という言葉は聞き慣れないかもしれません。糖毒性は「高血糖状態がインスリンの作用を鈍らせることにより、ますます高血糖状態が促されてしまうこと」です。血糖値が高いこと自体がインスリン抵抗性の原因になるのです。このことによって、糖尿病になると悪化が悪化を呼ぶ厄介な悪循環に陥ってしまいます。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームは、ここ10年余りで聞く機会の増えた言葉です。メタボリックシンドロームは、身体が不摂生の悪影響を受けていることの指標と考えられています。
診断の基準は以下のように決まっています。
【日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準】
- 必須条件:内臓脂肪型肥満
- 男性の腹囲:85cm以上
- 女性の腹囲:90cm以上
- その他の項目(3項目のうち2項目以上を満たすこと)
- 脂質代謝異常:中性脂肪(TG)150mg/dL以上または善玉コレステロール(HDL-C)40mg/dL未満
- 高血圧:
収縮期血圧 130mmHg以上または拡張期血圧 85mmHg以上 - 空腹時の血糖値が110mm/dL以上
1.と2.の条件を満たした場合にメタボリックシンドロームと判断する。
つまり、メタボリックシンドロームは、内臓脂肪が蓄積した人が動脈硬化のリスク(脂質代謝異常、高血圧)や糖尿病のリスク(高血糖)を抱えている状態ということになります。メタボリックシンドロームがあると、2型糖尿病になるリスクは3-6倍になると言われています。
食事の不摂生や運動不足が関わっていることがほとんどですので、生活習慣病の一つに当たります。
運動不足
運動不足になると、エネルギーの消費量が減って、心肺機能も低下します。そして心肺機能が低下することでますます運動するのが難儀になります。すると、体内のエネルギーが過多になり、メタボリックシンドロームの危険性が上昇してしまいます。逆に運動することで、エネルギーを消費し、心肺機能も高められるので、メタボリックシンドロームの改善が期待できます。
食事のバランス
糖尿病は血糖値が上昇する病気です。糖(炭水化物)を食事で取り込むと血糖値が上がります。そのため、炭水化物ばかり大量に食べてしまうと糖尿病になったり悪化させたりします。
そのため、炭水化物の摂取制限を設けることは重要です。しかし、制限し過ぎると栄養バランスを崩してしまいます。適切な量を知るためにも、管理栄養士などの専門家に相談することが望ましいです。
参考文献
・日本糖尿病学会/編, 糖尿病