糖尿病ケトアシドーシスの基礎知識
POINT 糖尿病ケトアシドーシスとは
糖尿病性ケトアシドーシスとは、血液中の糖を体内に取り込むために必要なインスリンが不足することで起こります。インスリンが不足するとエネルギーとして糖分を使えない代わりに脂肪酸を使うので、その結果として体が酸性に傾いてしまい生命を脅かします。ケトアシドーシスは1型糖尿病の方で特に多く起こり、重症感染症やその他の病気にかかったとき、暴飲暴食をしてしまったとき、インスリン注射を忘れてしまったときなどに起こります。短時間でひどい脱水症状、腹痛、嘔吐、意識障害、昏睡が現れるのですみやかに治療を開始しなければなりません。糖尿病を治療中にこのような症状が現れた場合にはすぐに医療機関を受診をしてください。
糖尿病ケトアシドーシスについて
- 糖尿病の悪化により、
意識障害 などの症状を起こした状態 - 糖尿病で
インスリン が欠乏すると、糖をエネルギーとして利用できなくなる- 尿から糖、水分の排泄が増え、脱水になる
- 糖の代わりに、脂肪をエネルギーとして利用する
- その際に産生されるケトン体が増えると、血液が酸性に傾き、意識障害などの症状を生じるようになる
- 以下のことが原因で起こる
- 小児や若年者では、突発的に1型糖尿病を
発症 し、糖尿病ケトアシドーシスを呈する場合もある - 高血糖高浸透圧症候群と症状は類似しており、合わせて糖尿病性
昏睡 として扱われる
糖尿病ケトアシドーシスの症状
- 主な症状
- のどの渇き、多飲
- 多尿
意識障害 - 重症の場合、うとうとしがちになる
- 嘔吐
- 呼吸の異常(速く深い呼吸)
- 腹痛
- 適切な治療がなされないと
昏睡 状態に陥る
糖尿病ケトアシドーシスの検査・診断
- 血液検査
- 血液の酸性の程度を調べる
血糖 値や血液の浸透圧を調べる- 血液中のケトン体を調べる
- 脱水の程度を調べる
- 尿検査
- 尿中のケトン体を調べる
感染症 を合併 していないか、血液検査や胸部レントゲン (X線 )・CT 検査を適宜行う
糖尿病ケトアシドーシスの治療法
- 入院の上、水分を大量に補う点滴と
インスリン の投与を行う高血糖 状態と、脱水、血液が酸性に傾いている状態を改善させる- 入院は可能な限り、専門医のいる医療機関が望ましい
感染症 などの糖尿病ケトアシドーシスを引き起こした原因の病気があればそちらも治療する- インスリンの使用:普段とは異なる量が必要
- インスリンを用いて治療すると低カリウム血症を起こす場合があるので、慎重な治療が必要
- インスリン加療と併行してカリウムを補充することが多い
血糖 値を急速に下げると浸透圧や電解質 が乱れるので、徐々に改善することが重要- 血糖値や電解質のチェックがこまめに必要なので、頻回の検査が必要
- インスリンを用いて治療すると低カリウム血症を起こす場合があるので、慎重な治療が必要
糖尿病ケトアシドーシスの経過と病院探しのポイント
糖尿病ケトアシドーシスが心配な方
糖尿病ケトアシドーシスでは急激に血糖値が上がって意識がぼーっとしたり、血液が酸性になって腹痛が生じたりします。
糖尿病の方であっても普段の血糖値は未治療で200-300mg/dL前後という方が多いかと思いますが、ケトアシドーシスに陥ると血糖値が500mg/dLを超えてしまうことも珍しくありません。糖尿病の方で普段と調子が違うと感じたら、自己判断でもご家族の方の判断でも、まず一度血糖値を測定してみて下さい。糖尿病ケトアシドーシスに限らず低血糖症など様々な異常が発覚することがあります。血糖値が200mg/dl未満であれば、糖尿病ケトアシドーシスの心配はありません。
ご自宅で血糖測定をして極めて高値であった場合、そして、意識がぼーっとしたり、腹痛があったりなど、普段とは異なる症状がある場合には、まずかかりつけの内科を受診することをお勧めします。意識状態が悪く自力で歩けない場合には、ご家族に付き添ってもらって救急車での受診が良いでしょう。
糖尿病ケトアシドーシスでお困りの方
糖尿病ケトアシドーシスについては、診断がつき次第その場で治療が開始されますし、治療の方法にもバリエーションが少ないため、どこでどのような治療を受けるか迷う余地は少ない病気かもしれません。
病院に到着してからは点滴やインスリンの注射が行われます。数日間かけて血糖値を改善させた後に、インスリンの量や食事量について見直しが必要ないかを判断します。また、肺炎や尿路感染などが原因で糖尿病ケトアシドーシスを起こすことがありますので、そのような感染症があればこちらの治療も並行して行うことになります。糖尿病ケトアシドーシスであれば、専門医のいる医療機関での入院加療が望ましいですが、救急隊やかかりつけ医の判断で適切な医療機関で治療がなされるため、受診する病院の選び方に悩む余地は少ないと言えるでしょう。