2020.01.21 | コラム

くぎが刺さっても気づかない?糖尿病を放置するとどうなるか

糖尿病の合併症とその予防法について

くぎが刺さっても気づかない?糖尿病を放置するとどうなるかの写真

「健康診断で血糖値が高いと言われたけど、症状もないし、まぁいいか」

代表的な生活習慣病である糖尿病。その患者数は年々増え、2017年の患者調査では日本に300万人以上いると報告されています。症状がなかなか出にくいため、冒頭のケースのように、異常が指摘されていても放置している人は少なくありません。しかし、糖尿病は進行するとさまざま合併症の原因となり、生活の質を低下させたり、時として命に関わることもあります。このコラムでは糖尿病により起こる合併症についてお話ししていきたいと思います。

1. 糖尿病の3大合併症とは?

糖尿病を発症してしばらくは特別な症状がないことも珍しくありません。しかし、治療が不十分な状態が続くと以下の症状を引き起こします。

 

  • 神経障害
    • 手足の感覚がわからなくなる
    • 排便障害(便秘・下痢)
    • 勃起障害
  • 網膜症
    • 視力低下・失明
  • 腎症
    • 尿が出なくなる
    • むくみ
    • だるさ
    • 皮膚のかゆみ

 

これらは生活の質を低下させる重大な症状であり、糖尿病の3大合併症とも呼ばれます。例えば、「手足の感覚がわからなくなる」といった神経障害があらわれると、傷ができても気づかないということが起こります。テーブルのかどに足をぶつけたり、ものを踏んづけたりしても気づかないばかりか、なかにはくぎを踏んづけて刺さっていても気づいていなかったという人もいます。

また、糖尿病の状態で足に傷ができ細菌が入ってしまうと、さらに厄介なことになります。糖尿病になると免疫力も落ちるので、感染が治りにくくなるのです。そのため、足の傷から全身に感染が広がるのを食い止めるために、足を切断しなければならないこともあります糖尿病足病変

3大合併症のうち、残りの2つも生活に大きな影響を与えます。網膜症は目が見えなくなる原因になりますし、腎症により腎臓の機能が失われてしまうと透析をせずには生きていけません。

 

このように糖尿病は放置すると生活の質を低下させるさまざまな合併症を引き起こします。

ただし、これらの3大合併症が起こるのは治療が不十分な状態が数年から10年近く続いてからです。3大合併症が起こる前にきちんと糖尿病の治療をしていれば予防できることも大事なポイントです。

 

2. これだけではない糖尿病の合併症

糖尿病を放置すると脳梗塞や心筋梗塞にもなりやすくなります。

脳梗塞は脳に栄養を届ける血管が詰まって脳細胞の一部が死んでしまう病気で、喋れなくなったり身体の麻痺を起こしたりします。心筋梗塞は心臓に栄養を届ける血管が詰まって心筋細胞が死んでしまう病気で、息切れや動悸を起こし、不整脈や心臓の動きが悪くなるといった後遺症を残します。また、最悪の場合、命に関わることもあります。

これらの病気も糖尿病を治療することで、起こしにくくすることができます。糖尿病の治療は3大合併症だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞を予防する意味でも重要であると言えます。

 

3. 症状がないうちから治療を始めよう!

糖尿病は症状がない段階から治療を始めたほうが良いです。より早くから治療を始めることで、合併症のリスクを下げることが期待されます。そのため、健康診断で血糖値が高めだと指摘された人は、たとえ実感がわかなくても治療についてお医者さんと相談しておくことをお勧めします。

ただし、治療と言っても必ずしも薬を飲まなければならないわけではありません。糖尿病の治療はカロリー制限や食事内容を見直す「食事療法」、運動を行いカロリー消費を促す「運動療法」、薬により血糖値を下げる「薬物療法」の3本柱から成ります。通常は食事療法と運動療法を行い、それでも十分に改善しない場合に薬物療法を開始します。食事療法と運動療法を頑張ることで糖尿病が良くなる人も多いです。

 

糖尿病は症状があらわれにくく治療意欲がわきにくいという難点がありますが、ここまで読んで「何か対策をはじめてみよう」と思った人は、治療開始の第一歩として、まずはお医者さんや医療スタッフなどに相談してみてください。生活見直しのヒントや目標の立て方など、具体的なアドバイスを聞くことができます。

 

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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