2016.03.29 | コラム

糖尿病治療薬の特徴と副作用とは?診断基準もチェック

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この記事のポイント

糖尿病の治療薬は様々ですが、基本的には血液中で高くなった糖濃度(血糖値)を適正値にコントロールすることが目的になります。今回は、糖尿病の原因や診断などを解説しながら糖尿病治療薬について説明します。

◆糖尿病治療薬の理解に必要な糖の働きとインスリンの関係

糖尿病の治療薬について解説する前に、まずは糖尿病の基本的な知識となる糖の働きとインスリンの関係について説明します。

血糖とは血液中のブドウ糖のことです。白米やパンなどの炭水化物や果物やお菓子などの糖分はブドウ糖が繋がってできたもので、摂取して消化器の酵素で分解されることで最終的にブドウ糖になり小腸から吸収されます。吸収されたブドウ糖は筋肉細胞、脳細胞、神経細胞などに取り込まれてそれらの機能を保つためのエネルギー源となるのです。この細胞に取り込まれる過程に必要なのがインスリンです。

インスリンは、膵臓のランゲルハンス島という組織のβ細胞で作られる体内ホルモンのひとつです。食事することで血糖が上がるとβ細胞からインスリンが分泌されて肝臓に流れていきます。そこで、インスリンはブドウ糖をグリコーゲンという物質に変えて肝臓に蓄えるために働きます。その後、全身に作用し残りのブドウ糖が細胞に取り込まれるために働くのです(ちなみに脳や神経はインスリンがなくてもブドウ糖を吸収することができます)。

すぐに使われないブドウ糖はインスリンの働きで脂肪細胞に蓄えられ脂肪の合成を促進します。空腹時や就寝中など長時間に渡り糖が摂取されない状態になると肝臓で蓄えられていたグリコーゲンが分解され糖となり血中に放出されます。空腹時の血糖値を調節しているのもインスリンです(インスリンの基礎分泌)。

健常人の1日のインスリン分泌量の約半分がこの基礎分泌で、残り半分が食事に反応して分泌されるインスリン(追加分泌)と言われています。こうしたインスリンの働きで血糖値は一定に保たれます。

糖尿病は、β細胞から分泌されるインスリンの量が少なかったり、インスリンがうまく働かないことで高血糖の状態が続く病気です。

 

◆糖尿病の診断

糖尿病は血糖値やHbA1cの数値を見て判断します。

HbA1cは糖化ヘモグロビンともいい、血液中に酸素を運ぶ役割の赤血球とブドウ糖が結合したものです。血糖値が高いとブドウ糖が血中に余りヘモグロビンと結合する割合が高くなります。ヘモグロビンの寿命は4ヶ月と言われているので、HbA1cの数値はヘモグロビンの寿命の半分くらいの期間の血糖値の平均を反映します。つまり血液検査をした日の1〜2ヶ月前の血糖の状態が推定できます。

 ①早朝空腹時血糖値126mg/dl以上

 ②75gOGTT(Oral glucose tolerance test:経口ブドウ糖負荷試験)で2時間値200mg/dl以上

 ③随時血糖値200mg/dl以上

 ④HbA1cが6.5%以上

①〜④のいずれかが確認された場合は「糖尿病型」

 ⑤早朝空腹時血糖値110mg/dl未満

 ⑥75gOGTTで2時間値140mg/dl未満

⑤および⑥の血糖値が確認された場合は「正常型」

上記の「糖尿病型」「正常型」いずれにも属さない場合は「境界型」と判定します。

[ OGTT(経口ブドウ糖負荷試験2時間値):経口でブドウ糖を摂取し血糖の変動をみる試験 ]

 

◆糖尿病の種類

日本糖尿病学会によると、糖尿病の種類は、糖尿病になる原因で4つに分けられます。

1型糖尿病自己免疫反応の異常やウィルス感染などにより膵臓のβ細胞が攻撃されてインスリンを出す機能が破壊されてしまう状態です。2型糖尿病は生活習慣病とも言われていて、食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足、ストレスなどの環境的要因が引き金になり、インスリンの反応が悪くなったり(インスリン抵抗性)インスリンが不足した状態になります。その他、遺伝子の異常や妊娠によってインスリンの効きを抑えるホルモンが増えてしまう妊娠糖尿病もありますが日本の糖尿病患者の95%以上が2型糖尿病患者と言われています。

 

◆糖尿病と合併症

糖尿病の名前の由来は、インスリンがうまく働かなくなり多くなった血糖を体から排泄するために腎臓が働き、尿中の糖(尿糖)が高くなることで名付けられました。このようにインスリンの作用不足が続き高血糖が続くことで様々な合併症が起こる可能性があります。

糖尿病の合併症には「急性合併症」と「慢性合併症」があります。

急性合併症は血糖値が著しく高くなった時に起き、意識障害や昏睡の症状が出て、速やかにインスリンの点滴や注射をするなど適切な処置がされなかった場合は死にいたることもあります。

ペットボトル症候群で知られる清涼飲料水ケトーシスも吐き気や意識障害が起きますが、これも慢性的に多量の糖を摂取することで急激に血糖値が上がった結果起こるものです。また高血糖の状態が長く続くと体中の血管が傷つき、慢性合併症が起こる可能性があります。細い血管が傷つくと、網膜症や腎症、神経障害や壊疽が起こります(糖尿病細小血管症)。

糖尿病網膜症後天性視覚障害原因の約2割を占めるとされ、成人の視覚障害原因疾患の第2位です。視覚障害は生活の質(QOL)を著しく下げるため糖尿病と診断されたら眼科を受診し糖尿病網膜症の有無を診断することが推奨されています。また血管が傷つき固くなると太い血管にも影響が出て、冠動脈疾患(狭心症心筋梗塞)や脳血管性疾患(脳梗塞脳出血)を発症しやすくなります。(糖尿病大血管症)大血管障害の発症リスクは糖尿病を持たない人と比べて2〜4倍で予後も悪いと言われています。

 

◆糖尿病治療薬について

糖尿病の治療の目的は血糖をコントロールし、合併症を起こさないようにすることが目的です。

2型糖尿病のような生活習慣が糖尿病の原因の場合は、治療薬を始める前に医師が患者ごとに食事の摂取エネルギーを決め管理栄養士などから食事指導を受ける食事療法やウォーキングなどの有酸素運動を取り入れる運動療法を行います。しかし2〜3か月経っても改善されない場合は治療薬を使用していくことになります。

血糖をコントロールする治療薬としては大きく分けて

  • 血糖降下薬による治療(インスリンを除く)

  • インスリンによる治療

があります。

現在、糖尿病治療に使われる血糖降下薬(インスリンを除く)は主に8種類ほどあり、一般的には患者の血糖値や症状、体質などに合わせた治療薬が選択されます。経口薬が主ですが最近では皮下注射(皮膚と筋肉の間の脂肪に打つ)タイプもあります。

インスリンによる治療は、インスリンを出すβ細胞が破壊され基礎分泌や追加分泌がほぼ無い状態にある1型糖尿病糖尿病昏睡、糖尿病合併した妊娠などで適応となります。また著しい高血糖(空腹時血糖250mg/dl以上、随時血糖350mg/dl以上 など)や経口の血糖降下薬では血糖コントロールができないなどの場合にはインスリンによる治療が適応となります。

 

  • 血糖降下薬による治療

 ① スルホニル尿素薬(SU剤)(主な商品名:オイグルコン®、ダオニール®、グリミクロン®、アマリール® など)

膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進させ血糖値を下げる働きをします。糖尿病の合併症で特徴的な網膜症、腎症などの細小血管症を抑制する効果もあるとされ、年齢などを問わず広く使われている薬の一つです。長い期間の継続使用により血糖が次第に上昇してくる(二次無効)こともあるとされます。また、経口血糖降下薬の中で低血糖に特に注意が必要な薬の一つです。

 

 ② ビグアナイド薬(主な商品名:メトグルコ®、グリコラン® 、ジベトス®など)

肝臓での糖新生の抑制、末梢での糖の利用促進、腸管からの吸収の抑制などにより血糖改善作用をあらわします。本剤の中でもメトホルミン塩酸塩(主な商品名:メトグルコ®、グリコラン® など)には大血管症の抑えるなどの効果も期待できるとされています。注意すべき副作用として頻度は非常に稀とされていますが、乳酸が体に溜まり体が酸性に傾くことで吐き気や下痢、だるさなどがおこる乳酸アシドーシスという症状があります。

 

 ③ αグルコシダーゼ阻害薬(主な商品名:グルコバイ®、ベイスン®、セイブル® など)

食事などで摂取した糖が腸で分解されるのを抑制し吸収を遅らせる作用があります。食後の高血糖を抑える働きがありますが通常、食直前に服用しないと効果が出にくいので服用のタイミングが重要となります。

ショ糖(砂糖)などの二糖類の分解を抑制するため、本剤の服用中における低血糖時は通常、ブドウ糖の摂取が必要となります(ブドウ糖は糖の中でもこれ以上分解されない単糖の一種)。副作用として放屁や下痢などが起こることがあります。

 

 ④ チアゾリジン薬(主な商品名:アクトス® など)

末梢組織(筋肉組織、脂肪組織)や肝臓におけるインスリン抵抗性の改善により、末梢における糖の取り込みや利用の促進、肝臓における糖の放出の抑制により血糖改善作用をあらわします。ピオグリタゾン塩酸塩(主な商品名:アクトス®)には血糖を下げる作用の他、脂質代謝への有効的な作用も期待できるとされています。

注意すべき副作用として、本剤の服用中は体に水が溜まりやすくなったり、脂肪細胞への作用により体重増加などがあらわれる場合があります。浮腫などがあらわれたり、頻度は非常に稀ですが心不全などを引き起こす可能性もあり注意が必要です。

 

 ⑤ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系薬剤)(主な商品名:スターシス®、ファスティック®、グルファスト®、シュアポスト® など)

SU剤と同じ様にインスリン分泌を促進する薬剤ですが、SU剤に比べてより効果が速やかにあらわれ、食後高血糖がみられる症状には特に有用な薬剤の一つとされています。一般的に低血糖の副作用はSU剤より少ないとされています。速効型で食後高血糖の改善を主な目的とするため通常、食直前に服用します。

 

 ⑥ DPP-4阻害薬(主な商品名:グラクティブ®、ジャヌビア®、エクア®、ネシーナ®、トラゼンタ® 、テネリア®、スイニー®、オングリザ®

食後に小腸や十二指腸から分泌されるインクレチンという体内物質があります。インクレチンは食後の高血糖に合わせて膵臓からインスリンの分泌を増やしたりグルカゴンの分泌を減らすことで血糖を下げていますが、DPP-4という酵素ですぐに分解されてしまうホルモンです。本剤はDPP-4を阻害することでインクレチンの作用を長持ちさせます。血糖値に依存してインクレチンは働くので本剤の単独投与による低血糖の危険性は一般的に少ないとされています。

 

 ⑦ GLP-1受容体作動薬(主な商品名:ビクトーザ®、バイエッタ®、ビデュリオン®、リキスミア®、トルリシティ®

インクレチンと同じ様な作用をもち、DPP-4にも分解されにくい構造を持った薬剤です。体重増加への懸念が少なく、むしろ体重を減少させる効果もあるとされています。本剤は皮下注射製剤であり投与開始後に吐き気や下痢といった消化器症状などあらわれることがあります。インクレチンに関連する糖尿病治療薬にはDPP-4阻害薬がありますが、本剤はDPP-4阻害薬に比べ高い血糖降下作用をもつとされています。

 

 ⑧ SGLT2阻害薬(主な商品名:スーグラ®、ルセフィ®、フォシーガ®、アプルウェイ®、デベルザ®、カナグル®、ジャディアンス®

SGLT2は腎臓の近位尿細管にあるタンパク質の一つです。近位尿細管では糖などを再度血液へ戻す(再吸収)作業を行っています。この作業の中でSGLT2はブドウ糖を栄養分として細胞内に取り込む役割を担っています。本剤はSGLT2を阻害することで、尿糖として体外に糖を排出する作用をあらわします。

本剤は服用中には、尿中の糖が多くなるので膀胱炎などの尿路感染症に注意が必要です。また多尿によって脱水がおこることがあり、(医師から水分制限を指示されている場合などを除き)一般的に水分をこまめに摂取することが大切です。

 

  • インスリンによる治療

膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンの作用不足を補う目的で使用されます。

体内で分泌されるインスリンにおいては、グリコーゲンを肝臓に蓄えることで空腹時の低血糖などを予防する働きをしますが、インスリン製剤にはそのような働きはなく皮下注射などの投与後、毛細血管から全身に循環していくのでインスリン製剤使用中の低血糖症状には十分注意する必要があります。

インスリン製剤はそれぞれ作用時間などに違いがあります。以下が現在、主に使用されているインスリン製剤になります。

 ① 速効型インスリン製剤(主な製剤名:ノボリン®R注フレックスペン®、ヒューマリン®R注ミリオペン® など)

 ② 超速効型インスリン製剤(主な製剤名:ノボラピッド®注フレックスペン®、ヒューマログ®注ミリオペン®、アピドラ®注ソロスター® など)

 ③ 中間型インスリン製剤(主な製剤名:ノボリン®N注フレックスペン®、ヒューマリン®N注 ミリオペン® など)

 ④ (速効型に中間型を組み合わせた)混合型インスリン製剤(主な製剤名:ノボリン®30R注フレックスペン®、ヒューマリン®3/7注ミリオペン® など)

 ⑤ (超速効型に中間型を組み合わせた)混合型インスリン製剤(主な製剤名;ノボラピッド®30ミックス注フレックスペン®、ヒューマログ®ミックス25注ミリオペン®、ノボラピッド®50ミックス注フレックスペン® 、ヒューマログ®ミックス50注ミリオペン® など)

 ⑥ 持効型溶解インスリン製剤(主な商品名:トレシーバ®注フレックスタッチ® 、ランタス®XR注ソロスター®、レベミル®注フレックスペン® 、ランタス®注ソロスター®、インスリングラルギンBS注ミリオペン®「リリー」など)

 

「速効型」「超速効型」のインスリン製剤は主に「追加分泌」の補充で使用されます。「中間型」「持効型」のインスリン製剤は主に「基礎分泌」の補充で使用されます。「混合型」のインスリン製剤は、「速効型」又は「超速効型」に一定量の添加物を加えたり中間型を組み合わせた製剤で、「追加分泌」と「基礎分泌」を同時に補充することができます。

これらの製剤を患者の血糖パターンや生活スタイルなどにより使い分け、健常人のインスリンパターンを再現することで血糖をコントロールします。

SU剤の長期使用によって血糖改善作用が認められなくなった患者に対してインスリン製剤を使用すると疲弊したβ細胞が回復し、インスリン分泌機能が改善するといった報告もあります。

現在インスリン製剤の剤型には「プレフィルド製剤」というインスリン液と注射器が一体化したもの、「カートリッジ製剤」というインスリン液が入ったカートリッジと専用の注入器を組み合わせて使用するもの、「バイアル」というインスリン液が入ったバイアルとシリンジ(注射器)を使って使用するもの、があります。(バイアル製剤の中には一部、必要に応じ持続性皮下注入ポンプを用いて投与するものもある)

この中でも「プレフィルド製剤」は使い切りでカートリッジ交換の必要がない製剤であり多くの患者に用いられています。最近では、従来の製剤に比べ手の力が弱い患者でも無理なく注射できるように注入ボタンが軽くより小さい力で注入できるなどの工夫を施してある製剤が主流となってきています。


ここでは糖尿病病態やその治療薬について説明してきましたが、初期の段階での高血糖は自覚症状を持たない人がほとんどです。症状が進むと異常な喉の渇きで水を多く飲んだり、トイレの回数が増えたり、体のだるさ、特に何もしていないのに急に体重が減ったなどの症状が出てきます。網膜症や神経障害など合併症における何らかの症状が出てきて糖尿病が発見されることもあります。合併症の中には命に関わることもあるので血糖をしっかりコントロールし合併症を予防することが大切です。

執筆者

菊地友佳子

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。