2017.08.26 | ニュース

注射の場所を間違えて入院、15歳男子の腹部にできた「脂肪過形成」

インドから症例報告

from BMJ case reports

注射の場所を間違えて入院、15歳男子の腹部にできた「脂肪過形成」の写真

インスリン注射は糖尿病の代表的な治療のひとつです。安全に打つために注意する点があります。間違った打ちかたにより極端な高血糖で入院するなどした患者の例が報告されました。

脂肪過形成により糖尿病ケトアシドーシスに至った15歳男性

インドの研究班が、インスリン膵臓から出る、血糖値を下げる方向に働くホルモン。インスリンの欠乏や作用不足が糖尿病の原因となる注射の打ちかたを間違っていたために危険な状態に陥った1型糖尿病患者の例を、専門誌『BMJ Case Reports』に報告しました。

 

1型糖尿病とは?

糖尿病には大きく1型糖尿病2型糖尿病があります。生活習慣と関係の深い2型糖尿病が大半です。1型糖尿病はかかる人が少ないタイプで、食事や肥満とは関係ありません。

1型糖尿病では、体がインスリンというホルモン体内で作られて、血流にのって体の特定の部位を刺激する物質。内分泌物質とも呼ばれるを作る機能が不足します。インスリンは食べ物から取り込んだ糖を利用するために必要です。インスリンが不足すると糖が利用されないまま血液の中に残るので、血糖血液中のブドウ糖のこと。人が活動するためのエネルギー源。血液中の濃度を血糖値といい、糖尿病の診断に用いられる値が高くなります。体は糖を利用できないので体重が減ることがあります。不足したインスリンは注射で補うことができます。自己注射が広く行われています。

 

糖尿病ケトアシドーシスで入院

報告されている患者は15歳男性です。3年前から1型糖尿病で治療中でした。

受診時の2週間前に糖尿病ケトアシドーシスで入院になっていました。糖尿病ケトアシドーシスとは、糖を利用できないために体内の物質代謝体内で行われる、物質の合成や分解などの化学反応のことのバランスが崩れ、血液が酸性に傾いて意識障害意識に異常が生じた状態の総称で、もうろうとした状態や、不適切な反応をする状態、一切の反応がない状態など多段階の症状が含まれるなどを引き起こす危険な状態です。

診察では、腹部の左右両側に、服の上からでも見える大きさの脂肪過形成がありました。

脂肪過形成は「インスリンボール」とも呼ばれます。インスリンの注射を同じ場所に繰り返し打つと、刺した場所の脂肪組織が厚くなり、丸い塊ができます。インスリンボールに針を刺すと痛みが軽いのですが、薬がうまく血液に入らなくなってしまいます。

この男性のインスリンボールの写真が「参考文献」のリンク先に掲載されています。

 

注射の間違いでコントロール不良に

この男性のBMI体格指数。「体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]」で算出される。18.5から25が普通体重とされているが、筋肉量や脂肪率を反映しないため体格の唯一の基準とはできない(体重÷身長÷身長)は14.8と、極端にやせていました。糖尿病の検査値のHbA1cは14.9%(基準値6.5%)であり、血糖値がきわめて高い状態が続いていることが疑われました。

どのように注射していたか尋ねたところ、1回で使い捨てるべき注射針を6回ほど繰り返し使っていたこと、薬の量を間違っていたことのほか、インスリンボールに注射していたことがわかりました。また、インスリンボールができないように注射の位置は腹部の広い範囲でローテーションするのが正しい打ちかたとされますが、ローテーションも正しくできていなかったことがわかりました。

改めて注射の指導がなされました。

 

インスリンの正しい打ちかたとは?

注射の間違いにより危険な状態になっていた患者の例を紹介しました。糖尿病の主治医がこまめに注射方法の確認や腹部の診察もしていればこれほど悪化しなかったかもしれません。

インスリン注射は効果的な治療ですが、自分で繰り返し打って効果を得るためには正しい方法を覚えておく必要があります。たとえば次のポイントがあります。

  • インスリンボールをよけて打つ
  • インスリンボールがないかこまめにチェックする
  • 注射する場所を少しずつ変える
  • 皮膚をつまんで打つ
    • インスリンは皮下組織に注射することでほどよく吸収されるように調整されています。深く刺して筋肉に注射してしまうと、吸収が速くなりすぎてしまいます(つままなくていい場合もあります)。
  • 針は1回使ったら捨てる
    • 1回刺した針をまた使うと感染の原因になります。針が鈍くなっているので痛みも強くなります。
  • 保存方法と使用期間を守る
    • インスリンの長期保存には温度が2℃から8℃で光が当たらないようにするべきとされます。一方、注射器が結露するなどを避けるため、使い始めたキットは室温で保存することとされています。
  • 故障した器具を使わない
    • 故障した器具は事故のもとです。ちゃんと注射できているかこまめにチェックすることも大切です。

インスリン注射はもちろんほかの薬でも、使いかたをよく知っておくことが患者にも求められます。主治医や薬剤師などから説明をよく聞いておくことで本来の効果が十分に発揮されるようになります。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Insulin-mediated lipohypertrophy: an uncommon cause of diabetic ketoacidosis.

BMJ Case Rep. 2017 Aug 11.

[PMID: 28801327] http://casereports.bmj.com/content/2017/bcr-2017-220387.long

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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