新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の基礎知識
POINT 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは
風邪の原因微生物として上位に挙げられるコロナウイルスによる感染症です。一般的にはコロナウイルス感染症が重症になることはほとんどありませんが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に関しては致死率が高いことが報告されています。 初期症状は風邪と同じで、ほとんどの人(約8割)は軽い症状のまま回復しますが、感染した一部の人(残りの2割ほど)は重症となることが分かっています。重症になると咳が強くなったり、息苦しさがひどくなったり、強い疲労感を覚えたりします。 COVID-19が心配な方はまずは自宅安静してください。明らかに強い症状(意識もうろう、強い息切れなど)を感じる人や症状がなかなか治らない人は定められた相談センターや発熱外来を行っている医療機関にご連絡ください。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について
コロナウイルス による感染症 - コロナウイルスは風邪の原因となる代表的な微生物で、風邪の原因の10-15%程を占める(流行期は35%とも言われている)
- 通常のコロナウイルスであれば感染してもほとんどが軽い症状で済む
- COVID-19(新型コロナウイルス感染症)はコロナウイルスが何らかの影響で変異したもので、一部の人(感染者の約2割)では重症になる
- 一方で、COVID-19に感染したほとんどの人(およそ8割)は重症にならず自然回復する
- ただし、ここで言う「重症」というものは医学的に
ICU における治療が必要なレベルのことを指すので、身体のしんどさといった主観と乖離することには注意が必要- つまり、重症となる人は濃度の高い酸素を吸っても息苦しくて意識朦朧となるレベルのことである
- 感染経路について
飛沫感染 と接触感染 が主であると想定されてきたが、2022年4月の段階ではエアロゾル感染も想定されている- 接触感染
- 微生物を手などで触れたあとに、粘膜を触ることで感染が成立する
- 飛沫感染
- 主に咳やくしゃみなどの際に周囲に微生物を含んだ飛沫が飛び散ることで感染を起こす
- およそ1-2m程度は周囲に飛び散ると考えられエる
- エアロゾル感染
- エアロゾルとは空気中を漂う微粒子のことで、このパターンの感染経路では空気中を長時間、かなり離れた距離広がる可能性が出てくる
- 似たような感染に
空気感染 (飛沫核感染 )があるが厳密な意味でこれらは異なる - エアロゾル感染と飛沫感染にはその定義に明確な差分はあるが、実際の場ではその中間点のようなシチュエーションがあり、明確にどちらと言いきれないこともあることに注意が必要である
- 接触感染
- 感染力について
- 致死率について
- 検査について
- 現在診断を確定するために行われている主な方法がPCR法である
- COVID-19に対するPCR法は検査の精度が高くないことが報告されているので、検査結果をどこまで信用して良いのかをきちんと吟味する必要がある
- 検査前確率が低い人(COVID-19が疑わしくない人)が検査を受けても、検査がエラーが起こりやすく結果を信用できないので、検査を受けるのは望ましくない
- 抗原検査も臨床現場で利用されているが、PCR検査よりも精度が落ちるため、状況と併せて考えていく必要がある
抗体 検査はいまだCOVID-19との関係の詳細がわかっていないので参考程度と考えたほうが良い- 感染しても抗体価が上がらない可能性がある
- どの程度の抗体価があれば
免疫 を獲得したとみなせるかが不明である - COVID-19以外のコロナウイルス感染症や他の種類の
ウイルス 感染症でも抗体価が上がる可能性がある
- 治療について
- 感染者のポイント
- 予防のポイント
- 接触感染予防に手洗いとアルコール消毒が重要である
- 飛沫感染予防に咳エチケット(咳などの症状がある人がマスクをする)が重要である
- うがいに関して効果は限定的と考えられている
- ワクチン
- 2022年11月時点、ファイザー/ビオンテック社、モデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンが日本国内で承認されている
- 接種後は
疼痛 や発熱などの副反応が見られることがある - 特に重要な副反応としてアナフィラキシーがあるが、出現する場合のほとんどが接種後15分後であるため、接種してから15分は健康観察するようにする
アレルギー リスクが高いと判断された人は30分間の観察となる場合もある
- 新型コロナウイルスの変異について
- 2020年7月あたりからウイルスの変異が多数報告されている
- 2022年11月の時点で多くの変異が報告されているが、特に国内で話題となっているのは、通称アルファ株(B.1.1.7系統)、通称ベータ株(B.1.351系統)、通称デルタ株(B.1.617.2)、通称オミクロン株(B.1.1.529系統)などである
- 変異によって感染力の変化が起こるだけでなく、重症度の悪化やワクチン有効性の低下についても注意が必要である
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査・診断
- COVID-19に対する検査はPCR法が主流である
- PCR法の他の検査としてLAMP法や抗原検査(定性法または定量法)がある
- COVID-19に対する検査の中ではPCR法が最も検出
感度 が高いと考えられているが、それでも検査精度(感度と特異度 )は完全ではないことに留意が必要- 感度(感染している人が検査陽性となる割合)は高くなく、30-50%という報告や70%という報告がある
- 特異度(感染していない人が検査陰性となる割合)はかなり高値(95%以上)が予想される
検体 (唾液や痰などのウイルス の存在を調べる材料)を効率的に採取できているかによって検査の精度は左右される
- 検査の結果をどの程度信頼して良いのかの基準には陽性適中率(陽性という結果の信頼度)と陰性適中率(陰性という結果の信頼度)がある
- 陽性適中率は検査陽性となった人の中で実際に感染している人の割合を指す
- 陰性適中率は検査陰性となった人の中で実際には感染していない人の割合を指す
- 陽性適中率と陰性適中率は感度と特異度だけではなく、検査前確率(検査を受ける前に疾患が疑われる確率)によって大きく影響されるので、検査を受ける人は疑わしい人に絞る必要がある
- 検査前確率は、流行度と症状の強さと生活背景(感染者が身近にいる、
免疫 不全があるなど)によって変化する - COVID-19が疑わしくない人が検査を受けることや希望者全員に検査を行うことは、かえって結果の信頼度を損なうことになるので避けるべきである
- 検査前確率は、流行度と症状の強さと生活背景(感染者が身近にいる、
◎感度と特異度、陽性適中率と陰性適中率について詳しく知りたい方は以下の詳細を参考にしてください。
抗体 検査も参考程度と考えたほうが良い- 抗体が高くても今かかっているのか昔かかったのかを判断することはできない
- 感染直後には抗体が上がっていないことも多い
- 感染してから長時間経つと抗体が低値になることも多い
- 抗体価や他の
感染症 との交差反応については今後の検証待ちである
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法
- COVID-19に対する明らかな特効薬と呼べる治療薬は2022年11月現在存在していない
- 症状が軽い人は薬を使わないでも問題なく過ごせるが、症状を和らげる治療(
対症療法 )を行うこともできる- 解熱鎮痛薬
- 鎮咳薬(咳止め)
- 漢方薬
- 以下のような重症化のリスクが高い人は重症化予防薬を使用できる
- 症状が強い人や重症である人には呼吸のサポート治療や生命維持のための治療が行われることがある
- 人工呼吸器管理
- 人工肺装置(ECMOなど)
- 中心静脈栄養
- 以下の薬はCOVID-19に対して国内で使用が認められている
- ファビピラビル(アビガン®)
- 酸素投与を必要としない軽症患者に対して使用が推奨されている
- ただし、使用するには厚生労働科学研究費等において行われる観察研究への参加が必要(2021年3月現在)
- レムデシビル(ベルクリー®):エボラ出血熱に用いられている薬
- 2020年5月7日に特例承認という本来の段階を経ていない薬剤使用の承認が下されたため、薬剤の適切な使用量や副作用の確認などがまだ完了していない
- 酸素投与を必要とする中等症から重症の患者に対して使用が推奨されている
- デキサメタゾン(デカドロン®、デキサート®など)
- カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ®)
- カクテル
抗体 療法と呼ばれている - 点滴で投与する
発症 してから7日以内に投与することで重症化を予防する効果がある- 入院や死亡のについて70%ほどの確率で回避できる
- 既に重症化している人には効果が期待しにくい
- 重症化リスクのある人を中心に投与を行う
- カクテル
- ソトロビマブ(ゼビュディ®)
- モノクローナル抗体と呼ばれる薬剤
- 点滴で投与する
- 感染の早い段階で重症化リスクの高い人に投与すると重症化や死亡を8割ほど予防できる
- ニルマトレルビル錠/リトナビル錠(パキロビッド®)
- 3CLプロテアーゼ阻害薬であるニルマトレルビルとその効果を高めるリトナビルの併用剤
- 内服で投与する
- 発症から3日以内に服用すると、重症化リスクの高い軽症から中等症の患者の入院および死亡のリスクを89%抑制する
- 発症から5日以内に服用すると、重症化リスクの高い軽症から中等症の患者の入院および死亡のリスクを88%抑制する
- 一方で、重症化リスクの低い人には推奨されない
- 多くの薬との相互作用が報告されているため、すでに飲んでいる薬の内容によっては使用できない
- 内服しているすべての薬を医療関係者に報告する必要がある
- モルヌピラビル( ラゲブリオ®)
- 核酸
代謝 拮抗薬と呼ばれる薬剤- モルヌピラビルが変化した物質が
ウイルス RNAに取り込まれた後に、ウイルスゲノムのエラー頻度が増加することでウイルスの増殖が阻害される
- モルヌピラビルが変化した物質が
- 内服で投与する
- 発症5日以内に内服することで重症化リスクを30%程度下げることができる
- 以下の人は使用することができない
- 重症者
- 重症化リスクの低い人(リスクとベネフィットの観点から)
- 妊娠している人及び妊娠の可能性がある人
- 18歳未満
- 核酸
- エンシトレルビル(ゾコーバ®)
- 3CLプロテアーゼ阻害薬
- 内服で投与する
- 発症して3日以内に投与することで症状の回復を早めることができる
- 発熱、咳嗽、咽頭痛、
倦怠感 、鼻閉といった症状が25時間ほど早く解消されたという報告あり
- 発熱、咳嗽、咽頭痛、
- 一方で、飲んだからといって重症化や死亡のリスクが下がるわけではない
- 重症化リスクの高い人には推奨しにくい
- 多くの薬との相互作用が報告されているため、すでに飲んでいる薬の内容によっては使用できない
- 内服しているすべての薬を医療関係者に報告する必要がある
- ファビピラビル(アビガン®)
- 症状が軽い人は薬を使わないでも問題なく過ごせるが、症状を和らげる治療(
- 抗ウイルス薬の使用に関しては次のように定められている(COVID-19に対する薬物治療の考え方 第6版より)
- 他にも以下の薬に関しては国内
ガイドライン で中等症以上の患者に対して治療に用いることが弱く推奨されてい- 抗IL-6受容体抗体
- トシリズマブ(アクテムラ®)
抗凝固薬 - ヘパリンナトリウム
- ワーファリン
- エドキサバン(リクシアナ®)
- アピキサバン(エリキュース®)
- リバーロキサバン(イグザレルト®) など
- 抗IL-6受容体抗体
- 新型コロナの患者は一定確率で重症化するため、ワクチン接種によって罹患の確率を下げることもとても重要である
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経過と病院探しのポイント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が心配な方
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が心配な人はまず周囲の流行状況をご確認ください。流行度が高い時期には特に症状の有無に注意が必要になります。また、新型コロナウイルス感染症の確定者が周囲にいて、その人と濃厚接触した場合は感染を考える必要があります。
症状がないのに慌てて受診する必要はありません。数日以上(高齢者、持病のある人、妊婦は2日以上)熱や咳といった風邪の症状が見られて心配な人や明らかに濃厚接触して不安な人は、医療機関や保健所に連絡し相談するようにしてください。また、感染者と濃厚接触したと思われる人も相談が必要です。
相談や受診も時として重要ですが、自宅で過ごせる範囲の風邪症状であれば、自宅安静しながら体力の回復を図ることが最も重要になります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でお困りの方
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された人は、自宅やホテルでの待機を指示されるか入院を指示されるかのどちらかになると思います。
入院となった場合は院内で適切な治療が行われますので、主治医の方針に任せてください。自宅待機となった場合には不安もあると思いますが、症状の悪化がなければ飲水を欠かさないで安静にしておくことが回復を早める最も有効な方法となります。極力ご家族を含めた周囲の人との接点も少なくし、咳エチケットと手洗いを徹底してください。状況悪化時の診察や定期的な健康相談にオンライン診療を利用するのも有効です。症状が強くなった場合には入院の要否を判断する必要が出てきますので、上記の相談センターにご連絡ください。