2022.10.07 | コラム

オミクロン株対応のワクチンとは? 誰が打つと良いのか?

Dr. 伊東がよくある疑問に答えます

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新型コロナの変異株「オミクロン株」に対応したワクチンの接種が、高齢者や医療従事者など4回目接種対象として9月20日より始まりました。オミクロン株対応ワクチンは、現在流行しているオミクロン株に対応した成分が含まれているため、従来ワクチンを上回る「重症化予防効果」と、短い期間である可能性はあるものの「感染予防効果」や「発症予防効果」が期待されています。本コラムでは、オミクロン株対応ワクチンについて解説します。

オミクロン株対応ワクチンとは?

オミクロン株対応ワクチンは、従来株に由来する成分と、オミクロン株「BA.1」に由来する成分の両方を含む「2価ワクチン」です[1,2]。従来のワクチン(従来株のみを成分として含む「1価ワクチン」)と比べて、オミクロン株に対する重症化を予防する効果や、短期間である可能性があるものの「感染予防効果」、「発症予防効果」が高いことが期待されています。さらに、2種類の異なる成分が含まれることで、誘導される免疫がより多くの種類の新型コロナウイルスに反応し、今後の変異株に対しても有効である可能性があります。

 

オミクロン株対応ワクチンの対象者は誰か? 誰が打つと良いのか?

オミクロン株対応ワクチンにはファイザー社製とモデルナ社製の2種類があります。各ワクチンはそれぞれ以下の人に対して接種することが可能です。(2022年9月時点)

 

  • ファイザー社の2価ワクチン
    • 従来のワクチンで1・2回目接種を終えた12歳以上のすべての人
  • モデルナ社の2価ワクチン
    • 従来のワクチンで1・2回目接種を終えた18歳以上のすべての人

参考:厚生労働省「オミクロン株対応2価ワクチン接種のお知らせ

 

前回の接種から5か月以上の間隔をあけて接種が可能となります(現在接種間隔を3か月に短縮する方向で政府が調整しています)。従来の4回目接種対象者(60歳以上の人、基礎疾患を有する人など)から接種が開始されています。

参考:厚生労働省「オミクロン株対応2価ワクチン接種のお知らせ

 

これまでの新型コロナウイルスは年末年始に流行していることから、2022年の年末までに、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患がある人はもちろんのこと、若年者においてもオミクロン株対応ワクチンの接種が推奨されます

なお、オミクロン株対応ワクチンは、現時点で追加接種として臨床試験が実施されています。そのため、今後、新たなデータが得られれば1・2回目接種の用法も含めて薬事承認がなされることも考えられますが、現時点では、1・2回目接種としては使用することはできません

 

オミクロン株対応ワクチンの効果

ファイザー社、モデルナ社のオミクロン株対応ワクチンの接種によって、従来のワクチンよりも中和抗体の量が多く産生されます[3,4,5]。これまでのワクチンと中和抗体に関する研究の結果から、新型コロナワクチン接種後の中和抗体価と発症予防効果には相関があり[6]、従来ワクチンでもオミクロン株に対する効果が示されています[7]。このことから、オミクロン株対応ワクチンによる重症化・感染・発症を予防する効果が期待されます。

 

「BA.1」由来のワクチンは「BA.5」にも効果があるのか?

現在日本では、BA.1ではなくBA.5が主流株となっていますが、今回のオミクロン株対応ワクチンはBA.5にも効果があるのでしょうか? ファイザー社ワクチンの「BA.5」に対する中和抗体の値は「BA.1」に対するものの3分の1程度でしたが、一定の免疫応答が認められていることが確認されています[3]。また、モデルナ社ワクチンの「BA.5」に対する中和抗体の値は、従来型のワクチンの1.69倍に上昇します[4]。そのため、BA.1だけでなくBA.5にも今回の2価ワクチンの効果が期待されます。

 

オミクロン株対応ワクチンの副反応は?

ファイザー社、モデルナ社ともに下記のような副反応があります。

 

【オミクロン株対応ワクチンの主な副反応[3,4]】

  • 注射した部分の痛み
  • 頭痛
  • 関節や筋肉の痛み
  • 疲労
  • 寒気
  • 発熱など

 

ほとんどが軽度または中等度であり、自然に回復します。また、従来ワクチンの追加接種と副反応が同じ程度であり、現時点では重大な懸念は認められていません。ただし、新しいワクチンのため、これまでに明らかになっていない症状が今後出てくる可能性があります。接種後に気になる症状がみられた場合は、まずかかりつけの医師に相談してください。

 

3回目または4回目接種の対象だが、オミクロン株対応ワクチンが接種できるようになるまで待ったほうがよいか?

オミクロン株対応ワクチンを接種できる機会があればオミクロン株対応ワクチンを接種することをおすすめします。ただし、新型コロナの流行は今も続いています。オミクロン株対応ワクチンが接種可能となるまでに感染してしまうリスクも十分あります。そのため、本ワクチンが接種可能になるタイミングを待つことなく、接種時期が来たときに、接種できるワクチンを速やかに接種することが重要かと思います。

 

オミクロン株対応ワクチンは、インフルエンザワクチンと同時接種できるか?

令和4年7月22日開催の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で議論された結果、従来の新型コロナワクチン及びオミクロン株対応ワクチンは、インフルエンザワクチンとの同時接種が可能となりました[9]。さらに、別々に接種する場合でも期間をあけなくてよいことになりました(ただし新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン以外のワクチンの同時接種については、現時点で安全性に関する十分な知見が得られていないため、実施できません。互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます)。

詳しくはコラム「新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン同時接種のメリット・デメリットとは?」にて説明しています。

 

おわりに

オミクロン株対応ワクチンの効果は期待されますが、ワクチンを接種していても感染してしまうことはあります。マスク、手洗いなど基本的な感染対策を継続することで感染リスクを下げることができますので、ワクチン接種後も基本的な感染対策を継続するようにしましょう。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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