ぼうこうがん
膀胱がん
膀胱の粘膜にできる悪性腫瘍
8人の医師がチェック 174回の改訂 最終更新: 2019.07.19

膀胱がんとは?症状・原因・検査・ステージ・生存率・治療について説明

膀胱は腎臓で作られた尿を溜める臓器で、この臓器に発生するがんを膀胱がんといいます。膀胱がんの症状や原因、検査、ステージ、治療について説明します。

1. 膀胱がんとはどんな病気なのか?

膀胱がんは膀胱にできるがんのことで、50歳以上の男性に多いことが知られています。膀胱がんはお腹を切らない内視鏡手術で治療が可能な場合と、お腹を切る手術が必要な場合があります。膀胱がんの説明に入る前に膀胱の場所や機能について説明します。

膀胱(ぼうこう)の場所や機能について

膀胱は下腹部の真ん中に位置しており、腎臓で作られた尿を溜める役割があります。大きさは、尿が溜まった状態(拡張した状態)と尿が出た状態(収縮した状態)で大きさが異なります。正常の膀胱容量は、尿が溜まった状態で約300mLです。膀胱はただの袋ではありません。膀胱の壁には筋組織が含まれています。膀胱が収縮することで尿を出すことができます。

2. 膀胱がんの症状について

膀胱がんの症状は痛みなどを伴わない血尿が最も多く見られます。その他にも次のような症状が現れます。

【膀胱がんの症状】

  • 初期から現れる症状
    • 血尿
    • 排尿時の痛み
    • 頻尿:尿の回数が多いこと
  • 転移や進行してから現れる症状
    • 尿が極端に少なくなる
    • 下肢の浮腫むくみ
    • 骨の痛み

最も多いのは血尿ですが、排尿時の痛みや頻尿などから膀胱がんがみつかることもあります。膀胱炎前立腺肥大症過活動膀胱といった他の病気でも見られる症状ですが、長引く場合や、悪化する場合は泌尿器科を受診して原因をはっきりさせておくようにしてください。また、膀胱がんは進行すると転移や他の臓器を巻き込んで大きくなることもあります。転移しやすい場所の1つに骨があり、痛みの原因になります。また、膀胱と尿管のつなぎ目が膀胱がんに巻き込まれて潰れてしまうと、尿が膀胱に流れなくなり尿量が減少して、下肢を中心にむくみが起こります。

膀胱がんの症状についてさらに詳しく知りたい人は「膀胱がんの症状」を参考にしてください。

3. 膀胱がんの原因について

膀胱がんを発病する危険性を上げるものとして、喫煙や化学物質(ベンジジンや2-ナフチルアミンなど)が知られています。特に、喫煙は膀胱がんの発生を上げる要因として知っておいて欲しいことです。詳しくは「膀胱がんの原因」で説明しているので参考にしてください。

4. 膀胱がんの検査について

膀胱がんが疑われる人には次のような検査が行われます。検査の目的は「膀胱がんかどうか」と「膀胱がんのステージを決めること」の2つです。

【膀胱がんの診断に重要な検査】

  • 膀胱鏡検査
  • 画像検査
    • 超音波検査
    • CT検査
    • MRI検査
  • 病理学検査

この中でも特に重要な「膀胱鏡検査」と「病理学的検査」について説明します。その他の検査については、「膀胱がんの検査」を参考にしてください。

膀胱鏡検査

膀胱鏡は内視鏡の一種で、膀胱の中をくまなく見ることができます。膀胱の中を見て腫瘍があれば、膀胱がんが強く疑われます。しかし、内視鏡検査の見た目だけでは完全にがんだと言い切ることはできません。腫瘍の一部を取り出して、顕微鏡で詳しくみる検査(病理学的検査)が必要です。腫瘍の一部を取り出すために、内視鏡手術が行われます。

病理学的検査

病理学的検査は病気の部分や体液を顕微鏡でみて、細胞レベルで病気の有無や種類を判断します。内視鏡手術で切除した病気の部分を顕微鏡でみて「がん細胞」があれば、膀胱がんと診断されます。細胞に色を染める作業(染色)しながら性質をくまなく調べるため、一般的に結果が出るまでに1, 2週間ほどかかります。

5. 膀胱がんのステージについて

膀胱がんの進行の度合いを分類するためにステージという基準が決められています。膀胱がんを診断された人はステージが判断されることで、適切な治療を選ぶことができます。

膀胱がんのステージはステージI(1)からステージIV(4)までの4つに大別され、ステージは次の3つの要素から決められます。

  • T分類:がんの深さ
  • N分類:リンパ節転移の有無
  • M分類:遠隔転移の有無

膀胱がんが見つかると、上の3つの要素の程度が個別に調べられて、この3つの組み合わせによってステージが決まります。このような分類の決め方をTNM分類といいます。

膀胱がんのステージの決め方:TNM分類とは

膀胱がんのステージは、TNM分類という方法で決められることが多いです。TNM分類は、がんが発生した場所の状態(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の3つを基準としてステージを決める方法です。

■T分類

TはTumor(腫瘍)の頭文字をとったものです。膀胱でのがんの状態を表しています。「がん」がもともと発生した場所のことを原発巣(げんぱつそう)と言います。T分類は原発巣の評価です。

【膀胱がんのT分類のイメージ図】

膀胱がんは膀胱の内側(尿が入っている側)の表面から発生し、しだいに奥深くに(外側に向かって)入り込んでいきます。膀胱がんの治療方針を決めるのに最も重要なのは、がんの根の深さです。T分類はがんの深さ(深達度)によって定まります。

膀胱がんは筋層に入っているかどうかで治療法が大きく変わります。このため、筋層にがんが入り込んでいないものを「表在性膀胱がん」、筋層にがんが入り込んでいるものを「浸潤性膀胱がん」と呼ぶこともあります。

■N分類

N分類はリンパ節転移についての評価です。Nはリンパ節(lymph node)を指すNodeの頭文字です。がんは周りを破壊して、リンパ管に入り込んでリンパ節に転移をすることがあります。N分類ではリンパ節の転移の広がりが評価されて、ステージを決める際に参考にされます。

■M分類

M分類は遠隔転移の評価です。MはMetastasis(転移)の頭文字です。膀胱から離れた臓器に膀胱がんが転移することを遠隔転移と言います。所属リンパ節転移は遠隔転移とは言いません。単に「転移」と言うと遠隔転移を指す場合が多いです。M分類を決めるにはCT、MRIや骨シンチを用いて遠隔転移を探します。

ステージはどのようにして決められるのか

TNM分類による評価が終わると、それらを組み合わせて、ステージが決まります。ステージはI(1)からIV(4)の4つに大別されます。ステージの分類は複雑ですので、「膀胱がんのステージ」を参考にしてください。

6. 膀胱がんの生存率について

膀胱がんの生存率はステージごとに集計されています。ステージごとの膀胱がんの5年生存率は以下の通りです。

【膀胱がんのステージと5年生存率】

ステージ 5年実測生存率
I 73.1%
II 54.8%
III 40.5%
IV 13.3%

ステージが進んでいるということは病気が進行していることとほとんど同じ意味です。ステージが上がると、5年生存率は低下します。ステージごとの生存率についてさらに詳しい説明は「膀胱がんの生存率」を参考にしてください。

7. 膀胱がんの治療について

膀胱がんは進行度によって治療法が異なります。主な治療法は次の3つです。

  • 手術
  • 抗癌剤治療
  • 放射線治療

それぞれは病気の状態によって治療に用いられる方法が異なるので、それぞれについて説明します。より詳しい手術の方法や抗がん剤の種類や効果については「膀胱がんの手術」や「膀胱がんの薬物療法」を参考にしてください。

膀胱がんの手術

膀胱がんの手術には内視鏡手術と開腹手術の2つの方法があります。

■内視鏡手術

膀胱がんの内視鏡手術を経尿道的膀胱腫瘍切除術(Transurethral resection of the bladder tumor)といい、TURBTと略されます。

TURBTの役割は次の2つです。

  • 治療的役割:腫瘍の切除を行い完治を目指す
  • 診断的役割:腫瘍を切除することで腫瘍の深さ(深達度)や腫瘍の悪性度が判断できる(病理検査)

がんが初期の状態の場合は、内視鏡手術だけで治療を行うことができます。しかし、がんが進行している場合は、内視鏡手術だけではがんを取り切ることは難しいです。その判断を行うために、取り出したがんを顕微鏡で詳しく見る検査(病理学的検査)が行われます。内視鏡で取り切れないと判断された場合は、開腹手術が行われます。

■開腹手術

膀胱がんが進行して、内視鏡手術で取り切れない場合には開腹手術を行います。具体的に言うと、膀胱がんが筋層を超えて浸潤している「浸潤性膀胱がん」の場合です。浸潤性膀胱がんに対しては、膀胱全てを摘除する「膀胱全摘除術」が行われます。膀胱全摘除術では、膀胱を取り出すとともに、膀胱の代わりとして、お腹に尿の出口を作るか、腸を利用して膀胱の代わりを作り直すかの方法が行われます。

詳しい方法は「膀胱がんの手術」を参考にしてください。

膀胱がんの抗がん剤治療

膀胱がんの治療では抗がん剤を用いますが、使い方が2通りあります。1つは膀胱の中に直接抗がん剤を入れる方法(膀胱内注入療法)です。もう1つは点滴で抗がん剤を血管の中に入れる方法(全身化学療法)です。

■膀胱内注入療法

内視鏡治療で済むような早期のものでも、再発しやすい特徴が膀胱がんにはあります。再発を予防する方法として、抗がん剤を膀胱の中に注入します。 なお抗がん剤ではありませんが、BCGという結核予防のワクチンに用いられる物質を膀胱がんの再発予防に使うことがあります。BCGの方が抗がん剤より再発を抑える効果が高いと考えられているので、再発の危険性が高いと考えられる場合にはBCGが膀胱内注入療法の薬として用いられます。

詳しい方法は「膀胱がんの薬物治療」を参考にしてください。

■全身化学療法

抗がん剤を点滴で注射して血管から全身に投与する方法のことです。「転移をしている場合」に用いられることが多いです。その他では、浸潤性膀胱がんに対して行われる膀胱全摘除術(膀胱を摘除する手術)の前後で、「がんを小さくして手術をやりやすくするため」や、「再発する危険性を下げるため」に行われることもあります。

詳しい方法は「膀胱がんの薬物治療」を参考にしてください。

膀胱がんの放射線治療

放射線治療は主に膀胱がんが転移をした場合に行われることが多いです。例えば、膀胱がんが骨に転移をした場合は痛みが強くでます。痛みを和らげるためには、放射線治療が有効です。

【参考】

・「標準泌尿器科」(赤座 英之/監)、医学書院、2014
膀胱癌診療ガイドライン (日本泌尿器科学会/編)
がんの統計’17(がん研究振興財団)