膀胱がんとはどんな病気なのか:症状・原因・検査・ステージ・治療などについて
膀胱は腎臓で作られた尿を溜める臓器です。肺や胃、大腸などと同じく膀胱にも
目次
1. 膀胱がんとはどんな病気なのか?
膀胱がんは膀胱にできるがんのことです。50歳以上の男性に多いことが知られています。痛みを伴わない
膀胱(ぼうこう)の場所や機能について
袋のような形をした膀胱は下腹部の真ん中に位置しており、腎臓で作られた尿を溜める役割があります。膀胱の壁には筋組織が含まれており、縮むと(収縮する)で尿が出ます。尿が溜まった状態(拡張した状態)と尿が出た状態(収縮した状態)で大きさが異なり、正常な人で約300mL程度の尿を溜めることができます
2. 膀胱がんの症状について
痛みなどを伴わない血尿(
【膀胱がんの症状】
- 初期から見られる症状
- 血尿
- 排尿時の痛み
頻尿 :尿の回数が多いこと
- 進行してから見られることが多い症状
- 尿量の減少:尿が極端に少なくなる
- 下肢の
浮腫 (むくみ ) - 骨の痛み
無症候性血尿以外では排尿時の痛みや頻尿などから膀胱がんがみつかることもあります。膀胱炎や前立腺肥大症、過活動膀胱といった他の病気でも見られる症状ですが、長引く場合や、悪化する場合は泌尿器科を受診して原因を調べてください。また、膀胱がんは進行すると
膀胱がんの症状についてさらに詳しく知りたい人は「膀胱がんの症状」を参考にしてください。
3. 膀胱がんの原因について
膀胱がんを発病する危険性を高めるものとして、喫煙や化学物質(ベンジジンや2-ナフチルアミンなど)が知られています。特に、喫煙は膀胱がんの発生を上げる要因であること知っておいてください。詳しくは「膀胱がんの原因」で説明しているので参考にしてください。
4. 膀胱がんの検査について
膀胱がんが疑われる人や診断を受けた人に行われる検査の目的は「膀胱がんかどうか」と「膀胱がんのステージを決めること」の2つです。
【膀胱がんの検査】
- 膀胱鏡検査
- 画像検査
超音波検査 CT 検査MRI 検査
- 病理学検査
この中でも「膀胱鏡検査」と「病理学的検査」は特に重要な検査なので、この後詳しく説明します。その他の検査については、「膀胱がんの検査」を参考にしてください。
膀胱鏡検査
膀胱鏡は
病理学的検査
病理学的検査は身体の組織や細胞の一部を顕微鏡で観察し、細胞レベルで病気の有無や種類を判断する検査です。顕微鏡での観察で「がん細胞」が確認されれば、膀胱がんと診断されます。細胞に色を染める作業(染色)しながら性質をくまなく調べるため、一般的には結果が出るまでに1, 2週間ほどかかります。
5. 膀胱がんのステージについて
膀胱がんの進行の度合いを表す方法としてステージというものがあります。ステージが判断されることで、適切な治療を選びやすくなったり、その後の見通しが立ちやすくなります。
膀胱がんのステージはTNM分類という方法で、ステージI(1)からステージIV(4)までの4つに大別され、ステージは次の3つの要素から決められます。
膀胱がんのステージの決め方:TNM分類とは
膀胱がんのステージは、一般的にTNM分類という方法で決められます。TNM分類は、がんが発生した場所の状態(T)、
■T分類
TはTumor(腫瘍)の頭文字をとったものです。膀胱でのがんの状態を表しています。「がん」がもともと発生した場所のことを
【膀胱がんのT分類のイメージ図】
膀胱がんは膀胱の内側(尿が入っている側)の表面から発生し、しだいに奥深くに(外側に向かって)入り込んでいきます。膀胱がんの治療方針を決めるのに最も重要なのは、がんの根の深さです。
膀胱がんは筋層に入っているかどうかで治療法が大きく変わります。このため、筋層にがんが入り込んでいないものを「表在性膀胱がん」、筋層にがんが入り込んでいるものを「浸潤性膀胱がん」と呼ぶことがあります。
■N分類
N分類はリンパ節転移について表したものです。Nは
■M分類
M分類は遠隔転移の有無を表したもので、MはMetastasis(転移)の頭文字です。膀胱から離れた臓器に膀胱がんが転移することを遠隔転移と言いますが、N分類で表現される所属リンパ節転移は遠隔転移とは言いません。単に「転移」と言うと遠隔転移を指す場合が多く、リンパ節転移とは意味合いが異なるので、どちらの転移なのかがわからないときにはお医者さんに聞いてみてください。CT検査や、MRI検査、
ステージはどのようにして決められるのか
TNM分類による評価が終わると、それらを組み合わせて、ステージが決まります。ステージはI(1)からIV(4)の4つに大別されます。ステージの分類は複雑ですので、「膀胱がんのステージ」を参考にしてください。
6. 膀胱がんの生存率について
膀胱がんの生存率はステージごとに集計されています。ステージごとの膀胱がんの
【膀胱がんのステージと5年生存率】
ステージ | 5年実測生存率 |
I | 76.7% |
II | 58.9% |
III | 45.0% |
IV | 21.7% |
ステージが進んでいるということは病気が進行していることとほとんど同じ意味なので、ステージが上がると、5年生存率は低下します。ステージごとの生存率についてさらに詳しい説明は「膀胱がんの生存率」を参考にしてください。
7.膀胱がんの治療について
膀胱がんは進行度によって治療法が異なります。
【膀胱がんの主な治療法】
- 手術
抗がん剤治療 放射線治療
病気の状態によって治療に用いられる方法が異なるので、以下ではそれぞれについて説明します。手術の方法や抗がん剤の種類や効果についてのより詳しい説明は「膀胱がんの手術」や「膀胱がんの薬物療法」を参考にしてください。
膀胱がんの手術
膀胱がんの手術には内視鏡手術と開腹手術の2つの方法があります。
■内視鏡手術
膀胱がんの内視鏡手術を経尿道的膀胱腫瘍切除術(Transurethral resection of the bladder tumor)といい、TURBTと略されます。
TURBTの役割は次の2つです。
- 治療的役割:腫瘍の切除を行い完治を目指す
- 診断的役割:腫瘍を切除することで腫瘍の深さ(深達度)や腫瘍の
悪性度 を判断する(病理検査)
初期のがんや悪性度が低いがんであれば内視鏡手術だけで治療を完了できます。しかし、進行している場合や悪性度が高い場合は、内視鏡手術だけで治療を終えることは難しいので、膀胱を摘出したり、再発予防の抗がん剤治療が必要になります。追加治療の有無を判断するために病理学的検査(取り出したがんを顕微鏡で詳しく見る検査)が行われます。
■開腹手術
膀胱がんが進行しており、内視鏡手術で取り切れない場合には膀胱全てを摘除する「膀胱全摘除術」が行われます。膀胱全摘除術が必要となるとのは、膀胱がんが筋層を超えて浸潤している「浸潤性膀胱がん」の場合です。膀胱全摘除術では、膀胱を取り出すとともに、膀胱の代わりとして、「お腹に尿の出口を作る」、「膀胱の代わりを腸で作り直す」のいずれかの方法が併せて行われます。
詳しい方法は「膀胱がんの手術」を参考にしてください。
膀胱がんの抗がん剤治療
膀胱がんの治療では抗がん剤を用いることがありますが、使い方が2通りあります。 1つは膀胱の中に直接抗がん剤を入れる方法(膀胱内注入療法)で、もう1つは点滴で抗がん剤を注射する方法(全身
■膀胱内注入療法:膀胱の中に直接抗がん剤を入れる方法
内視鏡治療で済むような早期のものでも、再発しやすい特徴が膀胱がんにはあります。再発を予防する方法として、抗がん剤を膀胱の中に注入します。 なお抗がん剤ではありませんが、BCGという結核予防のワクチンに用いられる物質を膀胱がんの再発予防に使うことがあります。BCGの方が抗がん剤より再発を抑える効果が高いと考えられているので、再発の危険性が高いと考えられる場合にはBCGが膀胱内注入療法の薬として用いられます。
詳しい方法は「膀胱がんの薬物治療」を参考にしてください。
■全身化学療法:抗がん剤を注射する方法
抗がん剤を点滴で注射して血管から全身に投与する方法のことです。一般的な抗がん剤をのイメージはこちらです。全身化学療法は転移をしている人に行われることが多いです。その他では、膀胱全摘除術(膀胱を摘除する手術)の前後で、「がんを小さくして手術をやりやすくするため」や、「再発する危険性を下げるため」に行われることもあります。
詳しい方法は「膀胱がんの薬物治療」を参考にしてください。
膀胱がんの放射線治療
放射線治療は主に膀胱がんが転移をした場合に行われることが多いです。例えば、膀胱がんが骨に転移をした場合は痛みが強くでます。痛みを和らげるためには、放射線治療が有効です。
【参考】
・「標準泌尿器科」(赤座 英之/監)、医学書院、2014
・膀胱癌診療ガイドライン (日本泌尿器科学会/編)
・がんの統計'19(がん研究振興財団)