ぼうこうがん
膀胱がん
膀胱の粘膜にできる悪性腫瘍
8人の医師がチェック 174回の改訂 最終更新: 2020.03.13

膀胱がんのステージと生存率について

 

膀胱がんの進行度を表す方法として、ステージがあります。ステージを調べることで、その後の経過が見通しやすくなります。このページではステージと生存率を中心に説明します。

1. 膀胱がんのステージについて

ステージを決めるも目的は何でしょうか。目的の1つには生存率を推定することがあります。他にはがんの状態を客観的に評価し過去の実績から最も効果が高い治療法を選ぶことも大切な目的です。 では膀胱がんのステージはどのようにして決めるのでしょうか。

膀胱がんのステージはTNM分類という方法で決められることが多いです。TNM分類は、がんが発生した場所の状態(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の3つを基準としてステージが決められます。

T分類について

T分類は膀胱でのがんの広がりを表したものです。
膀胱がんは膀胱の最も浅い層である粘膜(尿が入っている側)から発生し、しだいに奥深くに入り込んでいきます。がんの根の深さが治療法を決める際の判断基準になります。
がんが粘膜の1つ下の層である粘膜下層までにとどまる場合を「表在性膀胱がん」、粘膜下層の筋肉の層(筋層)にがんが及んでいる場合には「浸潤性膀胱がん」の2つに分けることがあります。表在性膀胱がんは内視鏡治療で治療できますが、浸潤性膀胱がんには膀胱の摘除が検討されます。T分類は膀胱の取るか取らないかの判断基準だと考えてください。

  • T-原発腫瘍
    • TX 原発腫瘍の評価が困難
    • T0 原発腫瘍なし
    • Ta  非浸潤性乳頭状腫瘍
    • Tis 上皮内(CIS)
    • T1 粘膜下結合組織までの浸潤
  • T2  筋層浸潤があるもの
    • T2a 筋層の1/2以下の浸潤
    • T2b 筋層の1/2以上を超える深層への浸潤
  • T3  膀胱周囲脂肪組織への浸潤があるもの
    • T3a 顕微鏡的浸潤
    • T3b 肉眼的にはっきりとした壁外浸潤(壁外に腫瘤があるもの)
  • T4  隣接臓器への浸潤
    • T4a 前立腺、子宮あるいは膣への浸潤
    • T4b 骨盤あるいは腹壁への浸潤

がんの深さは膀胱の組織を取り出して顕微鏡で観察する検査の結果によって判断されます。組織を顕微鏡で見る検査を病理検査と言います。T分類を決めるためには、CT検査やMRI検査はあくまで補助的な検査として使われます。

N分類について

N分類はリンパ節転移について評価したものです。
がんは時間とともに徐々に大きくなり、リンパ管や血管などを破壊し中に侵入していきます。リンパ管はいくつかが合流し、リンパ節という関所をつくり、リンパ管に侵入したがん細胞はリンパ節で一時的にせき止められます。がん細胞がリンパ節に定着して増殖している状態がリンパ節転移です。
治療前にリンパ節転移を評価するにはCT検査やMRI検査が使われます。以下は医師がリンパ節転移の有無や評価をするときの基準です。

  • Nx 所属リンパ節転移の評価が不可能
  • N0 所属リンパ節転移なし
  • N1 小骨盤内の1個のリンパ節への転移を認める
  • N2 小骨盤内の多発性リンパ節転移を認める
  • N3 総腸骨領域へのリンパ節転移を認める

がん細胞がたどり着きやすいリンパ節を所属リンパ節と言います。所属リンパ節だけの転移であれば、がんの広がりが小さいので、切除するとがんを身体から取り除ける可能性があります。所属リンパ節は1つではなく、いくつかの領域にあるので、広がりを加味して3段階(N1・N2・N3)に分けられます。
一方で、所属リンパ節以外のリンパ節に転移をしている場合は、がんが全身に転移している可能性が高いと考えられます。この場合は、手術で取り切れる可能性は少ないので、全身に効果が現れる抗がん剤治療が検討されます。抗がん剤治療については、「膀胱がんの抗がん剤治療」を参考にしてください。

M分類とは?

M分類は遠隔転移の評価したものです。膀胱から離れた臓器に膀胱がんが転移することを遠隔転移と言います。所属リンパ節への転移は遠隔転移には含めません。また、「転移」と言うと遠隔転移を指す場合が多いです。

  • Mx 遠隔転移の評価が困難
  • M0 遠隔転移なし
  • M1 遠隔転移あり

遠隔転移がある膀胱がんは、膀胱全摘の手術が勧められません。なぜならば遠隔転移がある状態は全身に小さながんが広がっていると考えられるからです。このため、遠隔転移がある全身を治療できる抗がん剤治療が行われます。抗がん剤治療については、「膀胱がんの抗がん剤治療」を参考にしてください。

ステージの決め方について

T分類、N分類、M分類の組み合わせによってステージが決まります。膀胱がんのTNM分類とステージの対応を表に示します。

  N0 N1 N2 N3
Ta/Tis 0 - - -
T1
T2a、T2b
T3a、T3b
T4a
T4b
M1

言い換えるとそれぞれのステージに対応する病気の状態は下の表のようになります。なおanyはどれでもということを意味しています。例えば、anyTではTa、Tis、T1、T2、T3、T4のいずれでも当てはまるということを表しています。

Stage 0 Ta or Tis N0 M0
Stage Ⅰ T1 N0 M0
Stage Ⅱ T2 N0 M0
Stage Ⅲ T3 N0 M0
T4a N0 M0
Stage Ⅳ T4b N0 M0
any T N1-3 M0
any T any N M1

ステージ分類は細かい内容を多く含んでいるので、基準をすべて抑える必要はありません。いくつかの基準がステージの判断に関わっていることを理解してもらえれば十分です。

2. 膀胱がんのステージごとの生存率

膀胱がんの生存率はステージごとに集計されます。膀胱がんは4つのステージに分けることでき、数字が大きくなるにつれて進行している状態を表しています。

ステージ 5年実測生存率(%)
I 72.8
II 52.9
III 40.1
IV 16.4

一口に膀胱がんといっても生存率は進行度により大きな違いがあります。ステージIの生存率は比較的高いですが、最も進行したステージIVの生存率は厳しい数字です。 この後は各ステージごとに生存率を見ていきます。

膀胱がんのステージI(1)の生存率について

ステージI(1)の状態は以下の通りです。

  • がんの浸潤が粘膜下組織までにとどまり、転移がない状態

粘膜下結合組織は粘膜面の下の層であり、転移する危険性が高まる筋肉の層の上にあります。ステージIの5年生存率は75.6%です。他のステージと比べると、高い生存率です。ステージIのほとんどの人が内視鏡手術(TURBT)で治療を終えることができます。一方で、再発を繰り返す人やその後進行する可能性がある人にはステージIIと同様に膀胱の摘出が検討されます。

膀胱がんのステージII(2)の生存率について

ステージII(2)の状態は以下の通りです。

  • がんの浸潤が筋層に及んでいるが筋層より深くは浸潤していない状態

ステージIIは転移する危険性が高まる筋層にがんが及んでいる状態です。このため、ステージIIの5年生存率はステージIより低く66.3%となっています。ステージIIの状態は内視鏡手術では治療が難しいと考えられています。このため、膀胱全摘除術(膀胱を摘出する手術)が標準治療となっています。

膀胱がんのステージIII(3)の生存率について

ステージIII(3)の状態は以下の2通りです。

  • 膀胱周囲脂肪組織への浸潤がある転移がない状態
  • 前立腺、子宮あるいは膣への浸潤があるが転移がない状態

ステージIIIの状態を噛み砕くと、周囲にかなり広がってはいるものの転移はない状態です。
『がんの統計 '16』(がん研究振興財団)によると、ステージIIIの膀胱がんの5年生存率は52.8%となっていますが、ステージIIIの標準治療である膀胱全摘を行いがんを取り切ることができれば、完治の可能性も十分にあります。
ステージIIIの人には手術だけではなく、手術に抗がん剤を組み合わせた方法で行うことがあります。具体的には、手術の前に抗がん剤治療を行いがんを小さくしてから膀胱を摘出します。手術の前に抗がん剤治療を行うことにより、5年後の生存率が5%向上し、5年後までに再発などがなく生存する率は9%向上したとする報告もあります。 ステージIIIの膀胱がんは、5年後までに命を落とすか、5年間生き延びるかは5分5分です。手術のタイミングなどについて主治医と話し合い、しっかりと考えつつ速やかに方針を決めることが大事です。

膀胱がんのステージIV(4)の生存率について

ステージIVの状態は以下の3通りです。

  • 膀胱がんが膀胱を突き抜けお腹や骨盤に及んでいる状態
  • 所属リンパ節以外のリンパ節に転移がある状態
  • 離れた場所への転移(遠隔転移)がある状態

どれかひとつにでも当てはまればステージIVです。 『がんの統計 '16』(がん研究振興財団)によると、ステージIVの5年生存率は13.6%と厳しい数字になっています。
しかしステージIVの全てが末期の状態とは限りません。一口にステージlVと言ってもさまざまな状態が含まれています。中には治療によって長期に生存する人もいます。例えば、リンパ節転移がある状況でも、抗がん剤治療を行い、その後がんを取り切ることができれば完治する人は少ないながらもいますし、手術ができない状態でも抗がん剤治療で長期に生存する人もいます。数字はあくまでも目安です。ステージlVという言葉にとらわれずに現状をしっかりと把握し、治療について主治医としっかり相談することが大事です。

参考:
Eur Urol. 2005;48:202-205