ぼうこうがん
膀胱がん
膀胱の粘膜にできる悪性腫瘍
8人の医師がチェック 174回の改訂 最終更新: 2019.07.19

膀胱がんの生存率:ステージIII、IVの生存率(余命)、治療法の解説

膀胱がんは表在性膀胱がん、浸潤性膀胱がんに分類されます。浸潤性膀胱がんは転移をしたりして命を脅かし、表在性がんは、浸潤性がんへの進行さえなければ命を脅かすことはほとんどありません。膀胱がんの分類と生存率について説明します。

 

1. 膀胱がんの生存率

がんの生存率はステージごとに集計され、例にもれず膀胱がんもステージごとの生存率を知ることができます。膀胱がんでも進行度によりその後の生存に与える影響はかなり違います。生存率について知りたい場合はまず自分がどのステージの膀胱がんを発病したのかを確認してください。自分がどのステージのがんになったかは医師から説明があると思いますが、ステージを告げられていない場合には診療を担当する医師に尋ねてみてください。

生存率について説明する前にステージというものはどのようにして決まっているかということを次に解説します。生存率だけを知りたい人はステージについては飛ばして進んでください。

2. 膀胱がんのステージとは?

ステージを決めるも目的は何でしょうか。目的の1つには生存率を推定することがあります。他にはがんの状態を客観的に評価し過去の実績から最も効果が高い治療法を選ぶことも大切な目的です。では膀胱がんのステージはどのようにして決めるのでしょうか。

膀胱がんのステージは、TNM分類という方法で決められています。TNM分類は、がんが発生した場所の状態(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の3つを基準としてステージを決める方法です。

図:TNM分類の説明。

T分類とは?

TはTumor(腫瘍)の頭文字をとったものです。膀胱でのがんの状態を表しています。がんがもともと発生した場所のことを原発巣(げんぱつそう)と言います。T分類は原発巣の評価です。

膀胱がんは膀胱の最も浅い層である粘膜(尿が入っている側)から発生し、しだいに奥深くに入り込んでいきます。膀胱がんの治療方針を決めるのに最も重要なのは、がんの根の深さです。T分類はがんの深さ(深達度)によって決めます。

深達度によって膀胱がんは2つに分けることができます。粘膜の1つ下の層である粘膜下層までにとどまるがんを表在性膀胱がんとして、粘膜下層の筋肉の層(筋層)までにがんが及んでいる場合には浸潤性膀胱がんとします。

表在性膀胱がんは内視鏡治療で治療が行なえますが、浸潤性膀胱がんは内視鏡治療だけでは治療が不十分で治療には膀胱の摘除を検討します。T分類は膀胱の取るか取らないかの判断を下す基準だと考えてください。

膀胱をとる手術については。「膀胱がんの手術」で詳しく解説しているので参考にしてください。

図:膀胱がんのT分類の説明イラスト。

【T分類を調べる方法】

がんの深さを調べるには、膀胱の組織を取り出して顕微鏡で観察します。組織を顕微鏡で見る検査を病理検査と言います。経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と言う方法で組織を取り出します。TURBTには内視鏡の一種である膀胱鏡を使います。膀胱鏡を尿道から入れると膀胱の中を観察したり膀胱の組織を取り出したりできます。膀胱鏡を使うことで、皮膚を切り開かないで膀胱の中の様子がわかります。TURBTは膀胱鏡を使って治療または診断の目的で膀胱の一部を切り取ることです。

T分類を決めるためには、CT検査やMRI検査はあくまで補助的な検査として使われます。手術(TURBT)によってT分類が確定されます。TURBTについては「膀胱がんの手術」で詳しく解説しているので参考にしてください。

以下は医師が膀胱でのがんのがんの深さを決めるのに用いる基準です。かなり専門的な内容なので飛ばしても問題ありません。

  • T-原発腫瘍
    • TX    原発腫瘍の評価が困難
    • T0    原発腫瘍なし
    • Ta  非浸潤性乳頭状腫瘍
    • Tis 上皮内(CIS)
    • T1 粘膜下結合組織までの浸潤
  • T2  筋層浸潤があるもの
    • T2a  筋層の1/2以下の浸潤  
    • T2b  筋層の1/2以上を超える深層への浸潤
  • T3  膀胱周囲脂肪組織への浸潤があるもの
    • T3a  顕微鏡的浸潤
    • T3b  肉眼的にはっきりとした壁外浸潤(壁外に腫瘤があるもの)
  • T4  隣接臓器への浸潤
    • T4a  前立腺、子宮あるいは膣への浸潤
    • T4b  骨盤あるいは腹壁への浸潤

N分類とは?

N分類はリンパ節転移についての評価です。Nはリンパ節(lymph node)を指すNodeの頭文字です。リンパ節に転移があるかどうかの判断材料にします。

がんは時間とともに徐々に大きくなり、リンパ管や血管などの壁を破壊し侵入していきます。リンパ管にはところどころにリンパ節という関所があり、リンパ管に侵入したがん細胞はリンパ節で一時的にせき止められます。がん細胞がリンパ節に定着して増殖している状態がリンパ節転移です。リンパ節転移があるとリンパ節は硬く大きくなります。リンパ節が大きくなるのはがんのリンパ節転移だけではなく、感染症などで見られることもあります。このためにがんの転移かどうかの判断が難しくなるときがあります。

がん細胞が最初の段階でたどり着くリンパ節を所属リンパ節と呼びます。所属リンパ節のみの転移であれば所属リンパ節を切除することでがんを体から取り除く可能性が残されています。所属リンパ節以外のリンパ節に転移をしている場合は、すでにがんは目に見えない小さな転移が全身の至るところにあると考えます。この場合は、手術で取り切れる可能性は少なく、全身化学療法抗がん剤治療)が検討されます。抗がん剤治療については、「膀胱がんの抗がん剤治療」を参考にしてください。

治療前にリンパ節転移を評価するにはCT検査やMRI検査が使われます。以下は医師がリンパ節転移の有無や評価をするときの基準です。

  • Nx  所属リンパ節転移の評価が不可能
  • N0  所属リンパ節転移なし
  • N1  小骨盤内の1個のリンパ節への転移を認める
  • N2  小骨盤内の多発性リンパ節転移を認める
  • N3  総腸骨領域へのリンパ節転移を認める

M分類とは?

M分類は遠隔転移の評価です。MはMetastasis(転移)の頭文字です。膀胱から離れた臓器に膀胱がんが転移することを遠隔転移と言います。所属リンパ節転移は遠隔転移とは言いません。単に「転移」と言うと遠隔転移を指す場合が多いです。

遠隔転移がある膀胱がんは、膀胱全摘の手術が勧められません。なぜかというと遠隔転移があるということは全身の至るところに目に見えない小さながんが散らばっていると考えられるからです。遠隔転移がある場合には余命の延長を目的とした全身化学療法(抗がん剤治療)を行います。抗がん剤治療については、「膀胱がんの抗がん剤治療」を参考にしてください。

M分類を決めるにはCT、MRIや骨シンチを用いて遠隔転移を探します。

  • Mx 遠隔転移の評価が困難
  • M0 遠隔転移なし
  • M1 遠隔転移あり

ステージはどう決める?

T分類、N分類、M分類の組み合わせによってステージが決まります。TNM分類は多くの種類のがんに使われていますが、がんの種類ごとに基準が違います。

膀胱がんのTNM分類とステージの対応を表に示します。

  N0 N1 N2 N3
Ta/Tis 0 - - -
T1
T2a、T2b
T3a、T3b
T4a
T4b
M1

言い換えるとそれぞれのステージに対応する病気の状態は下の表のようになります。

Stage 0 Ta or Tis N0 M0
Stage Ⅰ T1 N0 M0
Stage Ⅱ T2 N0 M0
Stage Ⅲ T3 N0 M0
T4a N0 M0
Stage Ⅳ T4b N0 M0
any T N1-3 M0
any T any N M1

3. 膀胱がんのステージごとの生存率

膀胱がんのステージごとの生存率を示します。膀胱がんは4つのステージに分けることでき、数字が大きくなるにつれて進行している状態になります。

ステージ 5年実測生存率(%)
I 75.6
II 66.3
III 52.8
IV 13.6

ステージIVは転移がある状況で、かなり進行しているので厳しい数字と言わざるをえません。生存率についての考え方やどんな状態なのかについてはこの後解説します。

4. 進行した膀胱がんの余命は?ステージ3、ステージ4の生存率

膀胱がんでステージ3になると生存率が50%近くになり厳しい数字だと感じるかもしれません。ここではステージ3とステージ4の余命(生存率)などについて解説します。

膀胱がんのステージ3(III)の余命は?

膀胱がんのステージ3(III)の状態は以下の通りです。

  • 膀胱がんの状態(T分類)は次のどちらか
    • 膀胱周囲脂肪組織への浸潤がある
    • 前立腺、子宮あるいは膣への浸潤がある
  • リンパ節転移がない
  • 離れた臓器への転移(遠隔転移)がない

分かりやすくいうとがんは、周囲にかなり広がってはいるものの転移はない状態です。

『がんの統計 '16』(がん研究振興財団)によると、ステージIIIの膀胱がんの5年生存率は52.8%となっています。ステージIIIの治療は膀胱全摘です。手術でしっかりとがんを取り切ることができれば、完治の可能性も十分にあります。

ステージIIIの治療では、手術の前に抗がん剤治療を行いがんを小さくしてから切除する方法があります。手術の前に抗がん剤治療を行うことにより、5年後の生存率が5%向上し、5年後までに再発などがなく生存する率は9%向上したとする報告もあります。

詳細は「膀胱がんのBCG治療/抗がん剤治療/放射線治療とは?」で解説しています。

ステージIIIの膀胱がんは、5年後までに命を落とすか、5年間生き延びるかは5分5分です。手術のタイミングなどについて主治医と話し合い、しっかりと考えつつ速やかに方針を決めることが大事です。

参考:Eur Urol. 2005;48:202-205

膀胱がんのステージ4(IV)の余命は?

膀胱がんのステージIVの状態は3つの場合が考えられます。

  • 膀胱がんが膀胱を突き抜けお腹や骨盤に及ぶ
  • 所属リンパ節以外のリンパ節に転移がある
  • 離れた場所への転移(遠隔転移)がある

どれかひとつにでも当てはまればステージIVです。ステージIVの膀胱がんでは、『がんの統計 '16』(がん研究振興財団)によると、5年生存率は13.6%と厳しい数字になっています。

しかし、ステージIVだからといって「末期がん」とは限りません。ステージIVの膀胱がんを治療して長期に生存する人もいます。

一口にステージlVと言ってもさまざまな状態が含まれています。

リンパ節転移がある状況でも手術の前に抗がん剤治療を行いがんを取り切ることができれば完治する人は少ないながらもいます。手術が難しいと言われても、抗がん剤治療で長期に生存する人もいます。

数字はあくまでも目安です、ステージlVという言葉にとらわれずに現状をしっかりと把握し、治療について主治医としっかり相談することが大事です。

5. 膀胱がんがリンパ節転移したら生存率は?

膀胱がんがリンパ節に転移した段階のステージはlV(4)です。ステージIVと一口に言っても、他の臓器やお腹、骨盤に浸潤した状態などその状態は様々です。『がんの統計 '16』(がん研究振興財団)によると、膀胱がんのステージlVの5年生存率は13.6%と厳しい数字になっています。

リンパ節転移には2つのパターンがあります。

  • 膀胱の近くのリンパ節(所属リンパ節)
  • 所属リンパ節以外のリンパ節

所属リンパ節のみの転移であれば、抗がん剤による治療を行います。抗がん剤によってリンパ節転移の縮小などの効果が確認された場合は手術が選択肢となります。所属リンパ節に転移がある膀胱がんでも、手術によって可能性は少ないながらも根治が望めます。

所属リンパ節以外のリンパ節に転移がある場合は、手術による利益は少ないと考えられます。理由は、がん細胞が体じゅうに存在している可能性が高いためです。手術で目に見えるがんだけを取り除こうとするのではなく、全身のがん細胞に対する効果を期待して抗がん剤治療を行うことが理にかなっています。

さらに、ステージlVには、肝臓、肺、骨などの転移(遠隔転移)がある人も含まれています。

リンパ節転移のみの人は、ステージⅣの中でも生存率が高いことが予想されます。したがって、リンパ節転移のみの場合の生存率はステージlV全体の5年生存率13.6%を上回ることが予想されます。