こうりんししつこうたいしょうこうぐん

抗リン脂質抗体症候群 (APS)

身体の中に血栓でできやすくなる膠原病の一種で、特に女性に多い。流産の原因となることがある

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11人の医師がチェック 132回の改訂 最終更新: 2017.07.21

抗リン脂質抗体症候群 (APS)の基礎知識

POINT抗リン脂質抗体症候群 (APS)とは

免疫の異常により体のあちことで血栓(血のかたまり)が形成される病気です。リン脂質に対する抗体が産生され、体の中のリン脂質と反応を起こすことで起こるとされています。流産を繰り返す場合や若い方が脳梗塞やエコノミークラス症候群を起こした場合にこの病気を疑う必要があります。血液検査でリン脂質に対する抗体があるか、CTや超音波検査で体の中に血栓がないかを確認します。治療としては血が固まるのを防ぐ薬を使います。重症な場合には免疫抑制薬や血漿交換療法を行います。気になる方はリウマチ内科、膠原病内科を受診してください。

抗リン脂質抗体症候群 (APS)について

  • 抗リン脂質に対する抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするが血液中にあり、かつ血栓症血液が血管の中で固まり、血栓を作って血管が塞がってしまうことによって発症する病気や妊娠合併症ある病気や治療によって引き起こされる、別の病気や病態のこと流産など)を起こした場合に診断される
  • 罹患率一定期間内に発生した疾患の発症しうる母集団に対する割合。有病率と区別されるは年間で人口10万人あたり5人程度
    • 女性に多い
  • 体の中に血栓血管や心臓の中にできた、血のかたまりのこと。血流が悪くなることが原因で、生じることが多い(血のかたまり)ができやすくなる自己免疫疾患本来は外敵を倒すために働くはずの免疫が、何らかの異常によって自分の体を攻撃してしまう病気の総称の一種
    • 自分の体を誤って攻撃してしまう抗体(自己抗体本来は外敵を倒すための働きをする抗体(免疫物質の一つ)のうち、何らかの異常によって自分自身の臓器や器官に向かってしまうもの)のうち、抗リン脂質抗体が産生される
    • 抗リン脂質抗体と体の中のリン脂質が反応し、血液が固まってしまう
  • 赤ちゃんを栄養する血管が詰まることで流産を引き起こすことがある

抗リン脂質抗体症候群 (APS)の症状

  • 流産を繰り返す(習慣流産
  • 血栓血管や心臓の中にできた、血のかたまりのこと。血流が悪くなることが原因で、生じることが多いが血管に詰まって起こる病気(血栓症血液が血管の中で固まり、血栓を作って血管が塞がってしまうことによって発症する病気
    • 脳梗塞一過性脳虚血発作(身体の片側が動かしにくい、しゃべりにくい など)
    • 心筋梗塞(胸が痛い、動くと息が切れる など)
    • 塞栓血液中を流された血栓などの異物が、細い場所で血管に詰まった状態。その先へ血流が流れにくくなってしまう肺高血圧症(胸が痛い、息が切れる など)
    • 静脈血栓症血栓性静脈炎(詰まっている場所の周囲が痛い)
    • バッド・キアリ症候群(お腹の静脈が怒張する、お腹に水が溜まる など)
    • 腸管脈動脈血肺で酸素を取り込み終えた後の血液。肺から左心房、左心室を経て全身へ送り出される栓症(下痢、腹痛 など) など
  • 中枢神経症状
    • 舞踏病(踊るように手足が勝手動いてしまう)
    • てんかん(けいれん) など
  • 皮膚症状
    • 網状皮斑(皮膚が網目状に赤くなる)
  • 腎血管障害
    • ネフローゼ症候群(尿が泡立つ、身体がだるい など)
    • 腎機能腎臓の機能。腎臓がどれだけ血液をろ過してきれいにできるかを示す。血液検査でクレアチニンの値を元に判断される低下(身体がむくむ など)
  • 血小板血液中にある成分の1つ。出血が起こると、出血している部分に集まって出血を止める役割をもつ減少症
    • アザができやすくなる
  • 心臓の弁膜症

抗リン脂質抗体症候群 (APS)の検査・診断

  • 血液検査:血液を固まらせるしくみの異常を調べる
    • 血小板血液中にある成分の1つ。出血が起こると、出血している部分に集まって出血を止める役割をもつ、凝固機能を調べる
    • 特徴的な抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするなどの成分が見つかると診断の可能性が高まる
      ・抗カルジオリピン抗体(aCL)
      ・ループス抗凝固因子(ループスアンチコアグラント、LAC)
      ・抗β2-グリコプロテインI抗体
    • SLE合併ある病気や治療によって、他の病気や病態が引き起こされることしているか調べるため、血液の炎症体の免疫が防御反応を起こしている状態。原因は、感染、けが、免疫の異常(アレルギーなど)と様々。免疫が強く反応することで、熱、腫れ、痛みなどが出る反応、自己抗体本来は外敵を倒すための働きをする抗体(免疫物質の一つ)のうち、何らかの異常によって自分自身の臓器や器官に向かってしまうものほか全身の症状を見る
    • 梅毒検査が誤って陽性になることがある
  • エコー空気の細かな振動である超音波を使った画像検査。体の奥の血管や臓器を観察することができるCTX線(放射線)を用いて、体の内部を画像化して調べる検査検査などで症状に現れない血栓症血液が血管の中で固まり、血栓を作って血管が塞がってしまうことによって発症する病気を探す

抗リン脂質抗体症候群 (APS)の治療法

  • 基本的には抗リン脂質抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりするが検査で陽性でも、血栓血管や心臓の中にできた、血のかたまりのこと。血流が悪くなることが原因で、生じることが多いや症状がなければ治療を行わないことが多い
  • 治療においては血栓症血液が血管の中で固まり、血栓を作って血管が塞がってしまうことによって発症する病気を防ぐことが目標
    • まず血栓症の危険を高くする要因があれば治療を行う
      ・禁煙や、高血圧、脂質異常症糖尿病の治療など
    • 血液を固まりにくくする抗凝固薬血液を固まりにくくする薬。不整脈に対して、血栓ができるのを予防する目的で用いられることが多い抗血小板薬血小板が血栓を作る作用を抑えるための薬。脳梗塞などの予防に使用されるを使う
    • 妊娠中にはより血栓が出来やすくなるため、流産早産正期産以前、つまり妊娠37週0日よりも前に赤ちゃんが生まれること。ただし妊娠22週未満の出産は含まない予防のためによりこれらの治療が大切となる
    • 抗凝固薬であるワーファリンは妊娠中は催奇形性があり、使用できないため、ヘパリン皮下注製剤への切り替えが必要となる
  • SLE合併ある病気や治療によって、他の病気や病態が引き起こされることしている場合はSLEの治療(ステロイド薬副腎で作られるホルモンの1つ。ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症や免疫反応を抑えることができるため、様々な病気の治療で用いられている免疫病原体に対する体の防御システム。何かのきっかけで、免疫が過剰反応している状態がアレルギーで、免疫が自分自身の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患抑制薬など)をあわせて行う
  • 短期間で血栓症が多発する劇症型APSでは血漿交換血液中の、病気を引き起こしている有毒物質や抗体などを取り除く治療(血液の問題となっている成分をろ過して身体の外に出す治療)など緊急の治療が必要になる
  • リスクが大きい場合、手術で下大静脈フィルター挿入や血栓除去などを行う場合がある

抗リン脂質抗体症候群 (APS)の経過と病院探しのポイント

抗リン脂質抗体症候群 (APS)かなと感じている方

抗リン脂質抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりする症候群は、そのもの自体で症状が出るというよりも、抗リン脂質抗体症候群によって脳梗塞心筋梗塞、繰り返す流産など他の病気や状態を引き起こすものです。皮膚の色調の変化(網状皮斑と呼ばれます)といった症状はありますが、これも必ず出るというものではないので、ご自身で「抗リン脂質抗体症候群ではないか」と症状から疑うことは難しい病気かもしれません。

一方で、若い方で脳梗塞心筋梗塞発症症状や病気が発生する、または発生し始めることしている方や、流産を繰り返した方などで心配な方もいらっしゃるかと思います。このような場合には、その病気を発症した時に病院ですでに検査が行われていることも多いです。入院するような病状であれば一般的に測定するような血液検査項目(APTT)で異常が見つかるはずですので、その時に既に検査が済んでいて、抗リン脂質抗体症候群ではなさそうだという判断になっているかもしれません。まずは、先立った病気の際にかかった病院や医師に確認してみることをお勧めします。

病院を受診する際には、他の病状によって、循環器内科、産婦人科、膠原病複数の臓器に炎症がみられる病気の総称。有名なものとしては関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどがある科などが担当科になります。心臓や血管の病気を発症していれば循環器内科、流産を繰り返していれば産婦人科、特に症状がないが抗リン脂質抗体症候群の可能性を調べたい場合には膠原病科、といった具合です。

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抗リン脂質抗体症候群 (APS)でお困りの方

抗リン脂質抗体白血球が作り出す、免疫の一部を担う物質。体内の病原体に付着して、他の免疫細胞の働きを助けたりする症候群の治療としては、血液をさらさらにする内服薬飲み薬のことを使用します。すでに他の病気でかかりつけになっている診療科の医師に担当してもらうことが多いでしょう。心筋梗塞ならば循環器内科、流産の経験があって妊娠を希望している場合には産婦人科、などです。他の病気がなくて抗リン脂質抗体症候群だけの診断がついている、ということは少ないですが、そのような場合には膠原病複数の臓器に炎症がみられる病気の総称。有名なものとしては関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどがある科や、場合によってはやはり循環器内科、産婦人科が担当となるでしょう。

この病気は、完治を目指して治療をするというよりも、他の病気の発症症状や病気が発生する、または発生し始めることを予防するために治療をするという側面が強いです。残念ながら、抗リン脂質抗体症候群そのものを根治することは今の医学では難しいのですが、それによって他の病気を発症しないように、血液をさらさらに保つことを目的として治療を行います。

長期的な通院が必要となりますので、主治医との相性や病院の通いやすさは重要な点です。大学病院などの大きな病院でないと診療ができないという病気ではありませんので、お近くに信頼できる主治医を見つけることが大切です。

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