けっせんせいじょうみゃくえん
血栓性静脈炎
血栓を伴う静脈の炎症。様々な原因によって起こる
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最終更新: 2020.08.21
血栓性静脈炎の基礎知識
POINT 血栓性静脈炎とは
静脈の中に血栓ができた上に炎症を伴った状態です。身体の表面にある静脈に血栓ができた場合に炎症が起こりやすいです。主な症状は皮膚の赤みやむくみ・血管の痛みです。また、感染が起こると適切な治療を行ってもなかなか治らないことがあります。 皮膚の状態や触った感触および超音波(エコー)検査、造影CT検査などで血栓を確認して診断します。治療は安静や冷却を行いますが、感染を伴う場合は抗菌薬を用います。また血栓が再発しないように弾性ストッキングを使用したり、血液をサラサラにする薬を使用したりします。血栓性静脈炎が心配な人や治療したい人は、皮膚科や循環器内科、心臓血管外科を受診して下さい。
血栓性静脈炎について
- 血栓性静脈炎
血栓 ができたことが原因で起こった静脈炎- 体の表面の静脈(表在静脈)で起こりやすい
- 同じ静脈炎でも血栓性静脈炎は軽くて済むことが多いのに対して、深部静脈血栓症は重症化しやすい
- 血栓が血流に乗って
肺動脈 にまで飛んで行くことで肺塞栓 (いわゆるエコノミークラス症候群)になることもある
- 血栓が血流に乗って
- 主な原因
- 静脈炎
- 静脈瘤、外傷、感染が原因となることがあるが、多くは原因不明
- 静脈炎
- 血栓性静脈炎に感染が伴っている場合は、治療に難渋することがある
- 血栓が感染起炎菌の栄養となってしまう
血栓性静脈炎の症状
- 特徴的な症状
発赤 むくみ - 血管の痛み
- (脚の深部静脈に
血栓 があると)ふくらはぎを掴むと痛む - 上記の症状部位が硬くなる
- まれに発熱や悪寒などの全身症状が現れることもある
血栓性静脈炎の検査・診断
- 視診、触診:下肢の腫れ、色調、皮膚温、表在静脈の拡張などをみる
- 採血検査:
血栓 に関する検査値や炎症 の値などをチェックする - 下肢超音波(
エコー )検査- 下肢血栓の簡単で有効な検査法で、頻用されている
造影 CT 検査:血栓の位置を深部静脈に至るまで詳しく調べる- 静脈造影:血栓の位置や圧の上昇を調べる
- リンパ
浮腫 との区別が難しい場合がある
- リンパ
血栓性静脈炎の治療法
- 静脈炎に対して:局所の安静と湿布、弾性包帯などを用いる
- 足を自分で動かしたり、マッサージをしたり、水分をしっかり摂ることが予防の上でも重要
- 静脈血栓症に対しては、
抗凝固薬 (血液をサラサラにする)で治療する
血栓性静脈炎に関連する治療薬
FXa阻害薬(抗凝固薬)
- 体内の血液が固まる作用の途中を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬
- 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
- 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)が必要である
- 本剤は血液凝固因子の因子Xa(FXa)を阻害し、抗凝固作用をあらわす
クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)
- ビタミンKが関与する血液凝固因子の産生を抑え、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬
- 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
- 体内で血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)の中にビタミンKを必要とするものがある
- 本剤は体内でビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子の産生を抑えることで抗凝固作用をあらわす
- ビタミンKを多く含む食品などを摂取すると薬の効果が減弱する場合がある
- 納豆、クロレラ、青汁などはビタミンKを多く含む
- 本剤を服用中は上記に挙げた食品などを原則として摂取しない
ビタミンE製剤
- 血管の血流改善により血行をよくしたり、コレステロールを低下させることなどにより、頭痛、肩こり、冷えや動脈硬化などを改善する薬
- ビタミンEは脂溶性(脂に溶けやすい性質)ビタミンで、体内で活性酸素の働きを抑える
- 活性酸素が過剰になると体の老化や動脈硬化などをおこす場合がある
- ビタミンEはコレステロールの排泄や末梢血管の拡張にも関わる
- ビタミンEの欠乏が関与する脊髄小脳変性症などに使用する場合もある