[医師監修・作成]蜂窩織炎が疑われたらどんな検査をすることになる?どうやって診断されるのか? | MEDLEY(メドレー)
ほうかしきえん(ほうそうえん)
蜂窩織炎(蜂巣炎)
皮膚の下の蜂窩織と呼ばれる部位(真皮から脂肪織と呼ばれる、皮膚の表面を除いた部分)が細菌に感染し、炎症を起こす病気
9人の医師がチェック 187回の改訂 最終更新: 2021.11.30

蜂窩織炎が疑われたらどんな検査をすることになる?どうやって診断されるのか?

蜂窩織炎(ほうかしきえん)の診断のために、問診や身体診察に加えて様々な検査が行われることがあります。このページでは蜂窩織炎の検査について詳しく説明します。

1. 問診

問診とは身体状況や生活背景を聞かれることを指します。全ての診療において問診は基本かつとても重要です。身体の診察を行う前に問診で状況を尋ねられることが多いです。蜂窩織炎の診断においても問診は重要です。

具体的には次のようなことを聞かれます。

  • どんな症状を自覚するか
  • 症状は一定か、よくなったり悪くなったりするか
  • 初めての症状か
  • どういったタイミングで症状は変化するか
  • 症状が出るまでにどういった生活をしていたか
  • 症状が出るまでにどういった薬を飲んでいたか
  • 最近怪我をしていないか
  • 飲酒をどの程度するか
  • 何か持病はあるか
  • 妊娠しているか

これらは蜂窩織炎の存在の有無やその状況を探る上で重要な判断材料です。また、問診は治療方針を決めるためにも役立ちます。持病のある人や妊娠している人は、使用してはならない薬があったり治療法を変更する必要があったりしますので、必ず医療者に伝えるようにして下さい。

持病の有無

蜂窩織炎に関連する病気はいくつか存在します。そのため以前から分かっている病気(持病)がある場合には必ず伝えてください。気をつけるべき病気の中で代表的なものを次に示します。

これらは蜂窩織炎を起こしやすい病気ですので参考にして下さい。もちろんここに挙げた病気以外も蜂窩織炎の原因や治療法の選択に関わりますので、持病がある場合には全て申告するようにして下さい。

常用薬の有無

常用薬の影響によって蜂窩織炎の治療薬(特に抗菌薬)を調整しなければいけないことがあります。そのため常用薬がある場合には問診で答えるようにして下さい。

自分の飲んでいる薬を覚えていない、あるいは診察時に失念してしまうことはよくあります。そのため、常用薬がある場合にはお薬手帳を常に携帯するようにして下さい。

自覚症状の有無

どんな症状を感じているのかはとても大事な情報です。蜂窩織炎では皮膚の痛みや赤みが出ることが有名ですが、他にもその進行度などによってさまざまな症状が出現します。以下が蜂窩織炎で出やすい症状です。

  • 皮膚の症状
    • 皮膚の発赤
    • 皮膚の腫れ
    • 皮膚の痛み
    • 皮膚のかゆみ
  • 全身の症状
    • 発熱
    • だるさ
    • 関節痛

これらは蜂窩織炎で起こりうる代表的な症状です。もし該当するものがあった場合には、問診時に必ず伝えてください。

症状の出現した時期と進行スピード

どんな症状がいつ出現して、その症状は悪化しているかなどについて把握することはとても大切です。例えば「30分前から強い痛みを自覚しだして、どんどん悪くなっている」とか「数年前に手術をしてから時々皮膚が赤くなってはしばらくすると良くなることを繰り返している」といった具合に、自分の症状を伝えるようにしてください。

蜂窩織炎に関しては、急速(目安として数十分単位)に状態が悪くなる場合は要注意です。より深刻な皮膚軟部組織感染症に至っている可能性があります。悪化する速度が早いことを伝え忘れないようにしてください。

2. 身体診察

身体診察は病気の状況やその影響を受けている身体の状況を客観的に評価する行為です。心臓の動きや雑音を直接確認することができますし、心機能の低下した影響がどの程度身体に出ているのかも調べることができます。

次のような行為が身体診察に含まれます。

バイタルサインのチェック

医療現場では「バイタルサイン」という言葉がしばしば聞かれます。日本語に直訳すると「生命徴候」となり、主に次のものを確認します。

  • 意識の程度
  • 脈拍数
  • 血圧
  • 呼吸数
  • 酸素飽和度(血液中に含むことのできる酸素の最大量に対する実際に含まれている酸素の割合)
  • 体温

例えば、脈拍数が増えていても、それが体温上昇によって起こっているのか、頻脈不整脈で起こっているのかで、行うべき治療が変わってきます。また、酸素の値が正常であっても、通常の呼吸状態ではなく一生懸命苦しそうに呼吸しているのであれば、呼吸に異常があると判断します。

このようにバイタルサインは一つの数字だけを見て判断するのではなく、さまざまな要素から総合的に判断します。

視診

視診とは身体の様子を見た目で判断するものです。明らかな変化のあるものは見ただけで判断することができます。

蜂窩織炎は皮膚の色調の変化や浮腫が起こる病気です。このような変化はきちんと視診することで多くのことがわかります。特に蜂窩織炎では視診が手がかりとなる場面が少なくありません。一方で、当然のことですが変化があっても見なければ分かりません。ですので、自分の体がおかしいと思っている部分に関しては、問診の段階で伝えておき、しっかりと観察してもらうことが大事です。

触診

触診は身体を触って異常がないかどうかを確かめることです。触診では色々なことが確かめられます。以下が触診で確認できる例になります。

  • 皮膚の温度を確かめる
  • 触感を確認する(硬い/柔らかい、乾いている/湿っているなど)
  • 押すことで痛みが生じる
  • 触ることでしびれが目立つようになる
  • 触れても触れている感覚がないことが分かる

触診は明らかな異常はもちろん、日頃の生活の中で見えなくなっている症状についても判断することができます。

3. 血液検査

血液検査は多くの病気の診断や状態の評価のために行われますが、蜂窩織炎の際にも血液検査を行うことがあります。よく行われる検査は次のものになります。

  • 全身の炎症の程度をみる検査
    • 白血球数(WBC)
    • CRP
  • 全身のバランスを見る検査
    • 血液ガス分析
  • 筋肉への影響の有無を確認する検査
    • CK(クレアチンキナーゼ)

これらの項目についてもう少し詳しく説明します。

全身の炎症の程度をみる検査

蜂窩織炎では体内で起こった感染によって炎症が起こります。すると炎症性サイトカインという物質が体内に広がります。その影響を受けて体内で様々な反応が起こります。血液検査では白血球数(WBC)とCRPがよく全身炎症の判定に用いられます。

  • 白血球数

白血球数は血液中にどの程度の白血球が存在するかを見る検査です。1マイクロリットル(一辺が1mmの立方体)の血液あたり3,500個から9,000個の白血球が存在する状況が正常と考えられています。

白血球は体内で感染症が起こると増えることが多いため、血液検査で白血球数を見ることで感染の有無を推測することができます。しかし、感染以外の炎症を起こす病気でも同様に白血球は増えるため、参考程度と考えることが必要です。

  • CRP

CRPはC-Reactive Protein(C-リアクティブプロテイン)の略で、体内で炎症が起こると血清中にこのタンパク質が上昇します。感染症が疑われたときに大変よく測定される項目です。感染症以外でも、がんや打撲などの全身に炎症が起こる病気でもCRP値は上昇します。

蜂窩織炎ではCRP値が上がりやすいです。しかし、前述のようにCRPは様々な原因で上昇する検査項目ですので、CRP値が高いから蜂窩織炎があると考えるのは早計です。他の検査の結果や身体の状態から総合的に診断する必要があります。

全身のバランスを見る項目

血液ガス分析は血液中に含まれる成分やバランスを調べる検査です。調べることのできる主な項目は次のものになります。

  • 酸素
  • 二酸化炭素
  • pH(水素イオン濃度)
  • 重炭酸イオン(HCO3-)
  • 塩基超過分(BE)
  • 乳酸
  • ナトリウム
  • カリウム

これらを用いて身体のバランスについて探ることができます。蜂窩織炎が軽症のうちは血液ガス分析は正常のままであることが多いですが、蜂窩織炎によって生じる炎症が非常に強くなると血液ガス分析が異常値になります。特に感染が重症化してSIRS(systemic inflammatory response syndrome、全身性炎症反応症候群)という状態にまで至った場合には、血液ガス分析の結果は異常値が見られるようになります。

筋肉への影響を見る検査

蜂窩織炎は皮膚(真皮)や皮下組織に起こる感染です。皮下組織よりも深い位置には筋肉が存在します。蜂窩織炎の感染が広がって筋肉までに及ぶと、筋肉や筋膜が破壊されてしまうことがあります。この状態を壊死性軟部組織感染症と言い、命に関わる非常に危ない状態です。

筋肉が破壊されるとクレアチンキナーゼ(CK)という物質が筋肉から放出されるので、血液中のCK値は高くなります。そのため、蜂窩織炎による症状が強い場合や症状が進行している場合には、血液検査でCK値が参考になります。つまり、CK値が高ければ、より重症の壊死性軟部組織感染症に進行していることが疑われるということです。

実は血液検査で壊死性軟部組織感染症を見分ける方法が他にもあります。LRINECスコアと呼ばれるものです。これについては次の段落で説明します。

怖い壊死性筋膜炎を見分けられると考えられているLRINECスコアとは

LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)スコアは血液検査だけでかなりの正確度で壊死性軟部組織感染症かどうかを見分けることができるとされています。このスコアは次のように計算されます。

【LRINECスコア】

項目 検査値 点数
①CRP 15mg/dL以上 4点
15mg/dL未満 0点
②WBC 25,000/μL以上 2点
15,000-25,000/μL 1点
15,000/μL未満 0点
③Hb(ヘモグロビン 11.0g/dL未満 2点
11.0-13.5g/dL 1点
13.5g/dL以上 0点
④Na(ナトリウム) 135mEq/L未満 2点
135mEq/L以上 0点
⑤Cre(クレアチニン) 1.6mg/dL以上 2点
1.6mg/dL未満 0点
⑥Glu(血糖 180mg/dL以上 1点
180mg/dL未満 0点

表に有る点数の合計点によって壊死性軟部組織感染症の危険度は次のように分かれます。

  • 8点以上:危険度が高い
  • 6-7点:中等度の危険性
  • 5点以下:危険度が低い

このスコアは本当に有用なのかについては現段階では賛否両論です。しかし一方では、血液検査だけである程度判断がつくことは簡便さが優れていますし、何よりも6つのどの項目も多くの院内で調べることができるものであるということが優れています。

このスコアの使いみちは、壊死性軟部組織感染症が疑わしいと思われたときに参考材料として診断の補助に使うというのが妥当かもしれません。また、少なくともこのスコアで高値である場合には重症皮膚感染症を頭に入れておく必要があります。

【参考】

The LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis) score: A tool for distinguishing necrotizing fasciitis from other soft tissue infections

Crit Care Med 2004; 32:1535-1541

4. 細菌検査

蜂窩織炎は細菌に感染よる感染で、その起炎菌は多くの場合で溶血性連鎖球菌黄色ブドウ球菌です。しかし、特殊な条件下で蜂窩織炎が起こった場合や持病がある場合には他の細菌も問題となりやすくなります。

【蜂窩織炎の原因となりやすい細菌】

  • 一般的に蜂窩織炎の原因となりやすい細菌
    • 溶血性連鎖球菌(特にStreptococcus pyogenes)
    • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
  • 免疫力が低下した人で蜂窩織炎の原因となりやすい細菌
    • 溶血性連鎖球菌
    • 肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)
    • 黄色ブドウ球菌
    • 大腸菌(Escherichia coli)
    • クレブシエラ桿菌(Klebsiella pneumoniae)
    • インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)
    • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
  • 水回り(淡水)で蜂窩織炎が起こったときに原因となりやすい細菌
    • エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)
    • エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)
    • マイコバクテリウム・マリヌム(Mycobacterium marinum)
  • 水回り(海水)で蜂窩織炎が起こったときに原因となりやすい細菌
    • ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)
    • エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)
    • マイコバクテリウム・マリヌム
  • 動物(犬・猫)に噛まれたことで蜂窩織炎が起こったときに原因となりやすい細菌
    • パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)
    • カプノサイトファーガ・カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus)

これらは専門家レベルの情報なので、細菌の名前を患者が知っておくことはほとんど意味がありません。しかし、免疫力が低下している背景があったり、水回りで怪我をした経緯があったり、動物に噛まれた経緯があったりすると、蜂窩織炎の起炎菌が変わってくるということは知っておいて損はないです。そして、もし皮膚が腫れたり痛くなったりして医療機関を受診した場合には、こうしたポイントを医療者に忘れずに伝えてください。

細菌感染の診断において最も大切で有力なゴールドスタンダードは、原因となっている細菌(起炎菌)を見つけることです。しかし、感染が起こったときにすぐ原因菌が判明することはほとんどありません。そのためには感染した部位から採取した検体を顕微鏡で見たり培養してみたりして、細菌の存在を探します。つまり、「細菌塗抹検査」と「細菌培養検査」を行うのです。

塗抹検査

塗抹検査では細菌の形や大きさが分かります。細菌に色を染めるグラム染色などの方法を用いることで、細菌の性質をより詳しく調べることができます。一方で、細菌の名前まで詳細に調べることは難しいため、どの細菌がいるかを推測はできても確定することは難しいです。そのため初期治療では、塗抹検査から起炎菌のあたりをつけて、効果が高いであろう治療薬が選択されます。

診断を確定させるためには、検体に存在する細菌を増やして詳細に調べる検査(培養検査)が必要になります。

培養検査

培養検査では、採取した検体(蜂窩織炎の場合は感染した部位の組織や浸出液など)に含まれる微生物が育ちやすいような環境を作り細菌を増やします。培養検査で細菌が生えることがあれば蜂窩織炎の起炎菌を特定することができます。

培養検査では細菌を増やして、細菌の名前と薬剤感受性(抗菌薬の種類別有効性)を調べることができます。培養検査の結果を踏まえて初期治療からもっと有効な抗菌薬へ変更(適正化)することができます。

5. 画像検査

画像検査はX線検査CT検査、MRI検査などのことを指します。蜂窩織炎を診断する上で画像検査はあまり必要ありません。しかし、他の病気と区別する際に行われることがあります。

CT検査

CT検査は放射線を使った検査です。肺や筋肉などの臓器を輪切りにした写真を見ることができます。

蜂窩織炎では皮膚の下の組織に炎症があるとCT検査で変化が見られることがありますが、筋肉に炎症が波及してないかを確認する場合にCT検査が有用になります。筋肉や筋膜に感染が起こると命に関わる事があるので、CT検査を行った場合には皮下組織だけでなく筋肉にも変化がないかをくまなく見ることになります。

また、蜂窩織炎と似たような症状が出現する静脈血栓症や静脈炎という病気があります。これらは血管の病気ですので、皮膚の診察をしても簡単に分かりません。造影剤を用いたCT検査を行うことで状況を詳細に調べることができます。

MRI検査

MRI検査はCT検査と同じく臓器を輪切りにした写真を見ることができます。一方で、MRI検査は放射線ではなく磁気の力を使いますので被曝しません。また、MRI検査はCT検査よりも詳しく調べることができるので有効な検査ですが、一回撮影するのに時間(たいてい数十分程度)がかかることが弱点です。

蜂窩織炎が疑われたときにはMRI検査ほど精密な検査が必要ないことがほとんどですが、感染の拡がりを詳細に調べる必要がある場合や骨の病気が疑われる場合にはMRI検査が行われることがあります。

6. どうやって蜂窩織炎と診断するのか

蜂窩織炎は身体診察や問診の結果から診断されることが多いです。多くの場合はくまなく身体を診察すれば、特別な検査を行わずに診断できます。しかし、どうしても蜂窩織炎と症状が似ているほかの病気と区別がつかないことがあります。

【蜂窩織炎と症状が似ている病気の例】

これらの関与が疑わしいときには、検査が行われることが多いです。

参考文献
・Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition
・青木 眞, レジデントのための感染症診療マニュアル第3版, 医学書院, 2015
・ 伊東 直哉, 感染症内科ただいま診断中!, 中外医学社, 2017