てあしくちびょう
手足口病
子供におこるウイルス感染症の一つ。口や手足にぶつぶつができる
17人の医師がチェック 188回の改訂 最終更新: 2023.12.04

手足口病に似た病気:ヘルパンギーナ、プール熱、水ぼうそうなど

手足口病は、経過と水ぶくれの様子で総合的に診断します。5歳以下の子どもに多く、夏に多いことが重要な特徴です。似た病気のヘルパンギーナプール熱水ぼうそうと見分けて手足口病を診断するポイントを説明します。

1. 水ぶくれがあっても手足口病とは診断できない

手足口病の水ぶくれは手のひら・足の裏・口の中にあることがほとんどです。そのため、手のひら・足の裏・口の中以外に水ぶくれができた場合は、違う病気を考えます。

手足口病の口の中の水ぶくれは唇の裏にできたり、潰瘍(粘膜がえぐれた状態)になって口内炎に似て見えることもあります。

手足口病と間違えやすい病気

手足口病と水ぶくれの形や位置が紛らわしい病気もあります。手足口病に似た病気と区別していくことが、手足口病の診断では重要です。

手足口病であれば重症になることはほとんどなく自然に治りますが、紛らわしい病気の中には怖い病気もあります。見分ける手掛かりになる情報を以下で説明します。

2. 手足口病に似た病気一覧

手足口病は主に夏に流行る感染症で、手・足・口の中に水ぶくれができます。手足口病と症状の似た病気は多く、紛らわしいです。

以下は、手足口病と似た症状が出る病気です。

また、似た皮膚症状が出る病気がありますが、その部位には多少の違いがあります。

表 皮膚に症状が出る感染症

病気 皮膚の症状が出る場所
手足口病 手のひら、足の裏、口の中(舌や口の壁も)を中心に水ぶくれが出る
ヘルパンギーナ 口の中(喉の奥)
プール熱 眼と口の中(喉の奥)
はしか お腹や胸を中心に赤い皮疹が出る
川崎病 唇や口の中、舌が赤くなり手足が腫れる。指の先に赤い皮疹が出る
HIV感染症 お腹や胸を中心に赤い皮疹が出る
梅毒 手のひらや足の裏を含む全身に赤い皮疹が出る
感染性心内膜炎 指や口の中に赤い皮疹が出る

手足口病にかかるような小さい子どもがかかる病気かどうかを考えると、ベーチェット病天疱瘡淋菌感染症淋病)などは心配する必要はないと思われます。

残ったものの中で、特に紛らわしいヘルパンギーナプール熱水ぼうそうについて以下で説明します。

3. ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは特に手足口病と似た病気です。3歳から10歳の子どもに多く、手足口病と同様に主に夏に流行します。ヘルパンギーナ(Herpangina)の語源は、水ぶくれを意味する「herpes」と、のどの炎症を意味する「angina」の2つに由来します。

語源の通りに、ヘルパンギーナにかかると喉が赤く腫れ、皮膚に水ぶくれができます。典型的には急な発熱で発症し、喉(のど)の痛みや飲み込むのが困難になるといった症状が出てきます。その数時間後に、喉が赤く腫れて水ぶくれが出ます。この「喉の腫れ、水ぶくれ」がヘルパンギーナの特徴です。

治療は手足口病と同じように安静にすることですが、食事がとれないほど喉が痛い場合は、点滴で栄養を補給することが必要となることがあります。

なお「herpes」という言葉が出てきましたが、ヘルペス(口唇ヘルペス性器ヘルペスなど)という病気はヘルパンギーナとは別です。ヘルパンギーナにかかってもヘルペスになることはありません。

ヘルパンギーナの水ぶくれの特徴は?

痛みを伴う水ぶくれや赤い斑点がのどちんこの周囲に出現しますが、その数はあまり多くなく、全部で6個以下のことが多いです。

水ぶくれは次第に潰瘍(粘膜がえぐれた状態)に変化していきます。潰瘍になったあと1週間ほど残る場合がほとんどです。

手足口病とヘルパンギーナは原因も似ている

手足口病ヘルパンギーナの原因はどちらもウイルスの感染です。原因になるウイルスも同じく、エンテロウイルス属の中のエンテロウイルスとコクサッキーウイルスです。

少しややこしい話ですが、エンテロイウイルス属というグループの中には、エンテロイウイルスやコクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルスといったウイルスが分類されています。

手足口病とヘルパンギーナは間違ってもいい

手足口病ヘルパンギーナは少し違いますが、どちらも安静にしていれば自然に治る病気ですので、「診断を間違うと困るのではないか」といった心配は要りません。

手足口病ヘルパンギーナで注意が必要なのは、症状が強い場合です。体力を消耗していれば症状を軽くする治療が必要です。まれに悪化する場合に備える必要もあります。

症状が強いときや、上の説明にない症状があるときは小児科、皮膚科、内科のある病院・クリニックで相談してください。

4. 咽頭結膜熱(プール熱)

夏に流行するプール熱という病気は手足口病と似て、5歳以下の子どもに多く、喉(のど)の痛みなどの症状があります。

プール熱は正式には咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)という名前で、アデノウイルスというウイルスが原因の感染症です。この病気は、プールで感染することも多いためプール熱と呼ばれています。

プール熱では、5日から7日の潜伏期間を経て、発熱や倦怠感といった全身の症状と、喉の痛み、目の充血と痛みが出るのが代表的です。

手足口病とプール熱の見分け方

この病気は、夏に流行することと喉の痛みが出ることから、手足口病ヘルパンギーナと似ています。見分けるのは簡単ではないですが、症状の出ている場所である程度判断できます。

5. 水ぼうそう

手足口病とほぼ同じ年齢の子どもに起こりやすく、似たような水ぶくれが出てくる病気に水ぼうそうがあります。手足口病水ぼうそうは治療法が違うので見分ける必要があります。

水ぼうそう水疱瘡水痘)は水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスが原因になります。

水ぼうそうの特徴は?

手足口病水ぼうそうの水ぶくれには、できる場所や見た目に違った特徴があります。手足口病の水ぶくれは手足や口の中にほぼ限られます。対して、水ぼうそうでは全身(時に顔面とお腹や背中)に数百個の皮疹(ひしん、皮膚の異常)が出るのが特徴です。

水ぼうそうの皮疹は、水ぶくれであったり、赤い斑点であったり、様々な種類が存在します。また、皮疹のある部分はかゆみを伴うことが多いです。

水ぼうそうはワクチンで予防できる

手足口病水ぼうそうのもうひとつの大事な違いは、手足口病は予防接種で防げないが、水ぼうそうは予防できるという点です。2014年からは水ぼうそうのワクチン接種が定期接種となりましたので、今後は子どもの水ぼうそう患者数は減っていくことが予想されます。しかし、水ぼうそうのウイルスはまだまだ日本中に多く分布していますので、いざというときに見分けられるようにしておく価値はあります。

6. 手足口病かなと思ったら病院へ

子どもの手足や口に水ぶくれができたら、最初のリストに挙げた病気と見分けて正しく診断することで、適切な治療ができます。小児科、皮膚科、内科のある病院・クリニックで相談してください。