てあしくちびょう
手足口病
子供におこるウイルス感染症の一つ。口や手足にぶつぶつができる
17人の医師がチェック 188回の改訂 最終更新: 2023.12.04

手足口病のかゆみ・痛み・発熱に対する薬

手足口病を根本的に治す薬はありません。そのため、症状を楽にする目的で治療を行います。よく使われるのは抗ヒスタミン薬です。塗り薬(外用剤)と飲み薬があります。高熱でつらいときにはアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬が役に立ちます。ここでは、手足口病に使う主な薬の特徴と注意点について説明します。

1. 手足口病には抗生物質(抗菌薬)は効かない

手足口病の原因はウイルスです。ウイルスは細菌とは違うので、抗菌薬抗生物質、抗生剤)は効きません。抗生物質は細菌にのみ効く薬です。

手足口病の原因を治す薬はありませんので、病院に行って薬を出されたときは、何をする薬なのかよく聞いておいてください。

手足口病にはかゆみを止める薬を使うことがある

よく使われる薬は、かゆみなどの症状を楽にするための薬です。手足口病の症状は1週間ほどで自然に完治することがほとんどなので、治療期間も1週間以内で十分です。

手足口病では熱は出ないことのほうが多いです。熱が出ても、高熱で体力を消耗してぐったりしてしまうほどでなければ熱を下げる必要はありません。

2. 手足口病に使う抗ヒスタミン薬とは

手足口病のかゆみや水ぶくれの原因には、体内で作られているヒスタミンという物質が関わっています。抗ヒスタミン薬はヒスタミンの作用を抑えることで、ヒスタミンによって引き起こされるかゆみ、発疹などの症状をやわらげます。

抗ヒスタミン薬はかゆみや発疹を抑えるほかにも鼻水や咳を抑える作用があり、湿疹などの皮膚疾患、花粉症喘息といったアレルギー性疾患を含む多くの病気にも使われている薬です。

抗ヒスタミン薬の副作用は?

注意すべき副作用に眠気や口の渇きなどがあります。塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)がありますが、主に飲み薬で副作用が問題にされます。薬によっても副作用のあらわれる頻度や程度は異なります。

3. 手足口病に使う抗ヒスタミン薬の塗り薬(外用薬)

手足口病のときに病院やクリニックから処方される抗ヒスタミン薬の塗り薬で、もっとも広く使われているものはレスタミンコーワクリームです。ベナパスタ®軟膏なども使われます。

レスタミンコーワクリーム

レスタミンコーワクリームはジフェンヒドラミンという抗ヒスタミン薬を含む製剤で、手足口病以外の湿疹や皮膚のかゆみ、じんましんなどにも効果が期待できます。

その他の抗ヒスタミン薬

手足口病にはジフェンヒドラミンを成分とするベナパスタ®軟膏も使われています。

ジフェンヒドラミンが成分の塗り薬は市販薬(OTC医薬品)としても販売されています(新レスタミンコーワ軟膏など)。

手足口病だと思っても、何かの理由によりすぐに病院やクリニックに行けないときは、薬局・薬店・ドラッグストアで相談するのも手です。

ただし、病院の治療が必要なほかの病気と見分けるため、また万一重症になった場合に対処するために、行けるときに小児科、皮膚科、内科のある医療機関で相談してください。

4. 手足口病に使う抗ヒスタミン薬以外の塗り薬

手足口病に使う抗ヒスタミン薬以外の塗り薬(外用薬)として、ウフェナマート(コンベック®フエナゾール®)やイブプロフェンピコナール(スタデルム®ベシカム®)などが使われる場合もあります。皮膚の炎症や痛みなどを抑える効果が期待できます。

5. 手足口病にステロイドは使う?

湿疹、かゆみなど皮膚症状に効く塗り薬というとステロイド外用剤が思い浮かぶかもしれません。

ステロイド外用剤は手足口病に対しては不向きといえます。ステロイド外用剤は免疫を抑える作用があるため、皮膚にいるウイルスを活発にしてしまう可能性があるからです。

例外として、手足口病にステロイドを使う場合

手足口病でも、皮膚の炎症がひどい場合や口内炎などに対して、限定的に弱めのステロイド外用剤が使われる場合はあります。ステロイド外用剤はその高い抗炎症効果などにより、それぞれの症状に合わせた適切な強さの薬を使うことで有益な効果が期待できます。使い方などによっては副作用があらわれやすくなる場合もあるので、処方医や薬剤師の話をよく聞き適切に使うようにしてください。

6. 抗ヒスタミン薬の飲み薬(内服薬)

手足口病のかゆみ・水ぶくれに、抗ヒスタミン薬の飲み薬がよく使われます。子どもでも飲みやすいことや副作用に配慮して選んだ薬が使われます。

抗ヒスタミン薬の飲み薬には花粉症などでよく使うアレグラ®やアレジオン®など多くの薬があります。その中でも、手足口病にかかりやすい子どもが飲むことを考慮すると、散剤(粉薬)やドライシロップ剤(糖類などが添加されている顆粒状の製剤)や水剤(シロップ剤)などの形(剤形)にされた薬剤が使われることが一般的です。

子どもと同じ薬が大人の手足口病に処方されることもあります。

以下に例を挙げます。

ポララミン®(成分名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)

ポララミン®は抗ヒスタミン薬の中でも比較的安全性が高い薬です。手足口病にかかりやすい乳幼児(但し、新生児や低出生体重児を除く)に使え、場合によっては妊婦にも使われる薬です。ドライシロップ剤、シロップ剤などの剤形があり、子どもが薬を飲み込むのが得意かに応じて選べるのもメリットの一つです。

ペリアクチン®(成分名:シプロヘプタジン塩酸塩水和物)

ペリアクチン®は、散剤やシロップ剤などの剤形があり、小児の治療薬としても以前から広く使われている抗ヒスタミン薬です。手足口病による皮膚の症状の他、アレルギー性鼻炎かぜのくしゃみ・鼻水などの症状にも使われています。

食欲を増進させる作用があるとの考えもあり、口内炎などで食欲不振になりがちな手足口病においては有用な薬の一つと言えます。乳幼児(但し、新生児や低出生体重児を除く)に使えるのもメリットです。

ゼスラン®、ニポラジン®(成分名:メキタジン)

ゼスラン®、ニポラジン®は、小児用の剤形として、細粒剤(さいりゅうざい、散剤より粒が大きめの粉薬)とシロップ剤がある抗ヒスタミン薬です。通常、1歳の小児から使え、手足口病にも使えます。喘息などの治療に使われる場合もあります。0歳の乳児にはあまり使われていません。

ザイザル®(成分名:レボセチリジン塩酸塩)

ザイザル®は抗ヒスタミン薬です。小児用の剤形にシロップ剤があり、通常、生後6ヶ月以上であれば使えます。手足口病のほか、かゆみを伴う皮膚疾患やアレルギー性鼻炎などに対して特に有用とされています。

アタラックス®-P(成分名:ヒドロキシジンパモ酸塩)

アタラックス®-Pは、散剤とシロップ剤などの剤形がある抗ヒスタミン薬で、手足口病で出る症状の中でもかゆみを抑える効果に関しては特に期待ができるとされています。アタラックス-Pは「抗アレルギー性緩和精神安定剤」と呼ばれることもあり、自律神経の安定化などの作用をもち、かゆみや不安で眠れないといった症状にも効果が期待できる薬です。

副作用の眠気などを考慮して寝る前の服用方法で処方されることも多い薬です。

抗ヒスタミン薬を飲むときの注意

抗ヒスタミン薬は皮膚の病気の他、アレルギー性の病気など多くの病気で使われている薬です。もともとアトピー性皮膚炎喘息などの持病がある人は、すでに抗ヒスタミン薬を飲んでいることがあります。同じ種類の薬を飲み合わせると効き目が期待と違って強すぎたり弱すぎたり、副作用の危険性が増すことも考えられます。

そのため、アトピーや喘息などの治療を受けている人で、「手足口病かな?」と思って医療機関に行く場合は、ほかに治療中の病気があることや、使っている薬を必ず伝えてください。

7. 手足口病の発熱と痛みに使う解熱鎮痛薬

手足口病の発熱や痛みには解熱鎮痛薬(げねつちんつうやく)という種類の薬が有効です。一般的に小児で使える解熱鎮痛薬は限られていて、乳幼児に使える薬はさらに限定されます。手足口病の治療で使う解熱鎮痛薬としてはアセトアミノフェンが代表的です。

アセトアミノフェンの特徴は?

アセトアミノフェンは、小児においても副作用が少なく安全性が高いとされています。アセトアミノフェンには飲み薬の他に座薬(坐薬)もあり、口内炎や喉(のど)の痛みで水でさえ飲みづらい状態でも使えます。飲み薬はカロナール®細粒、コカール®ドライシロップなど、座薬はアンヒバ®やアルピニー®などがあります。

熱は下げなくてもよい

発熱は、温度を上げることにより、ウイルスや細菌などがうまく増殖できないようにする身体の免疫反応の一つです。そのため微熱の時に解熱薬を使うとかえって治りが悪くなる可能性もあります。解熱薬はあくまで発熱がつらいときに楽にするための薬で、熱が出た原因を治しているわけではありません。

解熱薬が出された時は「どのくらいの発熱で使うべきか?」「どのくらいの間隔やタイミングで使えばいいか?」などを医師や薬剤師からよく聞いておきましょう。

8. 手足口病で使ううがい薬

手足口病の治療にうがい薬を使う場合もあります。口の中の水疱(水ぶくれ)や口内炎があるとき、消毒するためです。

イソジン®ガーグル液

うがいと言えばイソジン®ガーグル液が消毒効果があることでよく知られています。しかし、子どもに多い手足口病の治療で使うときには、うがい用に味が調整されているとはいえイソジン自体の独特な風味を子どもが嫌がるケースもあります。

アズノール®うがい液

イソジン以外のうがい薬としてはアズノール®うがい液が使われています。

口の中の消毒という面ではイソジンに分がありますが、アズノール®うがい液の味は比較的すっきりとした風味(味の好みには個人差があります)であり、手足口病の子どもがイソジンを嫌がるときに試してみることもできます。

アズノールの成分であるアズレンスルホン酸ナトリウムは炎症を抑えたり、ヒスタミンを抑えたりする効果を持っています。

ヒスタミンは体の中で作られている物質で、かゆみなどの原因になるため、ヒスタミンの作用を抑えればかゆみなどが軽くなると考えられます。

うがい薬を使うときの注意

イソジンの成分(ポビドンヨード)はヨウ素を含むため、甲状腺に病気を持つ人が使用する場合には注意が必要となります。アズノール®うがい液はヨウ素を含まないため、このような場合にも有用です。

手足口病にかかりやすい5歳以下の子どもには甲状腺の病気は多くないですが、手足口病は大人にもうつる病気です。甲状腺の病気は20代の女性に特に多いので、子どもから手足口病がうつった場合などは気を付けてください。

9. 手足口病で使う漢方薬

手足口病には漢方薬を使うことがあります。

発熱には麻黄湯(マオウトウ)が有効な場合があります。生薬成分の麻黄などの働きにより、炎症による発熱などの症状に対して効果が期待できます。

水ぶくれの症状には排散及湯(ハイノウサンキュウトウ)が使われることもあります。この漢方薬はもともと、患部が発赤腫脹(炎症などが原因で腫れること)して痛みを伴うような皮膚の症状に効果があることからも手足口病の皮膚症状に改善効果が期待できます。

他には、浮腫や発汗などを伴う湿疹などの症状に効果が期待できる越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)なども手足口病の症状に有効な場合もあります。

漢方薬を飲むときに気を付けること

漢方薬自体は一般的に副作用が少ないとされますが、自然由来の生薬成分自体が体質や症状に合わなかったりする(例として、お腹が緩くなりやすい体質の人に大黄(ダイオウ)などの下剤効果があらわる生薬を含む漢方薬を使用するなど)とまれですが副作用があらわれることもあり注意は必要です。関連するコラム「漢方薬の選択は十人十色!?」もご覧ください。

10. 手足口病の治療は病院で

いろいろな薬がある中から、ひとりひとりの症状や全身の状態に適した薬が選ばれます。子どもの皮膚に水ぶくれができて、手足口病かなと思ったら、小児科、皮膚科、内科のある病院・クリニックで相談しましょう。