たはつせいこつずいしゅ
多発性骨髄腫
血液がんの一種。免疫細胞の一種が異常ながん細胞となり、骨髄の中で増殖する状態。骨や免疫が弱くなったりする。
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最終更新: 2024.05.24
多発性骨髄腫の基礎知識
POINT 多発性骨髄腫とは
血液細胞の一つである形質(けいしつ)細胞のがんです。形質細胞は白血球の一種であるリンパ球のうち、Bリンパ球と呼ばれる細胞からできるもので、本来は体内に侵入した病原体を倒すための抗体をつくる働きを持っています。形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になると、病原体を攻撃する力がなく、役に立たない抗体(Mタンパクと呼びます)が無秩序に作られていきます。これらの骨髄腫細胞やMタンパクが様々な問題を起こします。多発性骨髄腫の症状としては、動悸、息切れ、発熱、骨折、頭痛、意識障害、麻痺などがあります。診断は採血・尿検査、骨髄検査、全身の画像検査などで行います。治療は病状により大きく異なりますが、造血幹細胞移植や抗がん剤が主体となります。多発性骨髄腫が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。
多発性骨髄腫について
- 英語名:Multiple myeloma
- 血液細胞の一つである形質(けいしつ)細胞の
がん - 形質細胞は
白血球 の一種であるリンパ球 からできる細胞で、体内に侵入した病原体を倒すための抗体 をつくる - 形質細胞ががん化して
骨髄 腫細胞になると、役に立たない抗体(Mタンパク)が無秩序に作られる - 骨髄腫細胞やMタンパクの影響で以下のような問題が起きる
- 異常な細胞が大量に体に回ることで、正常な血球がうまく作られなくなる
- 異常な抗体が腎臓に溜まることで、腎臓が悪くなる
- 異常な細胞の影響で、全身の骨がもろくなってしまう(骨折しやすい)
- 形質細胞は
- 悪性リンパ腫と同様に、血液
悪性腫瘍 の中でも比較的多く見られる病気- 生存期間の平均は5-6年前後とされているが、半年以内に亡くなる方から10年以上生存する方まで様々である
5年生存率 は60-70%程度と報告されている
多発性骨髄腫の症状
多発性骨髄腫の検査・診断
- 血液検査
- 貧血の程度、カルシウム値、
腎機能 、血中のタンパクや抗体 を調べる
- 貧血の程度、カルシウム値、
- 尿検査
- 尿中の異常なタンパク(ベンス・ジョーンズ蛋白)などを検出する
レントゲン (X線 )検査- 全身の骨に骨折がないか確認する
- 画像検査(
CT 検査、MRI 検査、PET検査 など)- 全身の骨や臓器の状態を詳しく調べる
造影 剤という薬を注射してから画像検査をするとより詳細な情報が得られるが、骨髄 腫の方では腎臓にダメージが及ぶことが危惧されるので、基本的には造影剤を使用しない
心臓超音波 (心エコー )検査- 心アミロイドーシスなど、心臓に
合併症 がないか確認する
- 心アミロイドーシスなど、心臓に
- 骨髄検査
- 腰骨や胸の骨から骨髄を採取して顕微鏡で確認する
染色体 検査を行い、予後 や治療への反応性を推測する
多発性骨髄腫の治療法
- 目立った
症状 がない場合 - 症状があるが、65歳未満の元気な方の場合
- 自家
造血幹細胞移植 が最も効果の期待できる治療- ボルテゾミブ(ベルケイド®)を軸とした
抗がん剤治療 などでまずは骨髄 腫細胞を減らす - ボルテゾミブ治療を3-4回ほど行った後に、自身の末梢血幹細胞を採取する
- メルファラン(アルケラン®)大量療法で骨髄腫細胞をさらに攻撃した後に、採取してあった末梢血幹細胞を移植する
- ボルテゾミブ(ベルケイド®)を軸とした
- 自家
- 65歳以上または臓器機能に問題があり移植ができない場合、再発した場合
- メルファラン、
ステロイド 、サリドマイド(サレド®)、レナリドミド(レブラミド®)、ポマリドミド(ポマリスト®)、 ボルテゾミブ(ベルケイド®)などを用いた抗がん剤治療を行う
- メルファラン、
- パノビノスタット(ファリーダック®)、ダラツムマブ(ファリーダック®)を用いることもある
抗がん剤 だけでなく、合併症 予防のために種々の薬剤を使用する- 骨折予防:ゾレドロン酸(ゾメタ®)、デノスマブ(ランマーク®)など
- 帯状疱疹予防:アシクロビルなど(ボルテゾミブ使用中は必須)
血栓症 予防:アスピリンなど(サリドマイドやレナリドミドを含む併用療法では血栓 が出来やすい)
多発性骨髄腫に関連する治療薬
抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)
- 細胞の増殖に必要なDNAやRNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAやRNAの合成が必要となる
- 本剤は細胞内のDNAに結合するなどしてDNAやRNAの合成を阻害するなどして抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は土壌などに含まれるカビなどの微生物由来の薬剤であり抗がん性抗生物質などと呼ばれる
サリドマイド関連薬
- サリドマイド(又はサリドマイドに類似した化学構造をもつ薬剤)による、がん細胞に対する増殖抑制作用などにより抗腫瘍効果をあらわす薬
- 多発性骨髄腫は白血球のがん化により免疫低下などにより、感染、貧血、骨折、腎障害などの症状があらわれる
- サリドマイドはがん細胞増殖因子となる血管新生や炎症性サイトカインの抑制をあらわすとされる
- サリドマイドはがん細胞増殖抑制因子となるNK(ナチュラルキラー)細胞やT細胞などの免疫系の増強・調節作用や腫瘍細胞の自滅誘導作用・増殖抑制作用などをあらわすとされる
- 本剤は催奇形性をもつため、避妊や薬剤の保管などに関して「安全管理手順」に沿って使用する
デノスマブ製剤(多発性骨髄腫、骨巨細胞腫治療薬)
- 多発性骨髄腫や骨巨細胞腫などの骨病変を進行させるRANKLという物質を阻害する薬
- 体内物質のRANKLは骨を壊す過程(骨吸収)を亢進させる作用をあらわす
- 多発性骨髄腫や固形がんの骨転移における骨病変ではRANKLによって腫瘍細胞の増殖因子の放出亢進がおこり、がん細胞の増殖が進行する
- 骨巨細胞腫の病変部位ではRANKLが巨細胞という細胞に作用し骨を溶かす作用が亢進し腫瘍が大きくなる
- 本剤はRANKLに結合しRANKLの働きを阻害する作用をあらわす
- 本剤の成分(デノスマブ)は多発性骨髄腫や骨巨細胞腫以外に、骨粗しょう症で使用する場合がある