あれるぎーせいびえん
アレルギー性鼻炎
鼻の粘膜でアレルギー反応が生じて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが起きた状態
17人の医師がチェック 128回の改訂 最終更新: 2023.12.11

アレルギー性鼻炎に悩まされている人が日常生活から気をつけたいこと

アレルギー性鼻炎の治療の第一歩は、アレルギーの原因物質であるアレルゲンを避けることです。このページでは、アレルゲンの回避方法をはじめ、セルフケアの方法、生活の注意点、気をつけたい病気などについても、説明します。

1. アレルギー性鼻炎は治るのか?

現在、アレルギー性鼻炎に広く行われている治療方法は、抗ヒスタミン薬の使用など、症状を抑える治療で、根本的な治療ではありません。アレルギー性鼻炎を根本的に治す治療としては、免疫療法(アレルゲン免疫療法、減感作療法)などとよばれる方法があります。免疫療法は、アレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応する体質を変化させる治療方法です。

アレルギー性鼻炎は個々のアレルゲンに対して、体の中にそれに対応した抗体特異的IgE抗体)という物質ができることで起こります。免疫療法は、体にアレルゲンを少しずつ投与することで、免疫を変化させて、アレルギーを起こしにくくする治療方法です。投与した物質によってアレルギーが出るなどの恐れがあり、専門の医療機関で安全を確保して行われます。

詳しくは「免疫療法:舌下免疫療法、皮下免疫療法」に書いてありますので、興味があれば読んでみてください。

2. アレルギー性鼻炎は薬以外でも治療できるのか?

アレルギー性鼻炎の主な治療は薬物治療になりますが、自分でできるケアとして、アレルゲンを避けて生活することも重要な治療方法です。アレルゲン回避、除去方法は次の節に説明してあります。鼻に入ったアレルゲンを除去する方法として、鼻うがいについても説明してあります。

参考文献
東京都福祉保健局「健康・快適居住環境の指針」

アレルギーの原因物質(抗原)から隔離する方法

アレルギー性鼻炎の治療で、重要なことはアレルギーを起こす物質(アレルゲン、抗原)の回避、除去です。季節性アレルギー性鼻炎では花粉にさらされないような生活が重要です。

通年性アレルギー性鼻炎では、主に住宅内でのアレルゲンによって症状が起こります。住宅内のアレルゲンを減らすように、環境を整えてください。

検査で調べられるアレルゲンには、ダニやハウスダスト、カビ、ペットなどがあります。通年性アレルギー性鼻炎の最も多い原因はハウスダストですが、ハウスダストの中にはダニの成分が多いため、アレルゲンの回避や除去を行う場合は、特にダニを重点的に減らすことが重要です。

住宅内のアレルゲンの代表であるダニ、カビは湿度の高い環境を好みます。部屋の湿度は60%以下が適度です。室内のこまめな掃除、整理整頓を行うことで、アレルゲンを含むホコリが溜まるのを防げます。本棚を扉付きにしたり、おもちゃを入れる箱を蓋付きにしたりすることも、ホコリが溜まらない工夫になります。

ペットのアレルギーがある場合には、室内で飼わない方がいいでしょう。

床に落ちたアレルゲンは掃除機で吸って除去できます。床にホコリなどが溜まっていると、舞い上がって症状の原因になります。空気清浄機では、空気中に舞い上がったホコリを除去することができます。

ダニ・ハウスダストのアレルゲンを減らす方法

通年性アレルギー性鼻炎の最も多い原因はハウスダストですが、ハウスダストの中にはダニの成分が多く含まれています。ハウスダストのアレルギーは、ダニのアレルギーとほぼ同じと考えられます。すなわち、ハウスダストアレルギーの場合にも、ダニへの対策が重要です。

ハウスダストとは家の中にあるホコリのことです。ハウスダストに含まれるものは、土・砂、綿ぼこり、繊維くず、人の髪の毛・フケ、食べかす、ペットの抜け毛、花粉、昆虫の死骸やフン、カビ(真菌)、細菌、ダニの死骸やフン、タバコの煙や排気ガスなど様々な物質が含まれています。ハウスダストの主なアレルゲンはダニで、ハウスダスト1g中にはダニが数百匹~数千匹検出されます。

ダニは室内の塵やホコリ、寝具に付着した人のアカ、フケ、食べ物のカス、カビ(真菌)などを食べて繁殖します。ダニ本体の除去とともに、エサとなるものの除去が重要です。ダニの除去には、掃除や寝具の洗濯が有効です。家の中でダニのフンや死骸を吸い込んでしまうのは、主に睡眠中であり、寝具の管理が特に重要です。

ダニは気温25-35℃、湿度60-85%でよく繁殖します。最近の家庭では湿度の低い冬でも加湿器などで湿度を保って生活することが多いので、1年を通してダニを除去する必要があります。ダニの繁殖しやすい場所は、布団、カーペット、畳、カーテン、押入れ、ぬいぐるみなどです。

『鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)』を参考に、ダニの除去方法について詳しく説明します。

  1. 床の掃除機がけを行う。
  2. 毎日掃除機がけができることが理想です。少なくとも週に2回以上行えると良いです。吸引部をゆっくりと動かして、1畳当たり30秒以上の時間をかけます。畳は畳の目に沿って掃除機を動かすと効果的です。特に寝室の床の掃除機がけを良く行いましょう。
  3. 掃除機がけを行う時は、窓をあけて掃除機の排気を排出しましょう。フローリングなどのホコリの立ちやすい場所は、拭き掃除の後に掃除機をかけると、掃除機の排気によるホコリの巻き上げが少なくなります。
  4. 布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけやめる。
  5. 床材はフローリングとするのが理想的です。カーペットや畳の場合には、上記の方法で掃除機がけを行ってください。布張りのソファにも掃除機をかけると良いです。
  6. ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける。
  7. ダニが通過できない高密度の繊維で作られたカバー類の使用も効果的です。
  8. 寝具を十分に乾燥させる。
  9. ダニは乾燥に弱いので、布団を干すか、ふとん乾燥機を使って、よく乾かします。ふとんは週に2回以上、天日に干すことが理想です。困難な時は室内干しやふとん乾燥機で、ふとんの湿気を減らします。布団を干した後に、布団をたたくと、布団表面にダニアレルゲンが細かくなって浮き上がります。このままにすると、寝ている時に吸い込んで、症状を悪化させることがあります。布団を干した後には、必ず掃除機をかけましょう。
  10. 週に1回以上、ふとんの表と裏に掃除機をかけることも効果的です。
  11. 室内の温度、湿度の管理をする。
  12. ダニは気温25-35℃、湿度60-85%でよく繁殖します。部屋の湿度を50%、温度を20-25℃に保つと、ダニの繁殖を防ぐことができます。
  13. シーツ、布団カバーはこまめに洗濯をしましょう。
  14. 週に1回以上は洗濯をしましょう。

ペットのアレルゲンを減らす方法

通年性アレルギー性鼻炎がある人には、新しくペットを飼い始めることはおすすめできませんが、もともと飼っているなどで触れないことが難しい場合は、ペット専用の部屋を作って接触をなるべくさけるなど工夫をしましょう。ペットの毛やフケ、体に住み着いたダニがアレルギーの原因になりますので、ペットをまめにお風呂に入れましょう。

『鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)』には下記の回避方法が記載されています。

【ペット(特にネコ)抗原の回避】

  1. できれば飼育をやめる。
  2. 屋外で飼い、寝室に入れない。
  3. ペットと、ペットの飼育環境を清潔に保つ。
  4. 床のカーペットをやめ、フローリングにする。
  5. 通気をよくし、掃除を励行する。
  6. フローリングなどのホコリのたちやすい場所は、拭き掃除をした後に掃除機をかける。

スギ花粉との接触を減らす方法

季節性アレルギー性鼻炎の代表的なアレルゲンにスギ花粉があります。スギ花粉の回避については「花粉はメガネで防げる?花粉症のグッズは効果があるの?」に詳しく書いてありますので、参考にされてください。

『鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)』には下記の回避方法が紹介されています。

【スギ花粉の回避】

  1. 花粉情報に注意する。
  2. 花粉の多い時の外出は控える。外出時にマスク、眼鏡を使う。
  3. 表面が毛羽立った毛織物などのコートの使用は避ける。
  4. 帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
  5. 飛散の多いときは窓、戸を閉めておく。換気時の窓は小さく開け、短時間にとどめる。
  6. 飛散の多いときのふとんや洗濯物の外干しは避ける。
  7. 掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除をする。

鼻うがいとは?

鼻うがいとは、鼻の中に入ったアレルゲンを除去する方法です。鼻の中にアレルゲンが入ることで、鼻のアレルギー症状が出るため、鼻うがいでアレルゲンを除去することは、効果的なセルフケアです。

例えば季節性アレルギー性鼻炎の代表である花粉症の場合、鼻に20-50個の花粉が入れば、症状が起きます。この程度の量の花粉は、どんな対策を行っても、鼻の中に吸入されてしまいます。鼻の中に入った花粉を除去するためには、鼻うがいが効果的です。

片方ずつ食塩水を吸い込んで、鼻内を洗浄して口から吐き出します。家庭用の鼻洗浄器が市販されているので、利用してもよいでしょう。

その他に、市販の点鼻スプレーの空き容器を用いる方法もあります。容器に食塩水を入れて1日に数回鼻にスプレーをして、鼻をかむことを繰り返します。

水道水を用いると鼻がツーンとして痛いため、食塩水で行います。血液の塩分濃度が0.9%なので、同程度にすると鼻の痛みがなく、洗浄を行えます。少し濃い濃度で行うと、浸透圧の関係で、鼻の粘膜が収縮し、鼻づまりにも効果的です。実際には、500mlの水に5g(小さじ1)の食塩を加えます。水道水は必ずしも煮沸せずに使用しても構いません。煮沸しない場合には細菌感染などを起こす可能性も全く無いわけではないため、作った食塩水はその日に使い切りましょう。

鼻づまりがひどい時の対処は?

薬を使用しても鼻づまりが辛い時に、自分でできる対処方法が『鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)』にも記載されています。特に妊娠中のアレルギー性鼻炎では、妊娠4ヶ月までは薬物治療をさけた方がよいとされます。鼻づまりでつらいときは下記の方法を試してみてください。

  • ぬるめの温度での入浴
    • 自律神経機能を調節します。
  • 局所温熱療法
    • 蒸しタオルで鼻を外から暖めます。ハンドタオルをぬらして電子レンジで加熱すると蒸しタオルが簡単に作れます。
  • 運動や冷水シャワー
    • 交感神経の機能を高めて、鼻粘膜を収縮させます。
  • 塩水による鼻うがい
  • 足を温める(足湯、足温器)
  • 飲酒を避ける

3. こんな人は医療機関にかかりましょう

アレルギー性鼻炎がある人は同時にほかの様々な病気を持っている(合併している)ことがあります。

アレルギー性鼻炎は、気管支喘息(きかんしぜんそく)やアトピー性皮膚炎食物アレルギーと同じ、アレルギーが関与する病気です。これらの病気のどれかを持つ人はほかのものを合併することも多いです。子どもでは、乳児期にアトピー性皮膚炎食物アレルギー発症し、これらの症状が改善してきた頃に、アレルギー性鼻炎や気管支喘息を発症することがあります。この状態は、アレルギーマーチと呼ばれます。それぞれの病気で、セルフケアや治療が異なります。子どもであれば、最初に小児科に受診して、検査や診断をしてもらい、今後の治療に関して相談しましょう。

アレルギーが関与する病気以外にも、アレルギー性鼻炎に合併しやすい耳の病気として、滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)があります。滲出性中耳炎は子どもの難聴の原因として最も多いですが、滲出性中耳炎による難聴は適切な治療で改善します。

咳が続く人:気管支喘息、アトピー喘息

アレルギー性鼻炎では咳はでることがありますが、咳が続く場合や、呼吸が辛くなるほど咳こんだりする場合には、気管支喘息の可能性があります。

気管支喘息はアレルギーによって、気道(口から肺までの空気の通り道)が狭くなる病気です。気道感染やホコリなどの刺激が加わると、さらに気道が狭くなり、息苦しさを生じます(喘息発作)。

アレルギー性鼻炎では、鼻水がのどに流れたり、のどのアレルギーにより、咳がでることがあります。気管支喘息の症状として、咳がありますが、咳のみではアレルギー性鼻炎の症状と区別することが難しいため、確定診断にはアレルギー専門医の受診が必要です。

アレルギー性鼻炎の25%程度に気管支喘息の合併があり、気管支喘息では約70%にアレルギー性鼻炎が合併します。アレルギー性鼻炎に加えて、食物アレルギーまたはアトピー性皮膚炎をもつ場合には、その後80%で気管支喘息を発症すると報告されています。

参考文献
Acta Oto-Laryngologica Vol. 132 , Iss. 9,2012

皮膚がカサカサになったり赤くなったりする人:アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、アレルギー性鼻炎より先に発症すると報告されています。日本の3歳児の調査では、アレルギー性鼻炎と診断された児にアトピー性皮膚炎が合併する率は26.1%でした。

乳児期にアトピー性皮膚炎がある場合、7歳におけるアレルギー性鼻炎の発症が多いという報告があります。

スウェーデンの報告では、4歳半の時点でアレルギー性鼻炎がある子供に多かった特徴として、この時期に食物アレルギーがあること、反復する喘鳴、医師によるアトピー性皮膚炎の診断、両親に鼻炎があること、生後1年以内のアトピー性皮膚炎、男児が挙げられています。

アトピー性皮膚炎があり、鼻づまり、鼻水、くしゃみなどの症状が続く場合には、アレルギー性鼻炎を合併した可能性がありますので、耳鼻咽喉科に受診してみるとよいでしょう。

もともとアトピー性皮膚炎がある場合に、季節性アレルギー性鼻炎である花粉症の時期にアトピー性皮膚炎の症状が悪化することがあります。一方、普段はアトピー性皮膚炎はないものの、花粉の時期のみに皮膚炎をおこすこともあります。花粉が皮膚にくっつくことで接触性皮膚炎を起こします。原因の花粉は、スギ、シラカバ、カモガヤ、ブタクサなどがあります。症状は花粉が付着する部分に起こり、目の周囲、顔、くびなどの露出部分におこります。このような症状がある場合には、皮膚科に受診してみましょう。

参考文献
アレルギー疾患に関する3歳児全都調査(平成26年度). Journal of Allergy and Clinical Immunology , Volume 130 , Issue 5 , 1117-1122.e1. Pediatric Allergy and Immunology, 22: 398-404.

食事後に調子が悪くなることがある人:食物アレルギー

食物アレルギーは特定の食べ物によって引き起こされるアレルギー反応です。アレルギー性鼻炎と診断された児に食物アレルギーが合併する率は、日本の3歳児の調査では30.4%でした。年々、食物アレルギーをもつ子どもの数は増加傾向にあります。

食物アレルギーは下記の5つに分類されます。

この中で、アレルギー性鼻炎と関連する食物アレルギーは口腔アレルギー症候群です。アレルギー性鼻炎の中でも、季節性アレルギーの代表である花粉症に合併することが多く、最近では花粉・食物アレルギー症候群とも呼ばれます。発症時期は学童〜大人に多い食物アレルギーです。先に花粉症を発症し、その後に食物アレルギーを発症します。

原因となる果物や野菜を食べてから、1時間以内に、唇、舌、口や喉の粘膜のかゆみや、ピリピリした感じ、喉のつまり感を感じるアレルギーです。

アレルギーを起こす原因は、果物のアレルゲンと、花粉のアレルゲンの構造が似ている部分が多いためです。アレルゲンとはアレルギー症状を起こす物質のことです。体が花粉に感作(かんさ)された状態、つまりアレルギー反応を起こすようになった状態で、生の果物や野菜を食べると、接触部位である口やのどにアレルギー症状を起こします。

ほとんどの場合は口や喉の症状のみの軽症ですが、稀に重症化します。

重症化しやすいのは、カバノキ科花粉(シラカバ、ハンノキなど)にアレルギーがある人が豆乳を飲んだ場合、ヨモギ花粉にアレルギーがある人がセリ科のセロリや人参、スパイスを食べた場合で、アナフィラキシーという重症のアレルギーになることがあります。アナフィラキシーでは、じんましんや下痢など症状とともに、のどの腫れを起こして呼吸ができなくなります。更に重症になると血圧が低下するアナフィラキシーショックという状態になり、命の危険が生じます。

参考文献
アレルギー疾患に関する3歳児全都調査(平成26年度).

耳の調子も悪い人:滲出性中耳炎

アレルギー性鼻炎には滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)が合併することがあります。アレルギー性鼻炎があると、アレルギーによる炎症で、耳と鼻をつなぐ耳管に炎症がおこり、滲出性中耳炎になりやすくなります。小児滲出性中耳炎にアレルギー性鼻炎が合併する率は、報告によって幅があり、24-89%です。

滲出性中耳炎は子どもの難聴の原因で最も多い病気です。主な症状は耳の聞こえにくさや、耳のつまった感じです。急性中耳炎と異なり、痛みがないため、気づかないことも多く、長期間、見過ごされることもあります。難聴が続くと、言語発達の遅れや、学業の妨げとなることもあります。子どもは難聴を訴えることが少なく、呼びかけへの反応が悪い、聞き返しが多い、テレビの音が大きいなどで気づかれることがあります。このような症状がある場合は耳鼻咽喉科に受診しましょう。鼓膜を観察し、必要に応じて聴力検査を行って診断します。適切に治療を行うと聴力は改善します。

参考文献
Clin Exp Allergy. 2012 Nov. Pediatr Allergy Immunol. 2011 May.

4. アレルギー性鼻炎は遺伝するのか?

アレルギー性鼻炎を必ず発症するという遺伝子は現時点ではみつかっていません。アレルギー性鼻炎のみではなく、気管支喘息アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、複数の遺伝子と環境が関わって発症する病気と考えられています。家族にアレルギー性鼻炎がいるからといって、必ず発症するわけではありません。

5. 食べ物で気をつけるべきことはある?

毎日の食事で、アレルギー性鼻炎の予防効果のある食事は特にありません。花粉症などのアレルギー疾患を持つ人を対象としたアンケート調査では、甜茶やヨーグルトは代替治療の中でも行っている人が多い治療でした。しかし現在までに、これらの食事の効果ははっきりしていません。

参考文献
代替医療の実態と有効性の科学的評価

アレルギー性鼻炎にヨーグルト・乳酸菌は効く?

ヨーグルトや乳酸菌もアレルギー性鼻炎に効果があるという意見がありますが、現時点では効果は不明です。ヨーグルトは、プロバイオティクスである乳酸菌を含みます。プロバイオティクスとは、「適度に摂取したとき、健康上有益に作用する生きた菌」です。これらの菌を摂取すると、生きたまま腸に達し、有害菌の増殖を抑えられ、腸内腐敗や、腸内菌の正常化につながり、アレルギー疾患に効果があるのではないか、と考えられています。

スギ花粉症の症状緩和目的で乳酸菌を摂取した群としない群を比較すると、効果があるという報告と、ないという報告があり、有効性はまだわからない状況です。

アレルギー疾患に関するプロバイオティクスの効果については、フィンランドで行われた研究が有名です。アレルギー疾患のリスクの高い妊婦が、出産までにプロバイオティクスを内服し、生まれた後も半年間、プロバイオティクスを内服しました。子どもが2歳の時点での評価で、アトピー性湿疹は減少していました。しかし、アレルギー性鼻炎については、有意な予防効果は認められませんでした。

参考文献
Allergy. 2015 Nov;70(11):1356-71.

アレルギー性鼻炎にお茶は効く?

お茶の中でも、甜茶(てんちゃ)は花粉症に効果があると言われています。甜茶は中国茶の中で甘みを持つお茶の総称です。甜茶ポリフェノールはアレルギーで生じるヒスタミンの作用を和らげる効果があると言われていますが、偽薬と市販されている甜茶カプセルの内服を比較した研究では、効果に差がなく、有効とは言い難い結果でした。

参考文献
Auris Nasus Larynx. 2011 Oct;38(5):600-7.

アレルギー性鼻炎でお酒は飲んでも良い?

アレルギー性鼻炎だからといってお酒を飲んでいけないということはありません。しかし、アルコールは血管拡張作用があるため、アルコール摂取により鼻づまりの症状は悪化します。

6. タバコは吸ってもよいか?

アレルギー性鼻炎の人は、喫煙をしてはいけないということはありませんが、症状を悪化させる可能性があります。喫煙は鼻粘膜の損傷を生じるため、アレルギー性鼻炎の症状が悪化したり、長期間にわたって鼻炎症状が持続する可能性が考えられています。受動喫煙によっても、アレルギー性鼻炎を発症したり、症状の悪化に関係していると報告されています。

アレルギー性鼻炎の人が喫煙をしていると、気管支喘息の発症率を増加させるという報告もあります。

参考文献
Ann Agric Environ Med. 2014;21(1):59-63. Int Forum Allergy Rhinol. 2015 Jun. J Allergy Clin Immunol. 2008 Jun.

7. 運動はしてもよいか?

アレルギー性鼻炎でも運動をしても構いません。運動をすると、鼻の粘膜が収縮するため、鼻通りが一時的に良くなることがあります。

しかし、花粉症の時期には屋外での運動は避けたほうが良いでしょう。屋外で運動をすると多くの花粉に暴露されるので、花粉症の症状が悪化します。それぞれの花粉が飛ぶ時期には差があります。「花粉は秋にも飛ぶ?ブタクサ、カモガヤ他の種類ごとのシーズン」を参照してください。

水泳をする時の対策は?

水泳そのものが明らかにアレルギー性鼻炎に悪影響を及ぼすとは言えませんが、プールの水の塩素濃度や水質によっては一時的に鼻炎の症状が悪化する場合もあります。

プールの水は鼻の粘膜から浸みこむため、鼻に大量の水が入ると、鼻の粘膜の防御機能が低下することがあります。すると一時的に鼻水が多くなったり、防御機能が低下することで、微生物やアレルゲンが侵入しやすくなります。このため水泳後、数時間はマスクをして異物の侵入を防いでも良いでしょう。一番簡単で大事なことはプールの前と後で鼻をかむことです。

鼻づまりや鼻水が多い時は、滲出性中耳炎になりやすいので、水泳は一時的にお休みしましょう。

8. 環境によってアレルギー性鼻炎は起こるのか?

アレルゲンの多い環境で生活をしていると、アレルゲンに感作されてアレルギー性鼻炎を発症することがあります。アレルギー性鼻炎がある場合には、ペットと常に一緒にいる生活や、ホコリのたちやすいカーテンはできれば避けたほうが良いでしょう。空気清浄機の効果的な使用方法についてもみてみましょう。

ペットはアレルギー性鼻炎の症状を悪化させる?

ペットの毛やフケ、体に住み着いたダニはアレルギー性鼻炎の原因になります。アレルゲンに犬や猫の皮膚や、ダニ、ハウスダストがある場合は、ペットの飼育を避けたほうが症状は緩和します。既に飼っている場合は、飼うのをやめるか、屋外での飼育が望ましいのですが、難しい場合もありますね。

そこでできることとしては、ペットを飼育する部屋を限定し、できればフローリングにしましょう。ペットのアレルギーがある人の寝室にはペットが入らないようにしましょう。ペットの毛がついた寝具で寝ると、寝ている間に吸い込んでしまうことがあるので、寝具はいつも清潔に保ちましょう。

カーテンはアレルギー性鼻炎の症状を悪化させる?

カーテンにはホコリが多くついているため、アレルギー性鼻炎の症状の悪化を起こします。カーテンの長さが床についていると、カーテンの開閉時にホコリが舞い上がりやすいので、床につかない長さにしましょう。織物のカーテンにはダニやハウスダストが付きやすいため、カーテンからブラインドへの変更が望ましいです。難しい場合には、こまめな洗濯をしましょう。

空気清浄機はアレルギー性鼻炎の対策になる?

空気清浄機は室内に浮遊する花粉やホコリを取り除く効果があります。掃除機のみでは、空気中に浮遊するアレルゲンを除去することは困難なため、空気清浄機を併用すると、より効果的にアレルゲンを除去することが可能です。部屋での空気清浄機の効果的な設置方法は、窓の反対側、ついで、窓の下に設置するとより効果的との報告があります。壁や家具の近く、空気清浄機の周辺には花粉が落下して残りやすいため、こまめな拭き掃除を行うと良いでしょう。