あれるぎーせいびえん
アレルギー性鼻炎
鼻の粘膜でアレルギー反応が生じて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが起きた状態
17人の医師がチェック 128回の改訂 最終更新: 2023.12.11

アレルギー性鼻炎ってどんな病気?

アレルギー性鼻炎は、特定の物質に対する鼻のアレルギー反応です。主な症状は鼻水、鼻づまり、くしゃみです。アレルギー性鼻炎の仕組み、原因、検査、治療などについて、見ていきましょう。

1. どうしてアレルギーで鼻炎が起こるのか?

アレルギー性鼻炎は、特定の物質に対するアレルギー反応です。アレルギーを起こす特定の物質をアレルゲンと呼びます。アレルゲンを異物と認識して反応した細胞が、種々の症状を引き起こします。

アレルギーをおこす仕組みを説明します。鼻から体内に入ったアレルゲンを、体の細胞が異物と認識して、その異物と戦うための物質をつくります。異物と戦うための物質は抗体と呼ばれますが、アレルギー性鼻炎に関与する抗体は、IgE(アイジーイー)抗体と呼ばれるものです。アレルゲンとIgE抗体が反応することで、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状を起こします。次の節「アレルギー性鼻炎の仕組み」に詳しく書いてありますので、もう少し詳しく知りたい方は読んでみてください。

アレルゲンが何であるかは、血液検査でそれぞれのアレルゲンに対するIgE抗体の値を調べることでわかります。

2. アレルギー性鼻炎の仕組み

少し難しくなりますが、アレルギー性鼻炎のしくみを説明します。難しいと思ったら「アレルギー性鼻炎になりやすい年齢はある?」まで飛ばしてください。

アレルギーは、体が特定の物質の成分(アレルゲン)を異物と認識して外に出そうとする防御反応です。この防御反応を免疫反応とよびます。免疫反応は、血液の中にある白血球が担当しています。白血球にはマクロファージやリンパ球といったいろいろな種類があります。

アレルギーを起こす特定の物質の成分はアレルゲンと呼ばれます。アレルゲンに対する免疫反応は以下のようになります。

  1. アレルゲンが体内に侵入
    • アレルゲンが鼻に入ると、表面の薄い粘液の鼻水の層にアレルゲンを含むホコリや花粉などが吸着されます。吸着されたものの多くは、鼻の粘膜の細胞によって、鼻の外に運び出されます。それでも運び出されなかったものは鼻の粘膜に付着して、アレルゲンの成分を鼻粘膜に染み込ませます。
  2. マクロファージが、アレルゲンを異物と認識して食べる
    • 体にとって異物であるアレルゲンが体内に入ると、まず、異物を認識するマクロファージという細胞に会い、食べられます。マクロファージは体の中を警察官のようにパトロールしている細胞です。
  3. マクロファージがT細胞、その次にB細胞へとアレルゲンの情報を次々に渡す
    • マクロファージが得たアレルゲンの情報は、リンパ球の1つであるT細胞に送られます。T細胞から、アレルゲンの情報を同じリンパ球のB細胞に送ります。
  4. B細胞がアレルゲンに対するIgE抗体を作る
    • 体にとって異物であるアレルゲンの情報を受け取ったB細胞は、次に入ってきたときに撃退するために、アレルゲンに対するIgEという特殊な爆弾(IgE抗体)を作り、肥満細胞(マスト細胞)の表面に保管しておきます。肥満細胞はIgE抗体と、アレルゲンを撃退するためのヒスタミンなどの爆弾をためておく、爆弾保管庫のようなものです。
  5. アレルゲンが体内に再度入ると、肥満細胞のIgE抗体とアレルゲンが反応する
    • アレルゲンが再び鼻などから体内侵入すると、肥満細胞の表面にあるIgE抗体が、体内に入ったアレルゲンにくっつきます。
  6. アレルゲンと反応した肥満細胞から、様々な症状をおこす物質が放出され、体の症状がでる
    • IgE抗体が放出されたことをきっかけに、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が肥満細胞から放出されます。それらの化学伝達物質が体に作用することで、種々の症状がでます。
    • 例えば、ヒスタミンなどは、鼻粘膜表面の神経を刺激して、くしゃみを起こします。くしゃみが起きると、反射的に鼻汁が出るようになります。さらにヒスタミンやロイコトリエンは鼻の血流を多くすることで、鼻粘膜をむくませ、鼻づまりを引き起こします。

アレルギー性鼻炎で最も使われる薬である抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが体を刺激する段階に効果があります。一方でステロイドは、これらの流れと関係なくほぼ全ての免疫反応を抑制します。上のとおりアレルギー性鼻炎の症状は免疫反応によって引き起こされるので、免疫反応を抑制することで症状を抑えることができます。

アレルギーとは?

アレルギーとは、多くの人にとって本来は無害な物質に対して、体の細胞が過敏に反応して、全身または体の一部に障害がでる状態です。

体には免疫の機能があります。免疫は体の外から入る病原体などの異物(抗原)を認識して戦い排除しようとする働きです。免疫が過剰に働いてしまうのがアレルギーです。アレルギー反応は主に4種類に分けることができます。このうちアレルギー性鼻炎はI型アレルギーです。

以下に詳しく説明します。

専門的な難しい話になりますので、知りたい方は読み進めてください。

I型アレルギー:主にIgE抗体によるアレルギーです。IgE抗体を表面にもつ肥満細胞がアレルギーを起こす物質(抗原)にくっついて反応を起こします。肥満細胞は中にセロトニンやヒスタミンなどの化学情報伝達物質をもっています。肥満細胞のIgE抗体が抗原とくっつくと、セロトニンやヒスタミンを肥満細胞が放出して症状を起こします。

代表的な疾患:アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)・蕁麻疹じんましん)・アトピー型気管支喘息食物アレルギーなど

II型アレルギー:主にIgGによるアレルギーです。IgGは抗体の一種ですが、IgEとは別のものです。II型アレルギーでは自分の体の細胞が持っている物質(抗原)に対するIgGが作られます。IgGがアレルギーを起こす物質(抗原)にくっついて、白血球が抗原を持つ細胞を破壊します。

代表的な疾患:自己免疫性溶血性貧血橋本病特発性血小板減少性紫斑病重症筋無力症など

III型アレルギー:アレルギーを起こす物質(抗原)を排除しようとした結果、うまく排除されずに免疫複合体という物質が形成されます。III型アレルギーは免疫複合体が各々の臓器にダメージを与えるアレルギーです。

代表的な疾患:関節リウマチシェーグレン症候群全身性エリテマトーデス・アレルギー性血管炎など

IV型アレルギー:アレルギーを起こす物質(抗原)を排除しようとした白血球自体がおかしくなってしまうアレルギーです。おかしくなった細胞を感作T細胞とよびます。感作T細胞が周辺組織を損傷します。

代表的な疾患:接触性皮膚炎・移植拒絶反応など

アレルギー性鼻炎になりやすい年齢はある?

鼻アレルギー診療ガイドラインによると、アレルギー性鼻炎の有病率は、0-4歳では4%ですが、5-9歳では22.5%と急激に増えます。

2007年の「アレルギー疾患に関する調査研究報告書」では、児童生徒のうちアレルギー性鼻炎の患者数は約118万人で、児童生徒の全人数に占める患者数の割合は9.2%でした。男女別にみると、男子10.8%、女子 7.6%であり、男子は女子の約1.4倍患者数が多い結果でした。

この調査の対象になったのは、全国の公立の小学校・中学校・高等学校・中等教育学校の生徒です。

最近はアレルギー性鼻炎の症状が出始める年齢が低くなる傾向にあります。以前は、季節性アレルギー性鼻炎である花粉症は子どもには少ないとされていましたが、最近は増加しています。

3. アレルギーを起こす原因となるもの

アレルギー性鼻炎には、季節性アレルギー性鼻炎と、通年性アレルギー性鼻炎があります。季節性アレルギー性鼻炎はある一定の季節のみ鼻炎症状が出るものです。季節性アレルギー性鼻炎のうち、花粉をアレルゲンとするものが、花粉症です。1人の人が複数の花粉に対してアレルギーを持っていることもあります。アレルギー性鼻炎の症状を起こす花粉の種類が多い人では、1年中症状があり、通年性アレルギー性鼻炎のように見える場合もあります。

通年性アレルギー性鼻炎は1年を通して、アレルギー性鼻炎の症状があるものです。

季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎のそれぞれについて、よくある原因をみていきましょう。

季節性の問題:スギ、ヒノキ、ブタクサなど

季節性アレルギー性鼻炎の原因の代表は花粉です。アレルギー性鼻炎の症状がでる季節は、花粉の種類によって異なります。花粉が多く飛散する時期に一致して花粉症の症状がでます。花粉が飛散する時期は、地域によっても異なります。

【季節ごとの主な花粉】

春:スギ・ヒノキ・シラカバなど

夏:イネ科(カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなど)

秋:ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなど

もう少し詳しく説明します。

最も多いスギ花粉症は、東京では2月から4月をピークとします。沖縄や北海道ではスギがないため、スギ花粉症はありません。スギに続いて飛散するのはヒノキ花粉になります。スギやヒノキは大量の花粉を遠くまで飛ばす性質があるため、広い地域にわたってスギやヒノキの花粉症を持つ人が影響を受けます。北海道や東北などでは春にはシラカバによる花粉症があります。

夏の花粉の代表はイネ科の植物です。イネ科で花粉症の原因になる植物は、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなどが代表です。イネ科の花粉の飛散時期は長く、春から秋(4−10月)に飛散します。イネ科植物は牧草としても栽培されるほか、河川敷などに多く自生します。イネ科の花粉は遠くへは飛散しないため、イネ科植物が生えている場所に近づかないことで、花粉症の症状を避けることができます。

秋の花粉の代表はブタクサです。ブタクサと同じキク科のヨモギや、クワ科のカナムグラ、イラクサ科のイラクサなども秋に飛散します。

花粉と季節について詳しく知りたい方は「花粉は秋にも飛ぶ?ブタクサ、カモガヤ他の種類ごとのシーズン」を見てみてください。

通年性の問題:ダニ、ほこり、動物の毛、ゴキブリなど

通年性アレルギー性鼻炎の主な原因は下記です。

  • ハウスダスト:室内塵
  • ダニ:ダニの虫体、死骸、抜け殻、フンなど
  • カビ(真菌
  • 動物:犬、猫、小鳥、ハムスターなどの皮膚、アカ、排泄物、毛など
  • 昆虫:ゴキブリ、ガなど
  • その他:羊毛、絹、そばがら、花粉など

東京都で行われたアンケート調査では、回答者自身または家族がアレルギー疾患があると診断された人のうち、原因と特定されたものの回答は、ハウスダストが最も多く37.9%、続いてダニが15.2%、ペット10.4%、カビ7.3%でした。

通年性アレルギー性鼻炎の最も多い原因はハウスダストですが、ハウスダストの中にはダニの成分が多く含まれています。ハウスダストのアレルギーは、ダニのアレルギーとほぼ同じと考えられます。すなわち、通年性アレルギー性鼻炎で最も多い原因はダニです。

ハウスダストとは家の中にあるホコリのことです。ハウスダストに含まれるものは、土・砂、綿ぼこり、繊維くず、人の髪の毛・フケ、食べかす、ペットの抜け毛、花粉、昆虫の死骸やフン、カビ(真菌)、細菌、ダニの死骸やフン、タバコの煙や排気ガスなど様々な物質が含まれています。ハウスダストの主要なアレルゲンはダニで、ハウスダスト1g中にはダニが数百匹~数千匹検出されます。

アレルゲンが特定されれば、家の中の環境を変えるなどしてアレルゲンを減らすことが通年性アレルギー性鼻炎の対策になります。

参考文献
・東京都福祉保健局:健康・快適居住環境に関するアンケート調査 報告書

4. アレルギー性鼻炎はどうやって診断する?

アレルギー性鼻炎であるかの診断は、典型的な症状があることと、アレルギー検査で中等度以上の反応があることが根拠になります。

アレルギー性鼻炎の典型的な症状は、鼻水、鼻づまり、くしゃみの3つです。診察では、鼻の中をみて、鼻水や鼻の粘膜の腫れや色などを観察します。

アレルギー検査とは、鼻水の中の好酸球数や、血液の好酸球数、IgE抗体の量などを調べる検査です。好酸球はアレルギーに関連した白血球で、好酸球の数が多いと、アレルギーが起きているという証拠になります。鼻水の中の好酸球数を調べるには、鼻水を綿棒でぬぐって、検査を行います。血液の好酸球数やIgE抗体の量を調べるのは血液検査です。

アレルギー性鼻炎の診断基準に従って診断する場合は、もう少し詳しい検査を追加して行いますが、上記の簡単な診断方法で行われていることが一般的です。詳しく知りたい方は、「アレルギー性鼻炎を疑った時に行う検査」を読んでみてください。

5. アレルギー性鼻炎の検査にはどんなものがある?

アレルギー性鼻炎の検査には、アレルギー性鼻炎かどうかを調べる検査と、アレルギー性鼻炎の原因を調べる検査があります。

  • アレルギー性鼻炎かどうかを調べる検査
    • 鼻水の検査:鼻汁好酸球数検査
    • 血液の検査:血中好酸球数、血中IgE値
  • アレルギー性鼻炎の原因を調べる検査
    • 血液の検査:血清特異的IgE抗体検査
    • 皮膚の検査:皮膚テスト(皮内テスト、スクラッチテスト
    • 鼻の検査:鼻粘膜誘発テスト

アレルギー性鼻炎かを調べる検査の代表は、鼻汁好酸球数検査です。鼻水を綿棒でぬぐって、その中に含まれる好酸球数を調べます。好酸球はアレルギーに関連した白血球で、鼻水の中の好酸球の数が多いと、鼻の中でアレルギーが起きているという証拠になります。

簡単な診断方法で使われるのは、血液の中の好酸球数やIgE抗体の量を調べる検査です。血液の好酸球やIgEは採血して調べることができます。

アレルギー性鼻炎の原因を調べる検査には、血液、皮膚、鼻の検査があります。最も多く行われているのは、血液検査の血清特異的IgE抗体検査です。どのアレルゲンに対してのIgE抗体を持っているかを調べることができます。それぞれの検査の詳しい方法は「アレルギー性鼻炎を疑った時に行う検査」に書いてあります。

アレルギー性鼻炎の原因(アレルゲン)を調べると、季節性か通年性かを判断することができます。アレルゲンがわかると、どのような予防や治療を行えば良いのかわかります。

季節性アレルギー性鼻炎の一種である花粉症に関しては、花粉が飛散する時期に一致する症状を確認するのみで、アレルゲンの検査を行わないで診断する場合もあります。

問診と診察でアレルギー性鼻炎の診断ができる場合もあり、検査は必須ではありません。しかし、検査を行うメリットとしては、診断がはっきりしない場合にアレルゲンを特定でき、対処方法を検討できるということがあります。

6. アレルギー性鼻炎はどうやって治療する?

アレルギー性鼻炎の治療は主に下記になります。

  • アレルゲン回避
  • 薬物治療:内服薬点鼻薬など
  • 手術治療
  • 免疫療法(減感作療法)

アレルギー性鼻炎に対して、自分でできる治療としては、アレルゲンを避けることです。通年性アレルギー性鼻炎では主な原因はダニであるため、ダニの除去を行います。アレルゲンを調べる検査で、アレルゲンが判明している場合は、そのアレルゲンを除去するようにします。季節性アレルギー性鼻炎の代表である花粉症では、花粉の時期にはマスクやメガネを使用して、花粉が体内に入らないようにします。

薬物治療では、主にアレルギー性鼻炎の症状を起こす物質を抑える薬を飲む方法と、症状のある鼻に直接薬を噴霧(ふんむ)する方法があります。噴霧というのはスプレーのことです。

最も広く行われている治療は、アレルギー性鼻炎の症状を起こす物質を抑える飲み薬で、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬と呼ばれる薬です。

症状のある鼻に直接噴霧する薬は点鼻薬と呼ばれます。点鼻薬の主な成分はステロイドです。ステロイドはすぐに鼻の通りを良くする効果はありませんが、継続して使用すると、鼻の炎症を抑える効果があり、鼻づまりや鼻水に効果があります。

アレルゲンの回避や薬物治療でも良くならない場合には、手術を行います。手術は外来で行うことのできるレーザー手術と、全身麻酔で行う手術があります。全身麻酔で行う手術には、鼻水を出す神経を切断する方法や、鼻の中の構造を整えて鼻づまりを改善する方法があります。

免疫療法(減感作療法)はアレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応する体質を変化させる根本的な治療方法です。免疫療法は、体にアレルゲンを少しずつ投与することで、免疫を変化させて、アレルギーを起こしにくくします。投与した物質によってアレルギーが出るなどの恐れがあり、専門の医療機関で安全を確保して行われます。

詳しくは「免疫療法:舌下免疫療法、皮下免疫療法」に書いてありますので、興味があれば読んでみてください。

現在免疫療法を行うことができるのは、アレルゲンがスギとダニの場合のみです。他のアレルゲンが原因となっている場合には、効果が確かめられた免疫療法はありません。

7. アレルギー性鼻炎に困っている人が気をつけると良いこと

アレルギー性鼻炎の症状で困っている場合には、最も重要なことは、原因となるアレルゲンを避けて生活を行うことです。鼻の中に入ったアレルゲンを除去する方法として鼻うがいを行う方法もあります。

通年性アレルギー性鼻炎の最も多い原因であるダニを避けるには、掃除や寝具の洗濯が有効です。家庭環境も、布張りのソファーやカーペットを置かない、ペットを寝室に入らせないなども有効な方法です。

花粉症の場合には、外出時に花粉を避けるためにマスクや、メガネを使用することが有効です。

生活において気をつける点については「アレルギー性鼻炎に悩まされている人が日常生活から気をつけたいこと」に詳しく書いてありますので、参考にしてみてください。