あれるぎーせいびえん
アレルギー性鼻炎
鼻の粘膜でアレルギー反応が生じて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが起きた状態
17人の医師がチェック 128回の改訂 最終更新: 2023.12.11

アレルギー性鼻炎を疑ったときに行う検査

鼻づまりが強い時や鼻水が出る時には、アレルギー性鼻炎かもしれないと思うことがありますね。アレルギー性鼻炎の診断の流れを、診察や検査などの順を追って説明します。検査をすすめられた時にも参考にしてみてください。

1. 問診

アレルギー性鼻炎は決まった季節だけに鼻の症状がおきる季節性アレルギー性鼻炎と、一年を通じておきる通年性アレルギー性鼻炎に分けられます。季節性アレルギー性鼻炎の代表が花粉症です。季節性の症状なのか、通年性の症状なのかは、治療をいつの時期に行えばいいかの判断に必要になります。

季節性なのか、通年性なのかは、鼻のアレルギー症状が一年中見られるのか、一定の季節のみに見られるのかによって判断することができます。

受診する時はどの季節に鼻の症状が強いのか、毎年その季節に症状があるのかなどについて、伝えるとよいでしょう。河川敷など、症状がでる場所が決まっている場合は、それについても伝えましょう。

一般的には、ダニやハウスダストのアレルギーでは一年中症状があります。花粉症の場合は、アレルゲン(アレルギー症状の原因)となる花粉が飛散する時期のみの症状です。しかし、何種類かの花粉が同時にアレルゲンとなっている場合は、通年性アレルギー性鼻炎と、季節性アレルギー性鼻炎の区別がつかない場合もあります。

日本で最も多い季節性アレルギー性鼻炎である、スギ花粉症発症する時期は、ちょうどウイルス上気道炎かぜ)を起こしやすい時期です。鼻水や鼻づまりがある時、かぜなのか花粉症なのか悩むと思います。

区別するポイントとしては、スギ花粉症では、目のかゆみや目やになどの目の症状を伴うことです。スギ花粉症では鼻水は水のようなサラサラした鼻水のことが多いです。かぜでは症状が悪化すると、粘っこい鼻水になることがあります。

2. 身体診察

身体診察では鼻の粘膜の診察を行います。鼻に光を当てて、鼻の粘膜を観察します。鼻の粘膜を観察する時には、鼻鏡(びきょう)という金属の道具を鼻の穴の入り口に引っ掛けて、鼻の穴を上下に広げて、よく光を当てて観察します。

通年性アレルギー性鼻炎では、鼻粘膜が強く腫れて、青白い色をしています。また水様性鼻汁を観察できることがあります。

季節性アレルギー性鼻炎では、鼻粘膜が腫れて、赤い色をしています。

鼻のアレルギーが強い場合は、鼻粘膜が炎症を起こして、鼻ポリープ鼻茸:はなたけ)ができることがあります。鼻づまりが強い場合は、鼻ポリープの有無を観察するために、鼻内をファイバースコープで観察することもあります。ファイバースコープは胃カメラと似た構造の細いカメラです。直径は2-3mm大で柔らかいチューブで、先端に光がついていて、観察したい場所に近づいてみることができます。

3. アレルギー性鼻炎か調べる検査:鼻汁好酸球検査

アレルギー性鼻炎かどうかを調べる検査は、鼻汁の中にアレルギーに関与する好酸球がいるかどうかをみます。鼻水を綿棒で拭って、スライドグラスに塗って、顕微鏡で観察します。

症状がある時期に、鼻水の中に好酸球がある場合は、アレルギーによる鼻の症状と診断ができます。通年性アレルギー性鼻炎ではいつ検査をしても良いのですが、季節性アレルギー性鼻炎の場合には、症状がある時に検査をすることが重要です。

注意点としては、鼻の症状がない時には好酸球は出ないこと(陰性)です。アレルギー性鼻炎の症状がある時に検査を行うことで、診断の確定に近付けます。1回の検査で好酸球が出ない場合でも、もう一度検査を行ってみると、好酸球が出る場合があります。1回目の検査で陰性の場合では、もう一度検査を行います。

4. アレルギー性鼻炎の原因を調べる検査

アレルギー性鼻炎であることがわかった場合は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を調べる検査を行います。

アレルゲンの情報は、生活や治療をするにあたって重要になります。通年性アレルギー性鼻炎の場合は、どんなアレルゲンを避けて生活をすれば良いかの判断ができます。季節性アレルギー性鼻炎の場合は、どの時期に注意すれば良いか判断できます。

【アレルゲンを調べる方法】

  • 血液の検査:血清特異的IgE抗体検査
  • 皮膚の検査:皮膚テスト(皮内テスト、スクラッチテスト
  • 鼻の検査:鼻粘膜誘発テスト

いずれの検査もアレルギー性鼻炎の症状がある場合は、保険で検査を行うことができます。

注意点として、血液の検査や、皮膚の検査では、検査が陽性でも必ずしもアレルギーを発症しているとは限りません。検査が陽性になる時は、そのアレルゲンに対して「感作(かんさ)」しており、体内でアレルギーを起こす準備ができている状態です。

感作されている状態とは、一度、アレルゲンが体内に入って、異物と認識されて、再度体内に入ってきた場合には、反応する準備ができている状態のことです。感作されたアレルゲンに対して抗体が準備されていて、いつでも戦える状態です。

一方、鼻の検査では、実際にアレルギーを発症しているかどうかを判断できます。

感作されている状態について、少し説明を加えます。例えば、血清特異的IgE抗体検査や皮膚テストでスギ花粉へ反応したとしても、鼻粘膜誘発テストで反応が無い場合を考えます。この場合はスギ花粉へ感作していますが、スギ花粉症は発症していません。この時点ではスギ花粉によって、アレルギー性鼻炎の症状が出ていないということです。その後、何度かスギ花粉にさらされるうちに、スギ花粉によってアレルギー性鼻炎の症状がでるようになり、スギ花粉症を発症する可能性がある状態です。

今後発症する可能性は、血清特異的IgE抗体検査や皮膚テストでスギ花粉への反応がない場合よりも、反応がある場合のほうが確率は高くなります。

反対に検査の感度の問題から、アレルゲンへの反応がなくても、今後、そのアレルゲンに対してアレルギーを発症しないとは言い切れないことも注意点です。

血液の検査や皮膚のテストでは、発症しているアレルギーを調べられないので、意味がないと思う方もいるかもしれません。しかし、現在のアレルギーの状態を正確に表す鼻粘膜誘発テストは、ハウスダストとブタクサのみしかできません。最も患者数が多いスギ花粉でさえ調べることができません。色々な種類のアレルゲンを評価したいため、鼻粘膜誘発テストは実際の診療で使うには少しもの足りません。そのため、血液や皮膚の検査が広く行われています。

5. 血液の検査:血清特異的IgE検査(RAST)

血液検査でアレルギー症状の原因であるアレルゲンを調べる検査です。どのアレルゲンに対して抗体を持っているかを検査します。アレルギー性鼻炎がある場合、体内には、それぞれのアレルゲンに対応した抗体を、アレルゲンごとに持っています。アレルギー性鼻炎に関与する抗体はIgE抗体で、それぞれに対応した(特異的な)抗体のため、特異的IgE抗体と呼びます。血液中にある特異的なIgE抗体を調べる検査のため、血清特異的IgE検査と呼びます。アレルギー症状がある場合は保険で検査を行うことができます。3割負担で5,000円ほどの検査です。検査するアレルゲンを自由に選ぶ方法では、一度に検査を行うことができるのは13項目までです。その他に、決まった33項目を調べることができるMASTⅢや、39項目を調べることができるViewアレルギーなどの検査方法もあります。いずれも検査結果がでるまでには数日間かかります。

最近では30分程度で検査結果がわかるアレルギー迅速検査もあります。指先から少量の血液を採取するのみで、検査を行うことができます。

医療機関によってできる検査が異なりますので、希望する場合は問い合わせてみましょう。

6. 皮膚の検査:皮内テスト、スクラッチテスト

皮膚にアレルゲンを投与して、反応をみる検査です。皮膚テストは前腕(肘より先)で行います。皮内注射でアレルゲンを注射する皮内テストと、アレルゲンをつけた部分に針先で傷をつけるスクラッチテスト(プリックテスト)があります。

皮膚テストの良いところは、費用が安く、短時間で結果を直接見られることです。悪い所は、検査に痛みがあることと、検査前に少なくとも1週間はアレルギーの薬の使用をやめる必要があることです。薬を中止している1週間は、鼻水や鼻づまりなどのアレルギー症状をがまんする必要があります。その他、検査による反応で皮膚にかゆみや腫れが起こり、後まで残ることがあります。皮膚からの感染予防と、痛みを軽減するには、皮内テストよりもスクラッチテストの方が良いとされます。

7. 鼻の検査:鼻粘膜誘発テスト

鼻粘膜誘発テストは、アレルゲンと考えられる物質に、鼻粘膜が本当に反応しているのかを調べる検査です。アレルゲンに対して、アレルギー性鼻炎を本当に発症しているかを判断できる唯一の検査です。

日本で行われている鼻粘膜誘発テストはディスク法です。ディスク法では、鼻の中を観察しながら、両側の鼻の粘膜に直径3mmのろ紙でできたディスクを置き、5分間の鼻症状の有無を観察します。

鼻粘膜誘発テストの良いところは、実際のアレルゲンの特定ができることと、多数のアレルゲンが疑われる場合、どのアレルゲンが最も強く鼻の症状を引き起こしているかを判断できることです。この検査の最も悪いところは、市販されているディスクが、ハウスダストとブタクサのみであることです。その他に、検査前には3日から1週間程度、アレルギーの薬を中止することや、検査の手技(やりかた)が難しい点があります。薬を中止している1週間は、鼻水や鼻づまりなどのアレルギー症状をがまんする必要があります。

8. アレルギー性鼻炎の診断のしかた

アレルギー性鼻炎は、鼻の過敏症状と呼ばれる、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏(水のようなサラサラした鼻水)、鼻づまりがあります。診断は、問診での症状の確認と、鼻の身体診察でほとんど決められます。

後述するアレルギー性鼻炎の診断基準では、検査の2つが陽性であることなどが条件に上がりますが、ほとんどの患者さんは問診と診察による症状の確認と、血液検査や皮膚テストによるアレルゲンの確認で診断されています。

いわゆる花粉症とよばれる、季節性アレルギー性鼻炎に関しては、花粉が飛散する時期に一致しての症状を確認するのみで、アレルゲンの検査を行わない場合もあります。

このように問診と診察でアレルギー性鼻炎の診断ができるため、検査は必須ではありません。しかし、検査を行うメリットとしては、アレルゲンを特定でき、対処方法を検討できるということがあります。

アレルギー性鼻炎のガイドラインについて

診療ガイドラインは、治療にあたり妥当な選択肢を示すことや、治療成績と安全性の向上などを目的に作成されています。アレルギー性鼻炎については、『鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)』に診断や治療についての記載があります。ガイドラインはあくまで、治療の参考であり、実際の治療は個々の症状に応じて行われます。

『鼻アレルギー診療ガイドライン(2020年版)』での、アレルギー性鼻炎の診断基準を示します。

<診断基準>

  • 鼻の過敏症状がある:くしゃみ、水様性鼻漏(水のようなサラサラした鼻水)、鼻づまり
  • 以下の条件のうち2つ以上に当てはまる
    1. 皮内反応または、スクラッチテストまたは、血清中抗原特異的IgEが陽性
    2. 鼻汁中好酸球が陽性
    3. 抗原誘発反応(鼻粘膜誘発テスト)が陽性(ただし、誘発反応のアレルゲンは現在はブタクサとハウスダストのみしかない)
  • ただし、上記1つのみが陽性の場合は、鼻の過敏症状の典型症状があり、アレルギー検査(鼻汁好酸球数、血中好酸球数、血中総IgE)が中等度以上なら診断しても良い

厳密に診断するためには、上記の診断基準に従って検査を行います。しかし、上記全ての検査を行うことはあまりなく、実際には問診で症状の確認を行い、鼻粘膜の観察をすることで、アレルギー性鼻炎かどうかの診断を行うことがほとんどです。診断が決まったら、アレルギー性鼻炎の原因物質を調べる検査を追加で行うと、原因物質の回避などに役立ちます。