こうとうがん
喉頭がん
のどの奥の、のどぼとけのあたりの位置(喉頭)にできるがん
11人の医師がチェック 94回の改訂 最終更新: 2022.03.07

喉頭がんになったら日常生活はどうする?再発・転移・末期にどう備える?

喉頭がんと診断された時は大きなショックですね。治療や日常生活について色々な疑問や不安も湧いてくるかもしれません。不安が少しでも解消されて、がんに向き合えるよう治療前から治療後についての、注意点などをみていきましょう。

1. 喉頭がんの人が気をつけるべきことはあるのか?

治療前に気をつけること

  • 病気や病状についてよく知ること
  • 禁煙する

がんと初めて言われたときには、大変なショックだと思います。あなただけではなく、がんと言われた人の多くが通る感情です。気持ちが落ち込んでしまうのも当然です。

がんと向き合っていくためには、まず、自分の病気や病状について、よく知りましょう。何かわからないことがあれば、担当医に積極的に話してみましょう。

担当医から病状について説明を受けるときは、一人だと聞きもらしたり、理解できないこともあるかもしれません。信頼する人に同席してもらいましょう。わからないことや不安なことは積極的に質問しましょう。

喉頭がんの原因はほとんどが喫煙です。喉頭がんと診断されたら禁煙をしましょう。手術を行う場合には、喫煙をしていると手術後に痰が増えたり、それによって肺炎になることがあります。

治療中に気をつけること

  • 不安なことや症状を医療者に伝える
  • 体調の変化に気をつける;発熱、食事量の低下など

喉頭がんの治療が始まってからは、体調の変化に気をつけましょう。

手術治療は入院治療となります。痛みなどの症状は、担当医や看護師に遠慮せずに伝えてください。

合併症やリハビリがうまく進まないなどで、治療がスムーズに進まないこともあるかもしれません。不安を抱えたままでいると、悲観的なことばかりが浮かびます。担当医や看護師、薬剤師などの医療者に、わからないことや不安な気持ちなど、何でも話すようにしましょう。

放射線治療では、外来通院での治療となるかもしれません。放射線治療の合併症などで食事がとれないなどがあれば、我慢せずに担当医に伝えてください。鎮痛薬や栄養剤を処方することもできます。その他にも、皮膚の痛みや、下痢、便秘など体調の変化があれば伝えましょう。

抗がん剤を併用している場合は、外出後は手洗い、うがいをしましょう。抗がん剤の影響で、白血球数が低下して感染にかかりやすいためです。粘膜炎で痛みが強くうがいができない場合は、担当医に粘膜炎のケアについて相談してみましょう。

治療中に37.5℃以上の発熱がある場合は病院に連絡をしましょう。抗がん剤の影響で、白血球数が低下して細菌感染が重症化する可能性があります。粘膜炎の影響で痰が増加して肺炎になる場合もありますので、病院に連絡をして、すぐに受診すべきか相談してみてください。

治療後に気をつけること

  • 決められた外来や検査をきちんと受診する
  • 禁煙を続ける
  • のどの違和感や嗄声(させい;声がれ)など、何か体調に変化があれば受診する

治療終了後は再発していないか、定期的に外来で検査を行って経過観察を行います。再発の多くは最初の2年間です。2年間は頻繁に通院する必要があります。2年を過ぎれば再発の確率は低くなっていきます。外来通院を自己中断した場合、再発の発見が遅れて、追加治療が遅れる場合があります。決められた外来や検査をきちんと受診しましょう。

外来での検査には、喉頭がんとは一見関係のない上部消化管内視鏡検査胃カメラ)もあるかもしれません。喉頭がんなど頭頸部のがんでは、食道がんなどの合併が多いため、定期的に上部消化管内視鏡検査を行うことが勧められています。検査を受ける理由がわからないなどあれば、主治医に遠慮なく聞いてみましょう。

治療開始時に禁煙をした方は、このまま禁煙を継続できると良いです。治療終了後に喫煙を再開すると、新たな喉頭がんができたり、肺がんができることもあります。辛い思いをして治療を行ったのですから、このまま是非とも禁煙を続けてください。

のどの違和感や嗄声の症状が悪化した場合は、外来に受診しましょう。次回の外来まで待って良いか、わからない場合は、病院に連絡してみましょう。

喉頭がんの放射線治療後にのどのむくみ(喉頭浮腫;こうとうふしゅ)がおきて、呼吸の経路が狭くなることや、放射線による粘膜の潰瘍などもおこります。

繰り返しむせこんだり、発熱したり、痰が増えた場合は、嚥下性肺炎誤嚥性肺炎)を起こしている可能性がありますので、受診しましょう。

永久気管孔の場合は、気管孔の保護などを行い、痰が増えたり、黄色い痰になった場合は、病院に受診しましょう。気管孔の管理については、「声を失ってしまったら何をする?」を参照してください。

外来での長期的な観察が終了した後も、のどの違和感などの症状が出てきたら病院に受診しましょう。この場合はできれば、治療を行った病院が望ましいです。放射線治療後に、二次性のがんができることがありますので、一度診てもらうとよいでしょう。

2. 喉頭がんの名医はいるのか?

喉頭がんに限らず、治療を受ける時は名医に治療を受けたいと思います。しかし、名医といっても漠然としていて、何を基準にすればいいのかわかりません。

一体どんな医師に治療を受けたいでしょうか。

名医に基準はあるのか

名医の基準は人それぞれ異なるでしょう。あなたにとっての名医の基準はどれでしょうか。

  • たくさんの手術を行っている
  • 難易度の高い手術ができる
  • たくさんの知識をもっている
  • 最先端の治療を行っている
  • 診察能力に優れて的確な診断ができる
  • 話をよく聴いてくれて親身になってくれる

喉頭がんのように手術治療があるものでは、たくさんの手術や、難易度の高い手術を行っている医師を名医と考えるかもしれません。しかし、喉頭がんには、手術治療の他に、化学療法併用の放射線治療もありますし、病状によっては化学療法のみを行う場合もあります。どんなに最先端の治療を行っていても、自分の体に合わなければ、良い治療ではありません。

このように色々な治療の選択肢のある病気において、名医とはさまざまな治療について精通し、適切な治療を提供できる医師ではないでしょうか。

手術に関しても、どんな医師を「名医」と考えるかは人それぞれです。手術経験数、手術時間の短さ、手術の正確さや丁寧さ、再発率の低さ、入院期間の短さ、診察の丁寧さなど様々な指標があります。治療のためには医師と患者の人間関係も大切です。そこで、出会った医師を「名医」と思えるかどうかは相性にもよるということになります。

手術件数など目に見える客観的な指標のみならず、自分と相性が合うかどうかを見極めて、治療施設を選ぶといいでしょう。

喉頭がんの検査を受ける医療機関はどんな基準で選べばよいのか

声がれやのどの違和感などで、喉頭がんかもしれないと思った場合には、まず近くの耳鼻咽喉科の医院に受診しましょう。はじめに受診するのは、大きい病院でなくとも大丈夫です。喉頭がんを診断するための喉頭ファイバーは、医院でも行うことができることが多いです。

症状を伝える時は、いつ頃から症状が気になっているかを伝えてください。のどの違和感や、声がれといった症状でも短期間である場合は、急性炎症などが原因と考えるからです。長期間に渡って症状がある場合は喉頭がんなどを考えます。急性炎症の場合と、がんを疑って行う検査は異なることがありますので、症状が気になっている期間を伝えることは重要です。受診理由に、喉頭がんが心配であることを伝えることも重要です。

近くの耳鼻咽喉科医院で、喉頭がんが疑われた場合は、多くの場合は、がんの治療ができるような病院に紹介になります。がんの治療ができるような病院では、がんの診断に必要な検査は、ほとんどができます。

がんの検査のうち、PET-CT検査は特殊な施設が必要になるため、一部の病院にしかありません。そのため、一般的にはPET-CT検査は他の病院に撮りに行きます。

喉頭がんを疑われて、検査をするために紹介してもらう病院を選ぶ際は、その先の治療を考えて選ぶと良いでしょう。治療の際は、多くの治療の選択肢があるかと、通いやすい場所にあるかが重要ではないかと考えます。医療機関を選ぶ基準については次に詳しく説明してあります。

喉頭がんの治療を受ける医療機関はどんな基準で選べばよいのか

喉頭がんの治療を受けることを想像した時、どのようなことがあると嬉しいでしょうか。

  • 色々な治療ができる
  • 通院がしやすい
  • 信頼できる医師や医療職がいる

上のようなことが浮かんでくるかもしれません。一緒に良い病院の条件をみていきましょう。

色々な治療ができる

がんの状況は時間とともに変化します。手術から緩和治療まで色々な治療が必要となる場面がでてきます。そのいずれにも対応できる病院は安心できます。全ての治療を行うことができる病院は限られますが、その病院でできない治療は他の病院に頼んでくれるような病院にかからないと、治療方法を考える前から選択肢が減ってしまいます。

喉頭がんの場合は、がんの治療ではがんの根治と同時に、喉頭機能の温存も重要な観点です。喉頭温存をするためには、導入化学療法を行ったり、根治を目的とした化学放射線治療を用いるなど、放射線科などとの連携も重要です。

最近では各病院のホームページにがんの治療実績などが掲載されていることも多くなりました。それらを参考にしてもよいでしょう。

通院がしやすい

がんと診断された場合には、治療開始までに様々な検査を行ったり、外来に受診する必要があります。治療を開始した後でも、放射線治療で6-7週間にわたって、毎日通院する必要があります。治療が終了しても、再発が起こりやすい1-2年の間は、1か月に1回程度の通院をする必要があります。2年以上経過しても、通院を継続する必要があるため、通院しやすい場所であることは重要です。

信頼できる医師や医療職がいる

がんの治療では、医師や看護師などの医療者と長期間の付き合いになります。わからないことや、不安なことなどはそのままにせず、積極的に聞いてみましょう。最初から打ち解けることは難しいかもしれませんが、なんでも話しあうことで、徐々に信頼関係を築くことができるのではないでしょうか。

3. セカンドオピニオンを聞きたい場合にはどうしたら良い?

セカンドオピニオンは主治医以外に治療方針についての意見を聞く事です。一般的には主治医に紹介状診療情報提供書)を書いてもらい、他の医療機関に行って、意見を聞きます。施設によっては「セカンドオピニオン外来」などの専用窓口を設けています。判断が難しい場面などで、多くの意見を聞くことは、より広い視野をもって治療を選択するために有用な手段です。

セカンドオピニオンは主治医との関係が悪くなるような気がして、なかなか切り出しにくいという話を聞きます。医師の立場から言いますと、セカンドオピニオンを求められたからと言って、関係が悪くなることは全くありません。セカンドオピニオンは当然の権利ですし、最適な治療を探して悩んでいる主治医にとってもありがたい話であったりもします。何よりも、治療を受ける側が納得して、最適な治療を選択することのほうが大事です。

他の医師の意見を聞いてみたいと思った場合は、遠慮なく主治医にセカンドオピニオンを求めることをお薦めします。紹介状を持参した方が、的確な意見を聞くことができますので、内緒でほかの医師に相談するのではなく、主治医にセカンドオピニオンの希望を伝えてください。

4. 声を失ってしまったら何をする?

身体障害者手帳の申請

手術で喉頭を摘出した場合は、身体障害者3級に認定されます。音声又は言語機能の障害の3級です。自治体によって異なりますが、電子喉頭、FAX、ガス警報器などの購入の補助、交通機関の運賃割引、税金の補助などが受けられます。

申請後、手帳の交付まで2ヶ月程度かかるため、手術後は速やかに書類を取り寄せて、病院に提出してください。書類の取り寄せは、住居地の自治体に問い合わせてください。

声を失った後のコミュニケーション方法の獲得

喉頭がんの手術で喉頭を摘出した場合は、声を出せなくなります。声を失う精神的な負担も大きく、どのようにコミュニケーションをとるか心配になるものです。声を失った後でも、コミュニケーションをとる方法があります。代替発声方法を獲得するまでは、筆談を併用する場合もありますが、発声方法に慣れたら通常のスピードで会話が可能です。

筆談でのコミュニケーションを行う場合は、繰り返し書くことができる筆談用ボードなどもあります。

代替発声方法は下記のものがあります。

  1. 食道発声
  2. 電子喉頭
  3. シャント発声

それぞれみていきましょう。

食道発声

食道や胃に空気を吸い込むか飲み込むかして、その空気を吐き出すときに、のどまたは食道粘膜を震わせて音を出す方法です。自然な声になりますが、習得に時間がかかります。自己習得が難しく、全国の発声教室で練習が可能です。

<利点>

  • 比較的自然な声
  • 追加の手術や、器具の準備が不要
  • 器具がいらないので、いつでも発声が可能

<欠点>

  • 習得に時間がかかる
  • 音量が小さい
  • 声が途切れがちになる(息継ぎが多くなる)
  • 高齢者では発声がしにくくなることがある
  • 雑音が入る

電子喉頭

小型のマイクのような機械を首の皮膚に密着させて、電気的に振動させながら口を動かすことで、声をだす方法です。常に道具を持ち歩かなければならないのですが、短期的に習得が可能で、社会復帰に有利です。

身体障害者に認定されると電子喉頭の購入に補助金がでます。

<利点>

  • 習得が比較的容易
  • 大きな音量を出すことができる
  • 続けて長く話すことができる
  • 高齢者でも発声方法の獲得が可能

<欠点>

  • 器具を常に持ち歩く必要がある
  • 平坦で機械音の音声になる
  • 片手が塞がる

シャント発声

食道と気管をつなぐ穴(シャント)をあけて、肺からの空気を食道に導いて発声します。シャントから漏れた食物が気管に入る(誤嚥)危険性があります。誤嚥防止機能を食道の筋肉を用いて手術的に作成する方法と、ボイスプロテーゼを用いる方法があります。

ボイスプロテーゼを用いた発声方法が簡便で習得しやすいため、以下に説明します。

ボイスプロテーゼと呼ばれる小さなシリコーン製の器具をシャントに装着して声を出す方法です。発声時には、指で気管孔を閉じながら息を吐き出すことで、発声が可能です。肺からでた空気が粘膜を振動させて発声します。

指でおさえずに発声できる器具もあり、手を使わずに会話が可能となります。

シャントの穴は喉頭全摘時もしくは、後日改めて手術で作成します。シャントを毎日掃除しなくてはならないことと、発声に必要な器具の入手が必要です。自治体によっては器具の購入に補助金がでる場合もありますので、問い合わせてみましょう。

<利点>

  • 習得が比較的容易
  • ある程度の音量を出すことができる
  • 続けて長く話すことができる

<欠点>

  • 初回は全身麻酔での手術が必要
  • 器具の入手と、装用が必要で費用がかかる
  • シャントの掃除、定期的なシャントの交換が必要
  • 通常片手が塞がる
  • 食道から気管への唾液の漏れが起こることがある

5. 喉頭がんで永久気管孔になった時の注意点は?

喉頭を摘出した場合には、左右の鎖骨の間に永久気管孔を作ります。永久気管孔は鼻や口にかわる新しい呼吸の経路です。空気は永久気管孔から出入りし、口や鼻には空気が通らなくなります。鼻をかんだり、においをかぐことができません。永久気管孔から水が入ると、肺に水が入って溺れてしまうため、首まで湯船につかることができません。

永久気管孔になった場合にできないことは下記のことになります。

  • 声を出すこと
  • においをかぐこと
  • 鼻をすすること
  • 鼻をかむこと
  • 麺類をすすること
  • 肩まで入浴すること
  • 排便時に息むこと

永久気管孔がある日常生活では下記のことに注意が要るようになります。詳細については、担当医や看護師にもきいてみてください。喉頭全摘術後の患者団体もありますので、情報交換などをおこなうこともできます。

気管孔の保護方法

喉頭がある人が呼吸をするとき、鼻や口をとおった空気は、鼻毛で小さなごみが取り除かれ、加湿加温されて気管に到達します。気管孔からの呼吸では、冷たい乾燥した、ホコリ混じりの空気が直接気管に入ります。なるべく状態のいい空気を吸い込むために、気管孔は小さなガーゼや専用のエプロンで保護します。専用のエプロンが販売されていますが、スカーフやハンカチを用いても構いません。自分に合ったものを使用しましょう。

気管孔の保護が不十分な場合は、痰の量も増加しがちなので、十分に保護しましょう。

ほかにも気管孔が狭くなることがあります。定期的に通院する中で、担当医から指摘されることもあるかもしれません。状況によっては気管孔を拡げる手術をしたり、気管孔にチューブを留置することがあります。

痰の管理

痰が気管孔の周りに付着しますので、やさしく拭き取りましょう。

手術後1年程度は、気管孔呼吸になれていないため、頻繁に咳き込みます。痰の量や、痰の排出回数は術後は多いですが、徐々におさまってきます。術後の放射線治療をした場合は、増える傾向にあります。気管孔からホコリが入ることで、炎症を起こしやすく、痰が増えることがあります。

手術前は気管から上がってきた痰は自然に飲み込んで気になっていなかったところが、手術後は気管孔から痰も排出されるため、痰が多くなったように感じることもあります。

冬で乾燥すると痰が硬くなり、気管孔につまる場合がありますので、加湿器や濡れタオルを部屋に置くことで湿度を調整しましょう。乾燥がひどくなって、咳などで硬い痰を出すと、出血し血痰がでることがあります。そのような場合は担当医に相談しましょう。ネブライザーを用いて霧状の水分を吸入すると気管孔の乾燥や傷にも有効です。

入浴時の注意点

気管孔は直接気管や肺と繋がっているため、気管孔から水が入らないようにしましょう。入浴の時は首にタオルを巻いたり、専用のエプロンを用いて入り、気管孔に向かってシャワーをかけないようにします。湯船は脇下までつかって、冬の寒い時期は熱いお湯で絞ったタオルを肩にかけると良いでしょう。

湯船につかる時に注意すれば、旅行で温泉などに行くのも構いません。

もし気管孔に水が入った場合には、あわてずに咳をして水をだします。

通常は、手術後の入院中に入浴の練習をします。わからないことなどがあったら、担当医や看護師にきいてみましょう。

排便で困ること

気管孔があると、息を止めて息むことができなくなります。便秘になりやすくなりますので、食物繊維や水をとることを心がけましょう。便秘に対して薬を使うこともあります。

食事の注意点

食事はよく噛んで食べましょう。喉頭全摘術後の場合は、縫合した部分が細くなり、大きな食べ物が詰まることがあります。

口から空気を吸うことが難しくなるため、麺類をすすれなくなったり、ストローを吸うことが難しくなります。熱いものをフーフーと口で吹いて冷ますことも難しいため、やけどをしないようにしましょう。鼻に空気が通らなくなるために、においがしなくなります。ただしからしやわさびはむしろ数倍きくようになったという人もいますので、注意して食べましょう。ガス漏れなどに気づきにくいので、ガス漏れ探知機は必ず設置しましょう。

ただし食道発声を習得できると、鼻に空気が吸い込めますので、においが戻ることがあります。

食事をした後にすぐ横になると、逆流しやすいこともあります。術後しばらくして、食道の機能が戻ると症状は減少することが多いとされます。

咽喉食摘術後には小腸を移植しますが、小腸の蠕動の問題で、食道が一瞬詰まって飲食物が飲み込めなくなることがあります。1回の症状は数分で収まることが多いです。術後の経過で回数が減ることもありますが、持続する場合もあります。

旅行や外出時

外出先で体調が悪くなった時のために、常にメモを持っていると安心です。メモには「私は手術をして声がでません。首の前の穴で呼吸をしています」と記載しておくといいでしょう。その他に、名前・連絡先・かかりつけ医療機関名と連絡先・服用中の薬の名前・血液型などを記載したメモをもっていると役に立つこともあります。

6. 喉頭がんは再発するのか?

喉頭がんは再発することもあります。再発した場合も治療法がないわけではありません。治療することでがんを根治あるいは制御できる見込みがあれば治療します。治療に入る前にがんの状況と進展度(ステージ)を再度評価し、その評価をもとに治療できるのかどうかを判断します。

再発は喉頭に起こる場合(局所再発:きょくしょさいはつ)もありますし、転移して、頸部のリンパ節や肺などの別の場所に起こることもあります。

喉頭がんが再発したらどうするの?

喉頭がんの再発は、喉頭に起こることもありますし、転移として、頸部のリンパ節や、肺などの遠い臓器に起こることもあります。

再発したがんの治療は、最初にどんな治療を行ったかで異なります。

放射線治療や、化学放射線治療後の再発の場合は、同じ場所に再度放射線を照射することはできないため、手術を行うことが一般的です。

手術後の再発の場合は、状況に応じて、再度手術を行うか、放射線治療を行います。

肺や骨などの遠い臓器への転移(遠隔転移:えんかくてんい)の場合は、手術、放射線、化学療法など状況に応じて選択します。

喉頭がんの再発の時期はいつ頃に多い?

喉頭がんの再発の多くは治療後2年以内にみられます。頭頸部の進行がんでの局所再発や頸部リンパ節再発の60-70%は治療後1年以内に、約90-100%は2年以内に起こるという報告があります。(J Clin Oncol. 1995 Apr;13(4):876-83)そのため、治療後2年間は月に1回程度などの診察がすすめられます。

がんが再発した場合でも、早期に発見できれば、がんを制御することも可能です。早期に発見をするために、定期的な外来での経過観察が必要です。

アメリカのNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン2016年版に外来での経過観察の目安があります。最初の1年は1-3ヶ月毎の喉頭ファイバーなどを用いた定期観察、2年目は2-6ヶ月毎、3-5年は4-8ヶ月毎、5年経過以降は1年毎と経過観察の間隔は長くなります。画像検査は再発が疑わしい場合などに追加して行うとされています。

実際には画像検査は3-6ヶ月毎に行われることが、一般的です。

遠い臓器での再発(遠隔転移)は肺転移が多く、経過観察の目的で頸部CTを撮るときには、一緒に肺のCTも撮影して、肺転移の有無を確認することもあります。

喉頭がんの再発に早く気づくにはどうするの?

喉頭がんが再発した場合でも、早期に発見し、治療を行うことができれば、がんを根治あるいは制御することも可能です。再発に早く気づくにはどうしたら良いのでしょうか。

まずは定期的な外来診察に必ず受診するようにしましょう。のどの違和感や疼痛(とうつう;痛み)の悪化がある場合は、担当医に伝えましょう。

治療終了後から一定期間経過して、診察期間が長くなってからも、声がれ(嗄声)、のどの違和感、疼痛などの何らかの症状を自覚したときは、予約まで待たずに受診しましょう。

7. 喉頭がんは転移するのか?

喉頭がんが転移することはあります。転移とはがん細胞がリンパ液や血液に乗って、他の臓器に移動して、増えたものを言います。

転移には2種類あって、所属リンパ節転移と遠隔転移があります。所属リンパ節とは、全身にたくさんあるリンパ節の中でも、がんに近い場所のリンパ節のことです。所属リンパ節は喉頭がんの場合は頸部リンパ節になります。遠隔転移は、他の臓器に転移することです。喉頭がんで転移を起しやすい臓器は、肺が多く、その他に骨、肝臓などです。

喉頭がんはできた場所でも転移の頻度が異なります。

図:喉頭がんのできた場所による分類。喉頭がんは場所によって声門上がん・声門がん・声門下がんに分けられる。

喉頭がんのうち、声門がんは頸部リンパ節転移が少ないです。一方、声門上がんや声門下がんでは、リンパ節転移を起こしやすいとされます。声門上がんや声門下がんでは、がんの大きさ(原発巣の大きさ)が小さいうちから、頸部リンパ節転移を起します。転移がおきにくい声門がんでも原発巣がT3以上などの大きさになると頸部リンパ節転移を起こします。

遠隔転移がなく、頸部リンパ節までの転移であれば、手術や放射線治療によってがんの根治や制御が可能なこともあります。

診断時に頸部リンパ節転移がある場合は、手術や放射線治療で転移部位の治療も行います。手術の場合は、頸部郭清術を行います。その時点で目に見えるがんを全部切除できたように見えても、その時点でがん細胞が、別の臓器に移動している可能性があり(潜在的リンパ節転移)、手術後に時間がたってから転移としてみつかることもあります。

放射線治療では、転移リンパ節を含めた範囲を照射することで、治療を行います。放射線治療の効果は、原発巣より転移リンパ節では効果が出にくいことが知られています。放射線治療後8-10週間経っても頸部リンパ節に、転移と疑わしい様子が残っている場合は、追加で頸部郭清術を行います。

通常は頸部リンパ節転移を起した後に、遠隔転移を起します。頸部リンパ節転移を見逃さず治療することが、喉頭がんの治療後の再発率や生存期間に大きく影響します。頸部リンパ節転移の制御を行うことが、遠隔転移の制御にもなります。

8. 喉頭がんの末期症状とは?

喉頭がんの末期というとどのような状態を想像するでしょうか。ステージIVは末期と考える人もいるかもしれません。しかし、ステージIVには様々な状態が含まれます。ステージIVでもがんの根治治療を行うことができます。

喉頭がんの末期状態とは、がんに対する積極的な治療を行うことができないような状態をさします。例えば、再発して放射線治療や化学療法を行っても効果がない場合などです。治療の効果よりも、がんの大きくなるスピードが高い場合などは、それ以上の積極的な治療をしても、体力を低下させるのみとなるため、治療を中止することがあります。

がんはある程度進行しないと症状がでないことも多く、治療中断時点では、症状がなく元気なこともあります。あるところを超えると、突然症状がでて、一気に症状が進行したように感じるかもしれません。突然症状がでた後には、日常生活を送るのがやっとの体力で、ベッドの上で生活するような状況になります。その前の体力がある時期に、自分らしく、やりたいことをして過ごすのも、重要なことです。

では本当に末期の状態になり、症状が強く出るのはどんな時でしょうか。

喉頭がんが進行した場合の症状は、喉頭でがんが大きくなる場合、頸部でがんが大きくなる場合、肺でがんが大きくなる場合によって異なります。

喉頭でがんが大きくなった場合の症状

喉頭でがんが大きくなった場合は、呼吸がしにくくなったり、食事が通らなくなります。呼吸や食事がしにくくなった場合の対処方法は「喉頭がんと緩和治療」に詳しく書いてあります。痛みを伴う場合は、痛みを緩和する薬などを用いて対処します。

頸部リンパ節転移が大きくなった場合の症状

喉頭がんが頸部リンパ節に転移して、大きくなった場合には頸部が大きく腫れることがあります。

喉頭がんの肺転移による症状

喉頭がんが肺に転移した場合は、最初は無症状ですが、進行すると胸に水が溜まり(胸水:きょうすい)呼吸が苦しくなることがあります。胸水を減らす方法としては、胸に針やチューブなどを刺して水を抜く方法や、再度水が溜まらないように治療する方法もあります。その他に、呼吸の苦しさを緩和するために、酸素を吸ったり、薬で対処する方法もあります。

喉頭がんの末期に気を付けることはある?

症状の進行は個人差がかなりありますが、多くの場合は体力も落ちており、日常生活を送るのがやっとで、ベッドの上で生活しているような状況になります。この時期はいかに自分らしく生活を送るかも重要になります。親しい人と過ごしたり、自分の好きなこと(音楽鑑賞、映画鑑賞など)をすることもよいでしょう。